接触には、成功した。
予定通り…誰一人ベクターの存在に気付く者はない。
拍子抜けする程に簡単だった。
しかし、これから暫くはつまらない人間としての生活が待っている。
そう思うと眩暈がしそうだ。
「ケッ…、めんどくせーケド暇潰しにオモチャでも探すかなァ…」
「本当に愛してンだぜ?だからこうやってお前に話しかけちゃったりしてるしよ」
待ち受け画面に声を掛けてベクターはにやにやと笑った。
人間界の連絡手段はこの端末を用いる。
不便で面倒だと思うこともあれば、面白いと思うこともあった。
人間界はとかくバリアン界とは常識の違う世界。
この世界から見ればベクターは異質物であり異邦人である。
仲間(と、呼んで適切なのかどうかはわからない)達とは別の方法からのアプローチを目論む一匹狼は今、倦怠と退屈の真っ只中だった。
そう、この世界は正直退屈なのである。
まあバリアン界が取り立てて楽しいところだったかと言われればそれはそれで疑問ではあるのだが。
勿論向こうの世界には無い目新しい物もそれなりにはある。
だが、遊馬と始め偽りの仲間という存在(反吐が出る!)に無自覚に見せかけた嫌がらせをして憂さを晴らすにも限界がある。
それなら他のオモチャを探すしかないじゃないか。
目星をつけたのは、神代璃緒と並んで美人だと評判の生徒だった。
名前は。
遊ぶなら、顔は良い方が良いに決まっている。
そして璃緒ほど目立たないのもいい。
璃緒は兄が良くも悪くも有名すぎるが、にそういう事は無い。
眉目秀麗でありがなら目立たない大人しい彼女はなかなか面白いオモチャになりそうだ。
そう思ったベクターは、無邪気な後輩の顔をして彼女にそっと近づいた。
どろりと濁る腹の内は決して見せず、おせっかいと時々的確な親切、そして無邪気な作り笑顔。
自分が楽しむために、ひいては退屈を殺すために…そういうことには決して労力を惜しまないベクターは、そうやって下拵えを続けていたのである。
涙ぐましい努力は実を結び、とうとうベクターの前に無防備な果実を曝け出したのだ。
かぶりついてくれといわんばかりの赤い実にぬるりとした甘い果汁をたっぷりと含んで。
ベクターの歯が思い切り立てられる瞬間を今か今かと待ちわびているのである。
「―――ぅ、あぁ…っ、待ちきれねぇえ…っ」
ベッドの上でベクターは背中を反らす。
オモチャ代わりの彼女をこの部屋に呼んでみた。
そろそろ熟れに熟れた甘い果実を収穫しようという算段である。
ほんの気紛れのつもりが、これが恋というものか。
ベッドの上をのたうちながら浅くなる呼吸に息を乱した。
人間態をとり続けているベクターの体の奥に渦巻く甘酸っぱいわだかまり。
胸をかきむしりたくなる程の不快感…これぞ人間のもつ愛情という感情なのだろう。
明日、真月零を可愛がるの前で本性を曝け出す。
腹の中に溜め込み続けた鬱憤の全てをにぶちまける。
露悪の快感を想像してはシーツを握り締めるベクターは、もう一度端末を手に取った。
「はぁあ…ちゃんよォ…幸せそうだよなぁ……。この顔が明日ぐちゃぐちゃに歪むんだぜえぇぇ…堪ンねぇ……」
待ち受けの彼女を緩く指でなぞったベクターは舌なめずりをした後、やおら体を起こして制服のベルトを引き抜いた。
妄想だけで反り返る程に勃起した自身を取り出すと、それを扱き始める。
自慰は人間態の時だけ得られる快感だった。
「く、は…っ、あぁ…っ、っ!」
との関係はまだまだ可愛いものである。
少し前にとうとうから初めてのキスをしてもらったところだった。
その時はもう胸の不快感を吐き散らすかのように彼女を押し倒して犯しつくしてしまいそうになったものだが、欲望に貪欲なベクターは脅威の精神力でそれを押し殺した。
露悪の快感、嗜虐の興奮、それはきちんと舞台を整えた上でたっぷりと味わいたい。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
自身を扱く手に力が篭る。
明日はを押さえつけて一発ブッかけてやるか。
それとも無理矢理口に捩じ込んでたっぷり飲ませてやるか。
「は、ははっ…、っ」
馬鹿馬鹿しいことだ。
そんな算段を立てずとも、全部実行してやれば良いんだから。
我慢なんかする必要は何も無い。
が泣きわめていても、助けを求めても。
彼女を助けるべきヒーローが彼女を犯すのだから。
「う、く…っ」
ぬちゅぬちゅと手の中の自身が粘質な音を立て始める。
滲み出た先走りの粘液が少しだけ指を濡らした。
「はぁっ、っ…くっ…あぁあっ…!」
びゅるっとベクター自身の先端から白い液体が吐き出される。
握り締めた自身が脈打ちながら不規則にびゅくびゅくと精液を放出してはシーツを濡らした。
例えて言えば高潔な白百合である。
誰しもが溜め息を吐いて遠巻きから眺める彼女を一番近い立場から手折るのだ。
後ろ昏い悦びの予感を抱きつつ通学路を歩くベクター。
いつもこの角を曲がったところで彼女を見つける。
に会うためにわざわざやや遠回りの道を選んでいるのである。
「さぁーん!」
後ろから呼び止めて駆け寄れば、優しく微笑むが足を止めて振り返った。
「さん!おはようございます!!」
「零君、おはよう」
そして空いた手で、そっとベクターの手を取った。
