心酔トリガー


※時系列は地縛神一段落後〜WRGPが始まっていない頃






「んっふふふ、ただいまァ…」
ふらりとガレージに入ってくる影が一つ。
、貴様酔っているな」
「あらー、キングがお出迎えぇ…?いやん、なんて贅沢うぅ…」
「…前後不覚だな。きちんと帰ってきて良かった」
遊星とジャックが顔を見合わせる。
外で働いているは付き合いもあり、飲んで帰ってくることがたまにある。
「…テレビ?キングが来てるってことはテレビが来てるの…?」
どうやら記憶も曖昧なようである。
覚束ない足取りでふらふらとソファに鞄を置いて座り込み、スーツのジャケットを脱いだ。
「ふぁあ…楽しかったけど疲れたー…あれ?パジャマ何処置いたっけぇ…」
きょろきょろと辺りを見回すが、ここはガレージなのでそんなものがあるはずもない。
どうやら部屋にいると勘違いしているようである。
「うーん…?あっれ、おかしいなー…」
おかしいのはお前だ。
と、遊星とジャックが脳内でシンクロする。
「まいっか、もう結構暖かいし…」
彼女の中で寝間着を着るという選択肢は消えてしまったらしい。
すると、は何を思ったかぷつんぷつんとブラウスのボタンを外し始めた。
見守っていた男二人がそれを見て慌てて彼女に駆け寄る。
、ここは部屋じゃない。ほら、脱ぐのを止めて部屋に行こう」
「そうだ。こんなところでパジャマも着ずに寝たら風邪を引くぞ!」
手元を掴んで行動を制止する遊星とソファの後ろからを立たせようと肩を掴むジャックと。
行動を妨げられたはぴたりと視線を遊星の方で止める。
「……あれ、ちょっとなんで遊星があたしの部屋にいるの」
「…は?」
「やだもー。女の子の部屋に勝手に入らないでよー…。オタクの男の子ってやっぱムッツリなのねぇ…」
「!」
盛大なる勘違いというか濡れ衣もいいところというか。
寧ろ彼女はそんな目で自分を見ていたのかと思うと遊星は小さくショックを受けるが、顔には出さないところは流石である。
それを聞いての真後ろに立つジャックが笑いを堪えて震えていた。
目聡くそんなジャックに気付いた遊星は無表情のまま真後ろを指差して口を開く。
「…、お前の部屋にジャックもいるようだが」
「ふぇ…っ?」
素直に遊星の指差す方を振り向く
あっ、コイツ…!と、ジャックが思った時には既にと目が合っていた。
「もー…ほんと、よってたかって童貞ばっか。キングって言ってもそっちはからっきしなのねー」
「なっ…!!」
の言い草にジャックは目を見開いた。
遊星は俯いて肩を震わせている。
「遊星っ、貴様…!」
「何だ?俺は何も言っていない」
「ふわァ…眠い……」
を挟んで掴み合いが始まるが、彼女は意に介さずうとうとと船を漕ぎ始める。
間をおかず「「デュエル!!」」という声が響くのであるが、その頃にはは夢の中だった。





