その日、を誘いに来たのは意外な人物だった。
「珍しいな、シェリー。お前が俺に声を掛けにくるなんてさ。遊星狙いじゃなかったのかよ」
「あら…私、そんなことを一言でも言ったかしら。この前の挨拶、覚えていないって言うの?」
「挨拶…?もしかして…あれってマジで俺に言ってたのか…!?」
悪夢の分岐点ですね。
しまった、誰かに先を越されたらしい。
遊星はもぬけの殻になった部屋を見てがっくりとする。
今日こそは絶対に一番だと思ったのに(クロウもジャックもまだ家にいたから)、既には誰かに連れていかれた後だった。
勝手知ったる他人の家。
無法地帯のようなこの家の住人は、究極の来るもの拒まず主義の持ち主である。
確実に一緒に出かけたければ一番最初に誘いに来るしかない。(その為、朝の4時に現れるような極端且つ迷惑な人物もいるらしいとに聞いた)
もしくは街を単独で歩いているところを捉まえるという手もあるが、これは確実性が格段に薄れるのだった。
「…無駄足だったか…」
いつも通り誰かに起こされる形で慌てて出て行ったのだろう。
床の上に無造作に放り出された寝間着を畳んでやろうかと拾い上げた。
そこには微かにの体温が残されている。
本当にタッチの差だったのかと悔しくなるが、その仄かな存在感にどきどきさせられて釈然としない気分になった。
誰もいない部屋の中。
「…俺ばっかりが好きなんだろうな…」
呟いても誰にも聞こえることはない。
ただ、部屋に響くこともなく消えていくのみである。
とりあえず寝間着は畳んでやったものの、これ以上ここにいても仕方ない。
一人での家を後にする遊星。
嗚呼、折角少し収入があったのに。
シェアハウスの生活で自由になるお金は多くはないが、ジャンク屋をまわるついでにと二人で美味しいものでも…と思っていたあては外れてしまった。
は女の体になってから甘いものがとても美味しいと言っていた。
クッキーやチョコレートを齧るは確かにいつも幸せそうで見ている遊星も気分が良くなる。
いつだって悪戯っぽく笑いながらお裾分けをくれるが、それも嬉しかった。
そういえば一度ケーキを口に入れてくれたことがある。
彼女の手から食べさせてもらうというだけで心臓が跳ね上がったが、その後のフォークを使ってケーキを頬張るにも言い知れない気分になったものだ。
「…危機感がないな、は」
「は?危機感ってなんだよ」
遊星が口に含んだフォークのクリームを舐めとる様にいけない気分が煽られる。
「無防備に俺の使ったフォークを使うなんて、誘っているとしか思えない」
「…お前はホント、そっちの方に回路ぶっ飛んでるよな…」
嫌そうに距離を取ろうとするに追いすがり、遊星はそっと頬に手を差し伸べた。
「ああああんま近寄ンなって!」
何をされるのかとびくつくの唇の端についたクリームを指で拭う。
本当に他意は無かったけれど、なんとなくそれをぺろりと舐めた。
「甘い…」
「おまっ…!お、男にされても嬉しくねぇんだよ…!」
しかし言葉とは裏腹にの顔は何故か紅潮していたのを遊星ははっきりと覚えている。
・
・
・
・
・
さて、ある程度見繕ったところで買い忘れがないかチェックをする。
嗚呼本当ならここにが一緒にいて、この後の計画を話したりしていたんだろう。
あれが食べたいとかそんなことを可愛い笑顔で話すを眺めていたに違いない。
だけど彼女は今ここにはいない。
誰かと一緒であることは間違いないだろうが、それが自分ではないことは変えようのない事実である。
一体誰と一緒にいるのだろうと考えたところでふと思い出す顔があった。
あの日以来結局顔を出さなかったことだけはへのそれとない聞き込みで知っているので諦めたのかと思っていたけれど。
「…っ、!」
もしかして、と思う遊星の視界の端に探し求めたシルエットが横切った。
角を曲がってしまったけれど、一瞬の内に捉えた姿は間違いなく…。
(…!)
