恋人がいないというものはこんなにも寂しいものかと。
一人寝のベッドに恋人の温もりが無いだけでこんなにも眠れなくなるものかと。
ここ数日ジャックは不機嫌な日が続いていた。
苛々とコーヒーを飲んではカレンダーの日付を睨み付ける。
事の発端はこうである。
「、お前のスケジュールだが、何故ここからここまでが空白なのだ。休みを取れる程、お前達は暇なのか?」
普段通りのやや高慢な態度だが、ジャックだから仕方がない。
こんな聞き方をしてはいるが、ジャックとしてはが休みとなれば一緒に過ごせる時間も増えるから寧ろ歓迎する。
丁度、そのうち水族館でも借り切って、二人でゆっくりデートでもしようと目論んでいたのだ。
水族館を楽しんだらホテルのスイートルームに連れ込むつもりだった。
たっぷり甘やかして、そろそろ敬語もなくなるように躾てやりたい。
幾度となく促している結婚の話も出してやろう。
宥めすかしているうちに彼女がその気になるかもしれない…。
…と、言う壮大な計画を知る由もないは気まずそうに視線を逸らした。
「あ、いえ…。そこはその……三泊四日で出張に…」
「…出張?」
「は、はい…」
ああ、こんな時だけ目聡いんだ。
何にもない振りをしてパッと行って帰ってくるつもりだったのに…。
「何故それを早く言わんのだ」
「ちょっと…その、言いにくくて…」
しかし、途端に機嫌を悪くしたようなジャックに、『ほらー、ジャックがそんなだから言いたくなかったんですよぉ…』などと言える訳もない。
「出張と言うことはこの期間はここには来ないのか」
「はい。来れませんね。出張ですから」
「……」
ぴたりと黙り込むジャックには一抹の不安を感じる。
本気のジャックには理屈も道理も通用しないことは、日々肌で感じさせられている。
一体何を言い出すのだろうとびくびくしていたら。
「…分かった。気をつけて行ってこい」
あれっ。
「は、はい…行ってきます……」
てっきり『俺も一緒に行く』くらいは言い出すと思っていたのだが。
拍子抜けである。
「お、怒ってますか?」
「怒る?別に怒ってなどいない」
恐る恐るジャックを覗き込むに、ジャックは殊の外涼しい顔をしてみせた。
それが逆に怖い。
「ただ、四日もお前がいない分を今晩から埋めようと考えているだけで、な」
「!」
ジャックの言葉にぎくりと体を強張らせるをジャックは抱き寄せる。
そして耳元でとても優しく囁いた。
「今晩からマンションへ帰れると思うな。前払いでたっぷりと穴埋めさせてもらう」
「な…っ」
「そうだな、発つ前夜は帰してやってもいい。出張まであと何日だったか」
「…一週間、あります」
「そうか。では一週間後までお前はずっとここにいろ。いいな?」
「……はい…」
のイエスを引き出したことに、満足げに溜め息を吐いてジャックは部屋を出て行った。
ああああ…。
怒られた方がまだマシだったかも…。
へなりとはその場に座り込んでしまったのだった。
それからの一週間は、普段よりも濃密で、は今度こそ彼に抱き殺されるのではと思ったものである。
しかし、何とか無事に乗り切って、今。
「はぁぁ…疲れた…」
はちろりとカレンダーに視線を移す。
明日、漸く彼の元に帰るのだ。
慣れない場所での警備は気が張って疲れる。
ジャックの傍は大変なことも多いが、それとなく気遣ってくれたり労ってくれたりする。
公にはしていないものの、依頼人が恋人という関係だから二人きりの時は気安くて。
何でもない会話をしながらジャックの膝の上で過ごすのが普通になりつつある。
孤高のキングは、その実寂しがり屋であることには何となく気付き始めていた。
情事の後必ずを抱き締めて眠るのもきっとその延長線なのだろう。
「…でも、人のこと言えないわ…」
今回の出張でジャックとしばらく離れる事を、はさほど何とも思っていなかった。
寧ろ自宅にいる時のように、一人の時間が取れて良いのではとすら思っていた。
それにマンションなら食事や風呂、片付けなどを全て自分で行わねばならないが、出張中のホテルならそれすら人任せに出来る。
何て楽なんだろうと思っていた。
しかし。
「お風呂、入ってしまおうかな…」
バスルームに向かいながら思う。
