ウルトライダー


初秋の正午を回った頃。
からりと晴れて世間的には行楽日和といったところであろうか。
然程木々は紅葉しているようには見えないが、まあ出かける理由など何でも良いのだろう。
要は楽しいか否か、そこが重要なのだ。
「…」
そして今、は出かけている最中であるが全く楽しいとは言えない気分だった。
重い足取り。
「…はぁ…」
無意識に溜め息が漏れる。
とぼとぼと向かう先が見えてきた。
広場の先の時計屋。
隣の喫茶店に今日はジャックの姿はない。
もしかしたら家に居るのかも…まあ別にいてもいなくても構わない。
今、には他人に構っている余裕など全く無くて。
自分が世界の中心であり、自分が全ての基準である…そんな気分だった。
シャッターが開いている事を遠目に確認し、そこに早足で向かう。
スロープを降りた先には、いつもどおりの光景がを出迎えた。
「遊星、一人?」
不躾に声を掛けられた遊星が顔を上げる。
。どうしたんだ、急に」
「…部屋貸して」
言いながら早足でガレージの中を抜けた。
遊星の返事も待たずに階段を昇り始める。
別に良いのだ。
だって今世界は自分を中心に回っているのだから。
遊星はその後姿に声を投げる。
「好きに使えばいい」
「ありがと」
ほら思い通り、やっぱりあたしが世界の中心でしょ。
はそんなことを心の中で呟いて、遊星の私室に向かった。
廊下は薄暗く、しんと静まり返っている。
真っ直ぐに遊星の部屋に入ると、は羽織っていたカーディガンを脱いで床に放り出し、遊星のベッドにダイブした。
「………」
ぶつぶつと何事かを呟きながら横たえた体を丸める。
その姿はこの世界の中心人物とは到底思えない。
だけど、そうやって自分を慰めでもしないと、今にも見えない何か昏くて穢いものに沈み込みそうで。
は遊星の布団をぎゅっと掴んで深い溜め息を吐いた。
そうしている間に廊下を歩く音が聞こえてくる。
「…」
きっと遊星だ…と、が思った瞬間にドアを叩く音が聞こえた。
自分の部屋なのに、ノックするなんて変な感じ…。
しかしは返事もしない。
ドアの外の人物は、暫く返事を待っていたがやがてドアを開けた。
「…、何かあったのか」
「…」
はドアに背中を向けていたが、入るなりの質問の声でやはり遊星だと分かる。
「遅いよ」
しかし質問に答えることもなくは遊星を責めるような声を出した。
「すまない」
「…良いから、こっちに来て」
世界の中心人物は背を向けたまま尊大な態度で遊星に命令を下し、それを遊星は聞き入れてゆっくりとに近付いた。
遊星の気配を傍に感じたは、漸く顔を遊星の方に向ける。
きちんと命令をこなした遊星に対して、失礼なくらい非常に不機嫌そうな表情である。
「隣に寝て」
「…」
ふてくされたような表情をしている割に可愛らしい要求に、遊星は笑いを堪えながら命令に従った。
遊星の体重でベッドが沈み込む。
「…嫌なことあった」
見れば分かるが口にはしない。
代わりに無言で頷いてやる。
「…ゆうせいぃ…」
甘えた声で遊星を呼んで、は遊星の胸に顔を埋める。
ぎゅうううっと絡みつくように抱き付いてきた。
「慰めてよー。体で慰めてよー」
「それは構わないが、何があったか話してからだ。どんな嫌なことがあったんだ?」
「…女の愚痴なんか聞いてもつまんないよ?」
ふっとが顔をあげる。
先程までの不機嫌そうな表情は成りを潜め、今は少し頼り無げに眉をハの字に下げている。
そんなに遊星は首を振って見せた。
「いいから。話してくれ」
「じゃあ、ちょっとだけ聞いてくれる…?」
控え目に呟くと、は口を開いた。



「…ってわけであいつ言いたいことばっかり言ってさ!!だからそれする為に人員増やしてってこっちは頼んでるのに!ループしてるの!分かる!?」
「…ああ」
「もー絶対残業なんかしてやらない!ってか辞めちゃおっかなって一瞬本気で考えたよ。…でも辞めらんないんだろーなぁ…好きでやってるもんなあ」
はあ…とは溜め息を吐いた。
たっぷり10分は喋り続けただろう。
その間遊星は口を挟むことなく相槌だけで、の全ての話を聞いてくれたのである。
「…何か、ごめん遊星。聞いてもらったら軽くなったかも」
「…そうか。良かったな」
「ん…。約束もしてないのに突然来ちゃってごめんね」
申し訳なさそうに謝るに遊星は首を横に振って見せる。
「全然構わない。に会えるのは凄く嬉しいからな」
「ふふ、ありがとう。遊星大好き」
にこ、と微笑んでは遊星の頬にふわりとキスをした。
「つまんないこといっぱい聞かせてごめんね。作業の邪魔しちゃったね。あたし帰るから、遊星は作業に戻ってよ」
「何を言っているんだ、?まだ何も終わっていないじゃないか」
「えっ?」
はきょとんとして遊星を見た。
たくさん話を聞いてもらって、これ以上愚痴を聞かせるつもりもない。
既に用事は済んでいるが…?