男女を問わない羨望の眼差しが真月零であるベクターに注がれる。
「あ、あの…さん…皆に見られちゃいますよぉ…?」
「良いのよ。こうすれば零君が誰かのものだって分かるでしょう?」
小さな独占欲を見せるを本当に可愛らしいと思う。
それを軽く飛び越えるほどの欲望を湛えた狼が隣にいることも知らず…とベクターは頭の中でにんまりと笑った。
しかしそんな独占欲を見せてくれるのならば、とベクターは小さく息を吸い込んだ。
そして。
「そんなことをしなくても僕はさんだけのものですっ!!」
それはもう周りに聞えるような大声で言ったのである。
当然周囲の好奇の視線は更にあからさまなものとなった。
「れ、零君…そんな大声で…」
流石に注目を集めてしまったことに狼狽えたが顔を赤くしながらベクターを諌める。
「あっ、すみません…僕よかれと思って…!」
「もう…。でも、そういうところが…可愛いんだけど」
人間という生き物は好意の押し売りに強く出られない。
『結果悪いことになったけれど、そもそも悪意はありませんよ』と言われた人間の反応はいつだって甘かった。
に至っては確実に短所であるはずのこの『よかれと思って』を可愛いとまで言ってのけるのである。
にやにやしそうになる頬を引き締めながらベクターはそっとに顔を近付けた。
さっきの言葉の後で顔を近付けるなんて空気を読めないどころの話ではないが、そんなことに構いはしない。
「ちょっと…零君…。近いわよ」
困ったように、しかし押し返すこともせずに受け入れるの耳に吐息がかかりそうなほど近付いた。
嗚呼、本能のままにこの耳に齧り付いてしまいたい。
髪の香りがベクターを煽るが楽しい時間はすぐそこまで迫っているので必死で押し殺す。
「さん、今日…本当に遊びに来てくれるんですか…?」
「!」
ぎくりとの体が強張った。
そして先程は咎めたが、理由を察したのであろう。からベクターに顔を寄せた。
綺麗な大きな目がベクターを射抜いている。
「…うん、行くわ…」
頷き肯定の返事を返すのその目には小さな決意の色まで伺える。
嗚呼、彼女も同じような気持ちなのだ。
熟した実をもぎ取ろうとするベクターの手を待ちわびているのだと。
そう感じ取ったベクターは体がぞくぞくと震えるかのような気分に陥った。
性的な絶頂にも似ているが、もう少し甘くて不愉快な何かが胸の中で暴れている。
興奮を感じの握る手に力を篭める。
「…嬉しいです。僕、授業が終わったら迎えに行きますよ。さんの教室まで」
「迎え…?」
「はい。一緒に帰りましょう。…ね」
ぎらりと光る獣の本性を上手く隠せたろうか。
ここ一番最高の笑顔を作ったつもりだったが、期待が膨らみすぎてベクターには判別できなかった。
嗚呼、羨望の眼差しというものはやはりとても気持ちが良い。
優れた何かを手に入れる欲求というものが満たされる瞬間である。
それの対象が手慰みのオモチャであろうと、他者を先んずることは大好きだ。
「ちょっと…照れますね」
しっかりと指を絡めてベクターと手を繋ぐ。
はにかんだ微笑みを向けてみたら、余裕そうな表情が返ってきた。
良い。
凄く良い。
今彼女はベクターよりも立場が上と信じてやまない。
例えば本心は余裕など無かったとしても、それを見せまいとする気丈なその精神。
実に良い。
「…こんなことで照れていたら…。私を家に誘った理由…分かっているのよ」
「!…何の、ことですか」
「とぼけなくても良いけど…。こんなところじゃ仕方ないわね」
往来であることを指し、公に口に出来ないことを言おうとしていることを示唆する。
あああああぶちまけたい。
そう、お楽しみには違いない。
彼女が想像しているようなことでは決して無いが、ベクターにとってのお楽しみには間違いないのだ。
「……さん、あそこに見えるのが僕の家ですよ」
見えてきた目的地をすっと指でさし示した。
嗚呼、愛しい愛しい彼女の目の前で露悪する瞬間が近づいている。
甘く滴る果汁を舐め取り、非情に牙を突き立てる瞬間が。
「ここまで結構歩いたと思うんだけど…零君は随分遠くから通っているのね…」
が不思議に思うのも無理はない。
自身の正体を隠すためにベクターは街外れの一軒家を乗っ取っていた。
住人は…『穏便』に追い出した。
何処でどうしているのかはベクターに知る由も無い。
空間を直接移動出来るベクターにとってここから学校までの距離など正直問題ではないのである。
を連れ立って歩いてみて初めてその距離を理解したくらいだ。
「ここら辺って…校区だったかしら…?」
首を傾げるの言うコークとは一体何を指しているのだろう。
良く分からないが誤魔化しておくか。
ベクターはの手を引っ張った。
「きゃっ…!ちょ、ちょっと零君…!?」
家の門の中にを強引に引き入れると、生け垣に隠れて抱き締めた。
「…さん……」
「零、君…」
縋るような媚びた顔でを覗き込めば、少し戸惑った表情のが目に入る。
しかし彼女はすぐにいつもの綺麗な笑みを浮かべると。
「仕方のない子ね…」
そうっとベクターの頬に手を添えると柔らかい唇を重ねてくれた。
の髪の香りと温かい感触。
嗚呼、ヤバい。
興奮しすぎて勃ってきた。
コレをの内股に押し付けて下卑た欲望を思い知らせてやりたい。
後少し…。
