あたし、ちょっとMなんです。
ごめんなさい。
ごめんなさい、遊星。
「んっ、あ…遊星…っ」
びくびくとあたしは体を震わせた。
ぎしぎしベッドが軋んでいる。
「、はあっ、…はっ…あ…」
「あっ…あぁっ」
びくっと体の中の遊星が脈動した。
あたしの中に注がれる遊星の熱。
「は…」
溜息を付く遊星の下であたしもふうっと息を吐く。
「……はぁっ…」
ごめんなさい。
ごめんなさい、遊星。
貴方とのセックスが気持ちよくない訳じゃないの。
でもね、でも……。
「遊星とのセックスが不満なの」
急にに呼び出され、何事かと思えばそんな相談を受けてしまったアキ。
は遊星の部屋に住んでいるので、遊星の部屋で二人きり。
物凄く神妙な顔のからそんな相談が出てきて、ちょっと拍子抜けである。
とはいえなかなかにデリケートな相談でもあることは確かだった。
「それは問題ね…でも何で私に?」
それは、チーム5Dsに女性の相談相手がアキしかいないからである。
「だってアキしか相談できそうな人がいないんだもん!ねぇ、どうしたらいいと思う…?」
「はどうしたいの?」
「…あたしね、ちょっとMなの!もうちょっと虐められたいって言うか…」
「それを素直に遊星に言ってみれば?」
「ええっ、でも…嫌われちゃわないかなぁ…」
っていうかどのタイミングで言えば良いんだろう。
そもそも遊星に『セックスが不満なの』なんてストレートに伝えてしまっても良いのだろうか。
男性の自尊心とか、そういうの傷つけちゃったら元も子もないような気がする。。
「はっきり不満なのって言うと角が立つかもしれないから、まずはしたいことを伝えてみればどうかしら」
「したいことを?」
はアキが言っている言葉の意味が分からなくて首を傾げた。
したいことを伝えるということはは不満を言うのと変わらないのでは…。
「不満を言うわけじゃなくて、実はMだから今晩はこういうことをやってみて欲しい、って言ってみたらどう?とにかく今までが不満だったってことは隠したままでね」
成る程。
今までのセックスも悪くなかったって遊星に思ってもらうようにもっていけと言うことか。
確かに別に今までだって彼のセックスで感じていなかったわけではない。
物足りなかったというだけで。
「それ、いい!早速小道具出してこよう!ありがとうアキ!!」
「…うん…でもこれからは出来れば遊星と解決してね」
冷たい微笑みでアキはにそう告げた。
しかし、しつこいようだがチーム内の女性はアキだけである。
こんなことを相談出来る相手は、にとってアキしかいない。
「相談…しちゃダメ?」
「ダメというわけじゃないわ。でもこういう問題はパートナーと解決するのが本当は一番良いのよ。逆のことを想像してみて?との行為に不満があるって遊星がクロウやジャックに相談していたとしたらどう?」
「………嫌かも」
「でしょう?だから、こういう問題はなるべく遊星と解決するようにね。結局二人でしか妥協点を見つけることも出来ない問題だからね」
「ん…次はもうちょっと考えてみる」
今度はにこっと微笑むアキ。
より年下なのに(は遊星と同い年)しっかりしていることである。
これからは遊星に相談…しかしセックスの問題を本人にいきなり相談するのは存外難しい。
まあ今晩はとりあえずアキの言ってくれたこと試してみよう。
それでダメだったらまた考えよう。
「ところで…貴女、その、小道具使うの…?」
「え、う、うん…」
「……」
それって『ちょっとM』ってレベルじゃないんじゃあ…。
と、言うか前に遊星が初めてだって言ってたのに小道具用意してあるって何。
アキは色々複雑な気分になったが、結局聞くことは出来なかった。
でも…。
よくよく考えたら、性癖のカミングアウトってすっごく恥ずかしい。
アキを見送った後で一人になったはその瞬間を想像して一人赤くなる。
遊星が失望した顔をしたらどうしよう。
玩具まで使って欲しいって言ったらどうするかな?