この膨大な夜の時間の使い道が分からない。
普段なら傍らにジャックがいて、あれよあれよと言う間にベッドへ運ばれて。
そして愛の言葉を目一杯囁いてはどろどろに蕩けさせられる程の甘い時間を与えられる。
以前ろくでもない婚約者と付き合っていた時は、どうやってこの一人の時間を過ごしていたのだろうか…。
もう思い出せないほどにジャックとの生活が体に染み付いている。
お湯を張るのが面倒で、シャワーを頭から被りながらは自分を抱き締めた。
慣らされた恋人との生活。
こんなにも彼が恋しくなるとは思わなかった。
背の高いジャックの包み込むような抱擁が欲しい。
意地悪いことを言うくせにキスをするときは優しい唇で触れられたい。
一言で言うなら会いたい。
贅沢な気持ちを覚えてしまった。
こんなにもジャックがの中で大きな存在になっているのは自身ですら予想外で。
「ジャック…会いたい…」
思わず口をついた言葉に驚くが、幸い聞くものは自分しかいなかった。
「あら?…どうしたの?出勤は明日からじゃない」
真夜中にエレベーターが上がってきて一瞬緊張させられた御影は、現れたに苦笑を見せた。
「ちょっと、気になって…。あと御影にお土産買ってきたの」
「それのためにわざわざ?明日でも良いじゃないの…」
本当に仕事が好きね、と御影は言う。
仕事ではなくジャックが好きなのだが、それは秘密だから口にはしない。
代わりに曖昧に笑って、紙袋を御影に押し付けた。
「ありがとう」
「良いのよ。変わったことはなかった?」
「なかったけど、アトラス様はしばらく機嫌が悪いみたいね。何かあったのかも…」
「そう…。帰ってきた報告も兼ねて、様子見てくるわ」
我ながら口先が回るものだとは思った。
殊勝な振りまでして。
だけど、ここまで来て会わないという選択肢は存在しない。
会いたくて堪らなくて、出勤は明日だと言うのに、マンションにも寄らず此処まで車を飛ばして来てしまった。
はやる気持ちではジャックの私室の方へ向かう。
見慣れた部屋に帰って来たのだな、と少しほっとした気分になった。
ドアをノックするのが何故か少し緊張する。
会いたかったはずなのに照れる気持ちが沸いてきて一瞬躊躇ってしまった。
落ち着こう…。
息を整えて、は控えめにドアをノックした。
「…誰だ」
嗚呼、確かに不機嫌そうな…でも紛れもないジャックの声。
聞きたくて堪らなかった声だ。
「です…。あの、…入っても」
良いですか、と告げる前にドアの中から足音が聞こえた。
そして勢い良くドアが開かれる。
勿論、ドアを開いたのは紛れもないこの部屋の主。
会いたくて会いたくて仕方なかったジャックである。
「ジャッ…」
顔を見た瞬間、嬉しかったり安堵したりして思わず名前を呼ぼうとしたが、その前に物凄い力で部屋に引っ張りこまれた。
バタンとドアが大きな音を立てる。
よろけるをジャックは強く抱き締めた。
息も止まりそうな程の抱擁。
「…ジャッ、ク…?あの…」
「…」
真っ暗な部屋で無言の抱擁にも小さく息を吐いてジャックに体を預けるように力を抜く。
ふと、普段なら絶対に自分からドアを開けたりしないジャックが、声をかけ終わる前にドアを開けたことに気付いた。
彼も寂しいと思ってくれたのだろうか。
きっとそうだと都合良く解釈することにする。
しばらくの抱擁の後、ジャックが少し腕の力を緩めた。
「…出勤は、明日の筈だろう」
「はい…」
「何故、今ここにいる」
ジャックの質問は最もだった。
は出発前に明日までは来ないとはっきりジャックに告げたのだ。
出張から帰って来るのは夜になるから、翌日の出勤までは会えないと。
だから、今ここにがいるのはおかしいのである。
「ジャックに、会いたくて…」
「俺に…?」
「あたし、夜がこんなに長いなんて知りませんでした。ジャックがいない夜が寂しくて…とっても長くて。一人でいる間、貴方が恋しくて仕方なかった…」
「…!」
の思わぬ告白にジャックは目を見開いた。
暗闇に慣れてきたの目にもそれはぼんやりと映る。
しかしは更に続けた。
「愛される幸せを教え込んだ責任、取ってくれますよね…?」
普段からは考えられないような言い方ではジャックを上目遣いに見上げる。
