今日も今日とて貴方は私の実験に余念が無いのね。
「も…無理ぃ…」
「本当に?まだこれだけだよ?」
「ダメ…わたし、だめなの…」
体が熱い。
は制服のブラウスの前を肌蹴け、ぱたぱたと仰いで見せた。
ふっくらとした胸元がちらりと見え隠れする。
別段は気にしていない様子で、ブルーノは堂々とそれを眺めていた。
「お酒、弱いんだね。は」
「…そう、そうなの…。わたし…おしゃけは…」
何だか呂律まで怪しくなってきた。
「今どんな気分?」
「んー…ふわふわしてぇ…あっつい、かにゃぁ…」
『にゃぁ』!
嗚呼、なんて可愛いんだろう。
普段はどちらかというときっちりしっかりしている。
セックスの時は時間を掛けて念入りにするとこんな風にもなるけれど、普段からこんな風になることなど滅多に無い。
「僕のこと、好きって言ってみて」
「…ブルーノ、だいすき」
にっこりと無邪気な笑顔のサービス付きではブルーノに囁いた。
じたばたしたくなるほど可愛いではないか。
普段のキリっとしたも勿論大好きだったが、今のふわふわしたは本当にレアである。
「も、もう一回」
「んー…ブルーノ、すき、だいしゅき」
素直にリクエストに応えてくれる。
やはり呂律が非常に怪しいが、そこはそれ、可愛いから全く問題ない。
可愛すぎて我慢できないブルーノは思わずを抱き締めた。
「あぅ…ブルーノ、くるしい、よぉ」
「はぁぁ…可愛いよー、…」
ぎゅうぎゅう抱き締めて頬や唇に何度もキスをした。
しばらく大人しくそれを受け入れていただったが、やがて小さく身じろぎすると。
「ん、ん…ブルーノ…」
「何だい?」
恥ずかしそうに下を向いてはいるが、はっきりと口にする。
「あの、ね…えっち、したい」
「え…」
「だめ…?」
酒の所為でほんのりと赤くなったまなじり。
恥ずかしそうに逸らされた視線。
肌蹴た胸元。
「だめなわけないよ!僕がいっぱい可愛がってあげる!」
がはっきりと行為を請うのは珍しい。
それだけにブルーノは嬉しくて仕方が無かった。
「じゃあ早速…」
抱き寄せて行為に及ぼうとした瞬間。
遠慮がちにドアを叩く音がした。
『……ブルーノ、取り込み中悪いんだが、少し困ったことになった。今手は空かないか?』
遊星だった。
が来ていることを知っている遊星が呼びに来るということは余程の事態であろうと簡単に予想できる。
彼女が来ている時に部屋に来たことは初めてだから。
「ええっと、ちょっと待って!…、ごめん、少しだけ待っててくれるかい?」
「…うん、でも、はやく帰ってきてね…」
酔っ払いのわりに物凄く聞き訳がいい。
しかし心なしかしょぼんとした空気は否めず、ブルーノは本当に後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした。
『どうしたの?』
『昨日の計画通りにしていたら…』
部屋の外で交わされる会話が遠くなる。
一人で部屋に残された。
あれが彼の仕事でもあるので仕方が無いことだが、寂しいものは寂しい。
「…ブルーノ…」
ぽつっと呟いてブルーノのベッドにもたれかかった。
ぐるっと部屋を見渡して思うが、ブルーノは本当に持ち物が少ない。
記憶喪失だったという彼が、着の身着のままだったのは仕方が無いだろう。
しかし部屋の中は本当に殺風景である。
Dホイールにばかり興味があるといわれればそれまでかもしれないが…。
経済的に困窮しているこのチームで私腹を肥やすのはあ無理でも、もう少し何か置いてあっても良いような気がする。
「……眠…」
ぼんやりとそんなことを考えていたら何だか眠たくなってきた。
ブルーノはどれくらい掛かるんだろう。
眠ってしまっても起こしてくれるかな。
「…いーや、ねちゃお…」
皺になると困るので、は制服のブラウスとスカートを脱ぎ、キャミソールと下着だけになるともそもそとブルーノのベッドに潜り込んだ。
普段からセックスの際はこのベッドを使っているが、これはブルーノの寝ているところでもある。
