邂逅 3


※こちらはお気に召すままアフターの設定を丸々使っています。
ジャックと夢主は夫婦で同居、遊星とリューナは未婚にてお付き合いを続けている感じ。
あとは何となくフィーリングで←マジか









「リューナちゃんってさぁ…遊星といっつもカードのことばっかり喋ってるわけじゃないよね?」
「?どうしたの、急に」






邂逅3






「だって!ここに来たらすぐ特訓したがるじゃない!」
「それは…」
今だって目の前にはぞろっとカードが散乱している。
しかしこれに関しては、リューナとしても半分は使命感に駆られているような部分もあったりなかったり。
そもそも彼女の夫から『そこそこ戦えるように好きなだけ苛めてやれ』とお墨付きをもらっているのである。
それは遠回しに特訓の命を課されたも同然。
リューナだって好きでの相手をしているわけでは…ないわけでもない(ややこしい)
つまるところリューナは遊星と同じくなんだかんだでデュエルを苦にしないので、今まで何の問題も無かったわけだ。
が、目の前の友人は違うようで。
「カードのことばっかりじゃなくても良いなら今日はカード終わり!」
「…まあ、がそういうならそれでも構わないけれど」
リューナの返事を待たずカードを片付けるに頬杖をついて同意だけ返す。
中途半端なことこの上ないが、気が乗らないのであれば何を言っても右から左だろうし…とリューナもカードを片付け始めた。
「と、言うわけでカードはおいといてちょっとガールズトークしない?実はあたしリューナちゃんに聞きたいことが…」
「何かしら」
と、いうかガールズトークって何かしら。
リューナは聞きなれない単語に心の中で首を傾げる。
直訳すれば『女の子の会話』だが、そもそも女の子の会話とは何を指すのだろう。
雑誌の特集で見たスイーツの話だろうか。
洋服?化粧品?そのどれにもピンとしたものを感じない。
「ズバリ!遊星と、どう?」
「……どう、とは…」
何がどうなのか、主目的がはっきりとしない質問にリューナは困惑した。
「何が…どう、なのかしら…?」
「だから、どうなのかなって」
「…?」
「…あ、もしかしてこういう話したことない?」
無言で頷くリューナ。
はリューナの背景にあるアルカディアムーブメントのことを思い出す。
潜入して特殊な世界だなぁと痛いほど思った。
目の前のリューナはそこで幹部にまで登り詰めた少女。
出会った当時は感情の表現が乏しすぎて何を考えているのか良く分からない子だと思ったものである。
それでも面倒見は良かったから、きっと本当は優しいんだろうとこっそり思っていた。
あの特殊な世界で孤独に生きていた彼女には分かりにくい話だっただろうとは少しだけ言葉を探す。
「んーと、じゃあ…」
しかし言葉で説明するのもなかなか難しいもので。
それにリューナに「遊星との恋愛事情を教えて頂戴」とはっきり言ったところで口にしてくれるだろうか。
口下手でシャイなリューナのこと、はっきり言ってしまうと教えてくれないかもしれない…。
「…言葉では説明しにくいから、リューナちゃんの好きな実地訓練しましょうか!ジャックと遊星も誘って出掛けましょう」
「……えっ…」
にんまりするにこれ以上ない不安を感じる。
この前の特訓のオチはまあまあの出来事だった。
こと恋愛沙汰に関してはの方が上手である。
ちょうどそういう企みを思いついたような顔で笑うに冷たいものを感じつつリューナは後ずさった。
「…え、遠慮しておきたいのだけれど」
「遠慮しない遠慮しない!そうと決まれば着替えなくっちゃねぇえ!!」
「ちょ、ちょっと!やだ、止めて!止めなさいったら…!!」

いやぁぁぁ…!

