「盗もうか、世界を」/「カーテンコールは濃密な愛で」


「バクラが、好きだよ」













抱き上げられたまま、バクラの部屋まで戻ってきた。
「あ、でも私…自分の宿引き払ってないけど…」
「ンなモン後回しだ」
をベッドの上に放り投げてその上に乗り、性急に唇を押し付ける。
「ン…ァ…」
吐息を混じらせながら熱く、深く。
身じろぐ度にバクラの手が優しくそれを制止する。
「ば、くらァ…んっ、ふ…っは、待って…お風呂…」
さっき殺した人間の返り血があちこちに飛んでいるのが気になるのか、はいやいやとバクラを押し返す。
「うるせぇ、待てるか」
「ヤダ…!私もこのままは嫌なの…っ」
何時になく聞きわけの無いに舌打ちしてバクラは渋々体を離した。
「面倒くせぇな、んじゃ狭ぇけどそっちでやるか」
「…え」
もう一度を抱き上げて、今度はバスルームまで運ぶ。
「ま、待って!私そんなつもりじゃ…!」
「俺様はそんなつもり。風呂に入りたきゃ諦めろ」
「やぁん…っ」
の服を捲り上げて、強引に脱がせるとそこら辺に放り投げる。
そして自分も着ているものを脱ぎ捨てた。
目のやり場に困ったは視線を逸らす。
「オラ、入るぜ」
「…」
二人して安い宿の、そんなに広くは無いバスルームの中へ。
浴槽に満たされた湯を掬い、バクラがの体にぶちまける。
少し温めの湯が返り血を少しだけ流した。
「結構取れねぇなァ。洗うか」
湯をかけたくらいではなかなか落ちない返り血を見てバクラは少し笑った。
それを見て、ちょっと嫌な予感。
「自分で洗えるよ?」
と、慌てて言うが既にバクラは臨戦態勢だ。
よりも先に石鹸を手に取るとにやにや笑いで泡立てている。
「ねぇ、自分で洗えるったら…!」
「まぁまぁ俺様に任せろって。上手いぜ、俺は」
「体洗うのに上手いも下手もないでしょー!!」
しかし狭いバスルームで満足に抵抗も出来ない
結局バクラに後ろから抱きしめられるような格好で「洗われる」ことになってしまった。
「っ、あ…ン、ん…やンっ、それ、洗ってる手つきじゃないぃ…っ」
石鹸で滑る掌がの体を撫でさする。
それも、全然返り血のついていない胸やら腹を撫でるのだ。
「あっあ…ン、バクラ…ぁ」
胸を揉みしだき、つんと尖り始めた乳首を弄る。
にゅるりと泡のついた手で弄られるといつもとは違った感覚を覚えては逃れようと体を捩った。
「ダメ、やぁ…ん、あっあっ…」
「コラ。逃げンじゃねぇ」
ぐい、ときつく抱きしめられて制止される。
だけどその拍子にバクラのモノが腰に触れてまるますは居心地悪そうに身じろいだ。
「やっ、バクラ…何か当たってる…!」
ごり、とした感触を伴って腰に触れる熱いソレ。
「仕方ねェだろ、久しぶりなんだからよォ」
「…え?」
思わず、振り返ってバクラを見る。
「ンだ、その意外そうな顔」
「だ、だって…」
「お前以外の女となんか寝るか」
実はさっきまではそうしようと考えていた事は秘密である。
「…」
「どした?」
「…うぅん、何でもない」
実はちょっと嬉しかったりして。
だけど、バクラと離れていた一週間程度の間、禁欲していたと言う事なのだろうか。
そんな疑問を読んだかのようにバクラがにたりと笑う。
「仕方ねぇからよォ、お前の事色々想像して自分慰めてた訳だ」
「っ、そ、そんなこと教えてくれなくていいし!」
「そーかァ?聞きたそうだったぜ?」
「そんなことない!」
ぶんぶんと首を横に振っては否定する。
「…まあいい。んじゃ、続きといくか」
「え…あっ…」
がばりとバクラが覆い被さってきた。
「久しぶりだからなァ…手加減出来っか自信ねぇけど、まあ頑張れよ」
「他人事みたいに…っ、あ、アン…っ」
バクラの唇が緩やかにの肌の上をなぞる。
くすぐったいような焦れったいような感覚だ。
加えてバスルームの熱気がの思考をぼんやりと鈍らせる。
「バクラ…あ、やぁ…ン」
胸の膨らみを優しくなぞり、舌先でぺろぺろと乳首を弄ぶように舐めた。
片手は既にの滑らかな太股や腰を撫で回している。
白い泡の滑る感触が何とも言えず扇情的だと思った。
「は、ァ…はぁ…あぁ…バクラ…」
「もっと声出しても良いんだぜ。俺しか聞いてねぇからな」
「そんな…ァ、恥、ずかしい…っ」
「クッ、これからもっと恥ずかしいことするんだぜ?」
言うなりバクラは手を足の付け根に移動する。
そして軽く割れ目を押し開きつるりと芯を撫でた。
「はぅ…っ、ダメぇ…っ」
石鹸のついた指先が捏ねるようにそこを刺激する。
「ダメじゃねぇだろ。…こんなにぬるぬるになってるぜ…、石鹸だけじゃねぇの判るだろ?」