反射的に体が動いて角を横切ったシルエットを追いかける。
しかし、名前を呼び駆け寄ろうとした遊星は、角を曲がった瞬間足を止めた。
そしてそのまま角に身を隠す。
「…シェリー…」
やっぱりか、と思う遊星はもう少し警戒すべきだったと苦い気持ちになった。
――少し前の話である。
その日は無事にの部屋に一番乗りを果たし、誘い出すことに成功した。
特にこれと言って用事はないが彼女の隣を独占するなら誘い出すしかないのである。
「遊星、最近結構遊びに来てるけど良いのか?」
「ああ。どっちにしろ一通り稼いだらガレージに来るんだろう?」
「行くけど…」
いつも遊星が誘いに来た日はある程度街を回った後、一緒にガレージまで向かう。
そこで夕飯を食べて帰るのがお決まりなのである。
取り決めをしたわけではないが、何となく自然にそうなっていったので何時から始まったのかは分からない。
とりあえず遊星が先に夕飯に誘って習慣付いてしまったことだけは覚えていた。
「今日の食事当番、クロウ以外?」
「…ジャックだったような気が」
「うおぉ…よりにもよって…。今日早めに終わらせて早めにガレージ行くか。俺が作る」
一人で生活をしているは自活能力が高い。
嗚呼、今日の夕飯は美味しいものが食べられそうだ。
が作ってくれるというなら尚更…と、遊星は密かに喜んだ。
連れ立っての家を後にしたところで二人はいきなり声を掛けられた。
女性の声に振り返ってみると。
「おはよう。先を越されちゃったみたいね」
綺麗な微笑を浮かべるシェリーが立っていたのである。
「お、シェリーじゃん。俺か遊星に何か用か?」
「…用って言う程じゃないんだけど…アナタを、奪いにきたの」
遊星に流し目を送りながら艶かしく動く唇が妖しく告げる。
「悪いが、俺の先約だ」
「…そのようね。デュエルで奪い去ってしまいたいところだけど…ルールはルール。今日は引いておくわ」
ルールというのは『を一番最初に起こしたものが一日独占できる』ということをさしているのだろう。
例え今遊星にデュエルを申し込んだとして、仮にシェリーが勝ったとしても最初にタッグを組んだ人間とのコンビを解消させるような権限など与えられない。
チャンスは一日一度だけ。
の部屋を一番に訪れるかどうか、なのである。
名残惜しそうな視線をに送った後、シェリーは踵を返したのだった。
それを見送ったは小さく息を吐く。
「はー…俺、勝負申し込まれるのかと思った…。アキも大概美人だけどシェリーもスッゲー美人だよな…。遊星奪いにきたって、お前スゲーな。イリアステルだけじゃなくてあんな美人にまで狙われてンのかよ」
「…?」
の言葉に遊星はきょとんとしながら首を傾げた。
シェリーが?
自分を奪いにきた?
