「遊星、忙しそうなとこ悪いんだけど、そのDホイールに乗せてくれない?」
声がかかり遊星はの方を向いた。
心なしか雰囲気が明るい。
「ああ、構わない」
工具を箱に放り込み、置いてあったジャケットを掴んだ。
も立ち上がる。
「夕飯は皆で食べるからね。先に食べちゃダメよ」
クロウとジャックに釘を刺すとDホイールに跨がった。
遊星の腰に腕を回し、抱き付くような態勢を取る。
「ちょっと周りみたら帰ってくるから」
優雅に手を振って姉弟は出て行った。
残されたのはクロウとジャック。
「なあ、あいつらくっついて帰って来るんじゃねえ?」
「遊星にそんな大それたことが出来るわけなかろう」
「いや、案外姉ちゃんがさ。さっきも遊星にもうどこにも行かないって言ってたしな」
は他に何か予感があるような口振りだったが、それが彼女を動かした動機になったなら。
大事な遊星の元に戻って来ようとした理由はもしかしたら。
「ならば賭けるか?俺は結局このままだと思うがな」
「言ったな?乗るぜ、それ。俺はくっつく方だ。で、何賭ける?」
が聞いたら確実に『お説教』を食らいそうな会話である。
しかし二人は面白そうに密約を交わした。
そんな二人の密約を、本当にと遊星が聞いたらどんな反応を示したであろう。
やはりは怒っただろうか。
それとも一笑に伏しただろうか。
遊星の腰を抱き締めるの手が、するりと遊星の服の中に滑り込んでくる。
「ね、遊星…分かってるんでしょ?何処に行くの?」
艶めかしい声が遊星の背中から投げられた。
ひやりとしたの手が、遊星の胴の辺りを撫で回す。
「サテライトの、俺の昔のアジトだ」
「そう。楽しみね。他の女は知ったの?」
「…」
「本当に遊星はあたし一筋なのね。嬉しいわ」
は遊星の背中に頬を擦り寄せた。
こうしていると向かい風が遠のいて、遊星との過去が蘇って来るかのようで。
あれはいつの頃だっただろう。
気付けば遊星とは毎晩のように抱き合って眠るようになっていた。
寂しかったのかもしれないし、愛しかったのかもしれないし。
特別な家族のような関係だった遊星と。
なのにいつしか二人はそんな年頃になっていた。
『遊、星…っ、あぁ…すごい、わ…』
『はぁっ…はぁっ…』
『んんっ、…はぁあ…遊星、愛してる…』
『俺も、…愛している…』
昨日のことのように鮮明に思い出せる。
遊星とは男と女だった。
誰にも知られない二人だけの秘密を思い出すだけで甘く腰が疼いてしまう。
離れている間は遊星を思い出して一人自慰に耽っていた。
誰にも触らせてなどいない。
そもそも遊星から離れたのも、離れることで遊星を逆に縛り付けるため。
他に女を知ることをしなかった遊星はの思惑通りだけを想い続けていた。
別に他の女を知ったところで遊星が以外を選ぶわけがないと思っている。
自信がある。
寧ろその女との差をたっぷりと教え込むつもりだった。
しかし遊星もまたを思い出して自分で自分を抱き締めていたのだ。
女として最高の充足を感じる。
捌け口を求めず自らの中に全てを抱え込んだ遊星は…。
「うふ、見えて来たわね」
瓦礫の山が流れていく。
遊星のアジトはもうすぐそこだった。
「遊星…」
ぎゅうっと遊星の腰を抱き締めた。
全てを抱え込んだ遊星は一体どんな獣に変わるのだろう。
初めての夜。
声を押し殺して遊星を受け入れた。
背徳感もあったけれど遊星を愛していたから後悔はなかった。
あの時も遊星は欲情に溺れた目でを荒々しくベッドに押し付けたっけ。
何が起こるのか容易に想像はついたけれどは望んで遊星に手を伸ばしたのである。
乗り捨てるかのようにDホイールから降りた遊星はを抱え上げ、ベッドに雪崩込んだ。
「、っ…!」
「ああっ、ダメ、服を脱ぐ時間を頂戴、んんっ!」
性急に遊星は唇を重ねて来た。
弄るように遊星はのブラウスを捲りあげる。
「待てない…っ」
服の中に手を差し込み、ふっくらとした胸を掴む。
の首筋に顔を埋め柔らかく懐かしい匂いをたっぷり堪能した。
