「盗もうか、世界を」/「最後の一人になれば、或いは愛を」


好きなだけ殺せ。
好きなだけ食え。
その言葉が離れない。

「俺と、この世界を盗む気はねぇか?何処の誰よりも幸せにしてやるぜェ?」

事実だろうか。
本気だろうか。
嗚呼だけど、もう自分にはそれを拒むことは出来ないと思う。
だって誰も必要としてくれなかった自分を必要だと言ってくれるのだ。
幸せにしてくれると言うのだ。
それが嘘であろうと騙されていようと。
だって人の心を確かめる術は無いのだ。
それを分かっていて、自分はこんなに彼を疑えないのは。
信じたいと願うのは。






バクラについていく事にして2週間が経った。
初めて出逢った夜にが見抜いたとおりバクラは盗賊で。
しかもすごく腕の立つ盗賊であることをこの2週間で思い知らされた
世界を盗ろうというバクラの言葉もあながち嘘じゃないような気がしてくるから不思議である。
「ククク、世界中の黄金は全部俺様のモンにしてやるぜぇ」
にたりと笑ってじゃらりとベッドの上に黄金を放り投げるバクラ。
初めのうちこそそれを恐々と見ていただったが今では慣れたもので。
「これ何処から盗って来たの?」
なんて聞けるくらいになった。
そうすると大抵バクラは上機嫌にそのときの武勇伝を聞かせてくれるのだ。
の肩を抱き、そして髪を撫でながら語られるバクラの偉業。
そんなときバクラはふと一言に言った。
「お前の黄金の髪も俺様のモンだ」
「…そんな、黄金色の髪なんて私だけじゃないわよ…?」
奴隷市場で偶に見掛ける象牙の肌や、黄金の髪の娘達。
「あぁん?じゃあ殺せよ!そうすればお前にもっと希少価値がつくぜ」
「あ、そっか」
「どうせ最終的には世界は俺とお前だけになるんだからよ」
にやりと笑ってバクラはをベッドに押し付けた。
「ガキ作る予行練習といくかァ?」
そう言ってするりとの服の中に手を滑らせる。
柔らかな白い肌。
ごそごそと服の中を弄る手にの体は僅かに緊張した。
「バクラ…私…」
戸惑いがちにはバクラの手を制した。
「何だ?怖ェか?」
「…」
否定も肯定もせず、ただ黙って視線を逸らした。
「心配すんなよ。優しくしてやるぜ?」
服の中から手を引いてそっとの頬を撫でる。
大切なものを優しく撫でるような手つきでに触れるのだ。
「…バクラ」
ふと視線を合わせたら、軽くキスされた。
ちゅ、と小さな音を立ててバクラの唇が触れる。
「っ、…ぁ」
温かくて柔らかい、唇が。
思わずバクラが離れる瞬間声を出してしまった。
酷く残念そうな響きだったことには自分でも驚いてしまう。
「クックック。もっと、か?」
は頬を赤くした。
恐らくはそう言わなければバクラは止めてしまうだろう。
そういう人だと分かっている。
欲しければ。
素直に従順に、彼の筋書き通りの道を行かねばならない。
「…うん、もっと」
僅かな躊躇の後、素直に求めた。
だって今更何を隠し立てすることがあるんだろう。
既にの心はバクラのものだ。
あの一言に心の全てを奪われてしまった。
盗賊王の手腕は伊達ではない。
バクラはの素直な言葉を聞くと少し口の端を上げてみせ、無言での唇を奪った、
今度はさっきのような軽いものではない。
にゅる、と舌で唇を抉じ開けられてやわやわと舌を絡め取られる。
優しく舌を吸われて口内を舐められると、初めてバクラにキスされた瞬間が蘇ってくるような気がした。
押し付けられたバクラの体から温もりが伝わってきて鼓動が早くなる。
角度を変えるたびに小さな音が響いては僅かに羞恥を感じた。
「ん、は、ンふ…」
そっとバクラの背に腕を回して抱きついて。
もっと体温を感じられるように、バクラを感じられるようにと。
ややあってバクラはゆっくりとから離れた。
つっと引いた銀の糸がキスの深さを物語っているようで、ますます鼓動が大きくなってしまう。
「エロい表情してるぜ?」
「っや…!」
からかう様にバクラに言われは顔を背ける。
「クックック…可愛いぜ」
バクラはの顔の横に手をついて、無造作に下着ごと服を捲り上げた。
ランプの蝋燭の明かりの下に晒された肌はやはり透き通るように白く、オレンジの炎を反射させている。
その白い乳房をバクラの手が覆った。
「っは…」
軽い刺激がの体を緩く抜ける。
じんわりと伝わるバクラの指の感触や包み込みきれない乳房を捏ねるバクラの手。