ハテナマークを浮かべるに遊星は普段通りの表情で告げる。
「俺に慰めて欲しいんだろう?体で」
「ええっ、いや、それはもう片付いちゃってるんだけど…」
話を聞いてもらって正直もう最初程の絶望的な気分など何処にもない。
遊星に愛してもらって忘れようとしていたが、不要な程にすっきりした気分である。
しかし遊星はきつくを抱き締めたままにやりと意地悪く笑った。
「悪いが、俺の方は全く片付いていないんだ」
ぐっ、と腰を押し付けられた。
「っ…!」
「分かるだろ?」
いやらしく笑って遊星はの尻を掴んだ。
「きゃんっ!」
思わず声をあげてしまう。
好色な手つきで尻を撫で回しながら、遊星はの首筋に顔を埋めた。
遊星の吐息が微かに肌をくすぐり、は仰け反るように白い喉元を晒す。
「あ、ん…遊星…」
小さな声で名前を呼べば、返事の代わりに無防備になった首筋を甘く咬まれた。
「っ、う…!」
僅かな痛みにはびくんと体を震わせる。
小動物を彷彿とさせる反応が非常に可愛らしい。
それを見ていると、遊星はもっとを苛めたくなっていまうのだ。
、凄く可愛い」
ちゅ、ちゅ、と頬や首筋に何度もキスを繰り返しながらの尻の感触を堪能していた遊星は薄く笑う。
そしておもむろにの手首を掴むと、思い切り反応している自らの股間にの手を押し付けた。
「やぁっ、何するの…っ!?」
服越しではあるが、勃起した遊星のアレを触れさせられてはかあっと顔を赤らめる。
「触ってくれないか…?」
「さ、触ってって…そんな、の…」
耳元で興奮気味に囁く遊星の声がいやらしい。
普段、遊星からこんな下品な要求などされたことなどなくて。
だけど服越しの熱い感覚とその質量は本物だ。
セックスの時に見たことはあっても、触ったことは殆どない。
の好奇心が少しだけ顔を覗かせた。
「…こう…?」
押し付けられた指先を動かして、形をなぞるように辿らせてみる。
男性は確か上下に擦るのか気持ち良いんだっけ。
は服越しに遊星自身を上下に擦る。
そうすると掌の中でソレがびくびくと跳ねる感覚が伝わってきた。
「っ、…はあ…、が俺のモノを触っていると思うと興奮する…」
「さ、触らせたんでしょ…!」
「なあ、直接触ってくれないか…?」
「えぇ…っ?!」
更なる要求に、が思わず手を引っ込めかけるのを遊星は手首を掴んで阻止した。
ついでに欲望のままに、その手をぐりぐりと股間に押し付ける。
その行動に、はまた顔を赤くした。
「遊星、分かったから…放して…!」
が了承を示すと遊星は薄暗く笑んで、の手を離す。
「…」
は無言で遊星のベルトに手を伸ばした。
手探りだから上手く外せない。
手間取っていると遊星が手伝ってくれた。
しかしそれは触れるという行為を急かされているような気がして。
だって今から遊星の服を脱がさなければいけない。
震える手で遊星のズボンのトップボタンを外す。
「嗚呼…早く、…待ちきれない…」
「っ、!」
熱い吐息と共に耳元でうっとりと囁かれ、は腰に冷たい快感を感じた。
欲情で掠れたいやらしい遊星の声。
促されるようにファスナーを下ろす。
そして下着ごと遊星のズボンを押し下げた。
「…触る、よ…?」
取り出されたソレの先端を掌に包むような形できゅっと握る。
「うっ…」
びくっと遊星が体を震わせて呻いた。
それは何だか可愛くて、はゆるゆると手で弄ぶようにそのカタチを確かめる。
男性器を直接触るのは初めてで、時折ぴくっと跳ね上がるのが不思議だった。
「はぁ…あぁ、が俺のを触ってる…」
「いっ、言わないでよ…」
改めて口に出されると凄く恥ずかしい。
それも興奮に掠れた声で囁くから尚更だ。
