事の顛末


誰が悪かったかといえば。
まあ恐らく99%が悪かっただろう。
しかし彼女にも、まさかそれを遊星が口にするとは全く予想外だったのだ。
「ゆ、遊星…大丈夫…?」
「あまり…大丈夫じゃ、ないな…」
珍しく弱気な遊星に、は「嗚呼…」と両手を頬にあてる。
後悔しても遅い。
空っぽになった瓶の中身はもう遊星の胃の中だ。
紛らわしい瓶に入れて放置していたが悪いのだ。
これはもう、責任を取るしかないだろう。
「分かったわ、遊星。あたしが責任を取ります」
「責任?…何を、するんだ…?」
苦しそうに息を吐く遊星の頬が赤い。
可哀想に…。
はとてつもなく同情した。
しかしグズグズしていればもっと遊星が苦しむことになるだろう。
「勿論、セックスよ」
の言葉に遊星は目を見開いた。
そんな遊星に構わずは白衣を脱ぎ捨てる。
「もう分かってると思うんだけど、それ催淫剤なの。本当は薄めて使うんだけど遊星は原液飲んじゃったから…」
「だから、どうなんだ…?」
正直、答えを聞くのが怖い。
しかし問わずにはいられない。
この体の異変を。
「効果が切れるまで放っておいたら発狂しちゃうわよ。遊星の気が済むまで付き合うから」
「そん、な…こと…出来ない…」
遊星は首を振る。
しかしその視線は明らかに宙を彷徨っていた。
「特効薬、無いのよ。発汗と共に蒸発する仕組みなの。徐々に薬を抜くなんて待ってられないわ。今も苦しいでしょ?」
「だが…っ」
荒い呼吸で理性をかき集める遊星が可哀想で可愛くて。
「いいの。遊星なら。処女じゃなくて悪いけど」
手を伸ばし、軽く遊星の頬を撫でる。
びくりと遊星の体が強張った。
「怖がらなくて、いいわ。気持ち良くなるだけよ」
頬を撫でた手をそうっと下に落とす。
頬から首筋、胸板、腹…そして。
「やめ、てくれ…」
ベルトにその手が掛けられたとき遊星は顔を顰めて懇願した。
「恥ずかしからなくていいわ」
弱々しい抵抗をする遊星の腕を避けて、はベルトを外しファスナーを降ろした。
手を滑り込ませると熱く膨らんだものが手に触れる。
取り出したソレは血管が分かるほどに充血し、膨張していた。
「すごい、こんなにして…」
思わず口にしたら遊星が顔を背けた。
真っ赤になった頬が目に入る。
可愛くてもぞくりと疼きを感じた。
いけない、今は遊星をせめて一度でも解放してやらねば。
屈みこんだは遊星をべろりと舐める。
「うあ…っ!」
―どぷっ
「っ!」
「あぁぁ…っ、はぁ、あ…っ」
びくびくと腰を跳ねさせながら遊星は断続的に射精した。
まさか一舐めでこんな風になるとはは夢にも思っておらず、顔にべっとりとついた遊星の精液を指で拭って遊星を見る。
彼は体を震わせながら自らの肩口に顔を埋めていた。
荒い呼吸で一言言うには。
「俺は…死にたい…」
涙声だ。
「薬の所為よ。ごめんね、全部脱がせてあげれば良かったわ。後で洗濯しておくわね」
「!」
服を汚してしまったことを示唆され、遊星は肩を震わせた。
恥ずかしすぎて混乱した感情が止まらない。
「本当にごめんね、あたしの所為で…」
謝りながらもはやはり遊星が可愛くて仕方が無い。
興奮のあまり足が震える。
「泣かないで…好きよ、遊星。こうなってちょっと嬉しいって思ってるあたしを許して…」
「…え…っ」
弾かれたように遊星は顔を上げた。
赤く染まったまなじりに、頬を伝う涙。
幼い頃の遊星を思い出す。
その時はまだ自分も子供だったけど、ずっと遊星が可愛くて仕方なかった。
「ごめんね」
「待っ、はっ、あぁぁっ……っ!!」
一度放ったにも関わらず、殆ど衰える様子を見せない遊星のものには改めて唇をつける。
口の中で跳ねるそれをじゅるりとしゃぶった。
ソフトクリームを柔らかく舐め取るように唇を上下すると、堪らなくなったのか遊星がの頭を抱え込む。
それはまるで求められているかのような錯覚をに引き起こした。
深々と咥え込んでは緩やかに抜く。