興奮したような笑みで執拗に弄るバクラ。
そしてまた唇を胸に押し付け、跡をつけたり舌先で乳首を弄ったり。
上も下も責められてはすすり泣くような声を上げる。
「どうだ?ン?」
「やぁっ、ダメ…はぁっ、あぁぁぁ…っ、私、わたし…っ」
ふるりとの体が震える。
その瞬間、バクラの指が強くの芯を摘みあげた。
「あっ、ダメ…っ、あぁ、ああああぁ…っ」
強い刺激を与えられ、の体が硬直する。
蜜壷からもとぷりと愛液が溢れだし、が絶頂を極めた事を伝えていた。
「クックック…イったか?」
「…っ、はぁぁぁ…はぁ、嗚呼…」
体を断続的に痙攣させて余韻を味わうに返答の術は無い。
ただ生理的な涙に目を潤ませて、荒い呼吸を繰り返すだけ。
紅潮した目尻が色っぽい。
余韻冷めやらぬを抱き上げて、バクラはを自分の膝の上に乗せた。
「おい、
「…」
「聞こえてっか?」
「…ン、なぁに…」
子供のように膝に抱かれたは少し顔を斜め後ろに向けて、バクラを見上げる。
「俺の太股で挟むようにして座れ」
「…え」
「こうだ、こう」
「きゃぁっ」
ぐっとバクラがの割れ目に勃起を押し付けるようにした。
後ろから抱かれているような体勢でそんなことをされたため、まるで男性器が自らに生えてきたような錯覚に陥る。
なんて卑猥な光景だ。
「やっ、ちょ…バクラ、この体勢ヤダ…っ」
しかしバクラは聞き入れない。
それどころか。
「このまま俺様をイかせろ」
「…はァ?!」
「扱くだけだ、簡単だろ?」
いやらしい笑みを浮かべてそんな命令まで。
「手でも足でもどっちでもいいぜ。好きな方でやれよ」
「や、やるなんて言ってない…!」
「馬鹿かお前、そんな選択肢は無ェんだよ。手か足か選べ」
「…っ」
有無を言わさない目で究極の選択を迫るバクラ。
仕方が無い。
は恐る恐るバクラの勃起に手を伸ばした。
既にかなりの大きさになっているそれを緩く握りこむ。
――にちゅ。
「…っ」
が手を動かすと湿った音を立てる、ソレと。
同時に後ろで息を飲んだバクラ。
「…バクラ、いい?」
「おぅ…いい、ぜ」
少し目を細めて気持ち良さそうにしているのを見ると、何だか下半身がきゅぅんと疼く気がする。
にちゃにちゃと音を響かせは一生懸命それを扱いていた。
「…っく…」
女であるはずのが、股間に手を伸ばし太く勃起したものを扱き上げる。
倒錯的なその様子にバクラはますます自身を上向かせてしまう。
「…なんか、おっきくなった…、よ?」
「うるせぇ…集中しやがれ」
拗ねたように言い捨て、バクラは荒い息で自分のモノを扱くの手の上から自分の手を重ねた。
「こう、だ…」
早い動きでを先導する。
これではどっちが擦っているのか判ったものではないな、と思いつつは手を離そうとはしなかった。
「…っう…!」
「あ…」
ややの後、ぶるりと体を震わせたバクラの先端から白い粘液がどろりと溢れた。
の目の前で断続的にびゅくびゅくと吐き出す。
「っ…はぁ…」
「…」
ねとりと手や脚を汚すバクラの粘液。
何となくいつもバクラにさせられていることを思い出して指先を口に含んだ。
「…ん?…、おい、何やってンだ!」
「変な味…」
「馬鹿か、余計なことしてンな!ほら、吐き出せ」
バクラに促されるが、は聞き入れずそのまま垂下する。
ごくりと音を立てて飲み込んで。
「もう飲んじゃったもん」
「…〜〜〜〜っ…!」
べろっと舌を出して見せたら、バクラがおもむろにの脚を割った。
「テメェ…今晩は容赦しねー」
「え?え?」
「お前がその気なら死ぬほど犯してやらァ。覚悟しろ」
ちろりと自らの唇を舐めながら、バクラはケダモノのように笑った。









結局。
本当にバクラは何度も何度もを抱いた。
離れていた時を埋めるかのように。
「…バクラ」
「あぁ?」
漸く解放されたときには既に朝も大分過ぎていたころ。
「バクラが、好きだよ」
「…どした、急に」
バクラの腕の中、髪を撫でられながら。
既に二人とも眠たくて仕方がないのだけれど、は何だか勿体無いような気分だった。
このまま眠って目が覚めても恐らくバクラは隣にいるだろう。
それでも、まだバクラを見ていたい気分で。
「好き、大好き。二度と離れたくない」
「……俺様もだ」
「…!」
何時になく素直な言葉に目を見開いてバクラを見上げれば、既にバクラは目を伏せている。
照れ隠しに狸寝入りをしているのだろうか。
「…」
まあいいか。
はバクラの腕の中小さな欠伸を一つして、同じく目を伏せた。
やがて規則的な寝息が響き始める。
それを確認して、バクラは薄く目を開けた。


「…これが、愛してるってやつかよ」