年下の彼女


鬼柳から連絡が来たのは早朝のことだった。
わだかまりが雪解けしてからは時折連絡を取り合っている。
何だかんだで忙しくしているらしい。
素行の悪い者が集まっているサティスファクションタウンだけに、苦労もしているようだ。

「使える人手が欲しい」

珍しく手伝ってくれと請う鬼柳に、遊星は黙りこんだ。
今日だけは絶対にダメだ。
かねてより計画していたことを実行に移そうと思っていたのに。
しかしふと、鬼柳の要請が自分に都合が良いことに思い至る。
遊星は後で折り返す旨を伝えて足早に部屋を出た。


嗚呼、まさかこんなにも上手くいくなんて。
遊星は機嫌良く歩いていた。
誰もいないうちに準備をしよう。
どうせ夜までは帰っては来ないだろうが。
鬼柳が人手を欲していることをジャックとクロウに伝えたら、二つ返事で了承した。
ついでに理由をつけてブルーノにも行かせることにした。
Dホイールを貸すと言うと喜んで引き受けてくれた。
これで今日が遊びに来ても何の邪魔も入らない――



何故遊星がの今日の予定を知っているのか。
彼女から連絡があった訳ではない。
が部屋で呟いた言葉を聞いていたからだ。
遊星はの私生活を覗き見ていた。
正確には聞いていた。
最初は罪悪感もあったし、止めなければとも思っていたが、止まらなかった。
それに、時折聞くことが出来たの悩ましい声。
始めはくぐもった声が何をしている時の声なのか分からなかったけれど。
ある日自分の名を呼ばれて気付いた。
が自慰をしているのだと。
甘い声で、はしたないお願いを、誰もいない空間にが請うている。
それを知ってから、遊星はの自慰の声を聞きながら自慰をするようになった。
の請うことを妄想のにたっぷりとしてやる。
時には優しく愛撫して、時には乱暴に犯して。

『遊星さんっ…!あぁ、イっちゃう…っ、遊星さぁん!ゆうせ、っさ…っあぁぁっ、イくぅ!!』

最近では、がイくのと同時くらいに射精出来るようになった。
あの一瞬の充足感は、もう遊星には手放せないようになるほどで。
近頃のは毎晩のように遊星の名前を呼びながら自慰をしている。

『俺に言えば良いのに』

そうしたらお互いもっと気持ち良くなれるのに。
遊星はを犯そうと決めた。
は抵抗などしないだろう。
しかし、準備は必要だ。
レイプが目的ではない。
まずは一度部屋に誘ってみよう。
そうだ明日は遊びに来ると言っていたし、その時に理由をつけて部屋に連れ込んでみればいい。
遊星は部屋を見渡して、散らかったところや触られては困るところを片付け始めた。



――とりあえずが来るならケーキでも用意しておこう。
遊星はが美味しそうにケーキを食べる姿を想像する。
にこにこしながら幸せそうに食べる姿を見るのは大好きだ。
しかし、コンビニを出たところで遊星は思わぬ人物に遭遇する。

「遊星さんっ」

ギクリ、と遊星は振り向いた。
そこにはの姿が。
何故、まだ学校のはずでは。

「…ああ、か。偶然だな」

一瞬声が出なかったが良く考えてみれば今日は土曜だった。
そうか、だからは今日来ると言ったのか。
放課後の時間がたくさんあるから。
計画はどうする?
今、ガレージは空っぽだ。
邪魔は入らない。
様子見をするつもりだったが、今日は絶好のチャンスではないだろうか。
遊星は少し笑ってに答える。

「問題ない。それにに会えた」

そう、何も問題はない。

少しだけ計画が前倒しになっただけだ。

愛している、

今日、君の願いを叶えよう。