そっと離れていくは僅かな羞恥を滲ませながら視線を逸らした。
「…」
「うち…入りましょうか」
「うん……」
控え目に頷くの手を引いて、ベクターが先立つ。
ドアの先は真っ暗だった。
勿論誰もいないからであるが、はそれがまだ自分を飲み込む深淵だとは気付いていない。
待ちに待った収穫の時がきた。
ようこそ、昏い胸の内へ。
「此処が僕の部屋です。…さァ、どうぞ」
この家のものは大概前の住人のもので構成されていたが、この部屋だけは別だった。
色々手を尽くして自分好みに設えたのである。
そう、此処がベクターの城であり人間界の拠点だ。
通されたは少し緊張した風で辺りを見回す。
「綺麗にしているのね。意外だわ」
普段の明るくて可愛くて、ちょっとお節介な真月零のイメージとは随分違う部屋である。
まず全体の色調が何か暗いし、物も少なそうだ。
「酷いなぁ。僕ってさんの中ではどんなイメージなんですか?」
の後ろに立つベクターは、ニヤニヤしながら扉を閉めて問いかけた。
そんなベクターの表情には全く気付かない。
問いかけに答えるべく、ぐるりと部屋の中を見渡した。
「少なくとももう少し明るい色合いを想像していたわ。黒やグレーのものが多いのね」
「いやぁ、後は金色とかも好きなんですけどねぇぇ…!」
「きゃっ!!」
がばっとベクターの腕が後ろからを思い切り抱き締めた。
突然の行為には身を竦ませる。
「クックック…ヒャーハハハハ!!……やァっとこの時が来たぜぇ……ちゃんよォ…」
「れ、零君…?」
豹変したベクターの様相に驚き戸惑うをよそに、後ろから抱いたままでその髪に鼻先を埋めてみる。
甘い残り香がベクターの鼻腔をくすぐった。
「はアァ…いー匂いさせやがって…堪んねぇ」
もぞもぞとを抱くベクターの手が体をまさぐり始める。
何が起きたのか全く理解出来ないだが、体を触られることを黙って見過ごせるはずはない。
兎に角体を捩ってベクターの腕から逃れようとした。
「離して!アナタ何なの?!零君はどうしたの!」
混乱を極めるが叫べば、真後ろのベクターが嬉しそうに目を細める。
「お呼びですかぁー?零君ならここにいますよぉ?ほらァ、さんの目の前に!」
「…目の前、って……」
「あはは、頭の回転が遅いですね!よかれと思って教えてあげてるのに、そんなんじゃ困りますよォ。俺様が愛しの零君ですよー?ほらほら良く見てぇえ?」
ニヤニヤ笑いでベクターはにぐっと顔を近付けた。
茫然と色を失っていくの瞳。
嗚呼、これを待っていたのだ。
堪らずベクターはべろりとの頬を舐めあげた。
「ひ、っ…な、何をするの…っ」
ねろりとなすりつけられた唾液に不快感を示すかのようには顔を背ける。
「あっれえーそんな反応、僕傷つくなァア。人前で言えないよーなコト、しようと思ってたんデショ??それともやっぱやーめた?」
「っ…それは、っ……」
言い淀むを見てベクターは真月の顔を崩しながら口角をあげた。
「ばっかじゃねーの!のこのここんなとこまでついて来てやっぱやめたもクソもねーんだよ!!」
凶悪なベクターの化けの皮が見事に剥がれていく。
羊の顔をかなぐり捨てた狼の素顔に戦くしか出来ないを抱えてベッドに放り投げた。
「きゃあ!」
驚いて思わず声をあげてしまったが、さほどの衝撃はない。
この真月の豹変に変わる衝撃も殆ど無さそうだが。
ベッドのマットが沈む感覚には恐怖心を煽られながら体を起こす。
ベクターがよじ登って来たのである。
「嘘…、止めて……」
「ハァ?何つまんねーこと言ってンだ。今からがお楽しみだろーが!テメェもそーゆーコト期待してたんだろ?今更カマトトぶってんじゃねーぞ!」
後ずさるに文字通り襲い掛かるベクターは、彼女の細い手首を掴んでベッドへと押し付ける。
「あぁあ、夢にまで見たぜ…テメェを滅茶苦茶に犯してやる瞬間をな…!」
「!」
体重を使ってを押さえ込み、またしても顔を近付ける。
先程舐められた記憶が蘇ってきたはぎゅっと目を瞑って顔を背けた。
すると、無防備に白い首筋が晒されることになる。
ベクターは舌なめずりをすると、その首筋に顔を埋めた。
「っ、あ…!」
吐息が触れるぞわりとした感覚。
真月のものであったなら、もこんな複雑な気持ちにはならなかったであろう。
目の前の男が真月であるにしても、この豹変を遂げた真月はもうの知っている真月ではなくなっている。
「アナタ…アナタは…零君なの…」
「クク…どーだかなァ」
「きゃっ…!零君じゃないならやめて…!」
ニヤニヤと首筋に埋めた顔を持ち上げたベクターは制服の上からの胸を鷲掴みにした。
しかしそれによって解放されたの手が、強い拒絶を示してベクターの肩を押しやろうとする。
とはいえ、本気の男の体重を片手で押し返せるほどの力などあるわけがない。
抵抗される事も悪くはないが(それだけ真月零が彼女に愛されていたのかと思うとそれはそれで寒気がするほど興奮する)、そろそろ服従というものも欲しくなってきた。
ベクターは乳房を掴む手に力を篭める。
「痛…っ!」
びくんとが体を震わせベクターの肩をぎゅうっと掴んだ。
押し返すのではなく、掴む。
ソレが縋るになればもっと良い。
縋って求めて、自分だけを欲するようになるように。
その第一歩が服従である。
