極上の悪夢ですね。 1


「大丈夫だ。全く問題は無い」
遊星よ、お前に無くとも俺にはあるっっ!!!





いやぁ、たかだか100年あるかどうかの短い人生でこんなことが起ころうとは。
鏡を見ると大きな目がこちらを見返してくる。
うーんなかなか可愛いんじゃないか?

じ ゃ な く て 。

まあアレだ。
小説とかで有名な奴だ。
朝起きたらごにょごにょってやつ。
裸のおねーちゃんが寝てたとかなら良かったのに。
それはそれでスゲービビるだろうけど。
じゃなくて。…二回目かコレ。
朝起きたら女になってたとかあるか?いや無いだろ。
何だよ何でだよおかしいだろ。
遊星が起こしにきてトイレ行って気付いたとかもう間抜けか俺。
っつーか起こしに来た遊星も『あれ?』って顔したしな!言えよそこで!!
マジかマジかと混乱しまくる俺に遊星が掛けた言葉はコレだった。

「大丈夫だ。全く問題は無い」

冒頭のフレーズですね、はい。
大分サイズの大きくなった寝間着姿で俺はもう一度ベッドにダイブする。
悪夢だ。
きっと覚めたらちゃんと男に戻ってて遊星が起こしに来てくれるんだきっと。
そしたらなんか後ろでもぞもぞする。
何だよと振り返ったら真後ろにいた遊星と目が合った。
怖えよ!!!何勝手に入ってきてんだよ!!!
ちょっと飛び上がっちまっただろうが!
「びっくりさせんなよ!何だよお前…!」
、心配しなくてもお前は俺が守ってやる」
「はいィ?」
「お前が女になったというなら俺はもう遠慮はしない。臆さず攻めさせてもらう」
言うなり遊星の手が俺の寝間着の裾から侵入してきた。
「うわぁぁ!!!待て待てっ、何処攻める気だよ!?」
「子供は3人欲しいな」
犯す気満々かこいつ!
つーか遠慮しないとか言ってたけどお前が遠慮してるとこなんて見たことねぇ!
実力行使で股間蹴っ飛ばして逃げてもいいが同じ男として余りその手は使いたくないな。
子供3人も欲しいとか言ってるこいつのが使い物にならなくなったら責任取れねぇし。
いや、俺の予想が正しければ多分いつもの面子で起こしに来てるはずだ…。
外には誰かが待機してるはず…。
「おい、遊星いい加減にしないと大声出すぞ。外にクロウかジャックがいるんだろーが」
「別に呼ばれても困らないが。寧ろは俺の物だと見せ付けることが出来る」
「お前なぁぁぁぁっ!!!」
何だよもーこいつ見境無くてホント怖ぇよ!!
、優しくするから」
「うわっうわっ!何処触ってるんだよ馬鹿!!」
女との初体験もまだのまま男と初体験だけは絶対に嫌だ。
俺の体を弄ろうとする遊星の腕を掴んで引き剥がしにかかるが、如何せん遊星の方が力が強い。
畜生、これじゃ俺の方が先にへばっちまうだろーが。
だがそれよりも先に救世主が現れた。
「おい遊星何やってんだよー。待ちくたびれたぜ」
クロウがずかずかと入ってくる。
お前らほんといつも不法侵入だけど今日だけは許す!
「クロウ!!クロウ助けてくれ!!」
ベッドの中から叫ぶと遊星が舌打ちしたのが聞こえた。
舌打ちしたいのは俺の方だっつーの!!
「お前ら…何ふざけてんだよ…。世話かかるなぁ」
べろっとクロウが容赦なく布団を引き剥がす。
ずるっずるに寝間着は剥かれていたが、俺は貞操を守りきった…。
「はは…さんきゅ、クロウ」
礼を言う俺を見てクロウはきょとんとした顔になる。
「…お前、誰だ?」
殆ど肩にかかっているだけの寝間着からは膨らんだ俺の胸が丸見えだった。
そりゃ、そうなるわな。
だよ。正真正銘」
「…?確かに顔は…いや、でもお前」
「聞くなって。俺にも全然訳がわからねー。とりあえず、助けてくれてありがとな」
俺のベッドの上で何事も無かったかのように座っている遊星。
おい何だそのしらばっくれた顔!
「遊星に何かされたのか?」
「ああちょっと。犯されかけた」
「既成事実を作ろうとしただけだ」
「それを世間じゃレイプって言うんだよ馬鹿!」
「…お、それは聞き捨てならねぇな、遊星」
おおぅ、クロウがまともなことを…。
が女になったら俺にもチャンスあるんだろうが。事情知った今なら既成事実なんか作らせねぇぜ」
まともな、ことを…?
「っつー訳で俺と付き合おうぜ!俺子供の面倒見るの上手いし、食い扶持も稼いでるし言うことなしだろ」
あぁぁあこいつらー!!!
そーかそーかそんなに俺が好きなのか畜生。
友情なら悪い気はしないが愛情ならちょっと話は別だぜコノヤロー。
いや別にこいつらのこと嫌いじゃないけどそういうのはやっぱちょっと違うよな、うん。
「お前ら、もう出てけよ…着替えたいしよォ」
乱暴にひん剥かれた寝間着の前を合わせながら俺は二人を見た。
流石にこのままは物凄く居心地が悪い。
「着替えなら手伝ってやる」
「いらねぇよ!!」
遊星は普通の女と付き合ったらマーカーがいくつも増えそうだよな…。
っつーかそんなしょんぼりした顔してもダメ!
「出てけって。後で合流すっから。今日ガレージにアキ来てたか?」
「来てたぜー。アキに用でもあるのか?」
「…こんな体になっちまってアキに相談するしかねぇだろ…」
まずこの膨らんだ胸をジャケットで隠せるかどうか…。
う、やっぱ女用のあの下着つけなきゃいけないのかな。
変態になった気分だぜ…はぁ。
暗い俺の声にクロウがちょっと考えたような風で声をかけてくる。
「あー…、じゃあさ、アキここに呼んでやるよ。出歩くの嫌だろ」
うお、何だクロウ。
スッゲー優しいし、超気が付くじゃん。
感心する俺の横で遊星が『あ!』って顔した。
何だ何だ。
お前怖いからちょっと静かにしててくれよ。
いつもは話しかけなきゃ殆ど会話しないくせに今日はスゲー喋るし。
逆に不気味。
だから目を離せない。
横目で見てたらちょっと悔しそうな顔してなんか小声でぶつぶつ言ってるし。
遊星さんよ、今日のお前は本当に怖いです。
クロウがちゃっちゃとアキに連絡取ってくれてほっとした。
なんでほっとするんだろう。
でも何故かアキが来るなら安心だって気分になった。