それだけで脳髄の奥まで揺さぶられるような興奮を覚える。
そう、眩暈すら感じる程の。
「…、俺はっ、ずっと…!」
の腰のあたりに膝立ちになり遊星はジャケットを脱ぎ捨てる。
更にタンクトップも脱いだ。
押し倒されたままのもブラウスのボタンを外していく。
前を肌蹴たの手が、遊星のベルトを掴んだ。
「あたしもよ、遊星。さあ、あたしに遊星を愛させて」
慣れた手付きで遊星のベルトを外す。
焦らすようにゆっくりとトップボタンも外した。
「ああ、すごいわ。こんなにして」
取り出した遊星自身を緩やかに掴んで上下に擦る。
「っ、あぁ…、早く…」
苦しそうに表情を歪めて強請る遊星の声に頷いて、は体を起こした。
「うふふ、いただきます」
既に上を向いているそれは口に入れた瞬間、びくりと跳ねた。
「はぁ…っ、凄く好い…」
「ん、ぅ…ふはっ…、元気なんだから…んんっ」
喋るために少し口を離したら、遊星に顎を掴まれてねじ込まれた。
そんなにも求めてくれていたのかと思うと少し嬉しい。
「んっ、ん…」
じゅぷじゅぷと音を立てて唇で扱く。
くびれの部分を丁寧になぞり、裏筋を舌で撫で回した。
遊星が何処で気持ち良くなるかなんて知り尽くしている。
張り詰めた先端をちゅうっと吸うとじわりと遊星の味がした。
「う…はぁっ、…」
堪らないのだろう。
もっとしてくれと言うようにの頭を掴んで腰を突き出す遊星に、は愛しさを感じる。
更に深くくわえ込み、手と唇できつく扱いた。
「はあぁ…イイ、…堪らない…」
視線を上げると、うっすらと開いた唇から切なげに溜め息を漏らす遊星が見えた。
目尻を赤く染め、気持ちよさそうに目を細めて。
少し苦しげにも見えるがそれは恐らく快感が強すぎるから。
も胸が苦しくなるくらい、腰が疼いて仕方がない。
遊星自身を口で愛すだけでこんなにも快感が溢れてくるなんて。
「くっ、ぅ……、出る…もう、イくっ…」
激しく苛むに遊星は呟くように訴えた。
は手が唾液に汚れるのも構わずに、上下運動のスピードを早める。
「はあっはあっ…あぁ!っ、…っ!あぁぁっ!!」
「ん…っ!」
がくがくと遊星の体が痙攣するように震えた。
その瞬間の口内に勢い良く遊星の精液が吐き出される。
どぷ、どぷ…と何度かに分けて吐き出されるそれを迷わず喉の奥へ流し込んだ。
「んっ、は…たくさん出したわね…」
全て飲み込み遊星から唇を離したは、口元を拭いながら困ったように笑った。
「最近…忙しくて」
中途半端にに脱がされた服を脱ぎながら遊星は答える。
これで遊星は全裸だ。
そしてそのままのブラウスを脱がせ始めた。
「自分でする暇も無かったの?」
「ああ。…だが、が帰ってくるなら結果的に良かった。たくさんを愛せる」
「ふふっ、可愛いこと言うわねぇ」
遊星に大人しく脱がされるままのは妖艶に微笑んだ。
慣れた手付きでブラウス、スカート、下着まで脱がせてしまう。
「、帰ってきてくれて俺は凄く嬉しい…」
裸になったに縋るように抱きついた遊星。
温かな体温が二人の間をじんわりと伝う。
「寂しい思いをさせてごめんね、遊星。もう本当に何処にも行かないわ」
「…ずっと、一緒にいてくれるのか」
「ええ。離れて判ったの、あたしには遊星がいないとダメだって」
「本当、か…?」
顔を上げる遊星はまだ少し不安そうな表情をしている。
が嘘を吐くと思っているわけではない。
が、今までが今までだけに不安なのである。
「本当よ。毎晩遊星を思い出して自分を慰めていたわ。さあ、愛して遊星。ずっと遊星のことだけ考えて過ごしてきたのよ」
結果的に遊星を縛るつもりが、自身も縛られていたのかもしれない。
「…」
遊星の手がの頬に触れた。
優しく唇が重なる。
そうっと舌先を絡め合い、唾液を混じらせる。
「ん、ふ…」
覆い被さる遊星の首に腕を回して抱き締め合う。
何度も角度を変えて求めてくる遊星に応えていると、まだキスだけだというのに足の間が疼いてくる。
思わず膝を立てて、その間にある遊星の体を強く挟み込んだ。