ふわりとブルーノの匂いがしてはくらりと眩暈を覚えた。
「…ブルーノぉ…」
本人がいないことが急に寂しくなる。
眠かったはずなのに何となく体が昂ぶってきて頭が覚醒してしまった。
ブルーノの気配を求めて布団の中に潜り込む。
だけどブルーノの姿は勿論の事、温もりすらない。
…まあ、当然といえば当然である。
だけど。
何となく体がおさまらなくて。
は布団から頭を出して壁際に凭れかかる自分の鞄を見た。
あの中にはブルーノによって『持ち歩いてね』と意味不明の命令を受けたアレが入っている。
付き合っている男性の部屋で、その男性に贈られたそれで遊ぶなんて、何とも倒錯した遊びである。
誰もいないのにきょろきょろと周りを見てから、はベッドを出た。
そして鞄を引っ張り寄せる。
「…」
鞄の底の底。
押し込まれるように四角い箱が収められていた。
とりあえず、ブルーノがいない間、コレに相手をしてもらおうではないか。
元々そういう目的のものだ。
まだ一人で使ったことは無かったけれど、これで遊んで待っていれば帰ってきたブルーノも喜んでくれるかもしれない。
普段のであればこんなことを思いつきもしなかったろう。
しかし酒の力というものはすごい。
とはいえ、酒を飲んでいなければこんな欲求不満な気分にもなりはしなかったはずなのだが。
は床に置かれていた、自分の飲み残しの缶を手に取り、一口飲んでみた。
ふわっと体温が上がる。
ぼんやりと思考も霞んで良い具合に判断能力も鈍ったようだ。
「…ん…」
もう一口。
あまり飲んで気分が悪くなっては困るから、これくらいでやめておこう。
さて。
ブルーノから渡された箱を開ける。
何度かコレでブルーノに遊ばれたが自ら進んで使おうと思ったのは初めてである。
玩具を手にし、もう一度ブルーノのベッドへ。
「…あたし、へんたいさんかも…」
付き合っている男性のベッドに潜り込んで、その男性本人から贈られた玩具を使用し、自慰に耽る。
なかなかディープな状況ではないか。
でも…そんな状況と想像するだけでちょっと気持ちよくなってくるから不思議だ。
「ん、は…っ、ブルーノ…」
ごそごそと服の中に手を入れて、乳首を摘み上げた。
そしてスイッチを入れた玩具を下着の上からそうっと敏感なポイントに押し当てる。
「あっ…」
瞬間、弱い快感が緩やかに背筋を駆け上がった。
「はぁん…イイよォ…」
この胸を愛撫する手がブルーノのものだったらなぁ…と思いながら快感を追うように目を伏せる。
すりすりと下着の上から押し当てた玩具を上下させた。
「はぁ、はぁぁ…あ、あ…っ!」
敏感な場所が欲しいと涎を垂らすままに割れ目のあたりに玩具を押し込む。
「ひゃぁっ…ブルーノ…、かんじる…っ!」
酔いの回る体は殊更敏感になっているのか普段よりも濡れてくる。
じんわりと染みが広がる下着の感触。
「あはぁ…らめ、はぁん…ブルーノ…!」
堪らなくなってきて、は下着を脱ぐ。
そして、一人遊びで柔らかく蕩けた花弁の中にそれをそうっと埋め込んだ。
「んっはぁ…!ああ…っ」
酒という普段には無い効果も加わって、挿入だけでイってしまいそうだった。
「はぁぁ…っ、ブルーノ、おっきいのォ…」
ぞくぞくと駆け上がる内壁を擦る快感。
本物の彼ではないが、普段ブルーノに犯される瞬間に似た圧迫感にの体ははしたなくも悦んでいる。
深々とそれを頬張らせ、震える指先でスイッチを入れた。
「はぁっ、やああぁ…っ!」
瞬間、は背中をしならせた。
卑猥な玩具が唸りながらを犯す。
「くぅ、っ…ん…っ!ブルーノぉ…っ。好き、大好き…っ!はあっ、はああっ…」
姿もなく声もない恋人を呼びながら、は自分の肩を抱く。
ブルーノが自分を抱く瞬間を虚空に想い描きながら、びくんと体を跳ねさせた。
「っ、ブルーノ、イっちゃうよォ…、ん、んんっ!あはああぁ…っ!」
痙攣するように体が緊張し震える。
体の中を快感が駆け抜けていくのを、背をしならせて感じ取った。
「は、ぁ…はぁ…あぁ…」