「はぁ…緊急事態ってこういうことだったのね…」
15分ほどしてアキが来た。
俺は何だかアキの顔を見たらスッゲー安心しちまって…。
「アキ…お前天使じゃね?何か…涙が…」
「やだ、ちょっと!ってば…」
じわぁっと視界がぼやけてアキの顔が見えなくなった。
ぼろぼろ溢れて止まらない。
朝から女になっちまうし遊星には犯されかけるしマジ散々だ。
「アキぃ…」
「ああ、泣かないの」
遊星もクロウもいるのにめそめそ泣く俺をアキはぎゅうって…。
ぎゅうって…?
うわ!マジか!!!
「ああああアキっ、胸っ胸がっ…!」
思わず涙も引っ込んじまう。
「女同士なんだから別に気にしなくてもいいわよ。それにになら…あ、ううんなんでもないの」
「おおお女同士っつっても…!」
スッゲー弾力。
本物のおっぱいってこんな柔らけぇのか…。
嗚呼…男の時に堪能したかったなぁ。
うは、鼻血でそう。
「もっ…もうだいじょぶだからっ!は、はなれてくれっ!!」
「…そう?涙止まった?」
「止まった!止まったから…っ」
涙の次は鼻血を吹きそうですよ!
アキに離してもらった俺はちろりと視線だけ動かして遊星とクロウを見た。
遊星の表情は全くと言っていいほど変わっていなかったがクロウはちょっとだけ羨ましそうだった。
こういうのを役得っていうのかもな。
「実際問題、理由も分からないし原因も分からないのね?」
「…ああ」
「じゃあ、とりあえず…女として生活するしかないんじゃない?」
「…やっぱり?」
あ、でも何かアキ嬉しそう。
「取り急いで必要な物は下着とアレだけだと思うけど…服も多少いるわね。その服全然肩のサイズがあっていないもの」
「…アレってなんだよ…?」
「後で二人の時に教えてあげるわ」
何で今じゃダメなんだ。
言えないやつ?
皆の前じゃ言えないようなやらしいやつ?
それを後で二人っきりで教えてくれるの?
どんなエロイベントだよご馳走様です!
「ああ、同年代の女の子がチームにいるって良いわね」
「…いや、女じゃないって」
「最初は皆そう言うのよ」