翌朝。
クロウが部屋から降りてきて目の当たりにしたガレージはカオスだった。
いや、散らかっていたとかそういうのではなく。
ソファの上で折り重なるようにして眠る男女が3人程。
一体何をしていてそういうことになったのだろうか。
正直聞くのが怖い。
「…」
そもそも起こすかどうかすら躊躇われる光景を茫然と眺めていたら、視線を感じたのだろうか、一番起きて欲しくない人間が身じろぎをした。
「……ぅ、ン…」
寝起きの気怠そうな声が艶めかしくて、色々といけない想像をさせる。
「うー…、体痛いー……。あれ?ガレージ…?」
きょときょとと周りを見渡したとクロウの視線が合う。
が見たクロウは心底呆れたような顔をしていた。
「お前ら……こんなとこで何やってんだよ……」
「…へ…?」
言われてはた、と今の状況を省みた。
右側に、遊星。
左側に、ジャック。
二人はジャケットとコートを床に脱ぎ捨てて、を挟んで気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「えっ…?ええええっ!!!」
ガレージに困惑のの声が響き渡り、漸く遊星とジャックも目を覚ます。
「…朝から、何事だ…。やかましい…」
「俺は…、ああ、昨日あのまま眠ってしまったのか…」
やおら体を起こす二人をは交互に見る。
「ちょ、ちょっと…あのままって何…?あ、あたし何にも覚えてないんだけど…」
昨夜は随分飲んで帰って来た。
その自覚はあった。
しかし、おかげ様で記憶は忘却の彼方である。
青くなるを尻目にジャックがはたりと何をかに気付いたようだった。
「昨日…っ、そうだ、遊星貴様…!」
「しつこいぞ、ジャック。もういいだろう…。3回もしたじゃないか」
「3回!?」
がびくりと身を竦ませる。
クロウが後ろで息を飲んだのが聞こえて、はいっそう居たたまれない気分になる。
「全部貴様が持っていったではないか!何を涼しい顔で…っ!」
「それでも最後は苦しかった」
遊星の言葉にもクロウも小さく頷く。
ぼそりとクロウが「遊星って絶倫だったんだな…」と呟いたのをは聞き逃さない。
寧ろ、聞き逃したかった。
「ね…ねぇ…二人とも…、あの、結局あたしと何をしたの…」
恐る恐るの問いかけに遊星とジャックは同時にを見た。
「…、まさか俺はにあんな風に思われているとは思わずに…。普段の付き合いからお前をいやらしい目で見たりはしていないのだが…もう少し気をつけることにする」
「というか!誰が童貞だ、誰がっ!!知りもせず知った風なことをっ!!」
「!!!」
は目の前が真っ暗になった。





「お酒…気をつけよう…」
「おぉ、マジで気をつけろよ。今回が何もなかっただけで、普段は分かんねーんだからな!」
あの後あまりのショックに涙目になったを庇う形でクロウが二人から詳しい事情を聞き今に至る。
幼馴染同士の会話は分かりにくい。
遥かな誤解はとりあえず解けて、はクロウが淹れてくれたコーヒーを啜っていた。
「あたし…普段から遊星にもジャックにもそんなこと思ったりしてないのにー…。いや、深層心理で思ってンのかな」
「酒飲んで言った事なんて責任持たなくていーぞ。大抵が適当言ってんだ。真に受けるあいつらが素直すぎるだけでよ」
「うーん…でも意外にそういうとこに人間の本音があったりするんじゃないかなーって思ったりも…」
考えれば考える程、泥沼である。
クロウの言う通り気にしないのが一番なのであろう。
ところで。
「ねー話変わるけど、クロウ達ってお酒飲まないよね。飲めないの?」
「俺はあんま好きじゃねーからな。あいつらがどーなのかは知らねぇけど」
「…ふぅん…」
結構長い付き合いをしている二人のことを知らないということは、皆でお酒を飲んだりはしないということだろう。
それは皆飲めないとイコールのような気もする。
「何となく遊星は飲めなそうだよね。牛乳好きだし」
「なんで牛乳好きは酒飲めねぇ前提なんだよ」
「うーん…だって子供が好むってイメージなんだもん。ジャックはどうなんだろ…」
「ジャックはともかくとして、お前酒飲んでなくても結構辛辣だよな」
「えー?そうかなぁ」
イメージを伝えただけなのに、心外である。

