Can you stay


「ん、上出来」
見ろ!僕の乏しい食材から料理をクリエイトするこの生活力!
と、主張せずとも…。
「お、めちゃくちゃ美味そうじゃねーか!いつもありがとな!」
なんて、後ろから飛んでくる声。
「あっ、クロウ起きてたんだ。皆も起こして来てくれよ。それまでに全部用意終わらすからさ」
嗚呼、僕は本当に仲間に恵まれた。
こんな弱い僕でも、誰かの役に立てることがこんなに嬉しい。
ここは僕の最高の居場所だと思う。


…だからこそ。







には秘密があった。
誰にも言えない、最高の仲間だと思っている彼らにも言うことが出来ない秘密が。
秘密にしたい訳じゃない。
言えば捨てられると思っているわけでもない。
優しい彼らならきっと事情を理解して庇ってくれる。
だけど、そうなることで彼らの弱点を増やしてしまうのが嫌だった。
だから言わない。
言えやしない。
食事を終えて部屋に戻ってきたは鏡の前でエプロンを外して「あ…」と小さな声を出した。
「…僕って何でこんなに鈍くさいかなぁ…」
エプロンとは衣服を汚さない為にするものであるが、いつの間に飛ばしたのか赤い染みがぽつぽつとついていた。
「うぅ…、まあ洗濯するのも僕だから別にイイけどさ…」
ぐいっとタンクトップを捲り上げる。
それを脱ぎ捨てると鏡に映るは一気に別人のようになった。
「…僕、って言うのにも慣れてきたけど…」
鏡を覗き込みながら自身を顧みる
映り込む自分の苦笑いを見て、複雑な気分になる。
滑らかな曲線にしなやかさを見出すその体は、紛れもなく女性の物。
「そんなに胸がないからやっていけてるんだよな…」
申し訳程度の膨らみをぐっと自分で持ち上げてみる。
寄せればそれなりに…なんて考えるとちょっと悲しい。
やはり多少は女性らしい体が欲しいのが正直な気持ちである。
とはいえその日食い繋ぐのに精一杯。
やや痩せ気味の体に余分な脂肪がついてくれるかどうかは甚だ疑問だった。
背は低め。
ちょっとした意地で髪だけは伸ばしているけれど、無造作に束ねてキャップを目深に被れば存外バレないものだ。
下着も女物を使っている。
デュエルをしない代わりに家事を全て引き受けているから洗濯をする人間もだけで、そこからバレる心配はなかった。
自分の分だけこっそり選り分けてカーテンで仕切ったベッド側へ干しているからまず見られることはない。
他の皆もそんなところまで入ってくることはまず無かった。
過干渉でもないけれどお互いを思い遣るこのチームの居心地の良さは既ににとってなくてはならないものである。
血ほど確かな繋がりではないけれど、そんなものすら凌駕する細くてしなやかな繋がり。
それは家族と言うものにも似た……。







着替えを済ませて洗濯物を洗濯機に放り込む。
うーん、本当に遊星って凄い。
目の前の洗濯機は遊星が修理して使用できるようになった代物である。
この生活をしていく上で必要な家財道具は殆ど遊星が息を吹き込んだと言っても過言ではない。
ここまで快適な暮らしをしているサテライト住民も珍しいであろう。
電気だけはこっそり盗んで引いているが、後は基本となる本体さえ手に入れば廃材で何とかなってしまう生活だった。
「遊星いなくなったらこのチーム絶対崩壊するよな」
求心力の所在を勝手に決めては洗濯機のスイッチを入れた。
「お、!探したぜ」
機械が動き出した音を聞いたのだろう。
クロウに声を掛けられた。
彼はの親友である。
何となく背格好が似ていて(とはいえ女の自分の方が小さいにしても、背格好が似ているのはクロウにとっては不名誉なのではと思っていた)話していて楽しい相手。
しょーもない遊びを思いついては実行してみたり、簡単にデュエルを教えてもらったり…それの相手がクロウである。
時折淡い恋愛感情を感じないことも無かったが、クロウが男を自称する自分にそんな気持ちになってくれるはずがない。
元から叶わぬものだと思っている。
サテライトで弱い自分が生きるためには、多少以上自分を押し込まなければならないこともある。
いつかクロウに特別な相手が出来た時も隣で親友として笑っていよう。
はいつしかそう自身に言い聞かせてクロウと接していた。
「どしたの?もう洗濯始めちゃったから追加なら明日だよ」
「ちげーよ。遊星と面白ェもん直してみたんだ。来いよ!」
「面白いもの…?」
手を引かれるままにクロウについて行く。
そして普段から皆の集まる共有スペースに入る。
今日は生憎誰も居ないようだったが。
「ほら、見ろよ」
「…水鉄砲?」
それも結構本格的な…。
「ゴミ捨て場で拾って来たやつを遊星が直すの手伝ってくれたんだよ。元々は孤児院に持ってくつもりだったんだけどよ、ちょっとだけ遊んでからでもいいかなってな」