「大人しくしてりゃ気持ちイイだけで済むぜ?痛ェのヤだろォ?」
「…っ!」
「それとも、テメェは処女の癖に乱暴な方が好みな変態か?エェ?」
凶悪な笑みを近づけるベクターには息を詰めた。
ベクターを押し返そうとする手から意図せず力が抜けていく。
「そうそう…大人しくしてりゃ直ぐに済むからよォ…」
半分は嘘である。
この一回は直ぐに終わってしまうかもしれないが、一回で収まるとも思えない程の欲望がベクターの中にあることを自覚している。
しかし二度目のことは告げない。
そもそもベクターには、もうをこの家から出すつもりはないのだ。
それならばこのベクターの『直ぐに終わる』という言葉にどれだけの価値があるのか…。
そんなベクターの考えなどまるで分からないは言葉の裏までは当然読めなかったようで。
ずるりとベクターの肩から落ちた腕を、諦めとともにベッドの上に投げ出した。
先程ベクターは『夢にまで見た』と言ったが、だって真月と結ばれる瞬間に胸を焦がしていた。
それはきっと幸せで楽しくて蕩けるような時間なのだろうと思っていた。
彼に愛され、彼を愛し、抱き合う瞬間に触れ合う肌の熱や感触はきっと味わった事もない至福と充足をもたらしてくれるのだろうと思っていた。
初めてキスをした夜は真月の事を考えて眠れなくなるほどだったし、翌日顔を合わせた時に気恥ずかしさを押し殺した事を今でも鮮明に思い出せる。
「ンう…っ!」
なのに今、受けた事もないような乱暴なキスをベッドに押し付けながら真月本人から与えられている事実。
ぬめった舌が息も出来ないほどにの口内で暴れている。
「ふ、…っ、う、うぅ…っ、ンはぁっ…!」
息苦しさに生理的な涙を浮かべながらは荒い呼吸を繰り返す。
「まだだぜェ…、オラ、たっぷり飲めよ」
「っ、く、う…!」
解放されたと思ったら、間を空けては何度も唇を重ねられる。
その度に器用に唇をこじ開けられ、抵抗も出来ぬままに送り込まれる唾液を必死で垂下した。
触れ合う感触は真月本人のものに相違ないと思う。
数えるくらいしか交わしていないキスが、そう信じたくもあり否定したくもある事実を容赦なく突きつける。
「んふ、ぅ…っ!」
「っは…、いいねェ…素直なテメェに御褒美だぜ」
「…えっ」
一層凶悪に笑ったベクターの言葉には緊張を禁じえない。
次は何をされるのか。
身構えるの制服をベクターはおもむろに捲り上げた。
一瞬拒絶を口にしてしまいそうになり、は唇を噛んでぎゅうっと目を瞑る。
大人しくしていれば直ぐに済むと言うベクターの言葉を信じて。
そんなに意外な声が掛けられた。
「嗚呼、さん…すごく綺麗です…!」
思いも寄らない声が聞こえ思わず目を開けると、そこにはを組み敷く真月の姿があった。
「こんなさん見たら、僕…もう我慢できません…!」
「れ、零君…っ!あ…っ!!」
不器用だが性急にの下着をずり上げてその胸をそうっと掬い上げるように触る。
「っ…、あぁ…、っ!な、何で…っ」
「だってこんなに僕を誘っているじゃないですか…。よかれと思って触っちゃいました…!め、迷惑でしたか…?」
申し訳無さそうな表情には真月を思い切り感じとり、急に体の中が熱く沸騰してくるような気分になった。
愛しい真月が目の前にいる。
ぶわりとの中に沸き起こる感情の嵐。
「迷惑なわけないわ…」
「それなら良かったです!ところで、こういうのはどうですか?」
やわやわと掴んだ乳房の頂を真月の指先が抓み上げる。
瞬間、電流が走るような感覚がの足下から這い上がってきた。
「ひゃぁっ…!」
びくんと背中をしならせる。
「あっ…あぁ……っ」
優しくも意地の悪い指先がの乳首を転がしては柔く押しつぶした。
刺激されてぷっくりと膨らみ、敏感に充血する。
「ん、あ……零、君…っ」
うっとりと真月の愛撫に身を任せは甘い溜め息を吐く。
「…さん、とっても綺麗です…」
言いながら真月は体をゆっくりと屈めていった。
指先の愛撫に震える乳首を唇でも愛してくれるのだ、と思い至ったはどきどきしながらその瞬間を待つ。
しかし。
「零、君…?」
いつまで経っても彼の唇は触れない。
不思議に思ったが視線を向けると、胸元で俯いていた真月の顔が勢いよくがばっとあがった。
「なァんつってェェエ!!!ヒャーハハハァ、ちゃん感じちゃったのォオ?!あー馬鹿すぎて涙出るうぅぅ!!!そもそも真月なんていねぇのにまだ夢見ちゃってばっかじゃね!?」
「な…っ!」
ベクターの嘲笑にの頬が羞恥に赤く染まった。
そう、もっと意識すればいい。
真月とベクターのギャップを突きつけられる度にきっとベクターを忘れられなくなる。
「ンじゃ、真月の次は俺様の番だよなァ?カワイーカワイー彼女ってやつを他の男にいじくられたままってのはいただけねぇしなァ…?」
元が同一人物なのだから他の男も何もないが、に更に『ベクター』を意識させるためにわざと口にした。
掬い上げたの柔らかな胸にかぶりつく。
「あぁ、んっ…!」
先程まで指に弄ばれて敏感になった乳首をねっとりと舐めあげた。
「やっ、あ…あはぁぁ……」
堪えようとしても堪えきれていないの甘い溜め息がベクターの鼓膜をくすぐる。
だけど最後の僅かな拒絶を表すかのようにベクターの肩を掴んで爪を立てているのである。
嗚呼なんて可愛いんだろう。