そういう遊びをする為の玩具が入った箱を目の前にはふと行為の最中の遊星を思い出す。
今まで遊星はに性的なサービスを求めることは何一つ無かった。
ただベッドに体を横たえていれば全て遊星がやってくれた。
…まあ実はそれも不満の一つである。
遊星がを気持ち良くしてくれるようにも遊星を気持ち良くしたい。
色々初めてだから上手ではないかもしれないけれど、そこは遊星に教えてもらって上達すれば良いし。
普段冷静な遊星がセックスの時に時々見せる余裕の無い表情がもっと見たい。
そういう時にしか見れないような、恍惚の表情をもっと見せて欲しい。
自分も正体を失くすくらいに遊星を感じておかしくなるくらいのセックスを体験してみたい。
それとも男性は最終的に射精という現象が起こればそれで問題無いのだろうか?
変わった性癖の持ち主でなければ、そこへ至るまでのプロセスは然程重要ではない??
「もーわかんないよォ…」
「…何が分からないんだ」
「きゃあ!」
文字通り飛び上がるほどには驚いて後ろを振り返った。
そこにはドアにもたれかかるようにして腕を組む遊星の姿が。
「ちょ、ちょっと遊星、気配消して後ろに立たないでよ!」
「アキは帰ったのか?」
「え、うん。アキに用があったの?」
「いや、無い。だが、朝からが深刻な顔でアキを呼んでいたから、何かあったのかと思っただけだ」
心配して来てくれたのか。
我が彼氏ながらそういう優しさがすごく好きだ。
「で、何かあったんだろう?」
「えっ、あ…いやその…あったような無かったような…」
「…その箱は何だ?」
「えっ!」
言わずもがなな遊星と一緒に遊ぶための玩具が入った箱である。
遊星は勿論中身を知らないが、中身が中身なだけに思わずはそれを背中の方へ追いやって隠すような素振りを見せた。
「何故隠す」
「か、隠してるわけじゃないわよ…!で、でもあの、…」
挙動不審すぎる。
遊星は無言でに近づいて来た。
「ま、待って遊星!」
こういう時の遊星は問答無用である。
止めることなんて出来ないことを分かっていながらもは弱々しく抵抗を見せた。
しかし心のどこかではこの箱の中身を見せてしまえば遊星の反応を確認できるかもしれないという思いもあった。
確信犯的に行動したわけではない。
心の準備だって出来て無い。(本当は夜に打ち明けるつもりだった)
だけど、は…手を伸ばした遊星の手を掴むことはしなかった。
の秘密が入った箱が遊星の手によって開けられる。
「…これは」
一瞬目を見開いた遊星がを見た。
は頬を赤く染め、無言で視線を逸らす。
気まずすぎる沈黙が二人の間に流れた。
「…あたしの、秘密の箱よ。これで…遊星と遊びたいと思ったの」
おずおずと口を開いたのはだった。
「…俺に、使おうと思っていたのか?」
戸惑ったように言われては首を横に振る。
「ううん…逆。えっと、あたしに…使ってもらおうと…思っ、て…」
消え入りそうな声で告げるに遊星はまた驚いた顔をする。
それって信じられないって事?
失望された?
もう嫌になった?