余韻を残しつつ緩やかに弛緩する体。
うっすらと汗をかいたが、おかげで少し酒も抜けたようだ。
深い溜め息を吐いたは、少しだけ頭が冴えたのが分かる。
「何やってんの、あたし…」
バッと布団を捲り、中の玩具を引き抜いた。
「…っん、…」
イったばかりの体が僅かに反応するが、気付かない振りをする。
玩具を拭いて箱にしまい、もう一度鞄の底の底へ押し込んだ。
そして自分も居住まいを正して乱れたベッドを整える。
「これで元通り…」
はようやく安堵の息を吐いた。
ブルーノが戻って来なくて良かった…。
「お酒って怖いわ…」
缶の中の飲み残し…勿体無いけど流しちゃおうかな…。
またあんなことになっては堪らないし。
は缶を持ってドアを開けた。
「きゃっ!」
「わっ、!?」
目の前にいたブルーノに危うくぶつかるところだった。
どうやら丁度帰ってきていたようだ。
「びっくりしたぁ。ブルーノ、もう終わったの?」
「うん、もう大丈夫だよ。はどうしたの?缶持ったままで…」
「…あ、えっと、もう飲めそうにないから流しちゃおうかなって…」
「それなら僕が飲んであげるよ」
「えっ」
の手から飲み残しの缶を取り上げて、ブルーノは中身を一気に煽った。
それはもう、ジュースでも飲んでいるかのように。
「ちょ、ちょっと…一気に飲んで大丈夫なの?」
豪快に飲み干すブルーノだが、酒に弱いは心配になって彼を覗き込んだ。
すると、ブルーノがをきゅっと抱き寄せて素早くキスをする。
「…っ、ん!!」
ひやりとした液体が口移しで注がれる。
一瞬むせそうになったが、噴き出す訳にはいかないので堪えて喉の奥に流し込んだ。
「…けほっ、な、何するのよぅ…っ」
「最後の一口、お裾分けしただけだよ?」
「だから、あたし、おさけはぁ…ダメ、なのに…」
ふわふわとした高揚感が戻ってくる。
凄く、良い気分だ。
の腰に回された腕に力が篭もる。
「さっきの続きしようか」
後ろ手にドアを閉め、耳元で囁くブルーノの声は穏やかなのに低くて甘くて。
一人遊びを終えたばかりのの体に小さな熱を帯びさせた。
「あ、っ…ブルーノ…」
ベッドの中で焦がれた腕が優しくを抱擁する。
そして唇を奪われた。
重なるブルーノの唇が柔らかくの唇を食む。
「ん、…ふ」
少し強引にブルーノの舌がの唇を割った。
伏せたの睫毛の先が震えている。
柔らかく絡む舌、混じり合う吐息。
ああ、どうしよう…体温が上がってくる。
先程の一人遊びなんかよりももっと的確な形でブルーノを感じられるから。
「だめ、…ブルーノぉ…」
酸欠なのか感じすぎているのか、頭がくらくらする。
酒の影響もあるかもしれない。
「だめじゃないでしょ?ほら、もう一回僕にお願いしてみてよ」
「やだぁ…ばか…っ」
腰を抱いたブルーノの手がさわさわとの尻を撫で回している。
制服のスカートを捲り上げて下着の上から触れれば、薄い布越しに柔らかな感触がブルーノに伝えられる。
際どいラインを撫でながらするりと下着の中に好色な指先が潜り込んだ。
「…あれ…?」
「っ…」
ぴくんとが恥ずかしそうに俯く。
潜り込んだ先は柔らかく蕩け、今すぐにでもブルーノを受け入れたいと泣いているかのよう。
「すっごく濡れてるね…?どうしたの…?」
「やぁ…さわっちゃ、だめ…」
くちゅりと音を立てながらかき混ぜるように指を動かすブルーノ。
「あっ、あ…、くぅ、ぅ…っ」
足を震わせながらぎゅっとブルーノに抱きついた。
一人遊びの後の中は敏感に彼の指を締め付けながら震え上がる。
「ねぇ、…もしかして」
不意に、ブルーノはを見下ろしてにやりと笑ってみせた。
「プレゼントで遊んでくれたんだね?」
「…、な、んで…?」
ブルーノの言葉には目を見開いた。
すう、と目を細めたブルーノは殊の外いやらしく笑う。
「分かるよ。だってこんなに…僕が欲しいって涎垂らしてさ。中がねっとり絡みついてくる…」
言いながら愛液が纏わりつく指先を引き抜くと、敏感な突起を緩く撫でた。
「っは、あぁぁ…っ!」
