手を振ってくれた彼の笑顔を思い出すとちょこっとだけ後悔したくなる。
遠慮せずに運転してもらえば良かったかな。
ううん、ダメだ。
ブルーノだって暇じゃないし、チームメンバーにも迷惑をかけてしまう。
優しいから気に掛けてくれるだけなんだ。
彼が気になるからと言って甘え続けるのは絶対ダメだ。
それにそもそも、急に大口の予約が入ったりしなければブルーノが来る事は無かった。
「…その意味では感謝かも」
花屋を営む私の店に予約が入ったのは今朝の事。
イベント用のブーケが大量に欲しいという。
聞けば予算が低めで断られ続けているとか。
提示された金額は確かに厳しいものだった。
しかし花が好きで始めたこの仕事。
こんな時にこそ役に立てなくてどうするのだと依頼を受けた…までは良かったんだけど。
流石に手が足りなくて、お向かいに走った次第。
彼らが資金集めの為に色々細かい仕事を引き受けてくれるのを知ってたから。
っていっても今回は夕飯をご馳走するくらいが精一杯。
流石に無理かも…とダメ元で頼んでみたら。
『あ、じゃあ僕が手伝うよ。いいよね?遊星』
いつもの屈託の無い笑顔で立ち上がったのはブルーノ。
誰に手伝ってもらっても嬉しいけど、ブルーノが立候補してくれたから特別嬉しかった。
仕事とはいえちょっと長い時間二人きり…。
気になる彼と二人きりは緊張したけど嬉しくて。
『僕、手先には自信あったけど、の結ぶリボンには敵わないね』
言いながら彼もキレイにリボンを掛けてくれてた。
寧ろその指先にどきっとした。
何考えてんだろってちょっと頬が熱くなったけど、バレてはなかったよね…?
配達まで手伝ってくれようとして、ホント優しいんだから。
思わず思ってたこと素直に言っちゃったじゃない。
ブルーノは笑ってたけど。
…私のこと友達だと思ってるよね?
隣にいるブルーノのこと見てたの気付いてないよね?
『気をつけてね』
って言ってくれたような気がした。
当たり前じゃない。
今晩ブルーノが来るの楽しみにしてるんだから!
一人だけ誘うのはちょっと露骨かなって思って皆呼んじゃったけど…。
本当はね、二人きりの方が良かったの。
穏やかな貴方の笑顔をずっと見ていたい。
いつか叶うかな?