Oh! My HONEY 8


ベッドの上の密やかな攻防。
「もー、今日は疲れてるの!明日にしてよー…」
ぎゅうぎゅうと腰を抱く遊星を押し返しながらは身を捩った。
ここのところ不規則な生活をしていた遊星。
休みの日にはせっせと食事を与え(※Oh! My HONEY7冒頭参照)、一人寝だって我慢してきた。
勿論暇が出来れば構ってくれたしずうっと放置されていたわけではなかったけれど。
それでも一緒に過ごす時間が減ったことに慣れ始めた頃、ようやく遊星が戻ってきたのである。
しかし的にここ一番で寝かせて欲しい夜に戻ってくるとは何ともタイミングの悪いことで。
「明日は休みだから、明日なら付き合うから!私今日はくたくたなの!」
「休みなら少しくらい…」
「やだー。遊星だって遊んでたわけじゃないって知ってるけど、私だって仕事してるんだからー…」
言いながらふぁ…とは欠伸をした。
よく見れば本当に眠そうな目で遊星を見ている。
「…分かった。明日必ず付き合ってもらうからな」
久し振りのの感触や匂いに欲情を煽られまくっていた遊星は、しかし彼女の為とぐっと堪えて手を止める。
「ん、約束…。明日、ね…」
遊星の邪魔が入らなくなったは漸く体の力を抜いて、抱き締めた遊星に身を預ける形で目を閉じた。
本当に眠かったのだろう、すぐに寝息が聞こえ始める。
「…っ」
柔らかい吐息が遊星の首筋をくすぐった。
誘われるように寝顔を覗き見れば無防備なぷっくりとした唇が薄っすらと開いて規則的な呼吸をしているのが目に入る。
ああ、寝かせる前にキスくらい強請れば良かった。
彼女にキスを請うなどちょっと情けない気もするが、それだけだからと言えばきっと困った顔で応じてくれたろう。
抱き締めた肩の丸みから胸元に続く鎖骨のラインに食らい付きたい。
だけどそんなことをしてを起こしてしまったら、きっと機嫌を損ねて明日の約束がご破算になるに決まっている。
「…これは、を一人にした罰か…?」
溜め息を吐いて遊星はそっとを抱き寄せた。
じんわりと温もりが伝わる。
ふわりとの髪の香りがして、くらりと眩暈を感じた。
「…眠れそうに無い」
遊星は独り呟いたが、にその声は届かない。




「…」
ふと、目が覚めた。
部屋の中は白々と明るく、夜明け前のひんやりとした空気が満ちている。
サイドボードの時計に目をやった。
起きる時間まで後15分程。
皆の起床に合わせて朝食を用意せねばならない。
仕事をしているクロウに合わせる事が多く、今日もクロウに合わせて起きる予定だ。
は自分を強く抱き締める腕に気付く。
そうだ、昨日遊星の誘いを断って眠ったんだっけ。
夢も見ないくらいしっかり寝たからとても元気になった気がする。
故に、昨日断ってしまったことを申し訳なく感じてきた。
「切羽詰った声してたわよねぇ…」
今は穏やかに眠っている遊星。
いつもどおりのあどけない寝顔を見ていると何となくムラっときて。
もそりと布団の中の遊星の体を弄った。
「…あ、すっごい…」
所謂男性の生理現象だ。
寝間着の上からそろそろと撫でると遊星が僅かに顔を顰めて呻いた。
朝の掠れた声に更に煽られては遊星の寝間着の中にするりと手を滑り込ませる。
きゅうっと握りこむと手の中でそれがびくっと跳ねた。
「これでも気持ち良いのかな…」
口でするときのように上下に手を動かしてみる。
手で擦るだけというのは初めてで、勝手が良く分からない。
しかし暫く往復させていると…。
「…っ、何を…しているんだ…」
「あ、起きた?おはよう」
「う…っ、、何をっ…はぁ…っ」
寝起きの遊星が小さく息を吐く。
感じ入ったいやらしい吐息だ。
は楽しくなってきて更にきつく握りこむ。
「待っ、…っ、はぁあ…、あ!」
一瞬イったかな?と思うくらい遊星は腰を跳ねさせた。
しかし射精には至らなかったようでびくびくと体を震わせている。
「はぁ、あぁ…っ、あっ、あぁぁ…っ」
起き抜けにこんなことをされているなんて嬉しい予想外だ。
昨日堪えた甲斐があったのかもしれない。
からこんなサービスがあるなんて。
「ね、どう?気持ち良い?イイよね?だってすごくぬるぬるしてきたよ…?」
にやにやしながらは遊星を耳からも攻める。
「はぁっ、イイ…、すごく…あぁっ、はぁあ…っ」
「朝っぱらから服着たままでイっちゃうなんて恥ずかしいね。このままだと汚しちゃうね」
「うっ、あ、あぁぁっ…言わないで、くれ…」
耳元で吹き込まれるの言葉にぞくぞくと遊星は身を震わせた。
甘い囁きも微かな吐息も堪らない。
「うふ、ほらそろそろでしょ?腰が揺れてきた…」
「くっ、ううぅ…あ!イく…、っ…!」
そう、まさに遊星がイく、と思った瞬間。
サイドボードの目覚まし時計から小さな電子音が響いた。
折角気持ちよくイけそうだったのに、気を削がれるというか邪魔をされる形でまたしても射精に至らなかった遊星。
男性の性も実はなかなかにデリケートなのである。
しかし、その目覚ましの音でははっとしたように言った。
「あ!しまった朝ごはんの準備しなきゃ!!当番私なのに!」
「…え…」
「ごめん、遊星!また後でね!今日は時間いっぱいあるからもうちょっと我慢して!」
そう告げると遊星に構うのを中断し、はぱっとベッドを出て行った。
寝間着のままだったのでカーディガンを忘れないところはしっかりしている。
中途半端なままで放り出された遊星は信じられない気持ちで体を起こした。
「…嘘だろう…?」
呆然としながら遊星は彼女の出て行った扉の先を見つめていた。