「っは、遊星…っあん…!」
離れた遊星の手が蜜を湛えたの秘部に触れる。
「すごく濡れてる…」
「あん、だって、遊星があんなに濃いのを飲ませるから…」
それでなくても遊星のを口で愛している間、体が疼いて仕方なかったのに。
妖艶に舌なめずりをしてみせるを見下ろす遊星は、緩慢に体をずらして首筋に顔を埋めた。
そのまま舌を辿らせて、胸の膨らみの間をつーっとなぞる。
そして柔らかな乳房に噛み付いた。
「っ、は…あぁぁっ!」
胸を愛撫しながらも、秘部に触れた遊星の指がぐちゅりとぬかるみに埋まるとはびくりと腰を震わせる。
ぬめりを帯びた指先が敏感な突起を擦りあげた。
更に遊星はに快感を与えようと膨らんだ乳首も口に含む。
「あっあっ!あぁぁぁあっ!!」
感じる箇所を容赦なく責め立てられては悦びの悲鳴を上げた。
唇で食まれた乳首は一層敏感になるのに遊星はそれを知っていて舌で舐め回してくる。
「あっ遊星!!遊星ぃっ!!イくっ、あぁぁ!イっちゃうぅぅっ!!!」
きゅうううと強く突起を摘み上げられて、その刺激ではいとも簡単に達してしまった。
久しぶりの遊星に体が興奮していたとはいえ、簡単にイかされてしまったことに頬が熱くなる。
「はぁっはぁっ…あぁ、もう…もっと楽しもうと思ったのに…」
「ふっ、凄く可愛かった。『姉さん』」
普段セックスの時に遊星はを名前で呼ぶ。
しかし時折…加虐的な気分になった時に、遊星はを姉と呼んだ。
有体に言えば一つの遊びのようなものだった。
弟に陵辱される姉というシチュエーションで遊ぼうというお誘いである。
「!…あんたは可愛くない弟ね。デュエルじゃ敵わないくせに」
「その弱い弟に今から犯される気分は如何だ?姉さん」
遊星がの足を抱え上げる。
ぐり、と押し付けられる遊星の雄。
先程が射精させたとは思えないほどの質量を感じる。
今からそれがを犯すのだ。
そう考えると体の奥から震えるほどに興奮するが、そこは見せない。
寧ろ何でもない顔をして。
「どうってことないわ。愚弟」
「は…、嘘つきな姉さんだな」
ぬぷ…と遊星の先端が埋め込まれた。
は思わず声を上げそうになるが下唇を噛んで押さえ込んだ。
「んんっ…ん…っ」
わざと焦らすようにゆっくりと侵入される。
狭い内部を押し広げるような感覚にぞくぞくとは腰を震わせた。
きゅうううと中が収縮し遊星を締め付ける。
「ははっ、姉さんが俺を締め付けてくる…堪らない、な」
「っ…く…ぅん…っ」
興奮を隠さない遊星の掠れた声には更に感じてしまい、遊星の背中に爪を立てた。
「我慢しなくていい…っ」
にやりと笑った遊星が思い切り腰を押し付けた。
緩い侵入からいきなり最奥を突き上げられは背中をしならせる。
「っはぁ、あぁぁぁっ!」
「ああ、凄い…絡み付いてくる…!」
嬉しそうに遊星はを抱き締めてキスを落とした。
脈動するように収縮を繰り返すの中は、今にも遊星を射精へ導こうとするが、それをぐっと堪えてしばらくキスを繰り返す。
「んっは…ぁあぁぁ…」
「姉さん…随分気持ち良さそうだ」
「ふぁ…あ…はぁはぁ…っ、そんなわけ…っないじゃない…!」
「嘘ばかりだな」
の体を押さえつけて遊星は腰を引いた。
「っ、あぁ!!!」
ずるりと引き出された遊星を深く打ち込まれる。
「あぁっ、はぁ、はぁぁあっ!やぁっ、あっあっ!!」
激しく抜き差しをされてはびくびくと体を震わせた。
待ちに待った遊星の体だから感じすぎて堪らない。
「遊星っ、ああっはぁっ…あぁぁあっ、ゆうせ、いっ!!」
『ごっこ』中、ということを一瞬忘れては遊星にしがみつく。
「遊星…ぃっ、はぁっ、ああ、んっ!あぁぁっ!」
「はぁっ、堪らなく、なってきだだろうっ、?う、は…っ、姉さん、愛してる…っ!」
「っ、馬鹿ね…っ、あぁっ、でもっあたしも…ああっ遊星…っ、イっちゃう!!」
「俺も…イきそう、だ…、はぁっ!は…あっ、姉さんの、中で…出すから、な…っ」
酷薄に笑って遊星は告げた。
なんて背徳的な言葉だ。
思わずはぞくりと冷たい快感を感じてしまう。