くらりと眩暈を感じながら、ジャックはの言葉を反芻していた。
これは、本当になのか。
頭がなかなか言葉の内容を理解しない。
しかしが自分の愛を請うていることだけは瞬時に理解した。
「…その責任ならいくらでも取ってやろう」
の細い肩を掴み、唇を押し付ける。
「…っ、ふ…」
待ち望んだジャックの唇には震えを感じる程の興奮を覚えた。
優しく唇を割るジャックの舌を素直に受け入れる。
「ん…」
くちゅりと交わる唾液を垂下しながら、はそっとジャックの背中に手を回した。
抱き合えばよりお互いの存在を感じることが出来る。
離れていた合間を埋めるようにとジャックは唇を交わし合った。
「っは…ぁ、ジャック…」
離れていくジャックを惜しむように名を呼ぶを抱き上げてベッドへ運ぶ。
その間も緩やかにジャックの首に腕を回して、甘えるかのようなの仕草にジャックは密かに心拍数を上げた。
こんなにも素直に自分を受け入れているは初めてである。
そっとベッドに下ろしてそのままもう一度キスをした。
「…ふ」
ちゅ、ちゅ…と小さな音を立て啄ばむように優しく触れ、体でをベッドに押し付ける。
「ん、ジャック…」
うっとりと甘い声で名前を呼ぶ。
そんな些細な行動でさえもジャックを煽る要素の一つとなった。
キスの合間に器用にボタンを外したジャックの手が、ブラウスごとジャケットを脱がせ下着も取り払った。
「ふぁ…っ!」
裸の胸にジャックの唇が重なる。
背中を抱き寄せられジャックの熱い舌がぞろりと這う感触には背をしならせる。
「あっ…はぁぁ…、ん…」
体の奥が疼くようなもどかしさに、自分を抱き寄せるジャックの逞しい腕に爪を立てた。
ちり、と感じるその甘い痛みがの存在をジャックに思い知らせる。
いじらしいその様が可愛らしく、ジャックは煽られるままにの体の舌触りを味わった。
「あぁぁっ、ジャック…、ジャック!」
「…、素直なお前は実にいいな」
高まる体温を隠しながら細いの腰を抱き締めて囁いた。
「もっと、味わいたくなる…」
そして仰け反る白い首筋に噛み付く。
「くぅ、ン…っ!あ…っ、なら…もっと…」
ジャックの言葉にふっと熱気を孕んだ流し目で返して、首に腕を回した。
そのままはジャックに顔を近づける。
「もっと、味わって…」
吐息の交じり合う距離で呟いて、はそっとジャックに口付けた。
から与えられるキスは初めてである。
かあっと頭の中が熱くなる。
控え目にの舌がジャックの唇を舐め、ジャックは思い切り興奮した。
思わず彼女の後頭部を押さえて激しく唇を貪る。
「んぅっ…!んっ、んっ…!」
くちゅくちゅと舌を絡めながら掻き混ぜた唾液を緩やかに垂下した。
合間に胸を愛撫する。
膨らんだ乳首を指先で捏ねるとぴくんとの体が跳ねた。
「あぁ…あはぁっ…やぁんっ…!」
頬や、耳、首筋にキスを繰り返して柔く胸を揉みしだく。
じんわりと痺れるような甘い快感がの下腹に熱い快感のわだかまりを作る。
掬い上げるように持ち上げた胸の先端を改めてジャックの唇が含んだ。
「はぁあっ!ジャッ、ク…!」
背筋を駆け抜ける刺激がびくびくとの体を震わせる。
強請るように腰が浮いたのをジャックは見逃しはしなかった。
「いやらしい腰つきだな。お強請りか?」
「や、そんな…っ」
「さっきのように素直に言ってみろ。…お前が望むならどんなはしたない願いでも聞き入れてやる」
「!」
の太股を好色な手つきが這い回る。
内股を撫でられて何かを期待するように体の奥がきゅうんと収縮したのが分かった。
「さあ、俺にどうして欲しいんだ」
言いながらもジャックの指先は掠めるようにの足の間を行き来している。
ぬかるんだ溝を往復する指先は、既にがどうしようもなく感じて興奮している事を理解しているに違いない。
直に触れられないもどかしさと、先を示唆するかのような動きに促されは顔を手で覆った。
このデジャヴを感じるやり取り。
そういえば最初の夜もこうやって下着越しにジャックを請うよう指示された。
あの時は屈服の為に恥ずかしい命令をしたのだろうが、今は本気で請えと言っているようだ。
「さ、触って…、ジャックに…触れられたい…」
「ここを、か?」