先端をちゅうちゅう吸って、くびれた部分を強くなぞる。
「はぁっはぁっ…!、だめ、だ…っ、また…出るっ!!」
悲鳴にも似た遊星の声にはそれをもう一度咥え込む。
遊星のなら全部飲み込んでしまいたい。
たっぷりと味わって、覚えておきたい。
浅ましいと思いながらもは己の欲望に忠実に行動した。
しかし意外なことに遊星も下半身を押し付けるように頭を押さえてくる。
気持ちよくなったくれたのかな、と思うだけでは体が熱くなるのを感じた。
「あぁっ、はぁっ…、っ…!イく…出る…っ!!!」
遊星がびくびくと体を震わせると同時にの口内には勢いよく放出された精液が溢れかえった。
―びゅく、びゅるっ
「んっ…う…」
むせそうになるのを我慢して喉に押し込んだ。
美味しいには程遠いが、遊星のだと思うと愛しくて堪らない。
喉を鳴らして全て飲み込む。
「っ、は…どう?少し落ち着いた…?」
「…ああ」
まだ涙の跡の残る目元にドキドキしながらも、は平静な振りで聞いた。
素直に頷く遊星。
「…
「なぁに?」
「…俺のことが、好きなのか…?」
「……うん、好きよ」
年上な上にフォーチュンカップですっかり有名人になってしまった遊星だったから、一生伝えることはないと思って来たが。
幼い頃から遊星が一番好きだった。
クロウやジャックも可愛がってはきたけれど、ずっと遊星が特別だった。
「…
「なぁに?」
「俺は、初めては絶対にと決めていた」
「うん……うん?」
遊星は物凄く真剣だがは首を傾げる。
今何て言った?
が拒んでも、宥めすかして必ずで初体験をすると決めていた」
「…何その恐ろしい誓い。それ下手すりゃ一生童貞よね」
「それこそこういう薬を使ってでもをなんとかするつもりでいた」
「やだ何あんた怖い」
思わぬ遊星の告白にもちょっと怖くなる。
「…とにかく…」
遊星ががしっとの腕を掴んだ。
「遠慮しなくて良いってことだな?」
ニヤっと遊星が口角をあげる。
突然の流れに戸惑うは、流されるままに頷いていた。


改めまして、ベッドの上。


「何で遊星は最初抵抗したの?」
普段のクールな遊星からは到底想像できない告白を聞いた後だけには疑問をぶつけざるを得ない。
遊星はほんの少しだけ困ったような表情を浮かべながら。
「迷惑をかけるかと遠慮したんだ。それに、情けない姿を見られるのも嫌だった」
「じゃあ途中であたしの頭押さえたのは…」
が俺のことを好きと言ったから遠慮しないでおこうと思った。最初に出ると言った時、は離れるどころか逆に咥え込んだから飲んでくれるのかと」
「…いやぁ…おねぇさん超悲壮な決意したのにね!可愛い可愛い遊星君に嫌われただろーなー今日一生分の思い出作ろーってそう思ったのにね!」
「楽しませてもらった」
「はいはい。まあ今回のは本当に全部あたしが悪いからね。どうぞもっと楽しんで頂戴。可愛い可愛い遊星君の初体験の相手出来るなんて本望よ」
ぎしりとベッドが軋んで遊星が距離を詰めてきた。
未だかつて無い程近い距離。
図らずもどきっとしてしまう。
遊星の手がの服の裾を捲り上げた。
本当に遠慮なしだな…とは思ったが、そもそも遊星が遠慮する事があっただろうか。
大概彼は彼の思うままに好きにやっていたような気がする。
合言葉は「おい、デュエルしろよ」だ。
無抵抗にするりとカットソーを脱がされてやる。
遊星はどうやらカットソーの下に着ていたキャミソールも一緒に巻くってしまったらしい。
おかげで上は既に下着のみになってしまった。
続いてジーンズにも手を掛ける。
「…何か脱がされるのってすっごい恥ずかしい…」
「さっきの俺の気持ちが分かるだろう?」
「あー…ごめん。あれはマジごめん」
腰を浮かせて手伝おうかと思ったけど、それより早くの腰を遊星が抱き上げた。
おかげで文字通り遊星によって脱がされてしまって。
「遊星…初めてってわりには手馴れててあたしびっくりなんだけど」
「何度も脳内でシミュレーションをしたからな」