と、ジャックの部屋から彼女の悲鳴が聞こえてきてがたっと遊星が席を立った。
「…リューナの悲鳴が」
「どうする気だ」
「助けを求めているかもしれない」
女同士で部屋にいて助けを求めるも何も無いだろうと思いつつ、ジャックは立ち上がった遊星の腕を掴む。
「止めておけ」
自分の妻のことながらろくな予感がしない。
遊星がリューナの危機を感じ取るようにジャックも自分の連れ合いのことをある程度は把握している。
放っておいても害らしい害など与えられはしないということも。
「…だが…」
止められて一瞬勢いを弱める遊星だが、続いてもう一度響いたリューナの「きゃぁぁ…っ」という声に遊星の表情が険しくなった。
「…引き留めるならデュエルだ」
Dホイールに視線を向けながら遊星は言った。
その目線の先にはデュエルディスクと遊星のデッキ。
ジャック自身、遊星がリューナのことになると見境がなくなることを知っている。
今の状態ならきっと最高の手札を引いてくるのだろう。
そして仮に先攻をジャックが得たとしても、自身の最初のターンで勝負を決めてしまうような展開を見せるに違いない。
リューナに関しては恐ろしいほどの執着を見せる遊星に苦い思いを何度かさせられている。
だから、ジャックは敢えて遊星の手を離した。
「…馬鹿馬鹿しい。ならば好きにしろ」
全てを振り切った遊星は階段を駆け上がる。
そして、急いでジャックの部屋のドアを開け放つと…そこには。
「リューナ!」
「ゆ、ゆうせ…っ!?」
「えっ!?遊星!?」
ベッドの上で下着姿で組み合う二人の女の子たちが。
彼女が下で友人が上で。
脱ぎ散らかされた服がベッドの下に散乱しているという目を疑う状況が出来上がっていた。
「え…」
「やだ!出てって!!!」
一瞬訳が分からなくて呆然とする遊星の顔にが投げた枕がクリーンヒットした。
ぼふっと無害な音がした衝撃で遊星は後ろによろめく。
その間にすかさず走ってきたがばたん!と扉を勢い良く閉めてしまった。
「何を見た」
後ろから悠長に上がってきたジャックが、顔を押さえてしゃがみ込む遊星に声を掛ける。
「…二人が…」
俯きながら顔を赤くする遊星に、声だけは聞こえていたジャックは何となく全容を察した。
「…だから止めておけと言った。俺の妻の体を見たお前をどうにかしてやりたい」
「殴ってくれても構わない…」
「……半分はあいつのせいだから止めておく。自身で報復はしたようだしな」
廊下の床に落ちた自分の枕に視線をやりながらジャックは溜め息をついた。