ぐう、と下着の上からジャックの指先が溝に埋まり込む。
「んはぁっ!そ、そう…、直に触って…!」
望みどおりの返事を引き出したジャックは満足そうに口角を上げると、のスカートと下着を剥ぎ取った。
そしての腰を抱えあげる。
「…えっ…!?」
てっきりいつものように指で中を掻き回されるのだと思っていたのに、腰を抱えられて体を折りたたまれた。
膝が胸につくような体勢で、ジャックの目の前に秘部を晒す格好にさせられる。
「やっ、嘘…っ、ジャック、やだぁっ、見ないで…!!」
思わず拒否を口にする。
しかしジャックがその言葉を聞き入れるはずも無い。
愛撫に感じ愛液に濡れる秘部を指で押し開くと、赤く充血する突起をざらりと舐めた。
「やぁぁっ!!」
ぬるつく舌がねっとりと敏感な部分を撫で回す。
指とは違う柔らかな感触は、鋭い刺激となっての腰を駆け抜けた。
「はぁっ、あっ!やだ、あぁぁっ!ジャック、気持ちよすぎて…っ!だめぇ!」
シーツをきつく掴んでジャックから与えられる快感を必死で受け止める。
零れる愛液を舐め取って、ちゅうっとジャックがの突起を吸い上げた。
「ひあぁぁあっ…!」
悲鳴のような声を上げ、びくびくっとが腰を跳ねさせる。
強い刺激で軽く絶頂に達したようだ。
余韻に荒い呼吸を繰り返しているを余所に、ジャックは更に愛撫の手を強める。
「あっ…やだ、うそ…っ」
ジャックが花弁を掻き分けて収縮する入り口に舌先を埋め込んだのが分かった。
にゅぐにゅぐと押し込まれる柔らかい感触。
「あはぁぁっ…!そんな、はぁんっ…!そんなところ…っ」
ジャックの舌が自分の膣内を出入りする。
中を撫でられ、愛液をじゅるじゅると舐め取られて。
「ジャック、だめ…っ、!そんなところ、舐めないで…っ」
「…、感じているくせに何を言う」
いやらしく蹂躙するその舌をの内壁はきゅうきゅう締め付けていた。
口で拒否をしようとも体は正直である。
「それとも、俺のアレが欲しいのか?」
「!」
嬲るように問われはかあ、と顔を赤くした。
「ここに、俺が、欲しいんだろう」
言いながらジャックはの入り口に指先をぬぷりと埋め込んだ。
ジャックが示唆したものとは違うが、の中はそれを嬉しそうに飲み込んで絞り取ろうとするかのように蠢く。
「ああ、いやらしい動きだな。食いついて離さないとは」
「言わない、で…!あっ、はあぁっ…!やぁっ、掻き回されると感じる…っ!!」
指を増やされ不規則に動きを与えて刺激される。
の体を知り尽くしたジャックは的確に快感を覚える場所を探り当て、そこを重点的に苛んだ。
「はぁぁっ、イイっ…!気持ちイイぃ…っ!」
先程弱い絶頂を感じさせられた体が、急速に追い詰められていくのが分かる。
きゅううっと内壁がジャックの指を締め付け、びくっと腰が跳ねた。
ああ、イかされる…!
がそう思った瞬間、絶妙のタイミングでジャックが指を引き抜いたのである。
「…あ、あぁぁ…っ」
あと少し、というところで刺激を取り上げられたの体がふるっと震えた。
絶頂の予感のぞくぞくとした疼きだけが下腹に残る。
「はぁぁ…、どうして、ジャック…」
沈むようにはベッドに体を横たえさせる。
半端に放り出された体の熱がひやりとしたシーツに溶けるようだ。
「ふ、残念そうだな。だが、指で満足するのが本意ではなかろう」
コートを脱ぎ捨て、ジャックはの上に覆いかぶさる。
の額に軽くキスを落として足を開かせると、取り出した自身を押し付けた。
熱い塊を押し付けられて、は思わずその先の快感を期待してしまい体が震えるのを感じる。
「…愛している、。俺を受け入れてくれ…」
「っ、!」
一瞬切なげな表情を浮かべたジャックの、小さな懇願の言葉。
驚かされたのも一瞬の事で、一気に貫かれる感覚にはジャックに問いかける間もなく絶頂を与えられていた。
「あぁあぁぁぁっ!!!」
先程中途半端に放り出された体が一気に登りつめる。
爪先が空を切り、がくがくと痙攣しながらはジャックを受け入れた。
「く、っ…いきなりイくとはな…淫乱め…」
殊更気持ち良さそうに言うジャックに、先程の面影は無い。
自分がそうなるようにしたくせに…とは思うがジャックに激しく腰を使われてまともに声が出せなくなった。