色んなネガティブの疑問が頭の中に溢れ帰り、は泣きそうになった。
しかし滲みそうになる視界の向こうで、遊星が少しだけ笑った。
それも、ニヤっと。
見たことも無いくらいの薄暗い笑みで。
「遊星…?」
「いや、ははっ、何だ、そうだったのか」
「な、何…?」
急に笑う遊星、何か怖い。
「今まで猫を被って損をしたなと思ったんだ。ははっ…、望みどおりにしてやるよ」
「え…」
言うなり遊星はの腕をきつく掴んで自分の方へ引き寄せた。
そしてそのまま深くキスをする。
不意打ちすぎる遊星の行動には驚くが、しかし別にキスは嫌いじゃない。
静かに受け入れる。
ちゅるりと滑り込んだ遊星の舌がぬるりと絡み付いてきた。
暫くそれを味わっていたら、そっと遊星が離れて笑いながら囁く。
「飲むんだ、」
「え、んむっ…」
改めて重ねられる遊星の唇。
しかし今度はいつもと様子が違う。
舌が遊星の唾液を器用に送り込んでくる。
溢れかえる口内の中身をは喉へと押し込んだ。
飲めとはこれのことかと、酸欠になりそうな遊星の命令をは必死で遂行した。
「はっ、はぁっはぁっ…」
「…良い仔だ」
唇から零さなかったことを褒めているらしい。
肩で息をしながら、は遊星の言葉を思い出す。
『望みどおりにしてやるよ』
遊星は確かにそう言った。
顔を上げると遊星はの秘密の玩具箱を漁っている。
「ああ、これがいい」
手に取ったのは、首輪とリード。
「これで遊ぼう。、今からお前は俺の犬だ。…さあ、服を脱げよ。犬は服なんか着ないだろう?」
「っ…」
遊星の豹変振りには驚く。
しかし、そう、はこれを待っていたのだ。
ごくりとの喉が鳴る、獣のように。
興奮に震える手でブラウスのボタンを外そうとするが、緊張で指先が上手く動かない。
それを見ていた遊星が。
「…不器用な犬だな」
一言吐き捨てるように言ってのブラウスのボタンを外してくれた。
襟元に手を掛けられた時は、引き千切られるかも(それはそれで興奮出来そうだ)、と思ったがお気に入りの服だったから無事に済んで良かった。
しかし遊星はブラウスを脱がせながら冷たい視線をに向ける。
「主人の手を煩わすなんて、いい度胸だな、」
「あ、ご、ごめん…なさい…」
顔色を伺うように小さく呟いて、今度は自分でスカートを脱ぐ。
下着も脱がなければならない。
上は良いけれど…下は…。
染みを作るほどに濡れていることを知っているだけに、一瞬は躊躇う。
遊星はそれを見逃さない。
「、また俺の手を煩わすつもりなのか?」
「あっ、そ、そんなこと…」
ぴしゃりと言われて顔を赤くしながらそろそろとそれを脱いだ。
そして裸になったところに遊星に首輪をつけられた。
「ははっ、いい格好だ」
遊星は満足そうである。
かくいうも緊張はするけれど、待ちに待った遊びが行われていることに非常に満足していた。
「さて、…俺のことは何て呼ぶ?」
「あ、え、ええっと…ご、ご主人様…?」
「そうだ。敬語も忘れるな。俺の命令は絶対だ。良いな?」
「は、はい…」
当然だが普段遊星に敬語を使うことなどない。
気をつけないと忘れてしまうかもしれない。
「忘れるな」と絶対の命令をされたのに。
…もし忘れてしまったらどうなるんだろう…。
きっとお仕置きが待っている。
怖いはずなのに、それを想像するだけでは腰が疼くようだった。
「じゃあまずは…コレだよな」
言って遊星は自分のベルトを引き抜いた。
そしての目の前でそれを取り出して見せる。
初体験が遊星で、セックスの主導権を全て遊星に委ねていたがそれを目にするのは殆ど初めてと言っても良い。
既に勃起し充血するそれを遊星は揺すって見せた。
ぶるんと揺れる男性のものがこんなに膨らむなんて…不思議な物を見ているようでは目を離せない。
「さあ、食事だ。食べさせてやる」
「っんん!!」
遊星はの顎を掴んでそれを捻じ込んできた。
こんなことを遊星に求められたことなど一切無い。
大きなソレを頬張らされて、むせそうになるが頭を掴まれて吐き出すことも出来なかった。
「舐めるんだ、ゆっくりと」
「んんっ、ん…かはっ、んはぁ…っ」