水鉄砲を構えたクロウが銃口をに向けた。
「ジャックとか鬼柳を的にしたら面白そうだろ?」
「あ、それはすっごい面白そう…!」
特にジャックなんか最高の反応を返してくれそうだ。
「結構な威力なんだぜ、ほら!」
クロウの言葉が終わるか終らないかの前に、向けられた銃口からぶしゅうぅっ!と勢いよく水が吹き上がった。
「ぎゃっ!」
それは勿論遠慮なく
思わず顔を背けて腕で庇うけれど、飛び散った水は容赦なくの体に降りかかった。
「うえー…何するんだよ、もおぉ…」
「いやー悪ィ悪ィ。でもジャックと鬼柳が帰ってきたらこれで狙い撃ちして…」
悪戯っぽく笑っていたクロウがぷつりと言葉を途切れさせた。
その先を待つは首を傾げてクロウを見ると、目を見開いたクロウが自分を指差している。
「…どした、クロウ…」
「……お前…コレ、…?」
「え…――」
何だろう…と指のさし示す先に視線を滑らせたのと、クロウの指先がの胸に軽く触れたのは同時だった。
滑らせた視界にはばっちり透けてしまっている下着に服の上から触れているクロウの指先が映る。
「うええぇっ!?おおおおお前っ!!!!」
「きゃぁっ!!どどど何処触ってるんだよ!!!」
お互い悲鳴にも似た声をあげたのはほぼ同時。
指先から伝わるやんわりとした膨らみにクロウは飛び上がる勢いで後ずさる。
同じくも胸を腕で庇いながら後ろに飛びのいた。
…そうしたら。
「あっ…!」
「お、おい…!」
いきなり動いたものだから椅子の脚に足を捕られたの体が大きく後ろに傾いた。
「うそっ…」
!」
今まさにひっくり返ろうとするに追いすがるクロウが腕を伸ばす。
しかし、彼もまた先程後ろに下がっていたためほんの僅かの差での腕を掴むことが出来ず。
スローモーションのように視界が反転していくと思った瞬間、の頭に強い衝撃が響いた。
ゴヅ、という妙に鈍い音もクロウの耳に届く。
、っ…!おい、、大丈夫か…!」
慌てて抱き起こしてやるがの体はぐったりと弛緩しており、ただ遠慮ない体重だけが腕に伝わった。
とはいえクロウよりも小さな細い体である。
抱き上げた肩が急に普段ののものよりも小さくなったような気がしてクロウはどぎまぎした。
…っ!」
反応を示さないの頬を軽く叩いて、細い手首を掴んでみた。
「……」
淡い脈動だけは感ぜられてクロウは思わず息を吐く。
なかなか物騒な音を立ててひっくり返ったと思ったけれど、人間の体は存外頑丈に出来ているらしい。
それにしても。
「…お前…女だったのか」
華奢で線が細いのは小食な所為だとばかり思っていた。
疑いもしなかった。
「…」
だけど、意識してよく見れば伏せられた瞼の先の睫毛は長く、小さな唇はふっくらとしていて。
細い首に細い肩…そして…。
「っ!」
クロウはぱっと視線を逸らす。
水が染みこんで殆ど裸のようになったの上半身を直視は出来なかった。
の奴……気絶しちまってるけどどーすっか……」
どうする、と言ってみたもののこの場所に放って置いたら全員にこれがバレてしまうだろう。
が自身の決断としてそれを打ち明けることを決めたなら何も問題は無いが、こんな風にバレるのは流石に可哀想だ。
半分ふざけた自分の所為もあるかもしれない。
クロウはゆっくりとを抱き上げる。
「う…」
女だと意識すると体を預けてくる体重や、仄かな肌の甘い香りに心臓が跳ね上がった。
意外に柔らかな足の感触にもどきどきして物凄くいけないことをしている気分をくすぐられてしまい、クロウは足早に部屋を出た。





「…ぅ、ン」
部屋に響いた小さな声にクロウはゆっくりとそちらの方を見た。
あれから5分程経過している。
良かった。
余りにも長く目を覚まさなかったらどうしようかと考えていたところだった。
「…痛…っ」
頭を押さえながらはゆっくりと体を起こす。
体重を受け止めるマットの感触。
あれ、自分は昼寝でもしていたんだっけ。
それにしては頭が痛い。
いや、違う。
そうだ、自分はさっきクロウに女であることを見られて――…。
「起きたか。心配させやがって」
「!」
混濁する意識がはっきりし始めた瞬間に投げかけられた声。
びくっと体を竦めたが声の方に視線を向ける。
「…クロウ…」
「……頭、どーだよ。気分悪いとかあるか?」
「う、ぅん…ずきずきするけど…他には何も…」
受け答えしながら恐る恐る自身の胸元へと視線を移動させた。
見事なまでに透けていたはずだったが、今は肩から掛けられたバスタオルがそこを覆っている。
勿論目の前のクロウがやってくれたわけだ。
そのバスタオルの合わせ目をぎゅっと握り、は言葉を探す。
「あ、あの…僕……」
だけど何を言って良いのか。
実は女だったんだ?
