気付いたら、と俺の関係は。
お互いの気持ちが良く分からないままに体の関係だけが深くなっていた。
「え?だって遊星が悪いだろ」
「…俺の所為なのか?」
ベッドでごろごろしているはどうやら俺のデッキをいじっているようだ。
タッグを組むなら組む相手に合わせる、というのがの戦法。
中身のチェックを頻繁にしている。
俺も別に気にしない。
のデッキが見たければは惜しげもなく俺に見せてくれるだろう。
それこそクロウと組むとき、ジャックと組むとき、アキと組むとき…全て見せてくれる。
そうしたところで負けるわけが無いと思っている。
はそういう男だ。…今は女か。
「最初に強引にセックスしたのはお前だろ。まあ超気持ち良かったからこうなってんだけど」
「それはがそういうことを好きなだけじゃ…、痛ぅっ!」
「そもそもお前が俺を食っちまわなきゃこんなことにはなってねぇんだよっ!!!」
無遠慮に伸びてきたの手が俺の頬を引っ張った。
「ってか俺よりお前の方がそーゆーこと好きだろうが!!サカったら見境なしだろ!」
言いながら思い出したのかの指先に更に力が篭められる。
すごく、痛い。
「お前の部屋でも!俺の部屋でも!風呂でも!ガレージのソファでも!シティの公園でも!サーキット場でも!サテライトの廃墟でも!」
怒っている割に良く覚えているな。
そんなに俺とのことを覚えてくれていることにちょっと感動すら覚える。
「はぁ…なんで俺、こんなお前に付き合ってんだろ…」
ぽつりと呟いては俺から手を引いた。
抓られた頬はじぃんとした熱を持つ。
後悔しているのかと問おうか迷っていたら。
ベッドに散らかしたカードを集めながらははぁっと深い溜め息を吐いたが先を続けた。
「っていうか俺…何でこんなにお前が好きなんだろ」
「えっ」
「あ」
ははっとした表情を浮かべたが、何か言葉を発する前に俺によってベッドに押し付けられていた。
手元のカードがぱっと空中に舞う。
あ、とが抗議の声を上げようとしたがそれより早く唇を押し付けて言葉を奪った。
「、っ…、…」
口の中で逃げ惑う舌先を捕まえて滑らかな感触を味わった。
ぬるつく唾液を飲み込んでは絡めて、角度を変えながら深く口づける。
「んぅっ…何だよ、やっぱお前見境ねぇじゃん…」
僅かに咳き込みながら俺を睨みつける。
「試すつもりで言ったのか?」
「そんな趣味悪ィことしねぇよ。…つい本音が出ちまった…クッソ、言うつもり無かったのに…」
「何故だ?俺はずっとその言葉を待っていたのに」
「いつか俺が男に戻ったらお前困らすだろ…。遊星優しいから男でも俺と付き合い続けようとするだろ?」
「寧ろ何故俺がそこでを手放すのかが分からない。男に戻ったが俺を手放すならともかく」
「子供欲しいんだろーが。男同士じゃ子供は出来ねぇぜ?」
子供が欲しい?
そんなこと言っただろうか。
いや、待て…そういえば…。
思い当たった心当たりに、俺は思わず声を出して笑っていた。
「なっ、俺は真剣だぜ!?」
「ははっ。いや、分かってる。すまない。が俺の些細な一言を覚えてくれていたと思うと嬉しくて」
「いや、些細じゃねぇだろ」
子供、な。
まあ確かに。
親のいない俺にとって家庭という概念は未知だ。
そして何となくの理想もある。
恐らくクロウやジャックもそうなんだろう。
得られなかったものを欲して隙間を埋めようとする気持ちは確かに存在している。
「確かに、俺にも家庭というものの理想像はある」
「だろ?」
「だが、その理想像に何よりも不可欠なのが、お前なんだ。男だろうと女だろうと、俺の傍にいて欲しいのはだけだ」
「…理想とかけ離れてもか?」
「と、言うよりが欠けた状態の理想像は一つもない」
「…」
俺の言葉には納得がいかないような表情で首を傾げた。
意味が分からないのだろうか。
「分かりやすくいえば、がいればどんな状況でも俺の理想だ」
「…うーん、なんかそれ“理想”ってやつとは違うような気がするけどなぁぁ〜…」
「深く考えなくて良い」
俺はベッドに押し付けたの服を捲り上げた。
最近では女物の服に抵抗も薄くなってきたらしい。
今日のの服はアキが見立てたというワンピースだった。
「…お前は深く考えなさすぎだろ…」
