貴方に溺れたい


暫らくは他愛も無い話をしていた。
お互いを意識するような内容には一切触れない。
チームの事やお互いの事。
ブルーノは記憶喪失だから自分の事を語るのは少し難しかったけれど。
「はい、終わり。本当にどうもありがとう。コーヒーでも煎れるから飲んでいってよ」
「いいの?じゃあ、遠慮なく」
何となくこのまま帰るのは寂しいような気もするし、なんだか間抜けだよなぁと思っていたブルーノにはありがたい申し出だった。
恐らくあの3人はわざとこうしたのだろう。
二人きりになれるように。
誰にも言っていないのに何故ばれてしまったのか…などと考えてしても仕方が無いか。
お湯が注がれる音が小さく響いた。
嗚呼、いいな、こういうのって。
穏やかに過ぎる時間の中で彼女と家族になれるのなら、ずっとこうやって…。
「…気が早すぎかな」
「ん?なぁに?」
「いや、なんでもないんだ。ありがとう」
湯気の立つカップを受け取って、ブルーノは少しだけ口をつけた。
この関係にひびが入るのは本意ではない。
だけど。
このまま帰るのも、お膳立てされた身としてはどうだろう。
「はぁ…賑やかだったわね」
「そうだね。今日は本当にありがとう」
「ううん。私も楽しかったから」
も自分のカップを持ってきて席に着く。
そういえば今晩彼等が来てからが座ったのはこれが初めてだった。
ゆっくりとが椅子に腰掛けるのを見ていたが、やがてブルーノは口を開く。
「ねぇ、。聞いてほしい事があるんだ」
「…ん?」
少しだけ真剣なブルーノの声にも僅かに緊張して顔を上げた。
「僕、今凄く穏やかな気分だよ。なんだろうな、ずっとこうしてたいくらいの」
「…うん」
「今日、は僕のこと褒めてくれたよね。でもね、僕も全く同じことをに感じるんだ。の笑顔はいつも僕を明るい気分にしてくれる」
「…そんな、こと…」
は知らず頬が熱くなるのを感じた。
しかしブルーノは畳み掛けるかのように、そっとの手を握る。
「ぶ、ブルーノ…」
一気に部屋の温度が上昇したかのようだ。
体温が上がっていく。
目の前のブルーノをちらりと見た。
やっぱり穏やかな笑顔。
でも直視できなくて視線を外してしまう。
そんなにブルーノは小さく息を吸い込んで、はっきりと口にした。
、僕は初めてあった日からが好きです。ずっと、僕とこうやって過ごしてくれませんか?」
「!」
ブルーノはやっぱり真剣な目だ。
驚くと共にの呼吸は早くなる。
ブルーノ。
ブルーノが。
言葉が頭の中でエコーしている。
好き?
誰を?
私を!
「…あの、…?」
凍りつくに不安を覚えたブルーノが顔を覗き込むように見ていた。
「あ、ごめ…ちょっと、あの、びっくりしちゃって」
「…嫌、だった、かな…?」
「違っ!あの、えっと嬉しくて…ううん、光栄っていうのかな…私なんかにブルーノみたいな素敵な人…勿体無いから」
「何言ってるのさ。僕、より素敵な人見たこと無いよ?」
「も、もう…!ブルーノはそういうことさらっと言えちゃうから素敵なの…!」
ああ何を言い合っているのだ。
は軽く頭を振った。
ブルーノが精一杯の言葉をくれたのだ、応えねばなるまい。
全身全霊をかけて。
「ブルーノ、ありがとう。すごく嬉しい。私もね、同じ気持ちだったから」
「…えっ」
「好きです。ずっと貴方を見ていました。こんな私で良かったら、どうぞ、宜しくお願いします」
にっこりと笑うは、あの日のと同じだった。
!」
ばっと席を立ってブルーノはを抱きしめる。
「きゃっ!」
「ずっとこうしたかった!嬉しいよ、!」
「ぶ、ブルーノってば…」
ぎゅうぎゅう強く抱きしめられてまた体温が上がってくる。
「ねぇキスしていい?」
「ええっ!?」
「ダメ?」
「いや、ダメってことは…あの、うん…いい、よ」
おずおずとブルーノに向き直る。
恥ずかしい。
別に初めてじゃないのに。
でも。
そっとブルーノが近づいてくると心臓の鼓動が早くなった。
好きな人とキスするってこういうことなのね…。
ふわっと優しく触れ合う唇。
凄く幸せな感触だった。
だけど。
初めて同士のような触れるだけのキスはかえって気分を沸騰させる。
は僅かに躊躇ったけれど、ブルーノと一緒にいたい気持ちが勝ってしまって。
「ブルーノ…今晩…、泊まっていって…」
消え入りそうな声ではあったがはっきりと口にした。
「いい、の?」
「うん…ブルーノと、一緒にいたいの…」
俯きがちなにブルーノは抱く腕の力を強くした。
…凄く、嬉しい」
ブルーノはもう一度にキスをした。
「ん、…ふ、っ」
今度は遠慮の無い深いキス。
舌先で唇を撫で、柔らかく開かれたそこに滑り込む。
くちゅりと小さな音がした。
音に驚いたようにの体がぴくんと震える。
更に舌を絡めて上顎を撫でた。
「んっ、んっ…」
溢れる唾液を飲み込んで、ゆっくりと離れる。
唇を繋ぐ銀色の糸が深い口付けの余韻を残していた。
「ゴメン、僕、もう我慢できそうにないんだけど…」
「じゃあ、お風呂…行こっか…」
控えめな申し出に断る理由も無い。
ブルーノは無言で頷いた。