騙すつもりは無かったんだ?
庇ってもらうのが申し訳無かったんだ?
どれも露見してから口にすると寒々しい言葉ばかりだ。
の考えがどういうものであったにしろ、事実皆に嘘を吐き、偽り続けていたではないか。
二の句を告げることが出来ず黙り込む
そんなにクロウは告げる。
「なァ。そっち行って良いか」
「え、う、うん…いいよ」
格好が格好だけに気を遣ったのだと分かる一言だった。
少し離れたところに座っていたクロウは立ち上がり、の隣に座り込む。
よくよく周りを見れば、ここはの部屋ではなくクロウの部屋だった。
だから、今クロウが座り込んだ場所は当然彼のベッドの上で。
と、言うことは自分はクロウのベッドに寝かされていたのか。
気付いた瞬間心臓が跳ね上がりそうになる。
それを宥めながらそっとクロウの横顔を盗み見た。
普段は明るい表情ばかりを見せてくれる彼だが、今はどちらかと言うと無表情だ。
…怒って、いるのだろうか。
「何で…なんて聞かなくても何となく分かるけどよ…。お前、何で女だって黙ってたんだ」
口を開いた声色にも抑揚は薄い。
感情の読み取れない物言いである。
は慎重に言葉を選びながら口を開いた。
「騙す気は…無かったんだ。でも…ただでさえデュエルだと役立たずなのに、もっと足手まといになっちゃうじゃん」
改めてから言われずともクロウもその部分は承知している。
このチームがそういうことをするわけではないが、女という力の弱い部分は狙われる。
性の対象としての危険に晒される事案も多々あることも理解している。
だから、本当の意味ではが女だったことを隠していたのは正しいとすら思う部分もある。
が独りで身を守ろうと思うのであれば必要なことだ。
しかし…と、クロウは思う。
「俺は、俺ら信じて言って欲しかったけどなァ…」
独りではないのに…と思うと釈然とは出来なかった。
「でも…皆のこと大好きなのに…此処にいれなくなったらって思ったら……」
はクロウの言葉に言い訳を重ねるのが凄く情けない気分になる。
ダメだ、何か泣けてきた。
鬱陶しいって思われないだろうか。
これだから女はって言われないだろうか。
必死で涙をのみ込んでいると、ぽつっとクロウが呟いた。
「いれなくなる訳ねーだろ。は仲間なんだからよ…。男だろうが女だろうが、として此処にいて良いんだぜ」
「!…クロウ…」
「危なくなったら俺らが守る。もっと俺らのこと信用しろよな!…そこにちょっとだけ俺は怒ってる」
「…でも、あの…うん、…ごめんなさい」
親友を怒らせてしまった。
でもその割にクロウは笑っている。
言いたいことを言ったということなのだろう。
「これからはもっと頼れよな!」
笑ってそんなこと言って。
狡い。
の心に、親友に感じる気持ちではない気持ちが更に込み上がってきた。
でも、流石にこれ以上を望むなんて考えられない。
今までずーっと男だと思い続けていた相手をそんな風になんて思えっこないのが普通だろう。
だから一言だけのつもりで。
「…ありがと…。僕、やっぱりクロウが一番好きだ」
涙の滲んだの顔がにっこりと微笑む。
それは紛れもない女の子の表情で、クロウは自分の心臓が跳ね上がる音を聞いた。
…何故男と思っていられたんだろう。
女と思って見ればとんでもなく可愛くてどきどきする。
「お前さ、女って分かってからそういう顔見せるの反則じゃね?」
「…え?」
照れたように頬を掻きながらクロウはに顔を寄せる。
「その『好き』ってヤツ…どういう意味か聞いていいか」
「!」
「…お前が女って分かってからよォ……俺、にスッゲーどきどきさせられンだけど…それってそういう意味、だよな?」
頼りなげな困った表情でを見つめるクロウの頬が赤い。