堪らなくなったベクターはの乳房に柔らかく噛み付いた。
「ひあっ!や、やめて…!」
立てられた歯に恐怖を覚えたが体を震わせる。
ベクターは胸元から顔を上げると、肩の上のの手を掴んだ。
そしてその掌にキスをする。
「クックック…カワイーことするからよ…つい興奮しちまったぜェ…」
「…っ!」
先程垣間見た真月の顔に、僅かに芽生えたベクターを拒絶する心を見抜かれては顔を赤くする。
そう、お見通しなのである。
これ以上ないほどに愛したの心の中など、透明なガラスで出来ているも同然だった。
力を篭めれば簡単に割れそうなそれを割らぬようにオモチャにするのが今の遊び…抱き締め、放り投げ、舐めて、歯を立てて…でも壊さないことが自分の中のルールである。
掴んだの掌にキスを繰り返しながらつうぅっと掌を舐めた。
くすぐったかったのだろうか、が少し眉を顰め指先がぴくりと生理的な反応を示す。
その可愛らしい反応を示した指先をベクターは唇で含んだ。
神経が集まる感覚の鋭い指先をれろれろと舐め回す。
「…」
細くて繊細な指の輪郭をなぞり、ふっくらとした指先を舐め、時折触れる硬質な爪の感覚を楽しんで、の表情を盗み見た。
彼女はやや不快そうながらも諦めたように唇を結んでベクターを見ていた。
嗚呼やはり可愛い。
自由にならないその雰囲気が堪らない。
「遊びはこの辺にしとくか…」
「…何?よく聞こえないわ…」
ぼそりと呟いたベクターが口の中からの指先を引き抜いた。
そして酷薄にニタリとに笑って見せた。
「もっとエロい遊びしようぜって言ったんだよ!」
掴んでいた腕を思い切り引き寄せれば、油断していたの体がベクターの方へと倒れこむ。
それをしっかりと抱きとめて齧りつくように首筋に顔を埋めた。
細い滑らかなラインがベクターの男性的な部分をくすぐる。
髪の香りが甘ったるく誘うのも堪らない。
「ふ、あ…っ」
首筋を辿るベクターの唇の感触にぞわりと冷たいものが背筋を駆け上がった。
真月以外の男に感じるているようで拒絶したかったが、それでも体は初めて与えられる快感に素直になり始めていた。
腰を抱くベクターの手が無遠慮にスカートを捲くり上げてのお尻を撫で回す。
「ひゃっ…!」
性感を呼び起こすような手つきで這い回る感覚はいやらしい。
その丸い輪郭をなぞるように何度も往復していたが、やがて下着の隙間からするりと好色な手が差し込まれた。
「っ、やぁ…っ」
直に触られたということにはびくんと体を緊張させる。
慣れない感覚に服従せねばと思う反面、心と体の反動も大きいのだろうとベクターは推測する。
それでなくても先程真月の顔を見せてやったところであれば尚更か。
しかしそんなを奪うのが良いのである。
ベクターはのお尻を撫で回しながら、制服の胸元に顔を押し付けた。
「きゃっ!」
「やーらけーなァ…。さっきも結構気持ち良さそうだったしよ。コレがいいのか?」
言って制服の上からはむっと乳房を咥える。
その仕草に先程の快感を思い起こされてぞくりとしたは少しだけ背中をしならせた。
無意識の行動であったが、あたかも強請るかのような動きにベクターは更に嬉しくなる。
むにゅむにゅと柔らかさを堪能するように鼻先をの胸に擦り付けた後、制服の裾を捲り上げた。
「いただきまァす」
先程よりも明確な意図を持ってかぶりつきちゅうちゅうと乳首を吸い上げて刺激を加えた。
ねろねろといやらしく舌先で弄びながらの様子を伺う。
「ん、ふ…っ、あ、はぁ…はぁぁあ…っ」
溜め息のような喘ぎを漏らしながら何度も背中をしならせてシーツをきつく掴んでいた。
緩急をつけながら唇で乳首を扱くように食んでやると反応が強くなる。
「や、はぁぁ…っ、あっあっ…!は、あっ…はぁ…っ」
荒くなるの呼吸には間違いなく快感を訴える色が混じっていた。
事実、自身も体の奥に芽生え始めた甘い疼きがもどかしくて仕方が無かった。
ベクターの舌が乳首を弾いて、ちゅうっとリップ音を響かせながらそれを吸い上げるとき、内股がじんわりと熱を持つような感覚を覚えるのである。
続いて襲い来る快感にじゅわっと体の奥から何かが溢れてくるのを感じた。
「はぁっ、何…溢れて…きちゃうぅ…っ」
の甘い声に誘われるようにベクターはお尻を撫でていた手を、ゆっくりと秘密の場所へと辿らせていく。
先程からのの喘ぎ声に欲情と嗜虐の気分はたっぷりと煽られていた。
「っ、ひィ…、っ…や、やだ…零、くん…っ」
自分でも触れた事のないような場所に触れようとしている指先を感じて、はいやいやと首を横に振る。
頬を羞恥に赤く染め、眉を下げて懇願する様は堪らなく可愛い。
「…そんなに嫌か?」
「は、恥ずかし、い…から…。お願い…」
「ふぅん?」
俯きながらも必死に訴えかける様にベクターはの下着の中から手を引き抜いた。
そして僅かにだが体を離す。
…いやに聞きわけが良いじゃないか。
さっき真月の顔を見せた時と同じだ…と気付いたが距離をとろうとした時には既に時遅く、ベクターの手ががしっとの膝を掴んでいた。
「そんなに恥ずかしいなら直接見てやンぜ!どォんな恥ずかしィことになってるんでしょーかねぇえ?ヒャヒャヒャヒャ!!」
「!」
そのままの膝を持ち上げて、彼女をひっくり返すとその足を片方だけ肩に乗せてしまった。