「…、シェリーはさっきお前を奪いに来たと言ったんだ」
「えー?ンな訳ねーじゃん。だって遊星見ながら『アナタを奪いにきたの』って言ったぜ?最後、俺ちょっと睨まれたみたいだし。やっぱイケメンは違うな!」
「……」
遥かなる誤解中…と、言うか人はここまで鈍感になれるものなのだろうか。
どう見ても視線で自分を牽制していたじゃないか、と視線を受けた本人の遊星は思っていた。
睨まれたと言ったが、あれだってどう見ても最後に名残を惜しんだのだと容易に理解出来る。
寧ろ睨まれていたのは自分の方だとも。
が、あまりシェリーの本意を伝えてしまうのも面白くない。
彼女の好意がにあると分かれば自身そちらに靡いてしまう可能性が大いにある。(事あるごとに童貞を気にしているようでもあるし)
なので遊星はもうの解釈を正すことをしなかった。
しかし今日を誘いに来たのはそのシェリーだったのだ。
仲良さげにDホイールの後ろへと乗り込むシルエット。
を見間違えるわけがない。
今すぐにでも追いかけてを自分の隣へ連れ戻したい衝動に駆られた。
それくらいのいないこの言い知れない寂しさは耐え難い。
だけどあの時シェリーはルールを守って引き下がったのである。
あの時の自分の言葉を使うならば、今回はシェリーの先約であることに間違いはない。
追いかけるかを迷う遊星の耳にエンジン音が届いた。
はっとしてとシェリーを伺うと、丁度Dホイールが走り出す瞬間で。
滑るように小さくなっていく二人を見送りながら遊星は呟いた。
「…勝負だけでも持ち掛ければ良かったか…」
そうすれば少なくともと同じ空間にはいれたはず。
シェリーと仲良くタッグを組む姿を見せつけられるのだとしても、声を聞けるだけでこの寂しさは慰められたかもしれないのに。
その夜。
勢いでここまで来てしまった。
朝にの部屋を訪問することはしょっちゅうだが、夜に来ることは滅多にない。
しかし部屋には明かりが点いているし、家主が既に帰ってきていることは間違いないようだ。
夜だし鍵がかかっているかと思いきやいつもどおりすんなりと遊星を迎え入れる部屋。
流石、究極の来るもの拒まず主義。
とは言えこの場合は良かったのか悪かったのか。
「…やはり危機感がない…」
後ろ手にドアを閉めた遊星は手探りで鍵を掛けた。
これで邪魔も入らないだろう。
「…」
驚かせてしまうかもしれないと危惧しながらも止まらない足が家主の部屋へと向かう。
とりあえず外からノックだけはしてみたが返事がない。
「……?」
ここにシェリーがいたらどうしようと思いながら遊星は一瞬の躊躇いの後ドアを開ける。
そこは今朝と同じくもぬけの殻。
唯一違うことは電気が点いていることだけか。
床に散らかった服にまでデジャヴを感じてしまう。
「…」
それにしても家主の姿がなく服が散乱しているということは…。
心当たりに部屋を出て一直線に向かう先。
そこはざあざあと雨のような音が響いている…そう、風呂場である。
「、お前に聞きたい事がある」
「ぎゃっ!び、びっくりさせんな!!!何勝手に入ってきてんだ!!!」
それは家へ入ったことを指しているのか、風呂場へ入ったことを指しているのか。
はたまた両方か。
「お前、今日シェリーといただろう?」
咎める言葉を華麗にスルーして問い詰める遊星は真剣そのものだが、シャワーを浴びていたはそういうわけにはいかない。
「その前に、ココから出てけ!」
体を庇うように腕で覆って遊星に背中を向けるの白い肌に伝う透明な雫。
そしてこの反応はどう見ても女の子の反応である。
ごくりと遊星の喉が上下した。
どちらかと言えば恋愛沙汰に興味の薄い遊星であるが、のこととなると話は別で。
目の前の柔らかそうな肌に性衝動を揺さぶられた。
自分自身勝手な話だと思ったが本能が止まらない。