その後もきゃぁきゃぁ聞こえる黄色い声に遊星が反応したりしていたが、やがて二人が部屋から出てきたときジャックも遊星も少々驚いた風で出迎えた。
「じゃぁあん!どう?可愛いでしょう?」
意気揚々とドアから出てきたのはで、リューナはその後ろに隠れるようにしていたが、二人で色違いのワンピースを着て髪も下ろしている。
身長が違うからリューナの方が丈はやや長めにはなっていたが、同じ色のリボンでサイドの髪を結んでいるところまで揃えてあるのでぱっと見ると姉妹のようである。
きょとんとする男性陣を見てリューナが顔を赤くした。
「だっ、だから…っ、に、似合わないから嫌だって言ったのに…!」
両手で前髪の辺りを押さえて顔を隠すようにしながらそっぽを向く。
「何言ってんの。見惚れてるだけだよねぇ?ほら、遊星、何か言うことないの?」
「!」
話を振られ遊星がはた、と気づいたようにリューナを見た。
普段とは違う服装のリューナ。
髪を下ろしているところを見たことがないわけではないが、こうして普段の彼女として見ることは少ない。
「…リューナ、こっちに来て良く見せてくれ」
ぐい、と遊星がリューナをの後ろから連れ出した。
同時に邪魔にならないよう、もそっとジャックの傍へ移動する。
顔を赤くして俯くリューナを遊星は上から下まで愛おしそうに眺めた。
「髪…珍しいな。だけど、すごく可愛い」
さらりと長い髪を撫でた後、一房取って口元へ。
髪にキスをするようなその行動にリューナは一瞬どきりとするが、それ以上にドキドキしているのは後ろで見守るの方だった。
キザな仕草だがお姫様を扱うような行動に甘い感情を刺激されてしまう。
「っ、に言われたからって…無理しなくていいわよ…!」
「無理なんかしていない。本当に、すごく似合っている」
「…っ!」
かあ…っ、とリューナは更に頬を赤くして恥ずかしそうに視線を逸らす。
最早二人の世界であるが、そんな二人を見るは非常に満足だった。
「はぁあ…これよこれ…!これが見たかったのよぉ…!!」
「…お前は…あまり調子に乗るとこの前のような目に遭うぞ」
「んふふ、大丈夫だもーん。カード、あたしが取り上げちゃったんだもんね!」
ジャックに鞄の中身をちらりと見せる
そこにはケースに収められたリューナのデッキが入っていた。
「…よくリューナがそれを手放したな」
「預かっただけだもん。あのポシェットに入ると思う?」
によってコーディネートされてしまったリューナは申し訳程度のサイズの肩掛けバッグを持たされていた。
確かに財布とハンカチ、ポーチなどを入れてしまったらいっぱいになってしまうだろう。
「今日はデュエルディスクも禁止よ!女の子のお出掛け楽しむんだから!」
「…おい、それに俺と遊星は入っているんじゃないだろうな…」
「あら…当然、足と荷物持ちお願いね」
うふ、と無邪気に微笑む
そんな妻を諌める術をジャックは知らない。







やってきましたショッピングモール。
は遊星よりも早くリューナの手を取ると、目についた雑貨屋の中に滑り込んでいく。
「この瓶可愛いね。リューナちゃんはどんなのが好き?」
「うーん…香水はつけないのだけれど…」
「そーなの?でもリューナちゃんって良い香りがする。シャンプーがいいのカナ…?」
リューナの頬に顔を近付けてすんすん鼻を鳴らす
それを見ている遊星は正直気が気でない。
「女同士は狡い…」
「…お前は…」
呆れたようにジャックは言うが、確かに遊星の目の前でこれだけ傍若無人にリューナを独り占めし続けるも相当心臓に毛が生えているなと思った。
これはリューナからではなく遊星からの報復があるのではと思うが、まあそれはそれ。
の腕が鍛えられる機会があるのは良いことだろう。
デュエルのことになるとスパルタのの夫はそう結論付けて放っておくことにした。
「この腕時計すごく可愛い!」
「…でも文字盤に何も書いて無くて見辛いわ。こっちの方がいいんじゃないかしら」
「文字盤見辛いのが好きなの、あたし」
「そう。変わった趣味なのね」
あちこち目移りさせては黄色い声を上げる彼女たちを遠巻きに眺める。
手持無沙汰…と言えばそうだろう。
だが、その光景を食い入るように眺める遊星はそれすらも気にならないようで。
「普段と違う髪型が新鮮で凄く可愛い…」
ぽつ、と言い出した。
「どうせ普段どおりのリューナが座っているだけでも貴様は可愛いと言うのだろうが」
「ちょこんとソファに座っているあのサイズが可愛い以外の何物でもない」
「…は座っていても立っていても可愛いがな。多少危なっかしいが、それがいい」
「…天然の可愛さがリューナに敵うと思っているのか。全部俺の言うことを真に受けるリューナは抱き締めたくなる」
ヒートアップしてきた会話は必然的にボリュームが徐々に上がってきたりするわけで。
褒められていると思っても良いのだろうが、自身を誰かに自慢されていると思うと流石に恥ずかしくなってくる。
「…旦那たちが…うるさいわね…」
「そう、ね…」
商品を持ったまま二人は顔を赤くして俯いていた。
周りに客が殆どいなかくて良かった。
ある程度顔も名前も知られた二人はその自覚が無さすぎる。
「従順で素直に俺の腕の中で甘える蕩けた表情が最高だ」
「普段多少気が強いが最中に素直になって縋ってくる破壊力をお前は知らないだけだ」
「「!!」」
際どい方向へ流れ始めていよいよ危ないと思ったは。
「ちょっとォ!そろそろ聞こえてるんですけど!」
顔を赤くして俯くリューナを庇うようにしながら声を上げた。
も先程リューナから似たような話を聞き出そうとはしていたが、それは女の子同士の会話の中で聞きたいのであって、こういう形では望んでいない。
そして夫や親しい者の口から自分の話を聞くほど恥ずかしいこともないわけで。
制止された二人は不満げながらもとりあえず口は閉じた。
静かになったことにほっとしつつ赤くなった顔を手で扇ぐは。
「もぉお……。あっついから、アイスね」
と、要求し…。
「…二つ乗ったアイスがいいわ」
それに珍しくリューナも乗っかった。