「ぼ、僕に聞くなよ…!だって、そんな…クロウが…僕のことをなんて…。僕、男だと思われて訳だし…!」
信じられないようなクロウの台詞にも頬が熱くなるのを感じた。
淡い恋心を感じる瞬間はたくさんある。
さっきのクロウにだってときめかされていたところだ。
あわあわと両手で頬を覆い顔を隠そうとする仕草。
普段なら何とも思わなかっただろうが、今は違うとはっきり言える。
「そうやって慌てるとこ、めちゃくちゃカワイーぞ。何で俺今まで気付かなかったかなァ」
「かっ、可愛いとか言うなよ!そんな、僕なんか…全然…っ」
自嘲気味に小さく溜息を吐いたクロウがゆっくりとの肩を抱き寄せた。
ぎくりとの肩が強張る。
あからさまに緊張したにクロウも緊張を促されるが、それを必死で押し殺して殊更平気そうな振りで耳元に唇を近付けた。
「な、親友だと思ってたヤツの感触が忘れられねぇんだよ。指に残って離れねーしもっと知りてぇ」
「っ…!」
「嫌なら嫌って言え。そういう好きじゃねぇって。そしたら止める」
濃い性の色を含んだ声音が耳から脳を刺激する。
ぞくりと冷たい性感が背筋を駆け抜けたのが分かった。
「や…じゃ、ない……だって、僕…ずっと、クロウのこと…っ」
拒絶を拒絶するの言葉は最後まで出てくることは無かったけれど。







クロウの手が遠慮なく濡れたタンクトップを下着ごと捲り上げた。
「あ…っ、待っ…」
「待てるか」
申し訳程度の膨らみしかない胸に後ろから回されたクロウの手がやんわりと触れる。
「は…っ、お前の体、柔らかくて…すげぇエロい…」
「嘘…、だって全然大きくないし…っ」
今朝鏡の前で確認したところだから間違いない。
しかしクロウは滑らかな肌触りとふにゅりとした指応えに自慰では感じたことのない程の興奮を味わっていた。
「そんなのカンケーねぇよ…、普通は好きな女の体ってだけで堪んねー気分になるんだぞ」
「そ…そう、なの…?」
男性の気持ちは分からないけれど、耳元の掠れた声は確かに体内が切なくなるような気がする。
きゅうっと胸の中が苦しいような気分にすら。
「ん、あっ…!」
やんわりと胸を愛撫していた手が、つんと尖り始めた乳首の先を抓みあげる。
そのままきゅうっと引っ張られては背中をしならせた。
「感じるのか?」
「あ、わ、分かン、な…っ」
首を横に振るだが、艶っぽい喘ぎ声は確実に性感を含んでいる。
「ひゃぁっ!」
無防備な首筋に軽く唇を押し付けるとの体が過剰に跳ね上がった。
思わず悲鳴に似た声を上げてしまい、口元を押さえる。
しかし非情にも、クロウの手がそれを許さなかった。
手首を掴んで剥がしてしまう。
「は…恥ずかしい、よ…クロウ……」
「馬鹿、声抑えんなよ。聞かせろって…」
「で、でもォ…、あ、あぁ、ンっ…!」
言うことを聞かない罰を与えるかのようにクロウが首筋に噛みつく。
甘く噛まれた部分に痛みこそ生まれなかったものの、一瞬にして熱を帯びた。
「ン、はぁあ…、クロウ…っ」
同時に足の間にも熱がわだかまる。
それは淡い疼きとなって不思議な感覚をにもたらした。
ぞくぞくするようなもどかしいような。
得体のしれない感覚に怖くなって、は首だけで振り返りクロウに視線を投げる。
「クロウ…っ、何か…、お腹の中…熱いよ……」
はぁっと深い溜め息交じりに訴えられた言葉。
不安と欲情をない交ぜにした視線を投げつけられたクロウは、堪らずベッドにの体を押し付けた。
細い体に圧し掛かりながらゆっくりと唇を近付ける。
「あ…ン……」
優しく唇が重なった。
キスなんて初めての行為だったけど、その相手がクロウだと思うと眩暈を覚えてしまう。
ぬめりを帯びた舌先が遠慮がちに滑り込んできた。