仕方なく着替えてキッチンに降りた時、そこにはクロウとブルーノが既に起きていていた。
「あ、遊星。おはよ」
「…おはよう、ブルーノ」
何となく暗い声の遊星とは対称的に、ブルーノの声は普段より明るい。
多分良く寝たのだろう。
遊星も寝ていない訳ではないのだが。
「今日はサーキットだっけ?」
「ああ。昼からな」
「走らすのか?俺も行きてぇなー」
割り込んで来たクロウに『じゃあ頼む』と言いたくて仕方がない遊星。
普段はまずそんなことを頼みはしない。
乗り心地や加速力、実際に走らせた体感的データはこの後の開発に非常に重要である。
しかし、今遊星はそれを放り出してでもを味わいたくて堪らないのだった。
皆がいなければこの場でを後ろから襲ってしまっても不思議じゃない。
「はい、お待たせ」
そんな遊星の気持ちも知らず、は机に皿を並べる。
傍に来たとき思わず白い手首を掴みそうになった。
ああ、綺麗な指先だ。
あの指がさっき自分のアレを握っていたのか。
のいやらしい囁きが脳内に蘇る。
時折ああやってされるのも悪くない……。
「サーキット行くなら私も付いて行こうかなぁ。暫く出掛けてないし」
意外な申し出である。
「あれ、も来るの?前は来なかったのに」
「あはっ、実は帰りに買い出ししたいの。遊星もブルーノも行くんでしょ?荷物、お願いしたいなあ…なんて」
男女合わせて5人も住むハウスシェアは色々と大変なのである。
「あぁ、納得。でも別に良いよね、遊星?」
「…え、?」
話を振られて遊星はぱっとブルーノを見る。
しまった、に見惚れていて全く聞いてなかった。
「すまない…ぼうっとしていて聞いてなかった」
「何だよ、お前徹夜しすぎじゃねえの?ちょっと寝ろよ」
「え?でも昨日の夜は部屋に戻れたじゃないか」
「馬鹿だな、ブルーノ」
クロウが視線でブルーノの後ろを促した。
ブルーノが振り返った先にはが立っている。
「…あ、ごめん、気付かなくて。どうせ今日はサーキットから帰ってくるまで作業ないし寝ててくれて良いよ」
何か果てしない誤解と共に気を遣われた。
しかし今の遊星にはありがたい申し出であることも確かで、訂正もせずに頷いておく。
隣では顔を赤らめたがクロウとブルーノを叩いていた。