しばらくは平和に店内を歩いていた。
順調に紙袋の量も増えてきている。
しかし、は一つの店舗の前でぴたりと足を止めると、またしてもリューナの手を取った。
「はーい。ここからは男子禁制よ。終わったら連絡するから2人で時間潰してて」
「えっ!?ちょ、ちょっと……っ」
ぐいぐいと手を引っ張られ引きずられていくリューナ。
助けて遊星!という声も聞こえるが、たちが入っていった売り場まで追いかけていくのは躊躇われた。
何故ならそこは下着売り場。
の言う通り男は入って行き辛い。
「…良かったのか助けなくて」
「……それは」
言い淀む遊星に複雑な色を読み取ってジャックはにやりとした。
「何かを期待しているのか」
「っ、!」
「まあ…ある程度は期待通りに進むのではないか?だが、あいつは俺の想像の斜め上を物凄い速さで飛んでいくきらいがあるから何とも言えんが」
恐らくは慣れてしまっているのだろう、ジャックは顔色も変えず遊星を置いて歩き出した。
「何処へ行くんだ」
「…女物の下着売り場の前で待たされるのは敵わんからな。どうせ時間もかかるだろうから本屋へ行く。お前は好きにすればいい」
本当に興味も何もないようにすたすたと歩いていくジャックと売り場を見比べた遊星。
確かに待っていても彼女たちは見えないが、距離を置くことに不安がないかと言えば嘘になる。
だけど少し躊躇いながらも遊星はジャックの方へと歩き出した。
「…別行動なんか普段はしない」
「そうか」
「ジャックとはいつもこうなのか」
「いいや。だが、リューナと出掛けられてはしゃいだ気分になるのはお前だけではないということだろう」
一瞬、ジャックの言葉を普通に受け取りそうになる遊星。
しかし。
「俺は別にはしゃいでなんかないぞ」
「自覚が無いとは恐れ入った。傍から見たらお前のはしゃぎっぷりはなかなかだ」
「!」