…それはさておき。

やはり気になったら確かめてみたいのが女心。
と、言うわけで休みを利用して遊星かジャックにお酒を飲ませてみることにした。
しかし近くのコンビニで簡単に買い出しを済ませて戻ってきたガレージに遊星の姿もDホイールすらなく。
ついでにクロウの姿も無かった。
ソファで本のページをめくっているジャックには声を掛ける。
「遊星は?」
「ちょっと走らせてくると言っていたぞ」
本から目を離さずに返答を返してくれたジャックだが、的には当てが外れた。
ジャックよりも遊星の方が素直にお酒を飲んでくれそうだと考えていたのに。
しかし遊星がいないのなら仕方がない。
「ねぇねぇ、朝のこと蒸し返すようで悪いんだけど、ジャックはお酒飲まないの?飲んでるとこ殆ど見たことないけど」
「嫌いではない。が、経済状況を見るにクロウがやかましそうだからな」
「(そこまで分かってて働かないアナタは流石よ…)飲めないわけじゃないのね?じゃあ、ちょっとあたしに付き合ってよ」
この誘い文句に漸く本から顔を上げたジャックに、はビニール袋から缶を出して見せた。
見せられたジャック本人はというと小さく溜息を吐いて呆れたようにソファに背を預ける。
「お前は懲りんな。先程そのせいで泣きそうになっていたくせに…」
「一言多いわよ。これくらいじゃ昨日みたいになったりはしないから大丈夫!」
「…良かろう、付き合ってやる」
ふーっと深い息を吐きながらも色よい返事では内心にんまりとした。
「じゃ、あたしの部屋に行きましょうか」





「遊星の方が反応気になったんだけどね」
缶の中身を移したグラスを傾けながらは言う。
同じ職場であれば仕事のことを話したろうが、同僚との会話ではないので自然と仲間の話になる。
「お酒、飲みそうにないでしょ」
「確かに付き合いは長いがあいつが酒を飲んでいるところは見たことがない」
「クロウも似たようなこと言うのよねぇ。ヤンチャしてた割にそういうとこは法令遵守なのね」
「……あの時のことは言うな」
芋づる式に何かを思い出してしまいそうな話にジャックはNOを突き付けた。
この辺の話はクロウすら口数を減らす。
「まぁまぁ。若いってそーゆーモンだと思うよ?あたしだって…」
酒を飲んだせいだろうか。
は自身が少し饒舌になるのを自覚した。
軽い酔いはの気分を良くし、普段なら平静で話すような会話すら楽しくなる。
「…お前は、楽しそうだな…」
「え?そぉ?」
缶を2、3本空けたところでジャックがやや暗いトーンでに言った。
確かに楽しくて一方的に喋り続けていたのである。
「……」
「…ジャック?」
急に黙り込むジャック。
は何か調子に乗って拙いことでも言っただろうかと自身を振り返る。
しかし今話していたのは女友達が結婚した話で、正直ジャックにはまっっっったく関係がない。
つまらなかったのかな?と、ちょっと申し訳ない気持ちになってジャックを覗き込んだ。
すると。
「!」
つうぅ…とジャックの頬を伝う一筋の雫。
「ちょっ…ジャック、どうしたの…」
酔いが冷めるほど驚いて、慌ててティッシュでその目元を拭ってやる。
が、ぽとぽとと零れてくる涙は止まらなくて。
は咄嗟に理解した。
(ヤバい、ジャックって酔うと泣くタイプなんだ…)
泣き上戸は同僚にも存在するが、本当に唐突に泣く。
ふと気付いたように、泣く。
普段から不遜な態度のジャックが泣くなんて鬼の霍乱以外の何ものでもないが、泣かれると悪くもないのに罪悪感なんかが生まれてきた。
「ジャック、落ち着いて…大丈夫よ」
優しく目元を拭いながら、安心させてあげようと微笑んで見せる。
「……お前は優しいな……」
鼻を啜るジャックが弱い声色でに視線を移した。
涙で揺れて見える、宵の空と同じ色の目に見つめられるとどきっとする。
普段から端正な顔をしているジャックだから、余計に。
「…もっと、俺の傍に来てくれ…」
「えっ、あ…ちょっと、ジャック…!?」
長い腕が伸びてきて、の体をぎゅっと抱き寄せた。
それもジャックの腕の中に迎え入れられるのではなく、ジャックがの胸に縋る形で。
思いも寄らないところで胸に顔を埋められてはぎょっとした。
押し返そうとジャックの肩を掴むが抱きしめられた腕に更に力が籠るだけ。
じんわりと胸の辺りに暖かな感覚が広がる。
「お、落ち着いた…?」
くすんくすん鼻を鳴らすジャックは何も答えないが冷やりと濡れた胸元の感覚がまだ泣いているらしいことをに知らしめていた。
あやすようにぽんぽんと背中を叩いてやる。
「……」
ちろりとジャックが視線を上げた。
眉を下げて殊勝な表情を見せるジャックは今まで見たことがないほど可愛らしい。
ジャックにもこんなところがあるのかと思うと戸惑いの中にも母性本能がくすぐられてしまう。
「俺は…孤独を恐れたことなど…ない」
「ん、知ってる」
少しだけ、声に張りが戻った。
更に安心させるためにジャックの頭を軽く抱きしめて髪を撫でてみたりして。
普段ならば『気安く触るな!』とでも言いそうな彼だが、今はのされるがままである。
「だが…お前には…。俺の…傍にいて欲しい…」
「…え?」
ぽつりと呟かれた言葉には耳を疑った。
意図が分からず何度も脳内で反芻してしまう。
すると、ジャックはの胸から顔を上げてゆっくりと背筋を伸ばすようにして顔を近付けた。
「…!」
ジャックの顔が視界を占拠したと気付いた時にはもう唇は触れ合っていて。
「ん…っ」
突然のキスには目を見開いてジャックを押し返そうと、胸に手をつくがやはりびくともしない。
数秒間程触れるだけのキスが交わされる。
「…っ、何するの…!」
長いようで短いキスを終えて離れたジャックを睨み付けた。
酔った勢いとは言えやって良いことと悪いことがある。
しかし続いたジャックの台詞には声を失った。