その時遊星が最奥を突き上げた。
瞬間、の体が一瞬硬直した。
「うっ、あ…出る…っ」
「あぁぁぁっ!!!」
がくがくとの体が痙攣した。
息が止まるほどの快感が体を駆け抜けていく。
「く、ぅ…っ」
小さく呻いた遊星が中で脈動しているのが分かる。
2度目をたっぷりと吐き出しているのだろう。
そう思うとまたぞくりと体が反応するから不思議だ。
の中が柔らかく収縮したのが伝わったのだろう、遊星は一瞬びくっと腰を震わせる。
「はぁ…、とっても良かったわよ、遊星」
じんわりと広がる余韻を味わっていたがにっこりと上機嫌で遊星を抱き締めた。
「俺もだ、…」
呼び方が元に戻っている。
満足したように遊星もまたの胸の中で余韻を味わっていた。
が。
「じゃあ次はあたしのターンね。お姉さんが可愛い弟をいっぱい犯してあげる」
「…え」
「あら?まだまだあたしは満足して無いわよ?でも、寝てるだけでいいわ。全部あたしがしてあげる」
「少し…休ませて欲しいんだが…」
「だぁめ。大丈夫よ。遊星のことは知り尽くしてるわ。すぐに勃たせてあげるからね」
「う、あっ!!ダメだっ!あっ、あぁぁっ!!」
は悪魔の微笑みを浮かべて遊星の上に馬乗りになった。
そして濃密な時間は過ぎていく。
ジャックとクロウを置き去りにして。
「絶対賭けは俺の勝ちだと思うけど、あいつらマジいつ帰って来るんだよ!」
「…の財布を鞄から抜いて出かけるか」
「お前…ばれたら首飛ぶぞ。あーもういい!夕飯はジャック作れ!賭けに負けたんだからそれでいいだろ!」
「くっ…あいつら…」
結局悪びれない姉弟が帰ってきたのは深夜だった。
「あっはーごめーん!明日こそはちゃんとご飯奢るからね!!」
「貴様ら…何をしていてこんなに遅くなるんだ…。いや、言わなくてもいい。大体分かる」
「別に…何もしていない」
「しれっと嘘つくんじゃねー!!!シティとサテライト何往復したらこんなに遅くなるんだよ!!ちょっと見てくるってレベルじゃねーぞ!!!」
終
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↓こんなノリの昼ドラ風も考えましたが…
「本当に、もう二度と帰ってこないと思っていた」
「…そのつもりだったわよ」
フォーチュンカップで遊星の顔を見るまでは、思い出すことも無かった記憶だ。
最後に出て行ったあの日。
あれが最初で最後の過ちになる予定だった。
「忘れるつもりだったわ。あんたも、あの時のことも」
「俺には本気になれないんじゃなかったのか」
「…」
遊星の言葉に頬を打つ風の感触が遠くなる。
白日の記憶が鮮やかに蘇ってくるようだ。
在りし日の遊星と。
姉と弟のように育ってきたけれど、遊星は少しだけ違ったのだ。
いや、今思えば結局はも遊星と同じだったのかもしれないが。
しかしは遊星を受け入れなかった。
『姉さん、何処にも行かないでくれ。俺は、姉さんが…』
『…遊星、それ以上は言わないで』
『何故だ…聞いてくれ。俺は、が好きなんだ。俺を置いて行かないでくれ…!』
きつく掴まれた腕。
引き寄せられた体。
抱きすくめられて、一瞬だけ触れた唇。
『ダメ…!遊星、ごめんなさい。応えられないわ。あんたに本気にはなれない』
『…姉さん…』
『弟して愛してるけど、ダメよ。ごめんなさい、あたしのことは忘れるの。もう戻らないわ』
振りほどいて逃げたはずだった。
真剣な遊星の気持ちに応える勇気が無くて。
本当は遊星が大好きだったくせに。
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前半と矛盾が出来たので没。
この後サテライトの遊星のアジトで
ちょっと無理矢理に遊星に犯される予定でした。
他の二人がラブラブだったので
そういうのもアリかな、と思ったんですが
前半で二人を仲良しにしすぎて不自然が目立ち今回の内容に落ち着きました。
ここまで読んでくださってありがとうございました。