は顔を赤らめて、遊星への戒めの意味も込めソレをぎゅうっと握り込んだ。
「はああぁっ…」
途端にびくびくと遊星の腰が震える。
手の中の遊星自身も少し質量を増したようだ。
「おっきくなった…?遊星、気持ちいいの?」
「ああ…」
浅く息を吐きながら少しだけ顔を顰めて見せる遊星。
…可愛い。
は遊星を握り込んだまま、手を上下させてみた。
「…うっ、あ、…」
「男の人ってこうしたら気持ち良いんでしょ?」
やや拙い動きではあるが、遊星にとっての小さな手が自身を扱いていると言うことが重要だった。
倒錯した気分が、の与えてくれる刺激を何倍にも膨らませる。
「はぁっ…嗚呼、がしてくれていると思うと凄くイイ…」
切なげな溜め息が色っぽくてはかあ…っと頭の中が熱くなった。
もう少し聞きたくて続けてみる。
「…っは、…あ、あぁ…っ、…」
「遊星…エッチな声だね…、そんなに気持ち良い…?」
少しずつ遊星の先端がぬるつき始めた。
にちゅにちゅといやらしい音が小さく響く。
ぬるむ感覚がの手のスピードを上げさせる。
「はあ…っ、あっ、ああ!」
しかし声を上げ、ぶるっと体を震わせた遊星が、いきなりの手を掴んでしまった。
「あれ、遊星…?」
「これ以上されたら、出る…」
「いいよ…?あのままでも…」
の言葉に首を振る遊星。
「出すならの中が良い」
そう言っての体を組み敷いてキスをする。
「んっ…」
唇を割り侵入してくる遊星の舌を受け入れて、混じり合う唾液を飲み込んだ。
口の中に広がる遊星の味にぞくりとする。
「ふ、う…っ!」
角度を変えながらたっぷり与えられ、離れる時には銀の糸が互いの唇を繋いでいた。
「遊星…」
「…次は俺がを気持ち良くする」
言って、の服を取り払い、そして自分も服を脱いだ。
するりと裸にされたは恥ずかしそうに腕で体を庇うが、遊星によって制止される。
裸の遊星の体が重なって素肌が密着する感触にどきどきした。
遊星はの手首を掴んでベッドへと縫い付ける。
そのままじっと見下ろされては居心地悪く身じろいだ。
「あんまり、じっと見ないで」
今更だが、良く晴れた秋の真っ昼間。
明るい部屋での体を隠してくれるものなどなかった。
こんな時間から部屋に籠もって体を重ねているなんて。
淫蕩に耽るのはいっそ不謹慎な気分にすらなる。
「何故だ。こんなには綺麗なのに」
「やっ、馬鹿…!」
ふわっとの肌が仄かに染まる。
「それに、凄く…美味そうだ…」
言うなり遊星はの胸にかぶりついた。
唇で甘く 食むように愛撫されて、本当に食べられているかのような錯覚を感じる。
「はぁんっ…!」
遊星によって手首を押さえられているため自由が少ないが、それでも湧き上がる快感がの体を跳ねさせる。
「あぁぁ…っ、遊星…!んっ、あっ…あぁぁあ…」
遊星の舌先がぬるりと乳首を捏ね回し、時折ちゅううっときつく吸い上げられた。
吸い上げられたそこは膨らんで敏感になる。
それを舌先が弾くように往復して、その度に背中がしなる程の快感が生まれた。
「はぁっ、あぁっ、イイ…気持ちイイの、遊星、…っ!!」
きゅうんと体の奥が切なく震える。
無意識には腰を揺らめかせながら遊星の腰に自らのそれを押し付けていた。
自身を強請られているようで、遊星は密かに劣情を募らせる。
もう痛いくらいのソレが更に膨らむのが分かった。
「欲しそうだな…。そういうお前も凄く可愛い…」
「え、…あぁぁぁあっ!」
散々弄んだ乳首を改めて口に含んだ遊星は、更に秘部にまで指を伸ばした。
迷わずぬかるみの中を掻き分けて一番感じる突起を探り当てる。
「やぁああっ!だめぇっ…そんなの、っ!感じすぎちゃうぅぅ…っ!!」