遊星に言われるままはそれを上下にしゃぶる。
びくびくと口の中で跳ねるそれが不思議だった。
しかしちろりと上目遣いに遊星を見ると、目を伏せて気持ち良さそうな表情をしている。
心なしかほんのりと目尻も赤い。
こんな興奮したような遊星を、は見たことが無かった。
知らず自分の体もじんわりと熱を帯びる。
「はぁっ、んはぁっ…ん、む…っ」
「そうだ…ああ、上手いな。何処かで覚えてきたのか?」
「そ、そんなことしな…、し、してません…!」
いきなり危うく敬語を忘れそうになり、慌てて言い直す。
「…ご、ご主人様、だけれす…ん…っ」
口を動かしながら言うと、遊星は少しだけ苦しそうな表情をする。
どうかしたのかな、と思っていると口の中の遊星が少し大きくなった気がした。
「んっ!?…んはっ、おっき、い…」
ぬるんと口から出してぺろぺろと先端を舐める。
じわりと溢れるしょっぱい何かを舐め取っていると遊星が熱い溜め息を吐いた。
「っ、はぁ…っ、俺を上手く誘惑する牝犬だな…ほら、ご褒美、だ…っ」
少しだけ腰を引いて、反るほどに勃起したソレを上下に扱いた。
「きゃんっ!!」
途端、遊星の先端からびゅるっと勢い良く白濁液が噴き出し、は本当に犬のような声を上げてしまった。
噴き出す遊星の精液がの顔をべっとりと汚す。
「くっ…」
続けてびゅく、びゅくっとの顔に向かって射精を繰り返す遊星。
熱い遊星の体液を受けながらも体をびくびく震わせる。
絶頂に達したわけではなかったが、興奮が収まらなくて。
全て出し切った遊星が軽く顔を拭ってくれた。
「あ、ありがとう、ございます…」
「そのままだと続きが出来ないからな」
言って遊星はちろりとドアの方を見た。
「次は散歩と行くか。顔も洗わせてやる」
「え、さ、散歩って…」
この部屋から出るというのか。
驚愕の表情を見せるに遊星は意地悪く笑って見せた。
散歩。
と、いうことは部屋から出るということだ。
思わず背筋を冷や汗が伝う。
「…さっきから気になっているんだが」
「はい…?」
「尻尾が無いな」
ぽつりと言った遊星。
しかし玩具箱には尻尾など無い。
確かにそういう装飾を施された玩具もあるけれど、残念ながらは持っていなかった。
「これで代用するか」
玩具箱から取り出されたのは小さなローターである。
まあ確かにコードが繋がっているから、代用出来なくも無いか。
「その場に膝を付いて伏せるんだ」
「…はい…」
言われた通りに遊星の前で四つん這いになる。
すると遊星はベッドサイドの引き出しを開けた。
「…?」
「いつか使ってやろうと思っていたが、こんなに早く使える日が来るとはな…」
呟きながら取り出されたのは小さな瓶。
ローション?かな?
「何ですか、それ…」
「直ぐに判る」
言うなり遊星は瓶の中身を直接の尾てい骨の辺りに垂らした。
「ひゃんっ!」
冷たい液体が腰の上に滴る感触に思わず声をあげてしまう。
それはの尻の丸みをゆるゆると伝い、流れた。
割れ目を辿ったものもある。
雫が伝う感触がくすぐったくて、は身じろいだ。
「ん、やぁ…くすぐったいです…」
ふるりと体を震わせて、は遊星を見上げる。
瓶を持つ遊星は満足げである。
用の済んだ瓶の蓋を閉め、グローブを外してするりとの腰の辺りを撫でた。
「んんっ…」
優しく触られるとくすぐったさと共に甘い疼きが生まれてくる。
しかしそうやって体を震わせるを余所に、背骨をつうっと指先で撫で下ろした遊星は、先程の液体に濡れたの尻の丸みに到達していた。
「あっ…!う、嘘…」
遊星の指先が尻の割れ目を掻き分けて潜り込んで来た。
そしてその到達点が…。
「っ、い、嫌です!そこは…っ!」
そう、いつも遊星を受け入れている場所じゃなくて。
「、俺の命令は?」
「…ぜ、絶対、服従…です…」
「イイコだ」
「で、でも…うぁんっ…!」
先程遊星が何故あんなローションをの体に流したのか漸く合点がいった。
これの為だったのだ。
そこは誰にも、自分ですら弄った事などなくて。
撫でられるだけで死んでしまいそうなほど恥ずかしい。
「はぁっはぁっ…やぁぁ…ごしゅじんさまぁ…っ」