強制的に足を開かされるような格好になりは慌ててスカートを抑える。
しかしそんな抵抗など無意味に等しい。
隙間から入り込んだベクターの手がの下着をあっさりと引き下ろしてしまった。
「やあぁっ、…見ないでぇ…っ」
思わずは両手で顔を覆う。
肩に掛けた足の内股に吸い付いては跡を残していたベクターだったが、の花弁を押し広げて横目にその状態を盗み見た。
ぬるりと愛液を含ませたの秘密の場所。
これを味わうためにこれまで時間と努力を注ぎ込んだのだ。
赤く充血して震えるそこにベクターはゆっくりと顔を近づける。
「くくく…すっげぇな。真月じゃなくてもちゃァんと感じるんじゃねぇか。エェ?は淫乱だなァ?」
「言わ、ないで……」
消え入りそうな声で弱々しく否定するものの、ベクターの愛撫に蕩けた体は如何に彼に感じさせられたかを物語っていた。
その滲んだ愛液をベクターはぬるりと舐め取る。
「んンっ!」
粘膜を舌先で刺激されたが体を震わせた。
ぺちゃ…と水音を立てながら割れ目を往復するベクターの舌。
なんてことをされているんだと戦く反面、卑猥な行為に性感が高まってしまう。
恐々と視線を向ければ真月が自分の足の間に鼻先を埋めている絵が目に入ってくるのだ。
「あ、ぁぁ…ン…っ」
切なげな溜め息交じりの声が漏れる。
羞恥と快感が脳内で掻き混ざり、の理性を融かしていった。
「はあ、あぁ…それ、だめぇ…っ、れいくぅん…っ!」
「何がダメだ。腰揺らしながら言ってンじゃねぇぞ」
「だ、だって…体が勝手に…」
無意識のうちに快感を追いかけていたことを指摘されて恥ずかしくなるが、それすら今は甘い快感に変わる。
抱えた内股が僅かに引き攣るのを見てベクターは蔑んだ視線をに向けた。
「ケッ…処女の癖に淫乱の仕方ねぇ女だなァ…。こーゆーのも好きなんだろ?」
言うなり冷たい視線を向けたままのベクターの中指がぬぷりとの中に埋め込まれる。
「ひゃあっ!な、何…コレ…っ」
いきなりの異物感に僅かな痛みを感じながらもの体内は貪欲にベクターを飲み込んだ。
「おーおーずぶずぶ食っちまうじゃねーの。マジでビッチかテメェ。オナニーやりまくってんのか?」
「そんなこと…っ、したことない…っ」
下品な言葉を吐きかけられたは苦しげに顔を顰めながら反論する。
たった一本の指ですら息苦しい程で、この先が僅かに不安だった。
そんなをニヤニヤしながら見ていたベクターは更に続ける。
「あっそー。でもよォ、俺はで抜きまくってンだけどな!オナニーのオカズはいっつもちゃんなんだぜぇえ?」
「!」
思いもよらないベクターの告白に不覚にもは思いきり感じ入ってしまった。
愛した男(実際には別人も同然だったが)が夜な夜な自分で興奮していたのだと思うと女の部分がきゅうんと切なく反応する。
それに呼応するようにの体内がベクターの指をきつく締め付けた。
「おっとォ…何だ何だァ?すっげー締め付けじゃねぇか。今の感じちゃったァ?」
「…」
ばつが悪そうに視線を逸らすの態度に堪らなくなったベクターは体内から指を引き抜き、に覆いかぶさった。
「さァて、そろそろ本番といこうじゃねぇの!」
嗚呼、とうとうなのか。
ベクターにとっては待ちに待った、にとっては出来れば来ないで欲しかった、その瞬間。
既に抵抗する気も失せたの足の間に体を押し込むと、ベクターは制服のベルトを引き抜いた。
「…っ」
金属音に緊張していたら、ややの後に足の間に熱い塊が押し付けられたのを感じた。
それが全て彼の欲望なのだろう。
漠然とした恐怖を感じながらも衝撃に耐えなければと緊張していたら、不意にベクターが体を屈めた。
ぴったりと体が密着したかと思うと、耳元で囁く。
「力、抜いていてくださいね」
紛れもない真月の甘い声。
どきんと心臓が跳ね上がった瞬間、熱い塊がの体内に埋め込まれたのである。
「うあっ…!」
思わず声を上げてしまう。
指など比べ物にならない質量のものが狭い入り口をこじあけて侵入してきた。
「うっはァ…!コレやっべぇ…」
余程気持ちが良いのか密着させた体を揺すってベクターはぐいぐいと中に入り込んでくる。
しかしは快感よりも痛みが先立ち、体を捩って必死でそれを受け入れようとしていた。
「んくぅ…っ、れい、くん…っ、あっ、まって…っ」
が、抵抗がきつくてなかなか先に進まない。
逃げそうになるの腰を非情にもきつく掴んで更に腰を進めようと試みるが、痛みに顔を顰めるの体は頑なだった。
「はぁっ、力抜けって、言っただろーが!」
「そんなっ、急に言われても…っ」
「ったく手間かけさせんじゃねーよ…!」
面倒くさそうに言いながらもベクターはの胸を掬い上げて乳首にちゅぷりと吸い付く。
「ひゃぁんっ!あ、あぁ…っ、それ…っ」
先程散々乳首を弄られる快感を教え込まれたの体がまた柔らかく蕩け出した。
「あっ!あっ…!」
ぺろぺろと嘗め回されての体から力が抜ける。
その瞬間を見逃さず、ベクターはの中へ自らの楔を打ち込んだ。
「あぁぁぁっ…!」
衝撃にしなる体が、反射的にベクターを締め上げる。
「っく、は…ァっ…あースゲェ…、オナニーなんかよりめちゃくちゃイイじゃねーか…」
痛みにびくびくと脈打つの内壁が搾り取ろうとするかのような蠢きでベクターを苛んでいた。