「うーん、肌白いー!白もいいけど可愛いのは?」
試着室の中でさえのペースである。
「な、何でもいいから…!拘りなんてないわ…!」
とにかく早く終わらせたい一心でリューナは言う。
しかしがそれを許さない。
「えー、女の子なんだから拘らなきゃ!あ、あと遊星の好みもちゃんと考えてね!これこそ男の子のために着るんだからね!」
「おおおお男の子のためにって…!」
珍しく慌てた様子のリューナにはにんまりとした。
そう、こういう反応を待っていたのである。
冒頭の会話をするチャンスかもしれない。
はぐいっとリューナに迫り、声のトーンを落としながら切り出した。
「ジャックって見た目どおり体力もあって、時々夜付き合うのが大変だったりするの。リューナちゃんのところってそういうの無さそうだね。遊星、夜も優しそう」
「!」
「ね、ホントのとこ遊星とどうなの?」
どうって!
『遊星と、どう?』の主語はそういうことを指していたのかとリューナはようやく理解した。
「ど、どうって…ふ、普通よ…うん、普通だわ…!」
普通と言い切ってしまえば新しい質問も飛んでこないだろう。
いや、とりあえず『はい』『いいえ』『普通』で乗り切ってしまえばいいとリューナは考えた。
だがそんな返答くらいで引き下がるではない。
「普通…かぁ。じゃあちょっと大胆な方が刺激あっていいよね!こういうのどう?」
ひらりと見せられた下着にリューナは声を失う。
「確かに遊星、奥手っぽいもんねー。リューナちゃんからこういうので誘ってあげたらきっと喜ぶよォ」
『確かに』などと言いつつ全て想像でしかないが(それというのも普通と言い切ってしまった所為でもあるのだが)間違っているような間違っていないような。
大胆な下着で迫った時は確かに遊星は喜んだけれど。
「Tバック、持ってないでしょ?」
「も…、持っていなくても問題ないと思うわ!」
「うーん、まぁ確かにあたしも持ってないけど…。あ、じゃあ二人で挑戦しない?」
「ええ!?」
女の子の集団心理という奴だ。
一人でするのは恥ずかしいけど、二人でやれば怖くない。
「これ着けて今晩お互い彼氏に迫るの。あはっ、楽しそう!」
悪戯っぽくクスクス笑うは本当に楽しそうだ。
しかしリューナは…。
「(遊星…助けて…!)」
背水の陣で孤軍奮闘の気分である。





「リューナが助けを求めている気がする…」

「…そうか。下着売り場へ行くのか?」

「…」

「諦めろ。悪いようにはしていないはずだ」

「……言い切らないんだな…」

「言っただろう。あいつは時々俺の想像の斜め上を物凄い速さで飛んでいく」





夕陽が赤く部屋を染めている。
ようやくスタートラインへ帰ってきた。
ジャックの部屋には着替えた(正確には着替えさせられた)リューナの私服が主人の帰りを待っていた。
だけど、着替えようとするリューナの手をは止めさせる。
「その服あげるわ。色違いで今着てるのあるし。いらなかったら売ってくれてもいいから」
あっけらかんと言われて、着替えようとしていたリューナがきょとんとを見た。
「あげるわ…ってそんな軽く…」
「いいの。選びきれなくて色違い買っちゃったけど、結局着てなかったから」
あと、この子たちも返すね。
はバッグから取り出したリューナのデッキケースを手渡した。
その瞬間のリューナのほっとした表情。
「うーん…やっぱり敵わないのね」
「え…?」
「リューナちゃん、今すごくほっとした顔したよね。今日つまんなかった?」
の言葉にリューナは少し考える素振りをした。
何だかんだ振り回されたし疲れたけれど…。
「いいえ。でも、女の子同士は大変だとも思ったわね」
首を横に振って苦笑するリューナの表情に嘘は見えない。
今はそんな印象で良いだろう。
結局初めて彼女をアルカディアムーブメントで見かけたときに救い出すことは出来なかった。
セキュリティと言う組織の枠組みが彼女だけを特別扱いすることを許さなかったし、自身にその余裕がなかったこともある。
結果的にアルカディアムーブメントは頂点のカリスマを失い崩壊した。
拠り所を失ったリューナは『結果論として』遊星の傍を見出して今に至る。
再び出会えることは恐らく奇跡のような偶然だったはずだ。
そんな中で彼女に対して何が出来て何を求めるのか。
既に失われたリューナの時間が戻らないのであれば、その失くした時間の中に存在したであろうものに自分はなりたい。
…とはいえ、伝えてしまえば目の前の真面目で優しい彼女が真剣になってしまうに違いないから黙っておく。
「まだまだだよ!もっと色々教えてあげる。今日はもう時間が足りないみたいだけど」
下で遊星がリューナを送るべくDホイールに乗ったままで待機しているのである。
脱いでいた服を手早く紙袋にしまうと、はリューナと共に一階へ降りていく。
「お待たせ。行きましょうか」
遊星に声を掛けながらリューナは遊星のDホイールの後ろに乗り込んだ。
そんなリューナにはそっと近づき耳元で囁く。
「んふふ。今晩ちゃんと穿いてね。二人で挑戦するんだからね!」
「わ、分かってるわよ…」
「後日遊星にジャックからそれとなく探りいれてもらうから、回避しようとしてもダメだからねぇ!」
「…!」
にんまりするの怖い笑み。
そこまでか。
女同士の友情ってそこまでなのか。
嗚呼、秘密結社よりもタチが悪いかもしれない。
「じゃあね、すっごい楽しかった!」
それはそうだろうとげんなりするリューナは遊星の背中に体を預ける。
結局『あげる』と言われてしまった服は着替えることなくそのままで。
いつもの洋服とデッキは別の紙袋と一緒にされていた。
ついでに、今しがたが示したものを入れた袋も。
「また遊びに来てね」
にこやかに手を振るに、リューナも多少微笑み返す。
滑るように走り出した遊星の背中に頬を預けていると緩やかに強くなる風がリューナの長い髪を靡かせた。
「遊星…」
「…どうした」
「しばらくはこっちに通ってちょうだい」
「…?別に構わないが…何故」
「……何でもいいから…お願い」
女の友情って難しい。
今夜の約束を守ろうと破ろうと、暫く女の友情から遠ざかりたいと思うリューナであった。