☆★☆


何度か夕飯に呼ばれていてもバスルームに入るのは流石に初めてである。
ちょっと緊張するような気がするのはそういうことも相まってかもしれない。
「あ、ん…」
頬や額にキスを繰り返してを脱衣場の壁に押し付ける。
そっと服の裾から手を差し入れて捲り上げた。
勿論それはセックスをするためではなく風呂に入るための行為である。
しかしやはりの体は緊張に強張ってしまって。
「は…恥ずかしい。自分でやらせて…?」
「ダメ。可愛いが見たいから僕がやる」
「ばかっ…!」
するん。
衣擦れの音を立てての服が床に落ちる。
続いてジーンズのボタンを器用に外すブルーノ。
下腹の辺りを触られると少し腰が疼くような気がした。
ぐい、とやや乱暴に押し下げられる。
も足で手伝った。
下着姿にされ、居心地悪そうには自らの体を腕で庇う。
「隠さなくて良いよ。凄く綺麗だから」
「ま、またそうやって…」
褒められるほどの体などしていないとは思う。
「本当だよ?」
「…あっ、…」
するりと肌を撫でるようにブルーノはを抱き寄せた。
そして背中に手を回し、ぷつんとホックを外してしまう。
最後に残されたのはショーツのみ。
好色な仕草での太股を撫で回し、そっと手をかけた。
「……っ」
するり…。
最後の一枚が脱がされる。
「ああ、なんか凄い悪い事をしてる気分だな…」
すとんとそれも床に落とすと、本当には文字通り裸にされてしまっていた。
立ったまま脱がせたブルーノには判らなかったようだが、既にそのショーツには僅かな染みが滲み始めており。
気付かれなくて良かったとこっそりは安堵した。
「ブルーノも、脱いでよ…」
一人だけ、というのはやはり恥ずかしい。
の言葉にブルーノもジャケットを脱いだ。
そして下に着ていたシャツも脱ぎ、上半身は裸になる。
「っ!ダメ、私先に入る!!」
「え?」
「目のやり場に困っちゃうわよ。脱いだら入ってきて!」
ブルーノの腕から抜け出してばたばたとバスルームへ。
残されたブルーノはぽかんとしていたが、やがてちょっと笑って残りの服を脱ぎ捨てた。
「まあ、僕的にもこれで良かったのかも」
流石に反応を始めた下半身を見られるのは恥ずかしいかも、と思っていたので好都合だったかもしれない。
とはいえ治まるまで待ってもいられないわけで。
ややの後にブルーノはバスルームを開けた。
はまだ浴槽に体を沈めてはおらず、背中を向けて待っていた。
中は湯気がある程度の視界を奪うものの、霧の中ほどではない。
よって、お互いの体を隠すものなど何処にも無いのだ。
「…二人は、やっぱりちょっと狭いね…」
背中を向けたままが言う。
ブルーノは腕を伸ばし、後ろからを抱きしめた。
「距離が近くていいじゃない?」
「ホント、プラス思考なのね。ブルーノって」
は首だけをゆっくりとブルーノに向ける。
漸く視線が交わった。
は微笑んでいる。
「そういうところが、好きなの」
素直に思いを口にするに愛しさが込み上げてくる。
二人はそっと唇を重ねた。
ちゅ…と唇を吸う音がバスルームに響く。
ブルーノはの体を反転させ、強く抱きしめた。
「好きだよ、。凄く可愛いよ」
言いながら何度も頬や耳にキスを落とし、その大きな手での胸を覆った。
「っあぁ…」
は背を軽くしならせて恥ずかしそうに体を捩る。
ゆるゆると揉みしだいて感触で遊んでいたら、掌にぷくんと膨らんだ感触が。
「感じる?」
「やだ、もう…聞かないでよ…」
掌で転がすように撫でる。
徐々にそれは固く膨らんで。
「あっ、ん…、ブルーノ…」