「あっそう…聞かなきゃ良かったわ。ていうかドヤ顔すんな」
何でも疑問を口に出す自分も自分だが素直に答える遊星も遊星だ…とは思う。
まあ姉弟のように育ったからこんな関係なのだろう。
クロウなんか未だに姉って呼ぶクセが抜けないし。
これで下もショーツになった。
遊星は改めてを抱き上げると向い合わせになるよう自分の足の上にを座らせた。
これで視線の位置は大体同じ。
普段はほんの少し遊星の方が高いけれど。
「……」
ぎゅうっと抱きしめられて遊星の肩口に顔が触れる。
遊星もの首筋に顔を埋めるような格好だ。
もぞ、と首筋に柔らかな感触が触れる。
「あ…ン…、遊星…」
唇が首筋をなぞり、そっと耳朶を食んだ。
「ひゃっ…ん…くすぐった…」
ぬるっと舌で撫でられた。
「っ、あぁん!」
くすぐったさでぞくりと肌が粟立つ。
ぎゅうっと強く遊星に縋りついた。
、そんなにしがみつかれると…」
「あ、ごめん。痛かった?」
「いや、勃ってくる。さっき出したばかりなのに」
「…あ、っそう…」
は想像以上に柔らかくて…良い匂いがする」
「…う、うん…ありがとう…」
礼を言うのもおかしいような気がするが。
普段見る遊星とは違いすぎて返す言葉が見つからなくて。
「ああ…大好きだ、…」
回された腕に更に力が篭る。
息が止まるくらい抱きしめられてはどきどきした。
ちょっとずれてるところもあるけど、やっぱりには遊星が可愛くて堪らないのだ。
「あたしも大好きよ。…あぁ、遊星可愛い…。食べちゃいたい」
はさっき食べたからもうダメだ。次は俺のターンだ」
言って、遊星は素早くにキスをした。
「んっ…!」
不意打ちに、一瞬驚いただが、すぐに目を閉じ遊星の唇を味わう。
嗚呼、遊星とキスが出来る日が来るなんて。
差し込まれた柔らかな遊星の舌を絡めとり、吸い上げる。
溢れる唾液も全て飲み込む。
味わい尽くして堪能したい。
可愛い遊星の唇を。
「は、っ…遊星…ん、ン…」
離れそうになる遊星に追いすがり更に唇を重ね、が息をつくと今度は遊星が重ねてくる。
追いかけっこのようなキス。
「あ、…」
そのキスの合間に遊星がとうとうの下着に手を掛けた。
ぷつんと胸元が緩くなる。
向かい合ったままそれを脱がされるのは非常に恥ずかしい気分だったが、は無言で堪えた。
恥ずかしいながらも、ちらっと遊星を見ると顔をしかめて深い溜め息を吐いている。
「遊星…?もしかして、また苦しくなってきたんじゃないの?」
ふざけていて忘れていたが、先程の射精からまあまあの時間が経っている。
発散して落ち着いていたが、まだ確実に薬は抜けきっていない。
「はぁっ、はあっ…すまない、…」
「謝らなくて良いってば!悪いのはあたしなんだから。どうしたい?また口でしてあげようか?」
荒い呼吸で遊星の肩が上下している。
を抱き締める遊星の手が緩やかに汗ばんできた。
苦しそうにの肩口に遊星は顔を押し付け項垂れるかのような態勢をとる。
「…遊星、言って?どうしたい?どうして欲しい…?」
が促すと、遊星は視線だけをに向けた。
気だるげな遊星の眼差しに色気を感じ、の体も熱く疼く。
遊星は唇をうっすらと開き、
「はあっ……入れたい…、、入れたい…」
と、懇願の言葉を口にした。
掠れた欲望に塗れた声。
「!」
その声だけでイかされるかと思った。
きゅうんと子宮の奥が震えるように疼く。
何もされていないのに、体が勝手に涎を垂らす。
「…良いわよ…、遊星。入れて…」
遊星から体を離して座り込み、は最後の下着を足から引き抜いた。
誘われるように遊星がに覆い被さる。
そんな遊星の首に腕を回して、は小さく囁いた。
「さぁ、来て…」
その言葉に遊星は獣のようにに襲い掛かった。
ベッドに押し付けの足の間に体を捩じ込んで。
性急な動作で性器を取りだし、ぐいぐいと腰を押し付けてくる。
「んっ、あ、遊星…ここ、ここよ」
そうっと遊星のソレに手を添えてぬかるむ入り口に押し当てる。