「…俺の理解者は……お前だけだ…。、お前が…好きだ……」

衝撃の告白。
驚きすぎて全ての動作を停止させたの頬にジャックは擦り寄るようなキスをする。
そしてそのままフローリングの床に彼女を押し倒した。
「えっ!?ままま待って!ちょっと待って…!!」
告白を受けたと思ったらその相手をもう見上げている。
ちょっと展開が急すぎて付いていけない。
「俺を受け入れてくれ…。お前が良い…。お前が……」
低くて甘いジャックの声が耳をくすぐった。
切ない懇願にどきんと心臓が跳ね上がる。
「あ…、ダメ…待って……!」
ずしりと襲い来るジャックの体重。
フローリングの冷たさと硬さに戦いているのか、その強引さに戦いているのかが判断出来ない。
しかし待つ暇もなく覆いかぶさってきたジャックの唇が淫猥に首筋を伝い上がっていく。
くすぐったさの入り混じる感覚が背筋を這い上がった。
「や、ん…っ。ジャッ、ク…!」
「嗚呼、良い香りがする…」
「やだぁ、耳元で変なこと言わないで!」
そのまま柔らかく耳朶を食まれ、輪郭を舌先で撫で上げられる。
危険な甘さと熱が体の中に生まれ始めて戸惑いながらもは必死に抵抗をした。
「ダメだったら…!」
豪胆で不遜、だけど本当はこっそり優しいジャックを知っている。
今ここに来て隠れた一面も見てしまった。
そんな彼を親愛しているからこそ、迫られても悪い気はしない。
だけどこのまま流されたら必ず後悔することも知っている。
自分が、ではなくジャックが。
「何故だ…。俺には…、お前が必要なんだ…」
途切れ途切れの呟きにちくちくと罪悪感が刺激されて、居たたまれなくなったは視線を泳がせた。
「そんなに、俺を受け入れるのが……嫌か…?」
「!」
嗚呼、こんなところでこんな選択を迫られるなんて。
返事を待つジャックは先程泣いていた目でじっとを見下ろしている。
普段の強い視線ではなく、少しだけ頼りない縋るような色を滲ませて。
「…狡いわよ」
こんな顔を見せられたらどうやってジャックを拒絶したら良いのかわからなくなる。
覚悟を決めるのか、否か。
は短く息を吸った。
ふと、クロウとの会話が脳内にフラッシュバックしてくる。