「いいんだ。コレの間は俺のことしか考えられなくなるだろう?それが答えだからな」
「意味分かんねー」
でもお前らしいな。
は言って笑った。
そして更に一言付け加えてくれることには。
「ま、遅くなっちまったけど、好きだぜ遊星。これからもよろしくな」
こちらこそ。一生手放すつもりはない。
「あ!待て待て!!」
「何だ?」
「カード!」
先ほど散らばったカードがベッドの上でそこかしこだ。
折角良い雰囲気になったのに…と残念に思うが、流石にそのままにはしておけない。
「俺にとっちゃ商売道具だしな」
は丁寧に拾い集めてベッドのサイドボードにそれらを置く。
「お待たせ」
向き直ったは俺に向かって手を伸ばした。
来い、ということなのだろうか。
そっと手を伸ばすとが弾みをつけて抱きついてきた。
柔らかな体が飛び込んでくる衝撃に俺は逆にに押し倒されるような形になる。
「ははっ!なんか吹っ切ると楽しいな!!あー俺、心残りあるとしたら遊星抱けなかったことだけだー」
「…俺を?」
「だって遊星ばっか俺に突っ込んでんじゃん!俺も遊星に突っ込みたかったなぁー!」
突っ込む…。
何だろう眩暈がする。
まあ、確かには女になってしまったのだからそういうことは出来ない。
事実上不可能。
「つーか俺童貞だし。まあ男で童貞卒業ってのもアレだけど」
「…」
それを言うなら俺もかなりグレーゾーンだ。
なんといっても初めての相手は目の前のなのだから。
話してはいないけれど。
「遊星が女になって俺が男に戻れるように“赤き龍”様にお願いしてみようかなぁ」
「…やめてくれ」
下手をすれば現実になり兼ねない。
次元を超えたり時間を遡ったり、なんでもありの痣なのだから。
「指だけでも入れてみていい?」
「断る」
「ちょっとだけー」
「やめてくれ!」
下着姿で俺の上に馬乗りになって笑う。
可愛いな。
男だろうが女だろうが、俺はやっぱりが好きだ。
俺の上に無防備に乗ったの太股を撫でる。
滑らかで柔らかい肌。
が目を細める。
「ふっ、遊星、くすぐってぇよ」
言って仕返しをするかのように俺の服を捲りあげた。
さらさらと撫で回しながらタンクトップを脱がせ、胸の上に体を押し付けるようにして密着する。
「…やっぱ俺、遊星とならこーゆーことヤるの好きかも」
絡み付くように抱き着いて、その柔らかい唇を俺に押し付けた。
可愛い。
細い腰を抱く。
過去に何度も抱いたそれは、それでも新鮮な熱を俺に生み出させる。
「」
ちゅ、ちゅ…と小さな音を立て俺の頬や首筋に何度もキスを繰り返す。
そして、頬のマーカーを舌で撫でた。
「遊星、やっべぇ…俺スッゲー興奮してる」
頬を赤く染めたが甘い視線で俺の手を取り、自らの胸に押し当てた。
がそんなことをするのは初めてだ。
そもそもここまで積極的なこと自体が珍しい。
「な、触ってくれよ…遊星」
促す言葉に俺はの背中に手を回し、下着を外してベッドに押し付ける。
俺の見下ろす下では小さく体を丸めた。
手首を掴んでの体を開く。
「…、遊星…」
僅かな期待を感じる声だ。
胸元に顔を埋めるとふわっとの匂いがした。
俺の今の状態も、先程のの言葉を借りれば「スッゲー興奮する」というやつだろう。
下半身が窮屈になってきた…。
「ははっ、遊星も興奮してんのな。勃ってんじゃん」
「っ、!」
が楽しそうな声を出すとともに、俺の下半身に膝を押し付けてきた。
その刺激で俺は更に膨張してしまう。
「ああ、すげぇ感じてんじゃん。堪んねー」
俺との関係を吹っ切ったと口にしたは楽しそうだった。
今までセックスの時にこんなに楽しそうだった姿は見たことが無い。
ごそごそと俺の下半身を弄ってくる。
「おい、…」
積極的になってくれたことは嬉しいが、こうも態度が変わるとやや不安にもなる。
しかし俺の不安を余所に、はベルトを引き抜いて脱がせようとしてきた。
「…、お前の態度が変わりすぎて戸惑っているんだが」
「だって今まで遊星大好きな気持ち抑えてきたからさ。口に出せるっていいな。大好きだぜ、遊星」
「……何か…逆に照れるな…」
「そーか?なぁ、遊星の口でしてもいいか?」
「え」
「え?」
急にそんなサービス…。
何だろう、不安を通り越して怖くなる。
俺は明日死ぬのではないだろうか。
「嫌じゃないのか?」