縋りつくようにはブルーノの腕を強く掴む。
「ああ、すごく美味しそうだね」
「えっ、…!あぁっ」
呟きに驚いている間もなくブルーノが体を屈める。
下から掬い上げるように乳房を持ち上げて、敏感に膨らんだ乳首をぱくりと口に含んだ。
「っやぁっ、あは、だめ…っ」
唾液を含んだ舌がざらりと乳首を撫で回す。
手とは違う、ぬるりとした感触。
温かな柔らかさ。
はっきりとした刺激はの体をぞくぞくと甘く痺れさせた。
「はぁっ…あぁぁっ、や、っぁ…」
「気持ち良い?」
問えばは小さく頷く。
「じゃあもっとしてあげるね」
「あぁ!」
ちゅぷっと小さな音を立てて断続的に吸い上げられる。
空いている方の胸も形を変えるように優しく揉んだ。
「あっ、あっ…」
焦れったいくらいの優しい愛撫。
熱い息を吐いて、胸に顔を埋めるブルーノの頭を抱く。
「はぁっ…ブルーノ…」
思わず強請るように胸を押し付けていた。
その気配を感じ取ったのだろうか。
ブルーノは浴室の壁にを押し付け、強く腰を抱く。
「っ!」
抱きしめられて密着した下腹には熱くて固い感触が。
ああ、ブルーノもなんだ。
そう思うと体の中心がじんわりと熱く震える。
「っ、あぁ…んっ!」
唇で胸の丸みをなぞり、つーっと舌を辿らせて臍の辺りも優しく撫でられて。
「やっ、ブルーノ…恥ずかし…」
内股を手で撫でられたかと思うと溶け始めたそこに舌が滑り込む。
ぬるり。
びくっとの体が跳ねた。
花弁を掻き分けるように舌が器用に潜り込んで来る。
「あっ、はっ…あぁぁぁ…」
「ん…濡れてきた、ね…?」
「やだぁっ、言わないで…!」
壁に背中を預けて荒い息で体を震わせた。
ぴちゃぴちゃと音が小さく響いている。
「ふ、っ…ンっ…あぁぁ、ブルーノ…あたし立ってられな…っ」
がくがくと足が震えてブルーノの肩を強く掴む。
「じゃあ、こっちに…」
ブルーノに促され、浴槽の淵に座らされた。
不安定だが幾分マシだ。
「んっ、…!」
改めて向き直ったブルーノがの首筋に唇を押し付けた。
吐息が耳にかかる。
「はあっ、あぁぁ…っ」
首筋を何度か唇で往復した後、ちゅうっときつく吸い上げてしまう。
「あっ、やだ…跡、見えちゃうじゃない…」
「大丈夫、髪で隠れるよ。でも、僕としては僕のものって見せ付けたいんだけど。見えるところにしても良い?」
「ダメっ!」
「じゃあ…こんなところはどうかな?」
急に体を屈めたブルーノは、の内股に突然キスをした。
「きゃっ!ちょ、やだ…っ!」
ねろりと舌で撫でたあと、柔らかなそこを強く吸う。
僅かな痛み。
しかしはその痛みに構う余裕は無かった。
跡を付けているブルーノの指が足の間に差し入れられたからだ。
先程散々舌で刺激を与えられたそこを指先が撫でる。
「やぁっ!だめ…っ」
新鮮な刺激に腰が跳ねた。
同時にとろりと愛液が滲み出す。
それを擦り付けるように、更にブルーノは指を動かした。
「あっあっ!!あぁぁっ…だめぇ…っ」
ぬるつく指が敏感な突起を捏ね回し、は悲鳴にも似た声を上げる。
「すごいね…どんどん溢れてくる」
「はぁっ、はぁぁ…っ、だって…そんな風に…っする、からあ!」
「気持ち良くなっちゃう?」
くちゅくちゅと音を響かせてブルーノの指が上下する。
擦り上げられるたびにびくびくとは体を震わせた。
「あっ、だめ…あぁ、イっちゃうぅ…」
甘えるような声でブルーノに縋りつく
ぞくぞくと駆け上がっていく痺れるかのような快感が堪らない。
「いいよ、イって?僕に見せて」
「やっ、そんなっ、やだ…っあ、あっ!」
きゅうんと体の奥が収縮するかのような感覚。