遊星は自分のジャケットに手を掛けた。
「な、何してンだよ…」
急に服を脱いだ遊星にびくびくしながら問うに平静な振りで答えることには。
「俺も入る」
「ハァ!?ちょ、馬鹿…狭いだろーがっ!!!」
ぽいぽいと服を脱ぎ捨てて遊星は強引に浴室に押し入った。
そして背を向け続けるの体を後ろから抱き寄せる。
「さあ、答えてくれ。お前は今日シェリーといただろう…?」
耳元で一層穏やかな調子で吹き込まれては言い知れない感覚を感じた。
「い、いたけど…何で知ってんだ…?」
「お前たちを見かけた」
受け答えをしながら遊星は、自身の体を隠すようにしているの腕をやんわりと解いてしまう。
そして…。
「ひゃっ…ど、何処触って…っ!」
ふっくらと柔らかな胸を掬い上げるように掴んだ。
更に緩く揉みしだくが、またしてもの咎める声を聞き流して質問を続ける。
「それで…、二人で何処に出かけたんだ」
「何処、って…や、っ…お前、っ…」
悪戯に乳首を抓み始めた遊星を首だけで振り返り睨み付けるが、遊星は涼しい顔だ。
「言えないようなところに行ったのか?」
「っ、何か、その言い方悪意あるぞ…っ、あっ…馬鹿、やめろ…っ」
耳の後ろの辺りに唇を押し付けて何度もキスを繰り返す。
ぞわぞわとしたくすぐったさに身を竦ませながら遊星の腕を振り解こうとするものの、しっかり抱き締められていて離れることが出来ない。
「ちょっと一緒に走っただけだ…っ、ん、ン…っ、もぉ、やめろって…!」
「何かされなかったか?」
「…何か、って…お前じゃあるまいし…っ!シェリー疑う前に、身の振り改めろ馬鹿!」
…違いない。
流石に耳が痛いけれど、身の振りを改めてしまったら女性からのアピールでさえ気付かないに一生気付かれないままで終わってしまうではないか。
「それはさておき」
「おくな!」
「この前俺と一緒にシェリーに会った時のことを覚えているか?」
「!」
びく、との体が強張った。
「あの時俺がに言ったこと…覚えているな?」
「……」
「」
「…う、うん…」
ばつが悪そうに俯いている理由は聞かずとも分かっている。
「だ、だって…マジでシェリーが俺なんか相手にすると思ってなかったしよ…。お前強いしイケメンだし、普通お前だと思うだろ…」
間接的に褒められた。
遊星はニヤけそうになるのを堪えて(そしての話の内容から察するにニヤけている場合でもなさそうだし)更に問う。
「…何を言われた」
「……全部は言えない…シェリーに悪ィから」
「差し支えない範囲で構わない」
「一匹狼はやめてチームに来ないかって…。その、長い目で見て…公私関係ない仲間に…って」
ものすごく言葉を選んでいるが、要は彼女の好意を伝えられたということだ。
何処まで踏み込んで気持ちを伝えたのか遊星には分からない。
しかしここまでの気遣いを見せるということは踏み込んだ話をしたのだろう。
「…受けるのか」
「……悩んでる。俺、この生活結構気に入ってンだ…。…でも…」
言い淀むを遊星はそっと盗み見る。
そこには見たこともないような愁いを湛えるの顔があった。
「……?どうしたんだ」
遊星の気遣うような声にははっとした風で首を横に振った。
「何でもねぇ」
「…嘘だ。何を考えている」
「何でもねーよっ!しつこいぞ…!!」
きゅっと口を結んで遊星を睨むに焦燥感が煽られる。
毎日会えるわけではないが、会えない日は寂しくて。
今日だってその姿を見ただけで隣にいないのが悲しかった。
が誰かを選ぶということは、そんな日々が毎日続くということだ。
膨大な年月がという存在を欠いたままで積み重なっていくということだ。
…それは、絶対に嫌だ。
「なら…体に聞いてやろうか」
「なっ!?」
言うなり遊星は肩を掴んでの体を無理やり自分方へと反転させた。