気遣うくらいにはゆっくりとしかし確実に遊星の指が埋まる。
最初は撫でるように解していたものが、くぷりと。
「うっ、あ…」
異物が入ってきた感覚にの体がびくっと跳ねる。
痛くは無い。
だけど…。
「は、っ、あ…やだぁっ…」
感じたことも無い異物感にぞわぞわと体が粟立った。
しかし遊星は構わず指を蠢かせる。
「んんっ!」
しかし何故だろう。
遊星の指を飲み込んだ瞬間は、どちらかというと不快な異物感だったはずなのに。
じわじわと下腹が疼くような感覚がする。
それはどちらかというと性感に近くて、は戸惑い視線を泳がせた。
「はぁ…っん…これ、なに…、はぁぁ…あぁぁっ…!」
遊星が埋め込んだ指を動かすと声が出てしまうくらい感じる。
嘘だ、有り得ない。
「うあ…はぁっ、あぁぁ…」
「気持ち良くなってきたみたいだな」
含み笑いが混ざった声で遊星がに言った。
「ごしゅじんさま、これ、なに…あはぁぁっ…!!」
指を出し入れされると排泄感にも似た感覚と、強い快感がを襲う。
足ががくがくと震えてきて体を支えるのが辛くなってきた。
「さっきのローションには催淫剤が混ざっている。効いてきたようだな」
「やぁぁっ、だめ、ごしゅじんさまぁぁ…、ゆび、指増やしちゃ…っ」
二本目の遊星の指が挿入され圧迫感が更に増す。
なのに体はじくじくと熱く、足の間がぬかるんできたのが分かった。
子宮の奥が脈動するように収縮を繰り返す。
遊星の責めは容赦ない。
埋まりこんだ二本の指は中を広げるかのようにいやらしく蠢いている。
「はぁっはぁっ…もう、許してくださいぃぃ…ごしゅじんさまぁ…っ」
腕が震えて体を支えきれないは床に頭を擦りつけながら懇願した。
「…まあ、最初だからこれくらいにしておいてやるか。さあ、尻尾だ」
尻尾!
そうだった。
遊星が何故こんなところを弄くったかと言えばそのためだ。
「可愛い犬に痛い思いをさせるのは可哀想だからな…」
「えっ…?あっ、やだぁ…っ!」
またしても冷やりとした液体の感触。
遊星の二本の指がの秘孔を押し広げて、そこに先程の催淫剤をたっぷりと塗りつけられたのである。
「はああぁぁ…っ」
途端にの体温が跳ね上がった。
遊星はそのままの中にローターを埋め込む。
指よりも僅かに太いそれをの体はつるりと飲み込んだ。
催淫剤の効果で何倍も体は敏感になっているのに、遊星は玩具のスイッチまで入れてしまう。
「あーっああぁぁっ!だめぇぇええっ!!」
文字通り跳ねるようには体を痙攣させた。
そんなに強い刺激ではないはずだが、中で震える猥褻な機械が鋭くの体を駆け抜ける。
絶頂を感じたわけではないのに、はぐじゅっと愛液を滲ませた。
溢れた愛液は内股を伝い滴り落ちる。
それを見て遊星は満足そうに口の端を吊り上げた。
「嗚呼、ここはこんなにいやらしく口を開けて涎を垂らしているな…流石は俺の犬だ。さあ、散歩に行こう。終わったら可愛がってやってもいい」
「はぁっ…はぁっ…」
決定的な快感を与えられないままの体は、快感を求めての中でわだかまる。
早く遊星が欲しい。
ここに遊星の逞しいアレを埋め込んでぐちゃぐちゃかき回して欲しい。
普段のセックスからは考えられないくらいは遊星を欲していた。
だけど、遊星の命令は絶対である。
「さあ」
遊星が立ち上がりリードを乱暴に引っ張った。
震える腕をついては体を起こす。
この姿で廊下に出る…。
ああ、もしかしたら誰かに見られるかもしれないのに。
「はぁぁん…」
びくびくと腰が震える。
異常なこの遊びがとんでもなくを感じさせていた。
遊星にリードを引かれるままにドアを出た。
この時間にこのフロアにいるものは基本的にいない。
大抵仕事や作業でガレージにいる。
が、トイレはこのフロアにあるし、全員の私室もこのフロアだ。
何時誰が上がってきてもおかしくない状況である。
「ん、は…はぁ…あぁぁ…」
震える足でゆっくりと遊星について行く。
ふと、遊星が足をトイレの前で止めた。
「…ご主人、さま…?洗面所は…隣です…」
「部屋で粗相されては困ると思ったんだが…」
「!」
見下ろす遊星の好奇心に満ちた目!
