極上の悪夢ですね。 4


待て待て待て!
ブルーノ、今なんつった…!?



ジャックに会うのがすっげー気が重かったんだけど、意外に何も言われなかった。
寧ろ「災難だったな」と一言だけ。
馬鹿にされるか笑われるかどっちかだと思ってた俺は拍子抜けだ。
だけど本当の災難はその後にやってきた。

「あはは、新しいプログラムをインストールしたらDホイール動かなくなっちゃった」

動かなくなっちゃったじゃねぇだろ。
俺帰れねぇじゃん。
「あっ、大丈夫だよ!今プログラムをアンインストールしてるから!明日の朝には改良版のインストールも終わるし」
「結局明日の朝まで帰れねぇじゃねぇか」
うわーマジかマジか!
明日の朝まで俺ここにいなきゃいけないの?
「ブルーノ」
青くなる俺の横で、遊星が神妙な面持ちでブルーノに声を掛けた。
いや、何て言うか予想つくけど。
裏切って欲しいなーなんて。
「よくやった」
ですよね!
絶対褒めると思ってたよ俺!
ええええぇ…俺今晩マジで帰れねぇの?
ずーんとソファに沈み込む俺を見て傍にクロウとジャックが座った。
「まあまあ、。とりあえず今晩は夜通し付き合ってやるよ」
「もしくはとっとと男に戻ることだな」
「それが出来りゃ苦労ねぇんだよ!はぁ…」
でもどうしようもない。
遊星が何しでかすか分かったもんじゃないけど、皆で起きてりゃ既成事実作られることもないだろ。
「ごめんね、
「ブルーノは謝らなくて良いから、一秒でも早く帰れるようにしてくれ」
「あはっ、それは無理。これが最速」
はぁ…悪びれない笑顔をありがとよ…。



しばらくは皆で喋っていたが、やがてブルーノがはっとしたように遊星に声を掛けた。
何か神が降りてきたらしい。
俺には全く意味の分からない会話を交わして、二人はパソコンの前へ。
こうしてパソコンに集中してくれると俺に被害も無くて有り難いな。
「ふぁ…今日結構疲れたから眠くなって来た…」
アキの指示で色々着替えさせられたからなー…。
「俺の部屋で寝てくるか?」
「んー…でも遊星がなぁ…」
クロウの言葉は本当に有り難いが、パソコンに集中し始めたとは言えいつ作業が終わるか分からないし。
「ならば俺が見張っていてやろう」
「ジャックが?いいよ、悪いよ」
「構わん。クロウ、お前も寝ろ。Dホイールが動くようになったらお前がを送ってやれ」
「でもよ、そうすっとの寝るところが…」
、貴様は俺の部屋で寝ればいい。これで何も問題なかろう」
何だかジャックが超まともなことを…。
急にどうしたんだ。
酒でも飲んだのかな。
「ほんとに良いの?」
「ああ。さっさと行け」
うわーうわージャックがすげーイケメンだぁ。
「さんきゅな!!ジャック!」
俺は今日買った寝間着の入った袋だけ掴んで階段をあがった。
あいつらが俺の部屋を良く知ってるように俺もここのことは良く知ってる。
ジャックの部屋はクロウの右隣っと。



「何だよ。うまいことの株上げやがって」

「ふっ…何のことだ」

「とぼけんなって。なあ、Dホイール動かねぇって怪しくね?あいつら結託したんじゃねぇかな」

「お前もそう思うか。全く面倒なことだ。さっさと俺のものにせねば」

「ははっ、それが本音かよ。でも俺も譲らねぇぜ」




真っ暗な部屋の電気を点ける。
何だろう、驚くくらい片付いていた。
いや、これはもう殺風景と言っても過言ではないと思う。
ジャックって部屋キレイにしてんなぁ。
どっちかってーと遊星の方が散らかってるかも。
主に工具類が、だけど。
「…あれっ…?」
そういや寝間着の袋、軽すぎねぇ?
俺3着買ったよな?
嫌な予感を覚えつつそれを開けると…。
「…メッセージカード…」
薔薇の模様の…。
俺の背中を冷や汗が流れる。



これ、お揃いで買ったから、今晩はこれを着て頂戴ね。
荷物から抜いちゃった寝間着は明日おうちに届けます。

アキ』

荷物から…抜いちゃった?
ちょ、ちょっと待て。
これ試着したヤツとデザインは違うけど…っ!
アレじゃん!ベビードールじゃん!!!
アキィィイイイイイ!!!!!!
お揃いでってこれのことだったのかよっ!!!
「透け具合は…マシみたいだけど…」
おっぱいは隠せそう…良かった…。

じゃなくて。

「こんな頼りない寝間着で寝られるかっ!」
誰か来たらどうするつもりなんだよォ。
アキは俺が家に帰ってると思ってんだろーけど、俺の寝起きの悪さ知ってるだろー。
しょっちゅう誰かが不法侵入しては俺を起こしてくるのに…。
でも流石に一日中歩き回った服でジャックのベッドに入るの悪ィよなぁ。

「…」

アキィィイイイイイ!!!!!!
マジでもー何なんだ今日はっ!
嗚呼、ここは一つジャックを信用するしかないかぁ…。
はぁぁ…腹空かせた狼の横で眠る羊の気分。
いや遊星の場合狼じゃなくて大蟹か。
じゃあ俺はちっちぇ海老か何かかなあはははは。
…はぁ…。
「疲れてんだ、寝よ…」
もそもそとTシャツを脱いだ。
流石に見慣れたな…おっぱいも。
童貞なのにおっぱいに感動薄くなってきたって、なんか泣ける。
「うう…結局スッケスケじゃん!腹とか隠してないも同然じゃん!!」
ジャックの部屋でこんな格好してるってのが更に変態っぽいな。
何が悲しくて友達の部屋でベビードール…。
まあ布団被っちまえば見えないけどな。
念のため部屋も真っ暗にしておくか。
朝になったら関係ねぇけど…。
「…疲れた…」
ジャックのベッドに潜り込み、俺は呟いた。
それにしても何故俺はこんな体になっちまったんだろう。
戻れるんだろうか。
一生このままだとしたら、どうなるんだろうか。
男と付き合う気になれなかったら一生独りだよな。
いや、女じゃなきゃ無理な女の子捜せばなんとかなるんじゃね?
でも結局遊星とかクロウが俺を見る時の目は変化しちまったまま戻せないよな。
女として見てる。
…仕方ねぇか。
だって実際俺女だし。
…はぁ…。
…。
……。
…眠く、
なってきた。
…。
……。
………。