油断すると持っていかれそうだ。
「堪ンねー…動くぜェ…っ」
返事を待たないベクターの体重の移動でぎしりとベッドが軋む。
勢い良く腰を引き、今しがた打ち込んだ自らのものをずるんと引き出した。
そして戦慄くの中に押し込む。
「うぁんっ…!」
圧迫感にがびくんと腰を跳ねさせる。
それを押さえ込むように体重を掛けながらベクターは腰を使った。
「はぁっ、あぁっ…零君……っ」
乱暴に組み敷かれるは苦しげに浅い呼吸を繰り返し、その嵐のような行為を必死で受け止めている。
「くぅ…ン、あっあっ…零くぅん…苦し、…っ」
「嘘吐けよ…、ぐちゅぐちゅに涎、垂らしてるじゃねぇか…。これも好きなんだろ?」
「ああっ、!胸、だめえ…っ、はぁ、んっ…!」
不思議なもので。
舌先で翻弄されながら体内を彼のカタチに広げられる瞬間に爪先が浮き上がるような浮遊感を感じる。
それはぞくぞくと気持ちが良くて脳髄の芯が蕩かされるような気分に陥った。
蹂躙されているはずなのに、それでも体は止まらない。
「あぁぁ…っ、何、コレ…っ、だめ、だめなのにィ…っ」
ベッドの軋む音にすら激しさを感じる。
目の前の男が誰かなのではなく、何を与えてくれるかということ。
馴染み始めた体に押し込まれる衝撃にはベクターの腕をぎゅうっと掴んで縋りついた。
密着した体にの腕が絡みつく。
「零、くん…っ…零くぅん…」
それでも熱に浮かされた視線を揺らして無意識に真月の名前を繰り返す様は憎らしい。
罰を与える気分できつく乳首を抓みあげると、
「やぁん…そこだめぇ…気持ち、イイ…っ」
甘い声で更にベクターを抱く腕に力を込めてくる。
愛という胸の内の不快感を刺激する行為にベクターはゾクゾクした。
この溺れきったの態度に、服従を感じとったのである。
そろそろ、最後の仕上げといこうか。
「くっ、は…ああああ、スゲェいいぜェ…っ、中で、出してやるからよォ…っ」
ベクターの言葉にぎくりとの表情が強張った。
この行為の結果を突きつけられの頭が現実を思い出す。
「やっ、嘘、…止めて…っ!」
「ばぁか、こんなの、ほんの序の口だぜぇえ…!これからテメェが孕むまで…っ、犯しまくってやらァ!!」
「零、君っ…!許して、おね、が…ぁ…っ、いやぁっ…」
実際のところ、バリアンである自分の子をが宿すとは全く思えない。
しかしを追い詰めるだけなら極めて効果的であった。
急にベクターの肩を押し返すように抵抗をするが、その反応はベクターを喜ばせるだけである。
が身を捩って逃げようとするのを押さえつけて更に腰を打ちつけた。
「はあっ、はあっ…しっかり受け止めろよォ…っ」
「やだ!零君!零君…!!」
「出すぜ、…ァ、出る、出る出る…っ」
逃げようとするの腰をきつく掴み、ギリギリまで奥深くを抉りながらベクターは背中をしならせた。
瞬間、は体内におぞましい温もりを覚える。
「っ!」
ベクターを押し返そうとするの手がぶるぶると震え、力を篭めることが出来なくなった。
「…あ、あぁぁ…」
縋るかのように真月の肩を掴み、本人であるベクターによって犯されたという事実にの目には涙が浮かぶ。
そんなことも構わずベクターは更に何度か打ち付けてたっぷりと吐き出し切った。
自慰を覚えた頃はなかなか自堕落な快感を人間は得ていると思ったものだが、セックスというものはそれ以上である。
可愛くて愛しい生き物を貶めるというこの行為はクセになりそうだとすら思った。
震えながら目を見開いて涙を零すという彼女の演出も最高だった。
これ以上ない興奮と快感を得て、更に夢にまで見たの体を蹂躙し尽くし満足げな溜め息を吐くベクター。
脈動を終えた楔を引き抜くと泣きながら放心するの横に寝転がった。
「どーよ、処女喪失の感想はよォ?」
そんな言葉を投げながら殊更優しく頭を撫でるのである。
「…っ、触らないで…!」
一瞬真月が戻ってきたのではと勘違いしそうになる。
しかしベクターの手をはねのけたは重い体を必死で起こしてベッドをおりると、ドアに向かって手を伸ばした。
震える足がもつれそうになる。
だけどドアノブを掴んだ。
急いでドアを引く。
薄っすらと隙間から見える部屋の外の暗闇。
しかしそれくらいのところで後ろから伸びてきたベクターの腕がドアを押さえ込んでしまった。
そして素早くがっちりと腰を抱き締めるベクターの腕に再び恐怖する。
「嫌、っ…!離し、はな…してぇえ…っ!」
したばたもがきながら振り解こうとするがそれをベクターが許すわけもない。
「ばァか。逃がすかよ」
耳元で囁かれた昏い声色に全身が粟立ち、体が強張る。
硬直するを後ろから抱き締めた格好のベクターは、そのまま首筋に顔を埋めた。
「っ…!」
先程の甘苦い感覚を彷彿とさせられ、は息を詰める。
そんなに追い討ちをかけるようにベクターの手が制服の隙間から潜り込んで来た。
下腹を撫で、やんわりと胸を掬い上げる。
「くう…うぅ…ん…っ」
優しいタッチで乳首を抓み、きゅうっと指先で転がすように刺激をするベクター。
先程まで情事に溺れていたの体が熱を呼び覚まし始める。
せっかく消えかけた疼きがまたしても蘇ってしまう。
「や、あ…あぁっ…」
逃げようとしていたの体が力を失い、緩やかにベクターに預けられた。