『酒飲んで言った事なんて責任持たなくていーぞ。大抵が適当言ってんだ』

『うーん…でも意外にそういうとこに人間の本音があったりするんじゃないかなーって思ったりも…』

クロウの言うことが間違っているとは思わないけれど、今回のケースはきっと後者だ。
「…ジャック、今更ながら遊星を待てば良かったって思ってる」
ゆっくりとはジャックに手を差し伸べてその頬に触れた。
「…どういう意味だ…?」
「多分、酔いが醒めたら…ジャックきっと後悔するから」
「…?」
きょとんとするジャックにはどうやらの『後悔する』という言葉を正常に理解できないようだ。
あの時ジャックを誘わなければ、彼はこんな一面を見せるとこもなく、そしてこんな風に愛を乞うこともなかっただろう。
興味本位で心の中を暴いてしまったことを申し訳なく思う。
だからこそ。
「良いよ…受け入れてあげる。来て、ジャック…」
きょとんとしたままの言葉を聞いたジャックは、あからさまに緊張を解いたようにほっとした表情を見せた。
この時の柔らかい雰囲気と素直な微笑みを、は生涯忘れることは無いだろうと感じた。




フローリングの上は背中も頭も痛いのでベッドに移動することにした二人。
改めて向き合うと気恥ずかしいが、伸びてきたジャックの手がやや乱暴にをベッドへ押し倒した。
「あ…」
先程の続きのようにジャックの唇がの首筋に埋まる。
唇が触れる甘いくすぐったさが蘇ってきた。
「ひ、あ…、ジャック…っ」
ちゅ、ちゅ…と小さな音を立ててジャックがの鎖骨のラインを啄むように辿っていく。
そしていけない手がゆったりと服の上から胸を形を崩していた。
「あ…っ、んっ…」
……柔らかい、な…」
「い、言わなくて良い…っ、んふ…っ」
恥ずかしい実況をされる前に、ジャックの頬を軽く持ち上げて唇を押し付けた。
先程交わしたキスよりも深く唇が重なる。
「ふ…ぅ、っ」
ジャックの唇の隙間からするりと舌先を滑り込ませたら、待ち構えていたジャックに柔らかく絡めとられてしまった。
口の中にジャックの味が広がって、それを夢中で垂下する。
「はっ、ん、…っ、んむ…」
ぬめる舌先を絡めあい何度も角度を変えては深くなるキス。
蕩けるようなその最中に、は自身の体の中心にずぅんと鈍い疼きを伴った熱を感じた。
爪先を震わせて快感の予感に身を委ねる。
「…んは…っ、キスだけで…感じちゃう…」
銀の糸で繋がったの唇が呟く言葉が、無意識にジャックの本能に爪を立てた。
それでなくても酔いで前後不覚気味の脳内なのに、溜め息交じりの艶めかしい声を聞かされたら堪らない。
うっとりと体を横たえるのカットソーをジャックは下着ごと捲りあげた。
そしてぷるりと柔らかそうに揺れるの乳房にかぶりつく。
「ひゃ…!あ、っ!いきなり…そんな…っ!」
ぬるつく温かな感覚にびくんと小さく体が跳ねた。
淡い快感が体内の疼きを揺さぶるように刺激する。
思わずはジャックの肩をきつく掴んでいた。
「あっ、あっ…」
ジャックは滑らかで香り立つの舌触りを堪能しながら、敏感に膨らみ始める乳首を舌先で捏ねる。
可愛らしい喘ぎ声が耳を掠める度に体温が上がるような錯覚を覚えた。
「はぁ…っ、ジャック…ん、ぅ…っ」
「っ、その声…堪らんな…。もっとだ…」
愛撫の手を強めるジャックは含んでいた乳首を唇で甘く食んだ。
空いている方の胸も、掌で弄ぶ。
「やぁっ、!ジャッ、ク…!待っ、あっ、あぁっ…!!」
更に敏感になった乳首をぢゅうううっときつく吸い上げられ、は背をしならせながらジャックの肩に爪を立てる。