===============

冰覇様、7000hitのキリ番リクエスト本当にありがとうございました!
「邂逅3」ということで、デュエルではさっぱり勝てない当サイトの夢主が女の友情という胡散臭いものを押し付ける内容になりました。
「何かを教える」ってリクエストだったので、女の子同士のあれこれを教える感じにしたかったんだけど、なんか違うかも…^^;
よそ様の娘さんを描くのは非常に緊張しますね!
っていうかあたし遊星さんいじりすぎたよね!
色々となんか違ったらごめんなさい。


こちらの作品は冰覇様へと捧げさせて頂く作品となっております。
無断転載は言うまでもなくご本人様以外のダウンロードなども厳禁です。
閲覧のみで宜しくお願い致します。







▼頼まれてもないけどオマケ入れてみました▼




「…って感じで、もうリューナちゃん可愛いったら!あー遊星はあんな可愛い彼女がいていいなぁ…。妹欲しくなっちゃった」
「……良くやったとは言いがたい気もするが…まあ楽しかったなら良かったな」
「んー…でも結構やりすぎたからしばらくは遊びに来てくれないだろーなぁ」
嗚呼、一方的な愛である。
熱烈な好意は時に毒にもなるのだろう。
デュエルのことはさて置いても、妹のように可愛いと思っているのは誰の目にも明らかで。
しかしベッドの上で夫の胸に甘えながら話すのは友人の彼女のこと…。
ジャックとしてはやや複雑である。
の気持ちを自分の方に向けたくて、そっと上を向かせるとゆっくり顔を近付けた。
「ン…、っ」
ちゅ、と小さな音がして唇が重なり合う。
軽く触れるだけかと思いきや、何度も啄むようにして唇の感触を堪能したジャックは角度を変えながら次第に深く奪っていく。
「ん、ふ…」
柔らかく混じり合った吐息。
キスだけで甘く高まる体温にドキドキしながらゆっくりと離れると、ジャックの好色な視線がを射抜いていた。
「それで?」
「ん?なぁに?」
「二人で挑戦、なのだろう?」
「…あ…」
あはは…と少し恥ずかしそうに笑った
緩慢な動作で寝そべるジャックにゆったりと跨った。
ジャックも体を仰向けにして、下敷きになってやる。
「妹は無理だが」
「?」
「娘、ならなんとかなるのではないか?」
「!…まだ、アナタと二人の生活…楽しみたいかも…。ダメ?」
甘えた顔をしているのに妖艶な色を含むのは狡いだろう。
仄めかされる気分を味わいながらジャックはゆっくりと寝間着のボタンを外すを眺めていた。








んふふ、管理人達のお楽しみにお付き合いくださってありがとうございました!