Oh! My HONEY 4


仕事中の休憩中の会話って…。
「ねぇ、知ってる?この前止めたSさんってさ、別の部署のIさんと付き合ってたんだって」
「ええっ、でもIさんって奥さんも子供さんもいるわよね?」
「それが1ヶ月前に離婚してて…」
「やだ!それって不倫?」
「分かんないけどSさん妊娠したんだって」
「嘘ぉ…それってIさん最低」
うーん…。
まあ女が集まれば必然的にこういう話しになるか。
「そういえば、ようやく春が来たんだって?」
隣から振られては視線だけを返した。
うーん、遊星のこと…惚気たいような、でも噂を撒かれるのは嫌なような…。
「やっだ、水臭い!ちょっとどんな人か教えてよ」
「や…そんな皆知ってる人じゃないし…」
大嘘である。
不動遊星といえばフォーチュンカップでジャック・アトラスを破ったDホイーラー。
ばんばんTV中継されていたから知らない人間の方が少ないであろう。
「社外の人なんだね〜。じゃあ写真とか無いの?」
嘘を吐いた手前、絶対にそんなものは見せられない。
「今は無い…かな。あははは…」
「ねぇねぇ、その彼夜はどうなのよ」
「あ、だめよ。はそういうの全然ダメなんだから。彼氏初めてでしょ?」
「そーなの?じゃあ勉強した方が良いわよ!」
バサバサと目の前に広げられる女性誌。
際どい内容が羅列されていた。
まだ遊星とのそういうことは数えられるくらいしかしていない。
しかも全部受け身で。
「こういうの喜ぶわよ」
「こっちもね。単純だからやってあげたら何でも言うこときいてくれるわよ」
恋愛の先輩達が指をさしながら熱血指導。
うーん嬉しくない。
でも、遊星が喜んでくれるならやっても良いかもしれない。
は顔を赤くしたり青くしたりしながら、そんな熱血指導を受けたのであった。



「ただいま〜…」
ガレージから入ると、遊星が迎えてくれた。
人がいるところに帰ってこれるって良いものだなぁ〜と本当に思う。
真っ暗な部屋へ帰って、返事もないのにただいまを言うのはやっぱり寂しいから。
「お帰り。今日はクロウが先に戻ったから夕飯は出来ているぞ」
「ほんと!?ああ〜お腹ぺこぺこだったからすっごい嬉しい。今日遅くなったから心配してたんだー」
とは言えある程度の下ごしらえはがやっていたのだが。
それでも今から作るのと出来上がっているのとでは全然違う。
「誰かがいるっていいわね!」
階段を上がると、キッチンに一人分の夕食がある。
皆は先に食べたのだろう。
遅くなると団欒に入れないのが不満だが、贅沢は言うまい。
鍋に火をつけて、おかずはレンジに。
その合間に冷蔵庫のチェックをする。
「良かった。クロウ、お豆腐使い切ってくれたのね。以心伝心だわ、助かるー」
「誰と誰が以心伝心なんだ?」
一人暮らしのくせで独り言が多いの傍に、いつの間にか遊星が立っていた。
いつも通りの無表情で。
「わっ、びっくりした。気配消して立たないでよ」
、誰と誰が以心伝心と言ったんだ?」
お互いの主張を述べることにより、全く噛み合わない会話。
遊星と以心伝心は難しそうだ。
「やぁね、怒らないでよ」
「怒ってはいない。だが、気に入らないな」
心なしかムスっとしている風で、踵を返す遊星。
正直無意識に出た独り言がこんなに遊星の機嫌を損ねるとは思わなかった。
釈然としないに、レンジが電子音で仕事を完了したと伝えてくる。
「…まあ、とりあえず食べようかな」
人間も動物。
空腹時は気が立つものだし。
食べて心に余裕を持とう。
遊星とはそれからだ。


夕食を食べ、片付けをして、風呂に入る。
普段ならその一連の流れの中に遊星がちらほらいるのだが、今日は全く姿を見なかった。
「子供かっての…」
溜め息混じりに髪を乾かしながらは昼の熱血指導を思い出していた。