「今にもイっちゃいそうだね…。これならすぐにでも大丈夫かな…」
足が立たなくなってきたを抱き上げてベッドに寝かせると、ブルーノはの足から下着を引き抜いた。
それは大きく染みが広がり、如何にが感じていたのかを伝えてくるかのようで。
「さっき遊星に呼ばれた後もしばらく勃ったままで大変だったんだよ?」
取り出した自身をぬかるみに押し付けてゆるゆる腰を揺らしながら、ブルーノはの耳元で囁いた。
「はぅ…っ、あっ、やあ…」
固く反り返る程に勃起したソレで敏感な突起をつつかれる。
いやらしい腰つきで行われる下品な愛撫。
なのに気持ち良くて。
切ないくらい中が疼いて。
は思わずブルーノの背中に爪を立てる。
ジャケット越しだから、気付かれなかったかもしれないが。
「ブルーノぉ…あぁ…なか、中に、きて、ぇ…」
「僕が、欲しい?」
「んっ…、うん、…ブルーノがほしいっ…!いれてぇ…犯してほしいの…!」
酒を入れられ、愛撫に蕩かされたは、自分が如何に猥褻な言葉でブルーノとの行為を請うたのか理解しない。
ただ、素直に欲しいことを口にしただけ。
「犯して欲しい、なんて、女の子なのにはしたないね。良いよ。望み通り激しく犯して、中でいっぱい出してあげるね」
ブルーノは愛欲に塗れた表情で、の足を抱えた。
そして押し付けた凶器での体を一気に貫く。
「ああぁぁぁっ!」
先に玩具によって遊ばれたとは思え無いほどに、の中はきつくブルーノを締め付けた。
ぬるぬると絡みつくの内壁。
「はあぁ…凄くイイよ…。すぐ出ちゃいそうだ…」
ベッドを軋ませながらブルーノは溜め息混じりに呟いた。
セックスのお強請りをにされてからしばらく経つ。
その間彼女を如何に愛してやろうかと考えていた結果がこれである。
欲求のわだかまった体を、の体は導くように絡みついて。
余裕を失うブルーノは快感に眉根を寄せた。
「あっ、あっ!あぁん、気持ち、イイっ!は、ああ、っ」
良いところだけを的確に突き上げられは声をあげる。
これだ、欲しかったもの。
玩具はこの力強い抱擁を与えてはくれない。
熱い体温を分かち合えはしない。
「ブルーノ!あっ、ああっ、すごいィ…っ、はげし、っ」
シーツを握り締め、背中をしならせて快感を訴える。
先程自らを抱き締めた腕を伸ばし、愛しいブルーノに抱き付いた。
焦がれた彼は、余裕の失った笑みを浮かべてにキスを落とす。
「…はぁ、あ…っ、ブルーノ、好きっ…だから、もっと…ぉ…」
どろりと蕩けた目で愛を請うがいやらしくて可愛くて、衝動の動かすままにブルーノはを突き上げる。
徐々にスピードを上げていく体が熱く波打った。
「あっ!あっ!だ、めっ…イっちゃうっ…!」
膝でブルーノの腰をキツく挟み込み、がくがくと腰を震わせる。
「っ、ああっ、…っ…!」
の絶頂に、ブルーノも腰を震わせる。
深々と腰を押し付けての最奥を犯すように、たっぷり射精した。
「はあっ、はあっ…ブルーノ、…」
隣に崩れるブルーノを覗き込む。
そこにはいつも通りの、お人好しな、しかし満足そうな微笑みを浮かべる彼がいた。
「あー…最高。は本当に可愛いね」
「…あ、ありがとう。でももうお酒は飲まないからね」
一人遊びの時と同じく、汗をかいたら頭が冴えてきた。
本当に何を言わせるのだ。
今更ながら死ぬ程恥ずかしい。
「えぇぇ…僕の前でならいつ飲んでくれても良いんだよ?」
眉をハの字にして、果てしなく残念そうな顔をするブルーノ。
それをちょっと可愛いと思う辺りは正常な恋人同士と言えるだろう。
しかし、ブルーノの実験的な愛情表現が、実は結構楽しいは間違いなく末期である。
この実験結果をブルーノが肯定的に感じているのなら、たまには酒を口にしても良いかもしれない。
大丈夫。
にとってブルーノの玩具にされるのは、決して怖いことではない。
終
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ここまで読んでくださってありがとうございました。