その僅かな痛みが腕の中のの存在を強くジャックに知らしめていた。
故に、甘い。
「…、っ…」
「きゃっ!?」
煽られるままにしなるの背を抱き上げて膝の上に座らせた。
体重を支えるのはジャックの腕のみになったが、それを感じさせない程にしっかりと抱き締められている。
力強さにきゅうんと切なくなる胸の奥。
どきどきしすぎてジャックの顔を見られずにいたら、顎を掴んで優しく上を向かされた。
「ジャッ…」
何をされるか、なんて一瞬で理解したけれど気恥ずかしさから呼んだ名前は半分飲み込まされてしまう。
「んぅ…、ン…」
今度はジャックの舌が唇を割って入り込んできた。
口腔内をなぞった後、戦慄くの舌先に触れる。
「は、…ん…」
思わず漏れる吐息が混じって融けていくようだ。
溢れる唾液を飲み込んでジャックの首に腕を回して。
柔らかい唇が角度を変える度に官能的な感触を生み出してぞくぞくする。
ちゅく、と濡れた音を響かせてたっぷりとキスを与えられる合間に、ジャックの手がスカートの中へと侵入してきた。
「んンっ!」
口内で絡め合う感触だけでも腰が重くなる程感じさせられているのに、好色な指先が下着の上から割れ目をなぞって堪らずはびくりと背中を震わせる。
「ふは…っ、じゃ、っく、そこ、…は…」
「濡れた感触がする…」
「いやぁ…、言わないで…」
思わず手で顔を覆っては首を振った。
しかしジャックの指先は止まらない。
ふっくらとした花弁をふにふにとつつく。
「やんっ…ちょ、っと…」
「ここが…一番濡れている、な…」
抗議を含んだの声を聞き流して、愛液の滲んだ箇所にぐっと指先を埋め込むジャック。
「う、あっ…」
下着越しのもどかしい感覚にの腰がぶるりと震えた。
体の疼きはその遥か奥に存在しているの。
だけど、届くことはない。
「ナカがびくびく震えて…」
「もうっ…実況、しないで…!」
いやいやをするの体をベッドの上に改めて押し付けると、手探りで下着を引きおろす。
そして膝を折り畳むと、ゆっくりとその体を押し開いた。
秘密の部分を晒す格好にされて、抵抗しようと体を捩るが足を抱えられた状態では満足に動くことも出来ない。
逆に腰をしっかり掴まれてしまった。
「見ちゃだめ…っ、恥ずかしいよぉっ……」
「だが…溢れてくるぞ…」
悲鳴にも似たの声を無視して、蜜を舐め取るような仕草でジャックがの粘膜をぬるりと舐めた。
「あぁっ!うそ、そんな、とこ…っ!」
途端にびくびくと跳ねるの体。
感じる箇所に直接触れられる感覚に息が詰まりそうなほどの快感がの体を駆け抜けた。
「やあっ、あっ!あぁぁっ…!」
苦しい体勢だが与えられる快感は本物だ。
指先で押し広げた花弁を掻き分けてジャックの舌先が往復する度には嬌声を上げた。
「はぁあっ、あ…っ、そ、そこだめぇっ!」
不意に触れた敏感なの性感帯。
の反応が強くなったことに気付き、ぷくりと膨らんだ小さな突起に舌先を向ける。
「あ…―っ!!やぁっ、そこっ…!感じちゃ、あぁっ…!!」
たっぷりと唾液を含んだジャックの舌が這いまわる度にきゅうんと子宮が切なく疼く。
熱を帯びる体を持て余しは自由の利かない体を震わせた。
「はぁっはぁっ…あぁぁあ…、いいィ…っ、すごく…っ、イイ…っ!」
一番感じる部分を直接攻められて脳がどろどろになりそうな程の快感が走る。
だらしなく口を開けて涎を零すの秘部からはとめどなく愛液が溢れ出している。
その溢れた愛液をじゅるるっと吸い上げてジャックは顔を上げた。
「そろそろ、いいか…」