一糸まとわぬ裸の体。
膨らんだ胸に細い腰、緩やかなカーブで描かれるこの体は、既に遊星の見知るの体ではなくなっていた。
それでも曲線が最初に感じた性衝動を呼び起こさせるようで。
衝き動かされるままに遊星はに唇を押し付けていた。
ふわっとした感触。
未知の感覚に知らないを知ったような気になり遊星の体が熱くなる。
しかし、そのままゆっくりと舌先を潜り込ませた瞬間。
「!」
鋭く走った痛みに遊星が唇を離す。
ふーっ、ふーっ…と荒い息では遊星を睨みつけていた。
「酷いな…噛むなんて」
出血こそしなかったが、じぃんとした鋭い痛みに顔を顰める。
「どっちがだよ!も、もう止めろって…」
「…止められるなら……とっくに止めている」
「っ、な、何言って…っ」
抗議の声を遮るように遊星はの体をきつく抱き締めた。
裸の体がぎゅっと密着する。
その時下腹の辺りに遊星の欲情の象徴が押し付けられては体を強張らせた。
「も…分かるだろう?今更止められない」
「か、勝手なことばっか!結局ヤりたいだけかよ!!」
男の気軽な性の対象にされるなんて御免被りたいは遊星の腕の中から逃げ出そうと必死で抵抗をした。
しかし。
「違う…!俺はが好きなだけだ…!」
「!?」
珍しく大声を出した遊星の言葉にびくっとは肩を震わせた。
首筋に埋められた遊星の吐息が熱くてくすぐったい。
「本当に…ずっと一緒にいたいだけなんだ…」
「…遊星…」
「何処にも行くな…。俺と…ずっと一緒に……」
切ない告白の声。
遊星の言葉には息を飲んだ。
ここまで真剣に想われているとは思いもよらず。
何だかんだと見境なく、且つセクハラ紛いに言い寄ってくるがそれも日常的になりつつある近頃である。
そんな中で体だけの気軽な関係を求められているのだか、本気なのだかが分からなくなってしまった。
女の体に引っ張られるようにして心も女に傾き始めているは、理由をつけて一緒にいたがる遊星に好意のようなものを抱き始めていたのである。
しかし遊星の真意が何処にあるのか。
元々男だった自分にそこまでの感情を持っているのか。
ここに来てようやくそれを知り得たは一つの結論に到達する。
「……一緒にいたいだけって割には…」
「っ、!」
「ギンギンにしてるじゃねーか。俺の体、そんなに興奮した?」
もぞ、と密着する体の間に割って入ったの手が遊星の勃起をぎゅっと握り込んだ。
「ぅ、あ…っ!?」
思いもよらないの行動に遊星がびくっと体を跳ねさせてを見る。
「安心しろよ。何処にも行かねぇ。…俺は遊星の傍にいるぜ」
「!」
「俺も…一番お前が好きなんだ…」
はにかんで呟かれた言葉に遊星は目を見開く。
今何と言った。
が。
一番。
…好きだと…。
「…ほんとう、に…?」
「おう。こんなリスクの高い嘘吐くか」
一歩間違えば遊星に刺されてもおかしくないかもしれない。
それにあんなに切ない告白を聞いた後でそれを弄ぶかのような悪趣味な嘘を吐く神経も持ち合わせてはいなかった。
時間をかけての言葉を租借した遊星は、がしっとの肩を掴む。
「!」
そしてちゅうっとに唇を重ねた。
何回味わっても官能的な柔らかさでどきどきする。
恐る恐る口内に舌を滑り込ませてみた。
一瞬掴んだ肩がぴくっとなったけれど噛まれることはなく。
「ん、っ…」
思う存分の味を堪能してゆっくりと離れる。
「今度は、噛まれなかった」
「ばか…」
満足そうに離れた遊星には赤い顔で視線を逸らした。
初めてを狭い浴室内で…というのは怖すぎるので、狼になりそうな遊星を宥めて宥めて二人は部屋に戻ってきた。
「…なぁ、遊星」
全裸のままベッドの上で体育座り。
際どいラインに目を奪われつつ遊星もベッドに上がる。
「どうしたんだ?」
「……お前、童貞?」
「……、今まで相手もいなかったし…」