が食器を片付けるのを手伝って(遊星としては一刻も早くと部屋に篭りたかった)、彼女を引きずるようにして部屋に戻った遊星。
勿論、ドアを閉めた瞬間に狼に豹変した。
「きゃあ…っ」
ベッドに放り出されたは思わず声を上げるが、昨夜と今朝でかなり申し訳ない感じだったので抗議の声は抑え込んだ。
圧し掛かってくる遊星を制してカーディガンを脱ぎ、寝間着のボタンを外していく。
徐々に露わになる白い胸元。
昨夜のを髣髴として遊星は喉を鳴らした。
するりと寝間着を床に落として、ついでに寝間着の下も脱いだ。
「我慢させちゃったからね…。はい、どうぞ」
下着姿になって照れたように笑うに遊星は文字通り襲い掛かった。
二人分の体重を受け止めたベッドがぎしりと大きく悲鳴を上げる。
「あんっ、もう…ケダモノなんだから…」
しかし無理もないかとは苦笑する。
「っん…」
覆いかぶさってきた遊星に荒々しくキスをされて、久しぶりの遊星の味にも体が熱くなる。
溢れた唾液をくちゅくちゅと舌で混ぜて飲み込む。
柔らかく絡まる感触にもじんわりと足の間が濡れてくるのを感じた。
「……っ」
「あっ…はぁ、あぁぁ…遊星、あん、イイ…っ」
遊星としては今すぐにでもの中に突き立てて想いを遂げてしまいたいところである。
しかし痛い思いをさせるのは本意ではない。
一緒に気持ち良くならねば意味が無い。
なので。
「はぁっ、あはぁっ!やぁ、ゆうせぇ…っあぁ、だめぇ…!」
やや性急かとは思ったが、濡れ始めたの秘部に指を伸ばした。
一度イかせてやれば準備は十分だろう。
「っ、あ!あ!やぁっ…!」
「…イイ、か?」
「んっ、イイけど…っ、やだ、あぁっ、あっあっ!」
「すまない、もう我慢できないんだ…」
「はぁぁっ…!!」
ぐちゅりと湿った感触が指伝いに遊星に伝わる。
溢れてきた愛液を指先に纏わせて、敏感な突起を柔らかく捏ねた。
乱雑な愛撫で申し訳なく思うけれど遊星も本当に切羽詰っているのである。
それはも理解している。
「んっ、あっ!や、イく、イっちゃう…遊星の指でイっちゃう…!」
びくんと腰を跳ねさせがくがくと体を震わせる
乱暴に登りつめさせられたとしても、その快感は本物だ。
はぁはぁと肩で息をしながらは熱っぽい視線を遊星に向けた。
早く、ということなのだろうか。
急かされなくても今すぐにの中を味わいたい遊星は、の足の間に体を入れる。
ああ、やっとその瞬間だ。
本当に待ちに待った。
漸く遊星がベルトに手を掛けた、その時…。
「おい、遊星!もう寝ちまったか?」
どんどんとドアを叩くクロウの声。

えええええ…。

もうそろそろ勘弁してくださいよ。

今日に限って何なんですかこのタイミングの悪さ!

…と、言う文字を背中に背負って遊星がの胸の上に突っ伏した。
「遊星?おい、入っていいか?」
「あ、待って待って!今遊星起こすから!!」
殆ど裸のは、今クロウに入ってこられては敵わない。
慌てて外のクロウに声を掛けた。
そして小声で遊星に言う。
「私、布団に隠れてるから、早く出て」
「………」
「どっちにしろ避けられないと思うわよ…。クロウ、遊星を起こす気満々だもの」
「…」
確かに。
部屋にまで入ってこようとするなんて余程である。
緊急の用事でもなければそんなことは絶対にしないだろう。
なんと言っても遊星に寝ろと口を酸っぱく言うのはとクロウなのだから。
遊星は盛大なる溜め息を吐いての体から離れた。
あともう少しだったのに…。
のろのろとドアに向かう。
「…一体どうした…」
「起こして悪ィ。なんかブルーノが神の啓示を受けたんだとよ。今からサーキット行くから遊星呼んで来いってさ」
「………」

えええええ…。

「帰ったら好きなだけ寝ていいからとにかく今は付き合えだと」
「……分かった…」
本当は全く分かりたくもないが。
「準備できたら降りてきてくれってよ。ブルーノの方は準備出来てるからって言ってたぜ」
「…ああ」
いや、寧ろ嗚呼(感嘆)。
じゃあ、伝えたからな!とクロウは足取り軽く廊下を歩いていく。
恐らくこれから配達に出るのだろう。
逆に遊星の足取りは重い。
と、いうかサーキットに行くことに対してこれほどまでに後ろ向きになった遊星を見たことがあったろうか。
「あ、あの…何て言えばいいのか…。だ、大丈夫?」
「…大丈夫だ。ちょっと涙で前が見えないだけで」
「…」
流石になんか可哀想になってきた。
はベッドから降りるとクローゼットを開けて居住まいを正し始める。
「遊星、ちゃちゃっと済ませてしまいましょう。予定を片付けきったら何が何でも絶対に遊星に付き合うから。邪魔が絶対に入らないようにすればいいのよ」
「……」
「ほら、まずはサーキットね。大急ぎで買出しを終わらせて、荷物を置いたら二人でサテライトの方にいけばいいんじゃない?」
…ああ、成る程。
ここでの言うサテライト、とは遊星の昔のアジトのことだ。
確かにそこなら邪魔は入りにくいだろう。
一緒に住み始めた当初は、二人きりになりたい時に時々出かけた。
最近はあまり使っていなかったが。
「そう、だな…。そうしよう」
「じゃあ、行きましょうか」
何時の間にやらきちんと服を着たが遊星に手を差し延べる。
その手を取って、遊星とは連れ立って部屋を出たのだった。









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今回は、何か書いてるこっちが欲求不満になる感じでした。
ここまで読んで下さってありがとうございました。