は慌てて首を横に振った。
「だ、大丈夫です!!全然!大丈夫ですから!!」
これ以上恥ずかしい目に遭っては堪らない。
「そう、か?」
「はい!なのでここに用はありません!!」
「…」
残念そうな顔で遊星は隣の洗面所のドアを開いた。
「まあ、今日のところはいいか」
恐ろしい呟きと共に。
今日のところはって…。
は身の凍る思いをしながら洗面所に入る。
「さて、と…」
洗面台でタオルを濡らした遊星が、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
丁度、視線の合う位置。
「嗚呼、可愛いな…。そんなに物欲しそうな顔は初めて見る…」
嬉しそうに呟きながら優しくの顔を濡れたタオルで拭う。
ある程度は拭ったけれど、多少の違和感はあったから拭いてもらうと気持ちが良くてはくすぐったそうに目を細めた。
物欲しそうなのは当然だ。
の中の玩具はずっと彼女を苛み続けている。
ぞくぞく込み上げる快感が下腹の奥に渦巻いているようで、早く遊星に犯されたいと悲鳴を上げているのだから。
「ご主人様…キスしてください…」
目の前に遊星がいる事に我慢できずは頬を染めながら請う。
「お願いします…ご主人様…」
「…、」
遊星は優しく名前を呼ぶと、ふわりと唇を重ねてきた。
それは先程のキスとは全然違う。
優しくて蕩けそうな…。
「んっ、ん…は、ぅ…ん…」
ちゅくちゅくと音を立て優しく口内を舌で撫でられる。
ただでさえ興奮している体が更に熱を帯びてきた。
角度を変えてたっぷりと舌を絡め合い、互いの味を堪能する。
「んはぁっ…」
遊星が離れては息を吐いた。
柔らかく吐息が混じる。
「…!」
「わっ、ちょ、ご主人様…!」
急に、遊星がを抱き上げた。
そして足早に部屋に戻る。
ベッドの上に放り出され、は小さく悲鳴を上げた。
「なっ、急に…どうしたんですか…?」
ジャケットを脱ぎ捨てた遊星が圧し掛かってくる。
「可愛い奴め。俺をあんなに誘惑して、責任は取ってもらうからな」
「あ、んっ…ん!」
覆いかぶさってきた遊星がに改めて口付けた。
貪るように口内を遊星の舌が撫で回す。
「はぁん…ごしゅじんさまぁ…」
熱いキスにはぞくぞくと腰を震わせた。
もう疼いて仕方が無い。
そんなの膨らんだ乳首を遊星はきゅうっと摘み上げた。
「あ!はぁぁ…っ!」
焦らされていた体に直接的な快感が走る。
電流が流れたかと思うほど、刺激的で鋭い快感が。
きつく指先で捏ね回されては背中をしならせて悶える。
「ああんっ、ごしゅじんさまっ、イイ…っ、気持ちイイですぅ…っ!」
「いやらしい牝犬だな…こういうのはどうだ?」
掬い上げるように持ち上げられた胸に遊星が唇をつける。
ねろりと舌がいやらしく這う。
敏感な乳首をちゅう、と吸い上げられると普段からは考えられないくらいの快感に身を捩った。
普段の愛撫だって遊星は同じ事をしているのに、こんなにも感じ方が違うなんて。
秘孔に埋め込まれた玩具がそれを増幅させている。
もっと欲しい。
は遊星に強請るように、彼の頭を抱いた。
「はぁぁ…、あぁんっ…!」
胸に顔を埋め遊星はの求めを素直に受け止めてやる。
舌で柔らかく円を描くように捏ねるとの声が高くなった。
軽く吸っては舌で捏ねるのを繰り返していると、の膝がその先を急かすように遊星の腰を強く挟み込む。
「そういえば、今日はまだ触っていなかったな」
顔を上げた遊星が意地悪く笑って臍の辺りを撫でた。
「ひゃぁぁっ!」
ずくんと脈打つような疼きがの足の間に走る。