「何だよー!俺だけじゃん!いつまで経っても卒業出来ないの俺だけじゃんー!!!!」
本気の涙目で言われても。
「うっうっ…童貞卒業出来ねーし…親友には処女捧げることになるし…何なんだよ俺の人生…」
人生レベルで悲観的になっているのか。
と、思いつつ、遊星には聞き過ごせない一言が。
「…、俺達は親友じゃない」
「えっ!?」
「もう、恋人だ」
「!」
どさ、と遊星がに圧し掛かる。
「…お前はそーゆーことをさらっと言うな…」
組み敷かれて遊星を見上げながらは頬を赤らめた。
「でもびっくりしたー。親友と思ってたの俺だけだったのかと思った…」
「ふ…そこで留まらなくて良かった」
「!…ばっかじゃね…恥ずかしいやつ…、ン…あ…っ」
きゅっと掌で掬い上げた乳房に遊星が唇を押し付ける。
「はぁっ、いきなり、かよ…っ!」
ピンク色の乳首をぬるんと撫でる遊星の舌。
ちゅぷちゅぷ音を立てて舐められると下腹部からぞわぞわする感覚が這い上がってきた。
「あっ…あっ!あー……っ」
自然としなってしなう背中。
遊星の肩に手を掛けて、強請るように繰り返されるの体の反応。
「…可愛いな…」
「っ、それ、褒め言葉じゃ…ねぇっ…!」
「っつ…!」
思わず素直に口に出したらに二の腕を抓られた。
結局この行動も遊星的にはものすごく可愛いのだが、そんなに嫌ならばと口には出さないで置く。
だけどちょっと痛かったから。
「ひァっ、ゆ、ゆうせ…っあぁぁあ…っ」
ぢゅるるるるっと音を立ててきつく吸い上げてやった。
更に強い刺激で敏感になったところを今度は優しく舌先で撫でて労わってやる。
「ふあっ、あぁぁ…それだめ…っ」
「嘘だ。感じているくせに」
「やっあ!…あ!…あっ!」
女の体に与えられる未知の刺激。
遊星のいけない手の中で形を変える胸を唇で弄ばれるとこんなにも気持ちがイイなんて。
ぺろぺろと乳首を捏ねられる度に体の奥がびくびくと疼く気がする。
その感覚が奇妙にもどかしくては膝で遊星の腰を擦った。
「…どうしたんだ?」
ぎゅうぎゅう腰を挟み込んでは膝を擦りつけるお強請りのような仕草。
そんなの太股を撫でて遊星は意地悪くを見た。
「分かンねぇけど…なんか…この辺がもやもやする…」
下腹に手を当てて切なげに溜め息を吐く。
「…ふぅん?」
遊星もが示唆したところに手を当てる。
瞬間の内股がぴくっと震えたような気がしたが敢えて気付かない振りをした。
そして殊更丁寧に、その滑らかな腹の上を撫で回す。
「うあっ!やっ、ゆうせぇ…っ!」
「ん…?どうした?」
さわさわと遊星の手が這いまわる度に足の間がじんわりと熱を帯びてくるのが分かる。
そして先程感じたもやもや感が強くなってきた。
「そ、それっ…だめだ…っ、あ、なんか…っ、変な感じがする…っ」
シーツの上でいやらしく波打つの体。
やはり時折内股がぴくぴくと戦慄いている。
遊星は下腹を往復させていた手をゆっくりと下へ滑らせて行った。
「あぁ…、うそ、そんなとこ…触るなよォ…」
つうぅ、と下ろされた手が割れ目を広げて敏感な粘膜へ触れる。
そこはぬるりと愛液を零して柔らかく遊星の指を受け入れた。
「あっ…、はぁっ…はぁっ…」
くぷ…と膣内に遊星の指先が僅かに埋まり込み、の体が緊張する。
瞬間鈍い痛みが生まれたのをは感じた。
「痛っ…、ゆう、せ…怖いって…」
「大丈夫だ。ゆっくり息を吐いてみろ…」
「ん…はぁあ…あっ、あぁ…っ」
遊星の言うとおりにしている間に指が体内に収まる。
「痛いか?」
「んう…、へーき…。でもすごい変な感じが…」
体内を蠢く遊星の指の感触。
探るような手つきを不思議に思っていたら、不意に痺れるような快感が腰を駆け抜けた。
「ひゃあっ!!!な、何だ今の…っ」
「何か感じたか?」
「あっ!あっ!!ま、待っ…うあぁあっ…!」
