極上の悪夢ですね。 2


遊星が現れた!
→戦う
→アイテム
→逃げる






「いや、ホントもう勘弁してくださいよ」
なんで俺はいきなり遊星とエンカウントしてるんだ。
っつーかこいつ帰ったんじゃなかったのか。
、外は危ないから今日は一日俺と行動しよう」
そういうお前が正直一番危ない。
「そうよ、その方がいいんじゃない?」
おおっとアキがまさかの逆援護射撃!
そういや俺がこいつに犯されかけた話はアキにしてなかったしな。
「アキもこう言っている。さあ、後ろに乗れ」
嫌すぎる。
っつーか俺もDホイールあるしね!
なんでわざわざ二人乗り…。
、遊星の言うとおりにしたほうがいいわ。だってライセンスの写真…」
「あ」
そーだ。
あれ男の時のだから。
万一ライセンスを提示しなきゃいけない事態になったらまずいもんなぁ…。
うわーマジかー嫌すぎる。
「さあ、
その期待を込めた視線やめろ!
「…うあー、分かったよ!でも今日はライディングは無しだ。歩く」
「…」
「無言で威嚇しても無駄だっ!」
「いや、まさかその選択をするとは思わなくて驚いただけだ」
…え、どういうことどういうこと。
俺間違ったフラグ立てたの?
遊星はゆっくりとDホイールから降りた。
そして冷や汗をかきまくる俺の隣に立つと、そっと俺の手を握って…。
え、手を握って?
「デートということだな。さあ行こう」
爽やか過ぎる笑顔を俺に向けた。
うーん、イケメンですね。
俺が女ならきっとイチコロだろう。
心なしか俺は頬が熱くなったような気がした。
違う…そんなはずはない…残念ながら俺は女ではないっ!
体は女だけどっ!絶対そんなんじゃない!
「デートじゃねぇし!手も繋がねぇし!!」
ばっと手を振りほどいて走り出す。
顔がみるみる赤くなっていくような気もするがこれは断じて照れじゃない!
そりゃ遊星はイケメンだが俺は男で別に遊星にどきっとなんかしていない!
「ランニングデュエルでもするのか?今日は少し暑いからきついと思うが」
後ろから追いかけてきた遊星は、軽やかな足取りで俺を抜いていく。
おいおいマジか、追いつけねぇ…。
コンパス違うとこうも違うのかよ。
「いや、別にそんな不毛なデュエルをするつもりは…」
何が悲しくて走りながらモンスターカードの効果の説明をしなきゃならないんだ。
息続かねぇわ。
それでなくても…息上がってきた…。
マジで遊星足速ぇな…。
あれ?おかしくないか……何で俺が遊星追いかける構図になってんだ?
俺、逃げてるんじゃなかったっけ?
肩で息をしながら俺は足を止める。
「…どうした、もう終わりか?」
足を止めた俺の傍に駆け寄る遊星。
「ちょ、何で俺が、鬼ごっこの鬼みたいに、なってんだよ…おかしいだろ」
「もしかして違ったのか」
「分かるだろ!」
しれっともしかしてとか言ってんじゃねー!
お前昨日までそんな天然キャラじゃなかったしな!!
「すまない。のことが好き過ぎていつもの調子が出ない」
「なっ…!!」
ちょっと視線を逸らしてしおらしく言う遊星。
納まりかけた頬の熱がまた蘇ってくる。
「何度もなら男でもいいかと思ってきたが、何の障害もなくなったと思うと嬉しくて仕方ないんだ」
「……素直になんでも言えば良いってモンじゃねぇぞ」
爆弾発言織り交ぜられすぎて逆にちょっと引くわ。
男でもいいって何だ。
見境無さ過ぎてホント怖い。
は、そんなに俺が嫌なのか?」
「嫌っていうか…お前さっきから何かと超怖いんだけど。自覚無いのかよ」
「確かに朝は怖がらせてすまなかったと反省している。あまりの可愛さに我慢が出来なかった」
しゅーんと遊星は大人しくなっている。
う、クソ…。
ちょっと可愛いとか思っちまった。
待て落ち着け俺。
良く考えりゃそれくらいの我慢が出来ない奴は人として危険すぎる。
でも大人しい遊星は怒りにくいなぁ…。
罪悪感?的な何かを誘発する雰囲気を持ってるな。
普段遠慮しねぇヤツが大人しくなるとこんなに効果抜群なのかよ。
「あーもーいいから。朝のこととかはもういいからとりあえずあんま近寄んな」
「何故だ。朝のことがもういいなら手を繋いでも問題ないだろう?」
「俺は気にしなくてもお前はちょっと気にしろよ!」
こいつといると疲れるなぁ…。