忘れていた催淫剤の感覚が体の奥に蘇った。
「どんなことになっているのか楽しみだ」
つう、と指先が下腹を辿り、ふっくらとした丘の上をなぞる。
「あ、あぁ…」
は恥ずかしいのか頬を赤く染めるが、その声には期待の色が滲んでいる。
「随分嬉しそうだ。そんなに触って欲しかったのか」
の喜びの気配を感じ取ったのだろう。
丘の上で遊星の指がぴたりと止まる。
そのまま割れ目を辿らせて欲しいのに。
「じゃあ、俺に教えるんだ。何処を、触って欲しいのかを」
「っ…!」
意地悪くニヤリを笑う遊星には目を見開いた。
命令は、絶対。
はかぁっと顔を赤くする。
「さあ、」
「あ、ああ…」
遊星は酷薄な笑みを張り付かせたままだ。
そんなことを言わせようとするなんて。
「やぁ…っ、そんな、ご主人様…」
両手で顔を覆い首を横に振る。
しかし遊星は殊更低い声で。
「俺の命令が聞けないのか?お仕置きが好みなら、それはそれで構わないが」
「!」
びく、との体が震え上がった。
「そうだな…。暫らくこっちを犯そうか…」
尻尾の代わりが埋め込まれた後ろの孔を遊星がなぞる。
「これを埋めたときも気持ち良さそうだったしな。案外…いいかもしれないな…?」
「ひぁ…っ」
言いながら遊星は玩具のコードを引っ張った。
一瞬の抵抗の後、にゅるりとそれはの体から排出されようとする。
排泄感に似た感覚が催淫剤の効果で快感としての体を駆け抜けていく。
「くぅぅぅんっ…」
ずるんと抜き出されたそこを遊星の指が撫でる。
また押し広げようとするかのように。
「ここを犯されたいなら黙っていればいい」
つぷり。
遊星の指先が軽く埋まるのを感じては思わず声を上げた。
「ま、待ってください…!」
の制止の声に遊星は期待に満ちた目を向ける。
ああ、請う台詞を想像するだけで恥ずかしさで如何にかなりそうだ。
落ち着こうと深く息を吸い、しかし遊星を直視出来ないのだろう。
両手で顔を覆いながら。
「……ご、…ご主人様…私の、私の…ク、リトリスを触って、ください…お、お願いします…」
つっかえながらもはっきりと告げた。
思い通りになり遊星は非常に満足である。
「嗚呼、いい仔だ。望みどおりにしてやる」
そう告げた遊星は、優しくの求めどおりに指を埋め込んだ。
「はぁぁ、…あぁんっ!」
愛液に溢れるそこを遊星の指が軽くひっかくように触れる。
「やぁっ、ごしゅんさまぁっ!だめ、だめです…っ!イっちゃうぅぅ…っ!!」
それでなくても堪らない快感を与えられ続けていたというのに、散々焦らされ苛められた体はその軽い刺激だけで簡単に絶頂に達してしまう。
は嬌声を上げながらがくがくと体を震わせた。
しかし遊星は手を休めない。
絶頂後の余韻に震えるを更に苛むように膣口に指を埋め込む。
そこはきつく収縮を繰り返し、遊星の指を咥え込んだ。
遊星は想像する。
今此処に自身を埋め込んだら最高に気持ち良いだろうと。
蜜を湛え、物欲し気に口を開けたり閉じたりしているこの中を思う存分犯したら、これ以上無い充足を得られるだろうと。
嗚呼、に欲されたい。
その口で犬らしくはしたない願望を口にさせたい。
ぐちゅぐちゅと指で中を掻き回しながら遊星は荒い息を吐いた。
「あっあっ…!」
散歩の前には遊星によって膣の中を掻き回されたいと望んでいた。
今、遊星の指がそれを成している。
しかしそれでは満足出来ない。
遊星のアレで…ペニスで深く抉って欲しいのに。
二人の思惑がある程度の重なりを以ってシンクロする。
そして先に口火を切ったのはだった。