ぴちゅ…と小さな音がして、それがの体を少しだけ緊張させる。
「ン…っ、んふ……」
吐息が甘えるような響きを伴って零れ落ちる。
やはり紛れもない女の子の声。
親友だと思っていたの声だと認識できるのに、心の底からいけない気分を煽られる。
「はァ…っ、…」
「ふは…、あ、ン…」
角度を変えてもう一度。
深く舌先を潜り込ませて、逃げるの舌を絡めとる。
「んっ!」
くちゅくちゅと絡め合わされると口内にはじんわりとクロウの味が広がった。
混じり合う唾液を垂下する度に反射による舌の動きで、侵入しているクロウの舌をきゅうっと吸ってしまう。
その度に意識してしまい恥ずかしかった。
「んぅ…っ」
口内で吸い上げられることに意識を募らせているのはだけではない。
いやらしいことを彷彿とさせる動きにクロウも煽られていた。
堪らない気分でやんわりとの胸の膨らみを掌で包み込む。
「んーっ…!」
突然胸を触られたことに驚いて、の体が一気に緊張した。
「怖いか?」
「ちょ、ちょっとだけ……怖い」
恥ずかしそうに頬を赤くして困ったように笑う。
その健気な表情にクロウはどきっとすると共にどうしようもないくらいをめちゃくちゃにしてやりたい衝動を感じた。
怖いと言っているに優しくしてやる余裕がない。
クロウはごくりと喉を鳴らすと、その胸の先端にかぶりついた。
「はうっ…!」
突然与えられた刺激にはびくっと背中を浮かせた。
「やっ、あっ…あはぁ…っ!」
ぬろっとした舌先が膨らんで敏感になった乳首をちゅうちゅうと吸い上げる。
それを繰り返した後、舌全体でねっとりと撫でられた。
「ああぁぁ…、あっ…あぁっ…!ク、ロウ…っ」
足の間にわだかまっていた不思議な熱がずぅんと重みを増したように感じる。
お腹の奥がきゅうんと震えてもどかしい。
刺激を受けるたびに背中がしなり、クロウに胸を押し付けてしまうのもすごく恥ずかしかった。
それなのに、もっとクロウに触られたい気持ちもあっては戸惑う。
「だめ、…っ、クロウ…、待ってぇ…っ」
の必死の声に、クロウは唇を離して体を起こした。
見下ろすの姿は肌蹴た服が乱れていて扇情的である。
加えて、与えられた愛撫によって蕩けた表情がとんでもなくいやらしい。
自分の拙い舌先で、こんなにも感じてくれたのかと思うと沸々と愛しい気持ちが湧いてくる。
「僕、変だよォ…っ。恥ずかしいのに…もっとって思っちゃう…。それに、お腹の中がすごく気持ち悪いんだ…」
「!」
はクロウの目の前で、丁度ショートパンツのトップボタンの辺りをさすって見せる。
その上で『もっと』等という言葉を使われたら…。
「気持ち悪い…って、どんな風にだ?」
「なんか、きゅうってする…。それがすごくもどかしい感じ…」
「…」
女の性感のことは全く分からないが、もどかしいと言うならば。
「ちょっと見せてみろよ」
「えっ!?み、見せろって…!」
クロウの言葉に当惑する
しかしそんなことはお構いなしで、クロウはのショートパンツを下着ごと引き下ろした。
「うそっ…!や、やだ…!!」
流石に誰にも見せたことのない場所である。
思わず逃げようとするの腰を捕まえて、クロウはゆっくりと足の間を開いていった。
「やだぁっ!そんなとこ見るなよォっ…!!」
抵抗するように足をじたばたさせてみても、開かれた状態ではクロウに掠ることもない。
だけど無駄とは知りながらも抵抗せずにはいられなかった。
「やだったらァ…」
「でもよ、嫌って割には…ぬるぬるしたのが零れてきてるぞ」
指先を軽く口の中に含んだ後、クロウがその濡れた指先を慎重に割れ目の中へ埋め込んだ。
「ひゃっ!!う、うそ…触る、なんて…っ」
自分でも触ったことは無いような場所だ。