「遊星以外のは絶対嫌だ」
「…」
「フェラなんて初めてだけどよ、俺、元男だからきっと上手いぜ」
べろっと舌を出して見せるに俺は何度目かの眩暈を感じた。
「っ…」
「ん、は…んぐ…」
結局に押し切られるように、俺は体を預ける事になった。
元々男だったに能動的な事を求めるつもりは無かった。
抵抗もあるだろうし、何より男だったが俺の体に性的な興奮を見出す事はまずないだろうと思っていたからだ。
「はっ…遊星、すげ…びくびくしてるぜ。俺の舌気持ち良いか…?」
「ああ、凄く…良い」
流石に元男なだけあって、の舌は絶妙に気持ちの良いところを撫でてくる。
が、それ以上にの行為に興奮しまくっているというのが本音だった。
いやらしく舐め上げる仕草や、深々と俺を咥え込む様相。
小さく音を立てて唇で扱かれると興奮と気持ち良さが混じって射精感が込み上げてくる。
抵抗が無いわけが無いのに、俺をそんな風に愛してくれるが堪らなく愛しい。
「ん、んん…っは…俺の口でこんなになってんだな…」
唇を離して手を上下させながらは呟く。
「コレ咥えて興奮するって俺変態かな?遊星のしゃぶってたらすっげー濡れてきた…」
上目遣いで素直に訴える。
そのやりかたは反則だ。
俺は我慢できなくなってを抱き上げ、向かい合わせに座らせる。
がたっぷりと口で愛してくれたものがの下腹部に押し付けられる。
下着越しなので、はっきりと濡れた感触は無い。
「んっ!な…、何だよ…」
「が可愛すぎるのが悪い」
「はぁ!?…う、わっ、ちょ…!んっ、あぁ、ぁはっ…!」
腰を抱き、下半身を密着させたまま俺はを揺すった。
押し付けた俺のものがになすり付けられる。
「ひゃぁっ、んっ、あぁっあぁぁっ!や、っゆうせ、っい!!」
びくびくとは腰を震わせる。
じわりと下着に染みが広がるのも感触で判った。
「っ、はぁ…、気持ち、良いか…?」
「あっあっ…!良い、けど…っ、やだ、これ…っ、あっあぁぁぁっ!!」
小さくは背中をしならせた。
軽くイったようだ。
不思議な充足感が広がるのを感じ、俺はの下着を脱がせる。
もうどんな状態かなど見なくても判るほどだ。
俺は荒い息を吐くを組み敷いて、頬にキスをした。
「、入れるが…大丈夫か…?」
「はぁっはぁっ…聞くなよ…。良いぜ、いつでも…」
「…」
「ん?」
「愛している」
言って、ゆっくりと腰を進めた。
「っ、遊星…っ」
柔らかくて温かなの中は僅かな抵抗を見せながらも俺を優しく受け入れてくれる。
ぞくぞくと痺れるような甘い快感が俺を支配していった。
「はぁっはぁっ…、遊星、遊星…っ、ああぁ…」
の腕が俺に絡みつく。
抱きつくように縋る仕草に、ますます俺はが可愛くて堪らない。
「あっ!あぁぁっ!!遊星っ、はぁぁ、イイっ!あ…っん!」
「く…っは……っ」
繋がった部分から融けてしまいそうな程気持ち良い。
ベッドを軋ませて俺はを夢中で突き上げた。
「はぁっ、、…っ、イ、きそう…だ…」
「ん、いいぜっ…中で…っ、いっぱい…っ」
「っ!」
の俺を請う言葉に体温が跳ね上がった。
良いのか?
そんな可愛い事を言われて止まれるような男じゃないのに。
「うっ、…いい、のか?…はぁっ、あぁあっ」
ぞくぞくと腰が震える。
ああ、限界が近い。
込み上げる射精感を必死で押し留めながらを見ると、は大きく頷いてみせる。
「んっあ!…俺、はぁっ…遊星の、子供なら…っ、ぁ、生んだって…いいぜ…っ」
まさかの、衝撃的なの告白。
びくんとの体が跳ねた。
「はっぅ…、出る…っ!」
に導かれるように俺も押し留めていたものを解放する。
体ががくがくと震えるのがはっきりと判った。
今までで一番気持ちの良い射精だったかもしれない。
「っは、はぁっはぁっ…!、本気、か…?」
たっぷりと吐き出して、体の力が抜けていく。
の体の上に崩れてしまわないように手をついて、恐る恐る覗き見たは笑っていた。
「本気も本気に決まってるだろ。…3人だっけ?」
楽しそうに笑うを俺は力一杯抱きしめた。
終
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本編じゃなかったらわりとまともな遊星さん。
ここまで読んでくださってありがとうございました。