曲げられた遊星の指先がぐり、と体内を刺激する。
「ひィっ、やめっ…!それっ、あぁぁっ!あっあっ!」
どぷりと愛液が溢れ出しが感じていることを遊星は知った。
指を増やしてみる。
「あー…っ、あ、あっ…何だ、コレっ…すっげ、はぁっ、あはぁっ!」
ぐりぐりと指先で押し込むように刺激を与えた瞬間、の体が弓なりにしなった。
きゅうきゅう膣壁が収縮しては遊星に指を締め付ける。
「…イったのか?」
「イ、った…?知らねーよ…。でもめちゃくちゃ気持ち良かった…」
うっとりと恍惚の表情を浮かべるはベッドに体を預けて浅く呼吸を繰り返す。
しどけなく色を含んだの上下する胸が震えて、遊星を誘っているようだった。
ごくりと、喉が上下する。
遊星はナカに埋め込んでいた指を引き抜くと、の足の間に腰を押し込んだ。
そして自分のモノを2、3度扱いて上を向かせると、蕩けきったの入口に押し当てる。
「入れる、の…か?」
「ああ。力を抜くんだ」
押し付けられた熱に戦くが、先程の強烈な快感の記憶も残っている。
指であんなに気持ちがよくて、遊星のアレが入ってきたらどうなってしまうのだろうと思うと期待と不安が頭を掠めた。
「…いくぞ」
小さな宣言の後。
一気に体を貫かれた。
「――っ!」
勢い良く打ち込まれた遊星の楔が深々との体内を突き上げる。
「あぁぁあっ…!ゆう、せ、えっ…!」
「く、っ…キツい…っ」
お互いに未知の快感に腰を震わせて背中をしならせる。
反動で更に深く押し込まれて、は嬌声を上げた。
「はぁあ…、ゆうせぇ、…っ、めちゃくちゃイイっ…!」
膣内の快感を覚えたばかりのが感じる個所を探して腰を揺らめかせる。
卑猥な行為に興奮した遊星はその腰を押さえつけて注挿を始めた。
「ここ、っ、ここに…っ欲しいんだろう…!?」
「んあっ!そこ!そこォ…っ!!好いィィ…っ!」
組み敷いた体を絡ませながら遊星は夢中での体を貪る。
いやらしくうねるの膣内は腰が蕩けそうな程に気持ちがイイ。
突き上げるたびに敏感な先端部分がきゅうきゅう締め付けられて、気を抜くとすぐに至ってしまいそうだ。
「ああぁ…、っ、はぁっ、全然、持ちそうにない…っ」
初めての女の体が凶悪なまでに遊星を導こうとする。
の感じるところをぐりぐりと刺激すればするほど、彼女から与えられる快感も強くなって。
「ん、は…っ、いーぜ…っ、俺の中にっ…ぶちまけてくれよ…っ!」
「!」
するりと遊星の首にの腕が回った。
「好き…だっ…は、あぁっ、遊星が…っ、だから…いっぱい…っ!」
見上げてくるは苦しげな呼吸を繰り返しながら、それでも微笑んで見せる。
ずくんと胸の奥を揺さぶられた遊星は思わずの体を抱き締めた。
「…っ!」
「あぁっ!!またクるぅっ…!」
ぎゅうっときつく抱き合ったままで同時に絶頂を迎えた。
がくがく震えるの中で遊星もたっぷりと欲望を吐き出す。
しかし、溢れる程に出した遊星の体は収まる気配がなかった。
引き出されたそれを興味深そうには覗き込む。
「…おぉ…、スッゲェ…一発イったのに…。他人の勃起してるとこなんて見ることねぇと思ってたけど…」
「………実況するのは止めないか…?」
大概を受け入れる自信がある遊星だが、同性(?)にこの状態を見せるのは流石に恥ずかしい。
「今更だろ。風呂場でもギンギンにしてたじゃねーか。…男ならやっぱ彼女にこーゆーことされたいよな」
は遊星の勃起をタオルで軽く拭うと、きゅうっと握り込んでそれを上下に擦り始めた。
「う、わ…っ、…待、っ…」
勝手知ったる男の性。
やや強めに扱かれて遊星はびくびくと腰を震わせる。
他人の手による手淫など初めての体験だ。
柔らかなの手が自分のそんなところを握っていると思うだけでもいけない気分になってくるというのに、快感を与えてくれるのもその手で。