恥ずかしいような気持ちいいような、興奮と羞恥の入り混じる感覚がの体を支配していく。
「あっあっ…バクラ…ダメ、私…」
少し強めに揉みしだくバクラの手には手を添えた。
一種の抵抗のつもりだったがバクラには催促に思えて仕方が無い。
分かってはいるが気付かない振りでの乳首を弾いた。
「あぁっ…ばく、ら…ァ…嫌ァ…」
鼻に掛かった甘い声でバクラの手をますます強く握る。
「ンだよ…催促してンだろ?」
「違、してな…ぃ…あっあっ…はぁあぁぁ…っ」
「嘘吐け」
そっとバクラがの耳に唇を当てる。
ちろりと耳朶を舐めて甘噛みされるとぞわぞわくすぐったいような感覚。
「やっ…ン、くすぐったい…」
むず痒さに身を捩って逃げようとするを押さえつけてバクラはそのまま唇を首筋に辿らせた。
柔らかなそれがつーっと滑り落ちていくのもくすぐったい。
「はっ、ァっぁ…!」
そして唇がの尖り始めた乳首に触れる。
思わず身を震わせて反応してしまった。
それを見たバクラはにやりと笑んで。
舌先で軽く弄ってみた。
「あっや、…はぁっはぁっ…あぁ…」
思惑通りに甘い喘ぎ声をあげる
零れ出る色を含んだその声は図らずもバクラをその気にさせていく。
「ンな声出すんじゃねぇよ。手加減できなくなるぜぇ…?」
「そん、な…あっ、はぁぁ…知らな、やァん…っ」
ぐり、と堅くなり始めたモノを腰に押し付けられての頬が熱を帯びる。
バクラに出会うまで処女だった
既に体はバクラに手懐けられてしまっていたが、精神はまだまだ処女の女と変わらない。
行為の最中、ソレが目に触れるだけで真っ赤になってしまう。
それを知っていて、わざとバクラは腰に押し付けてみたり触れさせてみたりするのだ。
初々しい反応が堪らない。
思わず下着の中に指を滑り込ませる。
ぐちゅりと温く濡れたの秘部は、彼女の処女性とは裏腹に一つの女であった。
「ぐっちゃぐちゃだな。堪んねぇよ、お前」
興奮した表情で笑い唇を軽く舐めてみせるバクラの表情にまで感じてしまう。
官能的な仕草だと思った。
バクラは乱暴に下着を剥がして、自らローブの裾を捲り上げる。
「っ、あ…」
ぐっと押し付けられた熱い塊。
そして訪れるであろう快感の波と絶頂の予感と。
全てを一気に想像してしまったは軽く眩暈がするほどだ。
「力抜けよ」
「ん…ぁあっ…」
ずぶずぶとゆっくり埋まり始めるバクラ。
生まれて初めてバクラに抱かれた10日前は痛いだけだったのに、もうすっかりコレの虜だ。
圧迫感は苦しいし正直まだちょっと痛いけど、それだけじゃない。
「あ、はぁっはぁっ…あふぅ…ん、あン…っ」
ずりゅっと大きなバクラのモノが内部を擦るたびに何処かへ飛んでしまいそうな快感が抜けていく。
思わずその瞬間体に力が入ってしまうほどだ。
「あんっ…!あっあっ…イイ、バクラぁ…イイの…ォっ」
「俺もイイぜェ。くっ…最高だ」
何処か苦しそうな色っぽい表情と掠れた声で囁かれ、はきゅうんと下半身が疼くのを感じる。
ギシギシとベッドを派手に軋ませ打ち付けられて。
はそれでも必死で絶頂に耐えながらバクラを味わっていた。
快感を押し殺すような表情で、だけど声だけは抑えきれない。
「あっはっ、はぁはぁっ…ァんん…っやァ、ああぁ…っ」
そうして必死でバクラに縋るも震える腰が絶頂の近い事をバクラに伝えていた。
ますます深く突き上げられて。
の体はいとも簡単に。


「――――っ!!!」






結局のところ、何も変わってはいないのに。
セックスの後ぼんやりとはそう思った。
だってそうだろう。
バクラを得たことで得たものとは一体なんだ。
金か、快感か。
居場所というにはあまりにも脆い。
愛なんて思うにはあまりにもおこがましい。
結局のところ利用されているだけだと分かっているじゃないか。
「バクラ…もう、寝た?」
「……なんだ」
セックスの時はあんなにも激しく見せてくれたのに、終わればそっけない態度で口を開くのも面倒くさそうで。
でも背を向けずに一緒に眠ってくれるから勘違いしてしまいそうだ。
はそっと微笑みながら訴える。
「お腹…空いたの」
今晩の食事は金髪の娘にしよう。
そしては自身が黄金の髪をもつただ一人になればいいと思う。
そうすれば少なくともバクラは傍に置いてくれるじゃないか。
片道の愛にのめり込むのだとしても、に後悔さえなければずっと幸せでいられる。