口元を手の甲で拭ったジャックがの足を下ろした。
されるがままのは、ぐったりとベッドに体を沈めたままで浅い呼吸を繰り返すのみ。
そんな彼女が微かに金属音を聞いたかと思うと、愛撫され続けていた粘膜に押し付けられる熱い塊の感触が。
生々しい感触に一瞬体を強張らせるの耳元でジャックが囁く。
「いくぞ…っ」
「…っ、あっ、あぁぁっ…!」
敏感に震える壁面を押し広げてジャックがずぶずぶと埋まりこんでくる。
想像以上の質量には目を見開いて仰け反った。
「うあっ、あぁ…っ、何、すご、いぃっ…!!」
声にならない声を上げてのたうつの体を押さえるように組み敷いて、腰を進めるジャックも背中を駆け抜ける快感に熱い溜め息を吐く。
「はぁっ…これは…、凄い感覚だ、な…っ」
の体内は熱くて柔らかく蠢いては絡みつく。
腰が蕩けそうだと思いながら、ジャックは夢中での奥へと自身を埋め込んだ。
「はぁあ…、深い、よぉ…っ、こんな、の…おかしくなる…っ」
苦しいぐらいに圧迫される下腹部を撫でながら、その存在を主張する
まさに今の行為を強調するかのようないやらしい仕草にジャックはごくりと喉を鳴らした。
「ならば…、おかしく、なればいいっ…」
の顔の横に肘を付いたジャックが腰を引いた。
ぴっちりと収まっていたソレを引き出す瞬間も、絡みつくの壁がにゅるにゅるとジャックを舐める様に刺激する。
そんな感覚に背筋を震わせながらジャックは勢い良くの体内に打ち込んだ。
「やぁっ、だめ、だめっ…!あ!あ!イイ、っ…うぁん、っ!おっきいよぉ…!」
「く、う…っ堪らん…っ」
快感に任せの腰を掴んで何度も揺さぶる。
「は、激し…っ、ん、あ、っ!…ひァっ…!!!」
乱暴な程にを蹂躙していたジャックがある一点を突き上げた時、一際大きくが仰け反った。
同時に体内の締め付けも強くなったのを感じてそこに重点を変えてみた。
すると。
「あはぁぁっ、イイ…っ、あ、ぁぁぁあっ、そこっ、すごいィィっ!!」
明らかにの声色が変わり、シーツを掴んで髪を乱す。
深々と咥えこむ体内もきゅうきゅうと蠢いてジャックを苛んだ。
「っ…食いちぎられそうだ…っ、う、く…っ」
「ん、あぁ…っ!あぁっ!あっあっ!…じゃ、っく、やぁっ…」
与えられる快感が強すぎて、立てられたの膝がジャックの腰を反射的に強く挟み込む。
しかし強請るかのようにも思えるその行為はジャックを更に駆り立てた。
「もっと、か…!?はぁっ…淫乱な奴だ…っ」
言葉で嬲られたにもかかわらず、は下腹の奥がずくんと重く疼くのを感じてしまう。
それは絶頂の予感。
「ち、違…っ、あっ!そんな、されたら…っ、イっちゃうぅっ…!!」
否定しながらも高められた興奮のままにはジャックに縋りついた。
ジャックはスピードを上げて彼女を攻め立てる。
体が激しくぶつかる音と粘膜の擦れる濡れた音が響く。
「あっ、あぁっ…!も、だめぇえ…っ、イくイくっ…!やぁぁぁあっ!!!」
一際深くジャックがの体を突き上げた瞬間、嬌声を上げては達した。
びくんとの体が跳ね上がり、がくがくと体が痙攣する。
「――っ!」
絶頂の直後きゅうううとの体内が締まり、その刺激でジャックも欲望をたっぷりと迸らせる。
これ以上ないくらいに腰を押し付けて射精されたために収まりきらなかった精液がどろりと零れて滴った。
内股を伝う温い感触には目を細めて溜め息を吐く。
僅かに罪悪感を感じるのは、ジャックを後悔させてしまうかもしれないということ。
自身は満ち足りていて何も問題は無かったから尚更であった。





