「俺の部屋、待ち合わせ場所にでもなってんの?」
何だろう、ここ最近の人口過密度。
別に来る者拒まず主義だから良いけど。
結局俺が女になったことは仲間内からすぐに広がった。
まあ着てる服が服だから仕方ないことだったのかもしれない。
でも別に誰もこれといった反応は示さなかった。
なんか悲しくなるくらい「ふーん」程度。
まあシグナーやらに慣れてる奴らには女になるくらいどうってことないんだろう。
…じゃあお前らがなってみろってんだ…。
マジで他人事だと思いやがって…。
一部の奴らを除いて、大体平常運転が続いてる。
ごく一部の奴らを除いては、な…。
「京介…お前結構忙しいんだろ?こんなとこで油売ってて良いのかよ」
「別に問題ねぇ。大概の奴らは捻じ伏せたしな」
俺のベッドでごろごろするのは昔のリーダー…。
ダークシグナーの時にテンションと言うテンションを使い果たしたんだろうな。
なんか急に大人しくなっちまって…。
でも俺の部屋にずかすか入り込むトコは遊星やクロウとも同じだ。
「なー、俺のとこに嫁に来いよ。結構贅沢に暮らせるぜ」
「嫁は嫌だ」
「じゃあ来るだけで良い」
「妥協早ぇえな!」
京介の言葉に俺をさっと後ろから抱き寄せるのは遊星だ。
だから、男に抱き寄せられても嬉しくないから。多分。
「鬼柳、に勝手に話しかけるな」
「何でお前の許可が要るんだよ」
「サティスファクション時代を忘れたとは言わせない。お前と喋ったら大概の女が妊娠する」
人聞き悪いな!
確かに京介は超手癖悪かったけど!
俺らの中で唯一童貞じゃなかったしな…ってか、あれ、もしかして童貞俺だけじゃねぇよな…?
ちょっと心配になってきた。
この姿じゃ絶対童貞卒業できないし。
「なー、遊星って童貞?」
「え」
「え?」
腕の中から見上げた遊星がちょっと驚いた顔をする。
明け透けに聞きすぎたかな。
「童貞に決まってんだろ。女とまともに喋れもしねー遊星が童貞じゃないわけがねぇ」
何で京介が答えるんだよ…。
ってか俺も大概その台詞傷つくんですけど。
「…の為に取ってある」
「それは女側が言う台詞だろ!」
思わず突っ込んじまった…。
偉そうに言える立場じゃねぇのに。
「は、どうなんだ?」
「え、お、俺…?」
遊星がちょっとしおらしい表情で聞いてくる。
や、童貞は悪いことじゃねぇよな。
京介みたいにとっかえひっかえの趣味はなかったし、好いた女もいなかったし。
「ま、まあ…そりゃ確かにお前に突っ込める立場じゃねぇけど…」
「!」
遊星の目が見開かれる。
俺が童貞ってそんなびっくりすることか?
「立場ではないということは、お前は俺に突っ込みたいと思っていたのか…」
「はぁぁ!?」
今日もこいつの頭はあったかいな!!マジ安定の飛躍!
なんでいきなりそうなるんだ。
童貞かどうかって話ししてたんじゃねぇのか。
男抱く趣味なんかねぇよ。
「ちげーし!つーかお前俺が童貞かどうか聞いてたんじゃねぇの?」
「いや、処女かどうかが知りたい」
「残念ながら処女だよ!!!っつーか男とそういうことする趣味ねぇから!」
いくら昔の仲間で且つ元男とはいえ女に処女かどうかを聞けるこいつの心臓すげーな。
通報されても文句言えねぇぞ。
やっぱ遊星は普通の女と付き合ったらマーカー超増えると思う。
…いやこいつイケメンだし、女も『やっだー、もう遊星ったらぁ』くらいで済むかもな…。
それはそれで無性に腹立たしい。
「ふぅん。そりゃまあそうか。元男だしな」
京介が俺の顔を覗き込む。
こいつも大概イケメンだよなぁ…。
クールそうな雰囲気の長い銀髪に切れ長の目。
何だかんだ熱血タイプのクセに、そういう雰囲気で女が放って置かなかったもんな。
遊星とかジャックもその気になればそこらの女食い放題だったろうけど、遊びまくってたのは京介だけだった。
良くも悪くも自分に正直なやつだからかなぁ。
それにしても女になってから暫く経つが、俺の思考はやや女よりに傾き始めているようだ。
その証拠に、京介に見つめられると自然に頬が熱くなる。
元からイケメンだって認識はあったが、今はもっとこう…どきどきする。
「あ、あんまりじろじろ見るなよ」
「良いだろ別に。減るもんじゃねぇし。カワイー顔もうちょっと見せてくれよ」
顎を掴まれ京介と視線を合わされる。
こういうことナチュラルにやるから女が熱上げるんだよ馬鹿!
「…きょ、京介…?」
な、なんかあの。
顔近い!!
っていうかキスされ…っ!?
「そこまでだ。鬼柳」
俺の後ろから伸びた遊星の腕が、京介の頭をぐいっと後ろへ追いやった。
あわわあっぶね!遊星がいて良かったー!!
心臓がばくばくする。
「も何故拒まないんだ。俺のときは抵抗したくせに」
「あ、あれは貞操の危機だったからだ!」
遊星は珍しく悔しそうな表情で俺の腰をきつく抱く。
止めろよー。
まだすげー心臓早いんだぞ。
そういう珍しい反応、いわゆるギャップに女は弱いんだぜ。
お前にもどきどきしちまうだろーが。
「邪魔すんなよ、遊星」
「他の女ならどうでもいいが、だけは別だ。お前には渡さない」
「こいつ拾ってきたの俺だぜ?俺に最初の権利があるだろーよ」
「いや、権利も何も…俺の意思は無視ですか」
こんなイケメン二人に迫られて、端から見たら俺が一番の悪女なんだろーなぁ…。
「お、じゃあお前の意思ってやつを聞かせろよ、」
「え」
「チーム・サティスファクションなら誰選ぶんだ?」
「ええ?サティスファクションで?」
まあ確かにチーム5Dsだと京介入らねぇもんな…。
それに確実にアキ選ぶし。
だからって男ばっかのとこ指定しなくても…。
「うぅーん…」
京介と、遊星と、ジャックと、クロウと。
女になってから今までの全員を振り返る。
いやぁ…これはもう…。
「…ジャック一択」
偉そうにしながらも、俺を一番まともに扱ってくれて一番紳士的だったのは、ジャックだけだ。
クロウも結構俺を助けてくれたから、二番。
「なっ、ジャックだと!?お前趣味悪ィな!」
「よりにもよってジャックに負けるとは…」
いや、お前ら!
ジャック仲間じゃねぇの!?何その反応!
酷い通り越して失礼だろそれ!
「あの馬鹿さがいいのかねぇ、女って」
「いや、単純なところじゃないか?操りやすいというか…」
お前ら言いたい放題か!!
「ジャックのこと悪く言うなよな!俺、今日ジャックと組むわ」
ばっと遊星を振りほどいて俺は立ち上がる。
「お、おい!待てって!」
慌てて京介が俺の手を掴むが、俺は二人に言ってやった。
「お前ら暫く出禁!!」
来る者拒まずの俺にこれを言わせるのは相当だぜ。
ちょっと反省しろ!
鬼柳vs遊星
▼result▼
→winner:ジャック
→loser:鬼柳&遊星
終