「あっあっ!!はぁあぁっ…!すご、いっ…あんっ、当たるのぉ…っ!!」
指でも攻められた一番感じる部分を的確に突き上げられて、は背中をしならせた。
胸を突き出すような格好になったの背中を抱き上げて、ジャックは乳房にかぶりつく。
「んはぁっ!あぁぁっ、それだめぇ…っ!感じちゃうぅ…!!」
突き上げられるだけでも感じるのに、敏感に膨らんだ乳首を刺激されると堪らない。
しかし怖いほど込みあげてくる快感に仰け反る度に、強請るようにジャックに胸を押し付けてしまう。
そしてそれに応えるようにジャックはきつく吸い上げては舌先でいやらしく弾くように舐めるのだった。
「はぁっ!はぁぁっ!!イイ、っ…気持ちいぃぃ…っ!ジャック、愛してる…!」
口をついたの言葉にジャックは驚いたように顔を上げた。
「好き、愛してるの…!ジャック、ジャック…!!」
熱に浮かされたいやらしい表情で愛を口にする。
勿論彼女から愛されている自負はあったし、好きだという意志もはっきりと伝えられてはいた。
しかし行為の最中にこうやって熱く愛を口にされたのは初めてのことで。
「、もう一度言ってくれ…」
「っ、愛し、てるっ、ジャック…っ、貴方を愛してる…!」
「…っ…!」
思い切り本能に爪を立てられたジャックはの腰を掴んでより深く自身を打ち込むようにを犯した。
「あーっ!!奥っ…!すごいっ!はぁっはぁっ!!」
「う、く…っはぁ、あ…っ…っ、」
波打つベッドが行為の激しさを物語る。
溢れた愛液がの内股を伝いシーツに染みを作った。
ぐちゅぐちゅと卑猥な水音と体がぶつかる音が部屋に響く。
「ジャックっ、あたしイっちゃう…!はぁぁっ、だめ、イっちゃうっ…!」
「いいぞ、…っ、一緒にイこう…っ、は、あ…っ」
快楽に慣らされた体がびくんと跳ねた。
合わせる様にジャックも思い切り腰を強く押し付ける。
「あっ!あっ!イくっ!イくぅっ!!!」
「っ…、は、ァ…っ、俺も、出すぞ…っ!」
きゅうううとの内壁がジャックを締め付け、瞬間ジャックもの中で射精する。
搾り取るかのような蠢きにジャックは断続的に吐き出しながら深く溜め息を吐いた。
は中で脈動する感覚に余韻を刺激されるのか、小さく体を震わせる。
「ん、はぁ…、ジャック…」
「…何だ?」
「…夢中になって、敬語忘れちゃった」
困ったように笑う。
事後、最初の感想がそれかとジャックは思ったが、彼女らしい気もして。
なんと言ってもとの距離が更に近くなったような気分にもなって。
ジャックは無言でを抱き締めた。
これ以上無い満ち足りた気分だった。
いつものように抱き寄せるジャックの腕に甘えながら緩やかに流れる時間を一緒に過ごす。
「離れてた間に、どれだけジャックが好きなのかを思い知らされたの」
一人の時間の長さに愕然とした。
「ずっと、傍にいさせてくれる?」
「…嫌がっても離してなぞやらん」
「嬉しい」
ジャックの肩口に頬を押し付けては微笑んだ。
「…」
「なぁに」
「……いや、明日にしよう。疲れているだろう。そろそろ寝ろ」
肩を抱き寄せるジャックの腕に包まれては促されるままに目を伏せる。
その頬に軽くキスをして、ジャックはを抱き締める。
「…」
そろそろ打ち明ける日が来たのだろう。
ジャックの秘密を知った彼女は離れていくのだろうか。
漸く得た体温を惜しむようにジャックはを抱き締める腕に力を篭める。
もしかしたら後一日でこの体温がなくなってしまうかもしれない。
視線を窓の方へ投げる。
そこはまだ暗く、夜明けは遠そうだ。
いっそこのままの時間が続けばいい。
そうすれば、この体温を失わずに済むかもしれない。
温かな彼女の優しさに甘えながらずっと。
叶わないと分かっていながらも、の温もりを知ってしまった今ジャックはそう考えずにはいられなかった。
終
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いつまでも戻ってこないを御影は如何思ったんでしょうか。
気付いてはないという都合のいい状態ですが…。
普通なら「あれ?」って思って様子見に来るよね。
ここまで読んでくださってありがとうございました。