ぐじゅ…と濡れた感触。
はぁっ、と遊星が熱い溜め息を吐いた。
「ああ、凄いっ…っ、気持ち、良い…っ」
恍惚の表情を浮かべながら遊星はギシギシとベッドを軋ませる。
「あっあっ…遊星…っ、はあっ、激しっ…!」
結合部からは聞いたこともないくらいの猥褻な水音が響いていた。
夢中で突き上げる遊星が可愛くて、は体が震え上がる。
「うっ、はあっ、はあぁぁっ、…!もう、イく…っ!出るっ」
「っん…!遊星っ、良いよっ!!出して…っ!中でっ、出してぇっ」
びくりと遊星が体を跳ねさせた。
の腰を強く掴み、深々と押し込んだままに遊星はたっぷりと射精する。
体の中でびくびくと震える遊星自身には強い充足を感じた。
「っ、はぁ、はぁ…っはぁぁ…」
「ゆ、うせ…い…どう?苦しいの、治まった…?」
「…、い…」
「え…?」
ぼそりと呟く遊星の視線はまだ熱を籠らせているように見えた。
それに…。
未だの中にいる遊星が質量を失わない。
「すまない…まだ……」
「足りないのね?良いのよ」
それに自身、先程は絶頂を感じることが出来なかった。
の中が欲しそうに蠢く。
「っ、う……締まる……」
何処か嬉しそうな声で遊星は呟いた。
「次はあたしのターンでしょ?こんなのはどう?」
繋がったままでは体を起こし遊星の腹の上に馬乗りになった。
自らの体重で、奥まで到達する遊星。
押し出されるように先程の遊星の精液が溢れ出た。
「あぁ、ん…っ、深い…」
ゆるゆると腰を揺らし焦らすように上下させる。
「っく、…、はぁっ、…」
「どう?気持ち良い?」
「…凄くイイ…」
それに…と遊星は口には出さず、視線だけを移した。
彼女が腰を揺らす度に緩やかに跳ねる胸やうっとりとした表情…。
技巧も何もない自分の体をが貪っている。
その事実が遊星の気持ちを昂らせてくれる。
「んっ、んっ…あぁ、遊星ぃ…っ、おっきいの…凄い…っ!」
…っ」
跳ねるの腰を掴んで突き上げると、甘い悲鳴が部屋に響いた。
それに誘発されるように遊星は体を起こしの唇に吸い付く。
抱き締めたらの中がまた遊星を苛むように絡み付いた。
「は…ぅっ、ん!ゆ、うっ…んンっ!」
「好きだ、っ、…!」
「あたしっ、も!遊星っ、好きっ!」
キスを繰り返しながら強く抱き締め合って。
「遊星っ、遊星!」
乱暴に犯されながらもはゾクゾクと駆け上がる絶頂の予感に身を震わせていた。
体が熱い。
夢中で遊星にすがり付く。
「あっ、ゆうせいぃっ!イっちゃう…っ」
「はあっ、はあっ…、っ」
逞しい遊星の腕に力が篭る。
息が詰まるかと思う程の抱擁に、の体ががくがくと震えた。
「―…っっ!!」
背中がしなり、駆け抜ける快感には声にならない声をあげる。
きゅうんと収縮を繰り返す内壁が遊星をきつく締め付けた。
「うっ、く!…っ、!」
遊星も苦しげに顔をしかめる。
しかしそれは快感からの表情である。
とぷ、と中から温い滴りが溢れたのが分かった。
「遊星も、イっちゃった…?」
きつく抱き絞められたまま遊星を見上げる。
目を伏せ荒い息を吐いていた。
汗に濡れた髪に上気した頬。
あ、色っぽい。
どきどきする。
「こんなに、出したのは初めてだ…」
「あは、初体験の感想それ?」
「夢が叶った」
「大袈裟ねぇ」
ゆっくり体を離して笑う。
まあまあ汗もかいたようだ。
ある程度薬は抜けただろう。
「苦しいの治まった?」
「ああ。寧ろスッキリした」
心なしかツヤっとした遊星。
「ごめんね…あたしの薬のせいで」
「いいんだ。凄く気持ち良かったし、の気持ちも知ることが出来た」
「うう、なんか順序逆になっちゃったね…。それも含めてごめんって感じなんだけど」
恐縮しきりのに遊星は少しだけ首を傾げる。
「問題ない。これでを堂々と独り占め出来る」
さらりと言われては頬が熱くなる。
「ホント遊星って…」
男女構わずたらしこむ能力は今日も冴えまくっている。
年下なのに、年下だから。
可愛くて仕方ない遊星との事の顛末がこれである。