「くは、ぁ…っ、…っ、あ、あ…っ」
男性器に直接与えられる快感を享受する遊星は苦しそうに眉根を寄せて伏目がちに俯いた。
逸らされた顔が欲情を物語っていては腰が浮くような興奮を覚える。
「うぉ…遊星すっげエロ顔。感じる?な、もっと俺に見せてくれよ」
「っ!やめ、見るな…っ」
恥ずかしそうに遊星が顔の前に手を翳すが、それを難無く掴んでは更に手のスピードを速める。
「我慢汁でぬっるぬる…男の触って興奮するって俺変だよな…。でもめちゃくちゃ興奮する…」
ぬめりを帯びた男性器を扱き続けるの吐息が荒くなる。
まさか男の体の自分にが性的な興奮を感じてくれるなんて。
羞恥心に耐えて情けない顔を晒した甲斐があったということだろうか。
「は、っ…はぁっ…も、イく…っ、出る、出る…っ」
「えっ!?待て待て!!」
びくびく震えて限界を迎えようとしている遊星からはいきなり手を離した。
「…っ、はぁっ…何故…、っ」
射精する姿を見られるのは恥ずかしいが、寸止めさせるのはそれ以上の苦行である。
熱い欲望を下腹部にわだかまらせたまま遊星は苦しげにを見た。
「出すなら…こっち、だろ…」
恥ずかしそうに遊星の体を押し倒したが、その腰の上に跨った。
そして、まさか…と思う遊星の目の前で遊星の勃起の上にゆっくりと腰を落として、すぷぷぷ…と体内に飲み込んでいく。
「――っ!!」
先程知ったばかりの柔らかく蠢く膣内の感触。
遊星は寸止めされていたということもあり、声にならない声をあげて仰け反りながら射精する。
「はぁっ…遊星イってる…めちゃくちゃエロい…っ」
柔らかな体を押し付けてはベッドを軋ませながら腰を上下させた。
遊星の勃起が出入りする度に溢れた精液がじゅぶじゅぶと淫猥な音を立てる。
「うあっ…!あっ…、っ…」
「はぁあっ、あァ、っ…!すげぇ感じるう…っ!ゆうせぇっ!イイ…っ」
「俺もだ…っ、は、あぁっ…、…っ」
能動的に与えられるだけでは飽き足らず、遊星は上下するの腰を掴んで自らも腰を突き上げた。
「うあ!あ!あ!それっ、奥、奥まで来るうぅぅっ…!」
「くぅっ…ナカがっ…締まる、っ…!」
「だって、も…っ、イきそ…っ!そんなされたら…っ、俺っ…!」
じゅぷんっ!と遊星がの最奥を突き上げた瞬間、はびくびくと仰け反りながら体を痙攣させた。
きゅうううときつく締まるの中で遊星も射精に至る。
「うは…っ、出てるよぉ…っ。この感触エロくて堪ンね…」
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返しながら身を震わせるを抱き締めて、遊星は深くキスをした。
「…次は、俺の番だ…」
「えっ、お、俺もう無理…っ」
「ダメだ。朝まで寝かせない」
「うそ、ちょ、やだ…っ!」
・
・
・
・
・
次の日。
究極の来るもの拒まず主義の持ち主の家は一日中施錠されていたという。
訪れた何名かが「珍しいこともあるもんだ」と帰っていったらしい。
勿論、施錠されていた理由を知るものはいなかった。
遊星とを除いて。
終
===================
緋霧ユウ様、4000hitのキリ番リクエスト本当にありがとうございました!
途中から強姦始まるんじゃないかと書いてる本人がハラハラしました(でもそれもスゲー美味しそうだったからいつかと思ってる自分がいる)←救えない
今回は表裏の指定は無かったのですが、やっぱり書いてる途中で「寸止めはナシ!」って気分になりましてこの流れとなりました。
でもシェリーの存在感が激薄だったなぁ…反省。
こちらの作品は緋霧ユウ様へと捧げさせて頂く作品となっております。
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