「行くぜー!ジャンク・アーチャーで直接攻撃っ!」
「うわぁっ…!!」
俺はタッグが変わるたびにデッキを変える戦法だ。
遊星と組む時は遊星のデッキに合わせたデッキを使用する。
要はデッキの内容を似せて作ってるってことだ。
ここだけの話スターダストも持ってるんだぜ。
スターダストだけじゃねぇ。
レッドデーモンズ、ブラックローズ、ブラックフェザー、エンシェントフェアリー、パワーツール…全部持ってる。
何でかってのは秘密だけどな。
ま、色々やりかたがあるんだ。
目立ちすぎるから使わねぇように気をつけてるけどブラックローズは便利だから一度だけ召喚しちまったことがある。
誤魔化すのが大変だったから、またしばらくは封印するつもりだけど。
と言うわけで目の前にはジャンク・ウォリアーが2体とジャンク・アーチャーが1対いる。
遊星のデッキに合わせてるからシンクロもめちゃくちゃやりやすい。
「あー、超楽しかったな!」
「ああ、そうだな」
相手を無事にぶっ飛ばし、DP(※TF6内の通貨)が入ったのを確認して遊星に笑いかけた。
今は遊星も普通に笑ってる。
これは遊星に限った話ではないが、タッグデュエルってのはスゲー楽しい。
やべェと思ったときに相棒が伏せてた罠とかで助けてもらったり、逆に魔法で援護したり。
勝った時に一緒に喜べるのも良い。
「ぼちぼちDPも溜まってきたし、アキに連絡すっかなー」
とりあえず遊星に破られた寝間着は絶対買わなきゃいけないし…下着は避けられないんだろうなぁ…。
「ガレージまで送るか?」
遊星のDホイールの後ろに乗って?
お前の腰抱いて背中にしがみつけってか。
嫌に決まってる。
「…や、アキに乗せてもらうからいい」
「アキのDホイールの後ろに乗るのか?それは…なかなか無い体験だな」
「…」
確 か に 。
遊星がどういう意図を持って『なかなか無い体験』と表現したのかは分からない。
が、アキに乗せて貰ったとして彼女の何処を持てばいいんだ俺は。
腰抱いて背中にしがみつくってか!?
限りなくセクハラだよな…。
体は女でも流石にまずい気がする。
ぴたりと動作を止める俺に、遊星が薄ら笑いを浮かべて再度聞いてきた。
「ガレージまで、送るか?」
究極の選択ってのはこういうことを言うんだな。
畜生…。
俺はだらだらと冷や汗をかきながら力なく頷くしかなかった。
「よし、そうと決まればDホイールを取りに行こう。今すぐに」
「…はい…」
あー…遊星さん…生き生きしてますねー。
瞳に活力漲ってますねー。
俺は遊星に引きずられるようにして元来た道を戻り始めた。
改めてみるとサテライトも随分変わったもんだよな。
そりゃまだまだ素行悪ィヤツもいるが、昔のままだったら俺は今日Dホイールに乗らないという選択肢を取ることはなかっただろう。
最悪セキュリティ突破することになったとしてもDホイールに乗ったに違いない。
徒歩でうろうろして女とばれたが最後、何されるか分かったもんじゃねぇ。
「なぁなぁ…遊星」
「何だ?やっぱり止めたは受け付けるつもりは無いが」
「違ぇよ!何の心配してんだよ!!!…そーじゃなくてさ。サテライト、変わったよな。前のままだったら俺今日家から出なかったかもしれねぇ」
「…そうだな」
「お前、すげぇな」
「皆がいたからだ。勿論も」
「……さらっとそう言えるお前がすげぇよな」
なんだかんだで結局面倒見のいい遊星は、無自覚な苦労性だ。
他人の全てを背負っても何でもない顔をして、いつもどおりさらっと何でもやっちまうんだろう。
恩に着せるわけでもなく、それが当然みたいに。
そんなことを考えながらぼんやりと遊星を無言で見ていたら、遊星が不意に立ち止まった。
あれ?やっぱり止めたは受け付けねぇんじゃないのか?
「…そんなにじっと見られると困るな」
「あ、悪ィ…」
「思わず廃ビルへ連れ込みたくなる」
「もう一生見ないんでやめてください」
ほんと、なんでこうなっちまったんだろう。
男のままだったらもうちょっと楽に友情育めたのになぁ。