「ついでに聞いちゃうけど…結局ジャックって初めてなの?」
そろそろ酔いも醒めているかもしれないので、答えをあまり期待せずは問うた。
の隣に寝そべったジャックは、腕の中に抱き寄せた彼女の髪を撫でていたが、質問にその手を止める。
朝の言い方ならば違っていてもおかしくないけれど…なんて考えているにジャックは小さな声で答えた。
「…初めてだった」
「…」
嗚呼、更に罪悪感。
酔いに任せて男の子の初めてを奪ってしまったなんて。
とはいえ初めてとは思えない先程の内容にジャックという人物の凄みを見たような気になるが。
「…ジャック…そろそろ後悔してるころじゃない…?」
誘いに乗ったことも。
有耶無耶なままに体の関係を優先したことも。
ジャックの性格上、こんな風に自信の胸の内が露見することは絶対に歓迎しないだろう。
「俺はどんな時でも自分の選択を後悔したことなど無い」
「…まあ、普通ならね。でも今日は酔ってたじゃない…」
「もし悔やむならば最初の地点での判断ということになるが、俺はに声を掛けられて嬉しかったから問題ない」
「!」
この素直な物言い。
まだ、酔っているのだろうか。
気恥ずかしくもはジャックの言葉を喜んで受けていた。
しかし。
「だからこそ」
「…だから、こそ…?」
「お前の『遊星を待てば良かった』という言葉が引っかかってな」
を抱き締めるジャックの腕に力が籠る。
「酔いも大分醒めた。先程は半分夢の中のような感覚だったが、今回はしっかりとお前を堪能させてもらう」
「ええっ、も、もうちょっと休ませて…」
「だめだ」
ジャックの体重が移動してベッドが小さく軋みを上げた。
圧し掛かってくる彼にも悲鳴を上げたいくらいだったが、それをぐっと飲み込んで。
「…もう…。でも、そういう強引なとこ、好きよ…ジャック」
せめてちょっとくらいはジャックの意表を突きたくて出た言葉。
果たして思惑通りになっただろうか。
悪戯っぽくが見上げたジャックの顔は今まで見たこともないくらいに赤くなっていて。
酔っている時よりも反応が素直だなあ、と思いながらは小さく声を立てて笑ったのだった。


――とはいえ、煽ったせいでこの後大変な思いをするのはの方なのだが。








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千鶴様、3000hitのキリバンリクエスト本当にありがとうございました。
頂きましたリクエストに添えていますでしょうか。
力不足な点も多々あるかとは思いますが、お楽しみいただけていたら幸いです。


こちらの作品は千鶴様へと捧げさせて頂く作品となっております。
無断転載は言うまでもなくご本人様以外のダウンロードなども厳禁です。
閲覧のみで宜しくお願い致します。