『喜ぶわよ』

『単純だから何でも言うこときいてくれるわよ』

本当だろうか。
でも機嫌を損ねているのなら試してみてもいいかもしれない。
ああでもなんて切り出そう。
恥ずかしいといえば、凄く恥ずかしい。
いや、負けるな。
普段遊星がしてくれていることを返すと思えばいいんだ。
いつも彼が気持ち良くしてくれている分を込めて。
ついでに機嫌も直してもらって。
ここは一つが大人になって仲直りをするのだ。
「一つ屋根の下だしね…気まずくなりたくないし…」
ドライヤーを片付けながらはもう一度深く息を吐く。
覚悟を決めなきゃ。
ぎゅっと勝手に赤くなる頬を押さえる。
どきどきと心臓が早鐘を打っているのが分かりすぎて辛い。
「…私、倒れちゃうんじゃないかしら…」
脈拍が200を超える状態が2分続くと人間は気絶するという。
まさしく今そんな気分だった。
震える足で階段を登る。
寝室は遊星の部屋だから、どちらにしろ遊星と顔を合わさねばならないのだ。
「…遊星?入るよ…」
一応自室でありながら他人の部屋なのでノックと声掛けは忘れない。
扉を開けると部屋の中は薄暗かった。
先に寝てしまったのか。
もうそれなら放っておこうか。
一晩寝れば遊星の頭も冷えるかもしれない…。
そんな考えが頭をよぎるが、首を横に振ってふり払った。
ダメ、明日になってもっと気まずくなってたらどうするの!?
こういう事態の解決は早い程良いのだ。
はそろりと遊星の眠るベッドに滑り込んだ。



ぎし、とベッドが軋む。
当然ながら遊星は起きていた。
背中を向けていたのでが遊星の背中にくっつくようにしてベッドに入り込んだのを感触で察知した。
子供っぽい態度を取ってしまいどうしようかと考えていたところにが入ってきたわけである。
このまま背を向けて寝たふりをすべきか。
いや、つまらないことをしたと謝るべきか。
あんな独り言の言葉尻を捕まえて嫉妬するなんてどうかしている。
潔く、謝るべきだろう。
声を掛けようと遊星が軽く息を吸い込んだ瞬間。
「!」
遊星は声を失った。
それはがするりと遊星の腰に腕を回し、服を捲り上げたからである。
背中越しに密着するの柔らかな胸。
暖かな体温。
そして…。
「…遊星、起きてるんでしょう?…怒ったままでも構わない…でも、こんなに私が遊星のことしか考えてないって教えてあげるよ…」
ぞくぞくするような色香を含んだ声で囁かれて遊星は硬直したまま声を出すことが出来なかった。
の手はするすると遊星の胸や脇腹を撫でていたが、やがて下へと下がっていく。
まさかと冷や汗をかく遊星に気付かず、ウェストの隙間から遠慮がちに滑り込まされるの手。
思わず遊星はその手を掴んでいた。
「…やっぱり、起きてた」
「…、何をする気だ…」
「それ、言わせるの?」
背後でが体を起こす気配。
遊星もそちらに体を捩る。
見下ろしてくるは微笑んでいた。
頬を紅潮させて、目尻に欲情を湛えながら。
「離して、遊星。貴方があんなささいなことで怒るから悪いのよ。さ、仲直りしましょう」
は空いた手を使って遊星の拘束から自らを解放する。
そして布団を捲り上げると、遊星の寝間着のズボンに手を掛けた。
っ、待て、止めてくれ…っ!」
「嫌よ。それとも仲直り拒否するの?抵抗するなら明日は口きかないから」
「…!」
少なからず自分の態度で怒らせたか傷つけてしまった。
その仕返しがこの『仲直り』なのだろう。
遊星はの言葉に少し怯んだ。
はそれを見逃さない。
「怖くないよ。仲直りだもん」
にこっと笑いかけては遊星のズボンを下着ごと引き下ろす。
部屋が暗いからはっきりとそれを窺い知ることは出来なくて、内心はほっとした。
明るかったら多分脱がすことは出来なかったろう。
未知の器官ではあるので多少好奇心はそそられるが。
「…あ、余り…見ないでくれないか…」
にまじまじ見られていると思うとそれはそれで勃ってくる気分だ。
いけないものを見せている背徳感と自分だけ脱がされている羞恥心。
遊星は複雑な気分で身じろぎも出来ない。
「…」
無言ですっと体を屈める
何をするのか一瞬で分かってしまい遊星は息を飲んだ。
−ぬるり
「うっ…」
の舌先が遊星の男性器に触れ、呻くような声が漏れた。
既に半勃ち状態のそれはの唇が触れたことによる興奮でみるみる質量を増していく。
「んっ…ん…」
口の中で膨らむそれにねろねろと舌を纏わりつかせた。
「はっ、…、っ」
舐めるだけのお世辞にも巧みとはいえない愛撫だが、つい先日まで童貞だった遊星も女性にこんなことをされるのは初めてで。
それが愛するがしていると思えば遊星の興奮は倍増する。
可愛い彼女が小さな口にそれを頬張っている。
妄想ではない。
視線を落とせば自分の股間に顔を埋めるが嫌でも目に入る。
「どう?仲直りする気になった?」
手で根元を支えながらぺろぺろと舐めあげる合間にが上目遣いで聞いてきた。
ああ反則だろう。
頭を思い切り殴られたような衝動が遊星の体の底を駆け抜けた。