ブルーノがぐちゅりと突起を押し潰した。
「イく、イくぅ…っや、あぁぁぁっ!!!」
寒気すら感じる快感が体を突き抜ける。
がくがくと痙攣する体。
頭の中が真っ白になる。
「は、あっ、はぁぁぁ…っ」
絶頂による余韻で溢れた愛液が内股を伝う。
視線を落とすとブルーノと目が合ってはかぁっと頬を赤くした。
「やだ、もう…すっごい恥ずかしい…」
「どうして?凄くエッチで可愛い顔してたよ」
「っ!」
「ね、僕ももう我慢出来ないんだ。良いかな?」
軽い言い方だが視線は真剣だ。
僅かに視線を泳がせただったが、無言でこくんと頷いてみせる。
「…じゃあ、後ろを向いて…?」
「う、うん…」
流石に狭いバスルーム。
腰をかけていた浴槽の淵に手を突いて、ブルーノに腰を突き出す格好になる。
「入れるよ…」
「…ん。…あ、はっ…はぁぁぁ…ん…っ」
ぐぶ、と突き立てられたブルーノの欲望の塊。
内壁をこじ開けてゆっくりと侵入してくる。
「っく、狭い…な」
顔を顰めるわりに嬉しそうな声がの耳を擽った。
「はぁっ…おっきぃ、苦し…っ…はぁっあぁ…」
「はは、男として、すっごく褒められた、気分かも…っ」
「笑い事…じゃ、な…いぃ…あぁん…凄い…」
全部を飲み込みきったがいやらしく腰をしならせた。
「奥…あ、っ…だめ、ぇ…はぁぁ…あぁ…っ」
「だめ?嘘でしょ、こんなに気持ち良さそうなのに」
「んっ、は…気持ち、良くて…おかしく、なっちゃ…う…」
ぶるりと体を震わせるの体。
中が蠢いてブルーノをきつく締め付けた。
「う…は、の中…すっごいよ。動くね。このままだと僕もおかしくなっちゃうよ」
「え、あ…っ、やぁっ…あぁぁぁぁっ、ブルーノっ、だめえ…っ!」
の腰を強く掴んでブルーノが律動を始める。
引き抜かれては打ち込まれ。
その質量には息が止まるかと思った。
内壁を擦っては奥深く突き上げられる。
「んっやっ、あっああっ!やぁぁっ、うっ…はぁっ…!」
の唇の端からだらしなく涎が流れる。
浴室にはぐちゅぐちゅととんでもない水音が響いていた。
「ブルーノ…っ、イっちゃう!わた、私…っ、あぁぁっ、イっちゃうぅっ!!」
一度絶頂を味わった体は敏感に次の絶頂に達しようとしていた。
中が震えながらその予感を伝えてくる。
「いいよ、僕も…っ、中で…いっぱい出すからね…っ」
「んっ、だめ!もうっ…もう…っ、イく、イっちゃうっ、あっあぁぁぁっ!!」
が体を震わせながら背をしならせる。
信じられないくらいの快感が体の中を駆け抜けていった。
「うっ、あ、出る…っ」
ぎりぎりまで腰を密着させてブルーノもの中で欲望を解放する。
中に熱い迸りを感じてはうっとりと目を閉じていた。


☆★☆


「あー…ホント私が私を信じられない」

「何が?」

「どんな男と付き合っても中出し許すくらいセックスに溺れたことなかったのに…」

「そんなに気持ち良かった?嬉しいなぁ」

「あと、ブルーノが記憶喪失のわりにセックスの手順知ってることにも驚き」

「いやぁ、僕だって男だし。ある程度溜まったら抜かないと…ねぇ?」

「ねぇって。そこで改めて知識つけたわけ?違うでしょ」

「あはは…まあ、何でかなー。本能じゃない?」







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最後の最後だけ超長くなってしまいましたが、お題消化完了です。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。