えっ!?
「最初は!?皆!?おい他にも同類がいるのか!」
「ううん。小説の中とかでは」
「…現実の話をしろよぉ…」
がっくりだ。
でもアキは嬉しそうだ。畜生。
「で?今日はどうすんだ?そろそろガレージでジャックが痺れきらしてそうだけどよ」
そういうクロウも暇そうな顔してんなー。
まあ蚊帳の外だもんな。
「じゃあ遊星とクロウは一旦帰ったらいいわ。私はの身の回りの物買いに行くから」
「い、いや待ってくれアキ!!」
「何?
「買いに行くって…俺金なんてねぇぞ」
そもそもまだサテライトに住んでるような俺に贅沢できるような金は無い。
もっぱらストリートデュエルで日銭を稼いでるようなもんなのに。
「お金が無いとなると…じゃあとりあえず私の着ない服を譲ってあげるわ。とりあえずはそれで済ませましょう」
「ダメだろ、悪いし」
「悪い悪くないの前にサイズが合うかどうかだけどね」
確かにその凶器のようなおっぱいが入る服ですもんね!
俺の胸も相当膨らんだけど、アキよりは小さいと思う。
「とりあえず今はコレで良い!だからガレージ行こうぜ」
「あっ、待って!じゃあこれだけさせて!」
「何だよ」
アキが慌てて遊星とクロウの方を見た。
「二人とも、先にガレージに向かっててくれる?」
「何故だ」
あ、遊星がクロウより先に食いついた。
ずーっと黙ってたから話がスムーズに進んだけど…。
に脱いでもらうからよ。男性は出て行きなさい」
「待て何故脱がす必要が」
「遊星止めとけって。アキ頼むぜ」
スゲー勢いで立ち上がった遊星を押さえたクロウがそのまま遊星を引きずっていく。
離せクロウ!とか結構本気の声が聞こえる。
アキ…後で何かされたらどうしよう…。
いや、そこは俺がアキを守ってやらなきゃな。
今日はマジで色々世話になりっぱなしだし。
「なあ…何で脱ぐんだ?」
「流石にそのままじゃあ、ね。包帯とガムテープある?簡単にだけど、さらしを巻いたような状態にしてあげるわ」
「あ、ああ…成る程…」
そりゃ、遊星とクロウの前じゃ無理だわな。
同じ男同士だったから脱ぐのに抵抗があるわけじゃない。
女として見られることに抵抗があるんだ。
特に最初の遊星の反応。
…う、本当に男と初体験しなくて済んで良かったなぁ。
「アキって器用だなー…」
巻いてもらってなんだけど、安定感がなんか違う。
揺れないし。
「うーん…器用とは違うと思うけど…。でも明日から困るわね。いっそ暫くうちに来る?」
「いーよ、気ィ遣わせるし。金なら今日ストリートデュエルで幾らか稼ぐわ。夕方必要そうな物、一緒に買いに行ってくれよ」
「…そう、分かったわ」
あれ、なんか残念そう?
いやでも流石に女の子の家に転がり込むのはなー…。
今は女だけどいつ男に戻っちまうかも知れねぇし。
ま、とりあえず今日も一日デュエルしますか!