そんないやらしい行動で。

仲直りも何も無いじゃないか。

謝れというなら後でいくらでも。

今は、君をめちゃくちゃに犯したくて堪らない。

本能が剥き出しになる。
遊星はを荒々しくベッドに押し付けた。
そういえば今晩はまだ一度もキスをしていない。
していないと言うよりは遊星自身の所為のような気もするが、とにかくの味が欲しくて遊星は唇を押し付けた。
「んぅっ!」
突然の遊星からのキスに苦しいような嬉しいような。
角度を変えながらの舌を吸い上げては溢れた唾液を飲み込む。
くちゅくちゅ舌先を絡めあいながら、遊星は性急な動作での服を脱がせていた。
寝間着を下着ごと引き下ろしての足の間に体を入れる。
「やんっ、遊星…っ、そんな、まだ…ああっ」
まだ無理、と言おうとしたの秘部に遊星の指がにゅるりと侵入してきた。
驚くほど抵抗が無い。
遊星に奉仕しながらも感じていたのだと二人は同時に理解する。
理解した瞬間、は顔を赤く染め、遊星は嬉しそうににやりと笑った。
「すごい、な…こんなにぬるぬるだ…」
「やだっ、言わないでよ!」
「俺のを舐めてこんなに興奮してくれて嬉しいぞ、…」
荒い息で興奮したように言われるともっとは感じてしまう。
そんなに欲望に掠れた声で言わないで。
の口でこんなになったんだ。こっちでも味わってくれ」
「あっぁ!」
ずぶずぶと遊星が腰を埋め込んでくる。
指より太いそれが壁を広げる感覚は、に快感をもたらしていた。
続いて襲い来る、遊星の律動による快楽の津波。
ベッドを軋ませながら激しく揺さぶられる。
気持ち良い。
何も考えられない。
目の前の遊星にすがり付いて、遊星の腕に溺れて。
愛しさで窒息してしまうのだ。
「はぁ…はぁ…、今晩のお前はいつも以上だ…っ。はあっ、凄い…っ!」
「あんっ、やっ、あっぁっ…はぁ…っ、そこダメっ…、ダメぇえ…!!」
ぶるっ、との腰が波打った。
続いてがくがくと全身を震わせながら絶頂に体を硬直させる。
「う、っく…!」
緩急をつけての内壁は遊星を何度も締め付けた。
その刺激で遊星もの最奥で欲望を解放する。
びゅくびゅくと断続的にたっぷりと吐き出し、の隣に体を崩した。
絶頂の余韻でぼんやりと視線を泳がすと目が合う。
、悪かった」
「…何に謝ってるの?さっきのこと?それともまた中で出したこと?」
「あ」
「あ、じゃないわよ。この馬鹿!」
折角の仲直りだったのに。
ああもう台無し!
結局は朝まで遊星に背中を向けて眠ったのであった。