遊星の背中に思い切り爪を立てて声を上げる
感じやすい両方を攻められ、信じられないくらいの快感の波がを飲み込む。
「こんなっ、はぁっ、あぁっ…!もうイくっ、イく…っ!!」
胸を愛撫する遊星の頭を抱えるように抱き、は絶頂を迎えた。
ぎゅうううと胸を押し付けられ苦しいが、自分に触れる柔らかな感触がの胸だと思うと堪らない気分になる。
そんなにも触って欲しいのかと思わず都合良く解釈してしまうくらいに。
絶頂の快感に震えるがベッドの上に体を投げ出した。
荒い息を繰り返してぐったりとしながら時折余韻にぴくっと体を震わせる。
それをじっと見下ろす遊星の視線。
「はぁ、っ、やだ…見ない、で…」
恥ずかしそうに頬を染め両手で顔を覆う。
ああ、何て。
「隠さなくていい…。凄く可愛いな…もう我慢できない」
顔を隠す手を優しく剥がしてちゅ、と軽くキスを落とした。
そしての足を抱える。
「っ、ゆうせ、…っ」
イったばかりで敏感に震える膣に遊星の勃起が一気に打ち込まれた。
「あぁぁぁあっ!」
「う、っ…はぁあ…っ、っ、凄く熱い…!」
待ちきれないとばかりにそのまま腰を使い始める遊星。
先程の手で愛撫されて以降、欲望を募らせていた遊星には当然の行為だった。
「…、はぁ、はぁっ…イイ…!」
「やぁっ、激しいよぉ…っ!あたし、またイく!」
ぐいぐいと腰を押し付けられては出し入れをされて、は二度目の絶頂を迎える。
「あーっあぁぁあっ!」
「あぁっ、出る…っ!」
ぎりぎりまで腰を押し付けて、遊星はの中に欲望を吐き出す。
脈動する感覚にはゆっくり体の力を抜いた。
しかし。
「え、ちょ…っ、ゆう、せい…?」
器用に遊星はの体をひっくり返すと、力の抜けた腰を抱え上げた。
「はぁっ、やだ…っ、何…!?」
後ろから犯されるような体勢を取らされては戦く。
怖いことにの中の遊星自身が全く衰えていない。
「愛している、…もっと俺を受け止めてくれ…」
体をかがめた遊星が耳元で囁いた。
そしてそのまま後ろからを突き上げ始める。
「やぁぁあっ、も、だめぇ…!!あっ、あっ!」
しかし二度もイかされた体は敏感で、与えられる遊星からの熱い楔に反応し、体の奥がきゅうっと収縮した。
「あぁ、すご、い…っ、…締まる…っ」
誘われるように遊星は律動のスピードを上げていく。
ぎしぎしベッドを軋ませて夢中での中を掻き回す遊星。
出し入れの度に先程放った精液が結合部から溢れ、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てていた。
「はぁっ、ゆうせぇ…っイイ、イイよぉ…っ!はぁあ、気持ち良すぎて壊れちゃうよぉぉ!」
「いい、ぞ…俺のことだけ、考えればいい…っ!、…愛している…っ」
「あたしもっ、あはぁぁっ、大好き…遊星っ、愛してる…!!」
を掻き抱いて突き上げる。
胸を鷲掴みにし、首筋に顔を埋め、本能が訴えるままにを犯した。
「激し、っ、イくっ、遊星っ、イっちゃう!」
「っは、俺も、だ…!、一緒に…っ!」
絶頂の予感を訴えるを遊星は更に深く突き上げる。
「んっあっ、やぁぁあっ!イくイく!あぁぁぁあっ!!」
「あぁっ、…っ、出すぞ…っ、中に出すぞ…!」
がくがくと痙攣するの体を抱き締めながら遊星も二度目の射精をの中で迎える。
先程あんなに出したのに、またしてもたっぷりと吐き出され、の中に収まりきらない精液が結合部から溢れ出た。
腕の中でぐったりとするにそっとキスをすると、はまっすぐに遊星を見つめて。
「激しすぎ…でも、やなことは全部忘れちゃったかも」
と、言い力なく微笑んだのだった。