「はぁっ、はぁっ…ごしゅじんさまぁ…、ごしゅじんさまが欲しいんですぅ…、お願い、お願いします、ごしゅじんさまぁ…!」
絶頂の余韻も抜け切らぬまま立て続けに快感を与えられての意識が混濁する。
もう遊星が欲しくて仕方が無い。
きゅうんと疼く子宮の奥まで思い切り突き上げられたい。
「は、ははっ…、じゃあ、もう分かるだろ…?何を何処に如何して欲しいか言うんだ、…!」
ぐぷっと遊星はの中に深く指を差し入れた。
「はぁんっ!」
びくっとが背中をしならせその指をきゅうきゅう締め付ける。
そして熱に浮かされたように自分で花弁を押し広げながら。
「ココ…っ、膣の中に、ごしゅじんさまのおちんちん、ずぶずぶっていれて下さいぃっ…!!指だけじゃ満足出来ないのォ…!!」
もう何を言っているのか正常に判断できないのだろう。
自分が如何に卑猥な事を遊星に請うているのか。
しかし遊星はこれ以上無い充足を感じていた。
性急な動作でベルトを引き抜き、十分に勃起したものを取り出す。
「これだな、これが欲しいんだな?」
「はぁんっ、そう、それ…!早くぅ…!!」
「ああ、しっかり味わうんだ…!」
の足を抱え上げ、遊星は一気に彼女を貫く。
「あぁぁぁ!」
途端にびくびくと跳ねるの腰を押さえつけ、遊星はすぐに律動を始めた。
お互いに求めた刺激が相乗効果を持つかのように体を熱くさせる。
「はぁっ!あぁ!良い、気持ちイイっ…!!」
「う、く…っ…」
ぬちゅぬちゅと絡みつくの内壁が遊星をじりじり追い上げていく。
は遊星の肩に爪を立て、背中をしならせては髪を乱した。
ぎしぎし軋むベッドが行為の激しさを物語る。
「あはぁっ!だめぇ、っイく…っ、イくぅ…っ!!」
の中がきつく締まる。
「あああっ!!」
続いて白い喉元を仰け反らせて体を硬直させた。
びくんびくんと内壁が震え、遊星をぎゅうううと締め付けた。
「っ、はぁ、っあ!…出すぞ…っ」
の絶頂の刺激で遊星も腰を震わせる。
押さえ込んでいたものを解放する快感が遊星を支配した。
「あ、あぁ…はぁぁ…」
中で脈動する遊星の感触には溜め息を付いた。
今までしたセックスの中で一番気持ちのいいセックスだった。
きっと遊星も同じように感じているはずだとは思う。
「はぁ…、ねぇ、ご主人様…そろそろ名前で呼んでも良いですか…?」
セックスの余韻が残る頭ではぼんやりと問うた。
あたし、ちょっとMなんです。
でも彼氏もちょっとSだったみたい。
「え、誰もいないの?」
あまりにも体がぐちゃぐちゃだったので、遊星と風呂に入りながらはきょとんとした。
「当然だろう。誰かに見られたらどうするんだ」
ずっと私室にいたは知らなかったが、今この家からは全員が出払っているらしい。
家には遊星との二人きりしかいなかったのだ。
だからあの散歩を遊星は実行したのである。
「なぁんだ。すっごいビビって損した。はぁ…でも遊星すごく意地悪だった…」
うっとりとが呟く。
普通ならうっとりするのは間違いであろうが、残念ながらの性癖は普通ではない。
「凄く感じていたな」
「だって、すっごい苛めるんだもん!でもすごく良かった…。改めて遊星大好きって思った…」
ほぅっと溜め息を吐くを遊星は抱き寄せる。
そして…。
「次はどうやって苛めてやろうかとそればかり考えている」
「…もう、エッチ…あ…」
緩やかに遊星の腕がに絡みついた。
そして緩く首元に噛み付く遊星。
「はぁん…遊星…」
とろんと蕩けた声ではそっと遊星の首に腕を回し、唇を重ねあった。
ざぶ、と湯船が音を立てて揺らぐ。
楽しい時間はまだ終わらないらしい。
終