そんなの様相に逃げる力を失ったことを目聡く見抜いたベクターは、ドアを押さえていた手を離して短いスカートの中へ突っ込む。
「ひっ、あ…やだ…触らないで……!」
下着を脱がされたままのの秘部は、まだじっとりと熱かった。
「クック…怖がるなよ。そういやイかせてやらなかったと思ってよォ…優しい優しい俺様がたっぷり可愛がってイかせてやるぜェ…」
割れ目をなぞりながら囁かれるベクターの言葉に眩暈がする。
花弁を押し広げられて、蕩けた入り口をなぞられると、先程吐き出されたベクターの体液がの愛液と共に零れ落ちてきた。
「だめ…、溢れて…きちゃうぅ…っ」
内股を伝う感覚にさえいけない気分になってはぞくぞくと背中をしならせるが、ベクターは容赦しない。
たっぷりと自らが蹂躙したの中に、躊躇いもなく指先を埋め込んだ。
ぐじゅりとぬめる入り口は美味しそうにベクターの指を飲み込んでいく。
「おーおー、貪欲じゃねぇか。処女だったクセにもう男の味覚えたってか?」
「そんな…違…っ」
「違わねぇだろーが。嬉しそうに食いついて離さねぇくせに何言ってんだ、お前」
ニヤニヤしながらベクターは指での中を掻き回した。
粘質な音を立てながら出し入れを繰り返されると、先程ベクターに与えられた感覚が蘇ってくる。
それは甘くて気持ち良かったけれど、認めてしまったら崩れてしまいそうになるからはきつく手を握り締めて快感を耐えようとする。
しかし時折やわやわと胸を刺激されて覚えたての快感に声を抑えることができなかった。
「っ、ふ…はぁ……あ、あっ…!」
更に同時に一番感じる突起を探られて、感じたことも無い甘い痺れがの足元から這い上がってきた。
ぬめりを帯びた指先がいやらしく掠める度にもどかしくて思わず腰が揺れてしまう。
「イイだろ?コレ、女が超感じるんだってよォ。ちゃんもイイだろ?イイって言ってみろよ…」
荒い息でベクターがに囁き掛ける。
上擦る声に興奮を隠そうともしないベクターにくらりと眩暈を感じるような疼きを覚えてしまう。
そんな馬鹿な、とは思うもののベクターの手が与える快感は本物で、高められていく性感はまたしても男性器のあの感覚を欲して体の奥を震えさせるのだった。
「はぁっ、はぁっ…、やぁ、なんか…っ…コレ…っ」
ぞくぞくとしたもどかしい疼きのわだかまりを刺激するように中を掻き回されて、ベクターの指がぎゅっと突起を押しつぶす。
鋭く突き刺さるような快感にの体が一瞬硬直した。
「なんか、ダメ…っ、あっあぁぁぁ…っ!!!」
びくびくとの体がしなり体内のベクターの指をきゅううううと締め付けた。
初めて感じる絶頂と同時には内股に温い水が伝ったような気がして体を強張らせる。
「…え…っ」
足元にじわりと広がる水溜りの感触には目を見開いた。
しかしそれは気のせいではく。
水流は留まらず溢れ続け、後ろでごくりとベクターの喉が鳴った音を聞いた。
がくがく震える足を伝う生温い感覚と、制服のスカートにじわじわと広がっていく染みの感覚。
「や…だ…うそ…」
「く、くっく…ヒャハ、ヒャハハハハハ!あーあ、やっちまいやがんの!!!!ちゃん、気持ち良すぎてションベンお漏らしですかァァア!?アヒャヒャヒャ!!恥っずかしぃー!!」
「っ…見ないで…お願い……」
俯いたままのの口元から涙声の懇願が零れ落ちた。
最後の最後までなんて最高な彼女なのだろう。
密着していたからベクターの制服も無事ではないが、そんなことは問題ではない。
「っていうかーァ、俺もびしょびしょなんですけどォ。どーしてもらおっかなーァ?」
「…っ」
俯きながら羞恥に涙を零すの顎を掴み、非情にもその顔を覗き込むベクターはこれまでで一番楽しそうだった。
「サイコーだぜ、よォ…。お前わざと苛められたくてこーゆーことやってんのかよ」
「馬鹿なこと、言わないで…っ!そんなわけないでしょう…!」
見ないでよ…!とベクターを押しやろうとする。
しかしそれをベクターがよしとする筈も無い。
「堪ンねーな…まァとりあえず風呂でもどーだ?優しい俺様がお漏らししちゃったカワイソーなちゃんをキレイキレイしてやっからよ」
の返事を待たずベクターはを担ぎ上げた。
「やだっ…何、やめて…!」
「どのみちそのままじゃ帰れねェだろーが。それともそのまま放り出されるのが好みか?」
「…!」
「風呂ならどれだけ汚しても問題ねぇしな。たァっぷり可愛がってやるぜェ…?」
濡れた靴下を脱ぎ捨てたベクターが振り返りながらに含み笑いを向けた。
恐怖の時間はまだまだ終わらない。
この遊びにベクターが飽きるまでは。
終
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緋ノ風ぴあす様に捧げるお友達記念小説でした。
なかなかディープなものを書いてしまいましたが、ご満足頂けているでしょうか。
あたしの趣味も大分入った上にまた長いっていうこの体たらく。
最後のシーンなんかは勿論あたしの趣味なんですが、許可を貰ったのでうきうき書かせてもらいました。
とはいえ表なので控え目ですが…。
ぴあすちゃん!書かせてもらってありがとう^^
こちらは緋ノ風ぴあす様にお贈りした小説ですので、お持ち帰りはご本人様のみでお願い致します。
ダウンロードは言うまでも無く、転載等厳禁です。