僕の想い、君に届け


花屋のカウンターで、僕は最後の一つのリボンを結び終えていた。
「ふーっ、結構多かったな。ありがとう、ブルーノ」
「ううん。こんなことで良かったらいつでも」
ぱちんとリボンを切る小気味良い音が響く。
僕の目の前には小さなブーケが山のように出来上がっていた。
目の前の彼女、と僕が一緒に作ったものだ。
「いやぁ…ほんと全然関係ない仕事お願いしてごめんね…。しかもバイト代が夕飯とか…ほんと申し訳ない…」
「ううん。寧ろとっても助かるよ」
これは本当。
何だかんだ言ってお金が無い僕たちだから、まともなご飯が食べられるのはとっても有難い。
「でも本当にいいの?チーム全員がお呼ばれしても」
これは出来ればNOが欲しいところだけど。
僕だけ呼んでくれたらいいのにってこと。
そしたらプライベートでと二人きり。
今だって二人きりだけど、仕事中じゃちょっと…ね。
「良いに決まってるでしょ!ご馳走作らなきゃね」
にこにこして凄く可愛い。
チーム全員呼んでくれるとこも優しくて大好きだけど、もうちょっと僕のこと意識してくれてもなぁ。
気長に攻略すればいいか、な。
「さて、配達行こうかな!本当にありがとう」
「あ、…、その、まだ時間あるから運転くらいするよ?」
もう少し一緒にいたい僕は思わずそんなことを口走っていた。
時間はあって無いようなものだからあんまり遅くなるのは遊星に悪い気もするけど…。
遊星、ごめん。
僕もう少しと過ごしたいんだ。
「あは、ありがとう。でも悪いわ」
「遠慮しなくていいよ。運ぶの、大変でしょ?」
ちょっと食い下がってみたけど必死すぎかな、僕…。
寧ろ強引?
はちょっと考えた後、少し笑って。
「流石に配達までは時間かかりすぎるから遠慮するわ。でも、ブーケ積むの手伝ってくれる?」
「勿論だよ!」
車で二人きりは無理だったけど、もう少しの手伝いが出来るのは凄く嬉しい。
思わず口角が上がってしまう。
締まりのない表情をしているだろう僕を見て、がふわっと笑った。
あ、笑われちゃったかな…と思っていたら意外な一言が。
「ブルーノって、いつも穏やかだしにこにこしてて素敵ね。感じが良いって言うのかな?一緒にいるだけでこっちも明るい気分になるわ」
「そ、そうかな…」
に誉められた!
どうしよう、素敵なんて言われたの初めてだよ!(記憶喪失だけど!)
平静を装うけど嬉しくて仕方がない。
でも、そういうことをさらっと言えちゃうも凄いな。
君こそ僕を明るい気分にさせてくれる素敵な人だと思うんだ。
そんなが僕は大好きだ。
だけど二人で運んだら、花束はあっという間に車に全部収まってしまった。
「本当にたくさん手伝って貰ってありがとう。今晩楽しみにしててね。20時くらいに皆で来て頂戴」
「うん、分かったよ」
はじゃあ、と車に乗り込んだ。
手を振る僕に、彼女も手を振り返して車が出ていく。
後ろ姿に僕の気持ちを込めてみたけど、勿論聞こえる訳もないよね。
せめて事故とかしないで無事に帰ってきてね、なんて。
大袈裟かな?