「き、汚いって…だ、だめだよぉ…」
「汚くなんかねーよ。痛くねぇか?」
「そ、それは大丈夫だけど…っ」
敏感な粘膜に触れられているという不思議な感覚はあれど痛くはない。
しかし、慎重に指先が入って来た瞬間。
「っ…!」
「…痛ェか?」
異物感に思わず息が詰まった。
「痛くは、ないけど…っ、な、なんか変な感じ…」
未知の感覚に戦く体内がクロウの指先を断続的に締め付けている。
更に埋め込むとその蠢きは一層烈しさを増した。
「はあぁ…、クロウ…っそれヤダァ…っ、なんか、もっと変な感じに…っ」
「こんなビクビクさせて…嫌ってか感じてンじゃねーの?」
「分かんな、っ…でも、なん、か…っ、ぞわって……!」
ぴくんぴくんと爪先を震わせて腰をくねらせる
のたうつ体は先程胸を愛撫した時と似たような反応を示している。
ひっきりなしに零れ落ちる甘い嬌声も嫌がっているようには見えなかった。
クロウは決して豊かとは言えない知識を頭の片隅から引っ張り出す。
「じゃあ、こっちはどーだよ…?」
体内から引き抜いた指先を割れ目に沿わせる。
そして…かり、と愛液に濡れた指先での膨らんだ突起を引っ掻いた。
「――っ!!」
瞬間、びくびくとの背中が仰け反った。
衝撃にも似た何かが体の中を鋭く駆け抜ける。
「っは、あ…っ、はぁぁぁああ…っ」
今日聞かされた声の中でも一際濡れた声を上げて、は断続的に体を強張らせたり弛緩させたりした。
ぞくぞくと冷たい快感に足が痺れたように震える。
もやもやとわだかまった体内がきゅうっと脈動しているのが分かった。
「な、何…、今の……」
「イったんじゃねぇのか?」
「イった…?これが…?」
ぞくっと寒気を感じた瞬間に何か大きな波に襲われるような感覚があった。
確かに一瞬凄く気持ち良かったような気もする。
だけどその分の余韻が重く気怠い。
ぐったりと四肢を投げ出すにクロウが改めて圧し掛かった。
「なァ、…俺も、イかせてくれるよな…?」
が絶頂する姿に興奮を煽られ、クロウは細い足の間に体を捩じ込む。
そして反り返る程に勃起した自身を足の間に押し付けた。
「あっ、クロウ…熱い…」
男装をし続けていて何だが、男性器というものを見るのは初めてだ。
好奇心と羞恥心が同時に沸き起こるが好奇心の方が強かった。
「…そっか、コレ、見るの初めてなのか」
「う、うん…お、男の子って…こんな風になるんだね…」
「コレが今から入るんだぜ…ほら…」
「っ、あ…あぁ…っ」
目の前でゆっくりと腰を進めるクロウ。
言葉通りぬかるんだ体内にゆっくりと埋め込まれていく。
「んっ…あ、はぁ…っ」
「く、すげ…っ、キツい、な…っ」
足を抱えられて逃げることの出来ないの体内が、クロウによってゆっくりと開かれる。
「はぁっ…!あ、あぁ…苦し、っ…クロウ、待っ…、あはぁ、あっあっ…!」
「う、あ…っ、めちゃくちゃイイ…!悪ィ、止まンね…っ!!」
女の体内が自身を舐めるかのように握り込む感覚は腰が蕩けるかと思う程の快感だった。
クロウにとっても初めての感覚で、出来るだけゆっくりとするのが精一杯で。
「っひ、あ…っ、あっあっ…クロウ、ん、あぁ…っ!」
深々と収めきった瞬間、ぎゅっと瞑られたの目尻から雫が零れるのが見えた。
痛かっただろうかと罪悪感を煽られつつ、それを舌先で拭ってやる。
「ひゃっ…!」
「痛かったか?悪ィ…全然加減出来ねー…」
「い、痛いっていうか…圧迫感が凄いっていうか…っ」
じぃんと熱を持つ体内にクロウが存在すると思うと無意識に力が籠ってしまうのだ。
「うはぁっ、嗚呼…お前ン中、あったけーのにきゅうきゅうしてすげぇイイ…」
荒い息を吐くクロウが堪らず緩やかに腰を揺らす。
浅い注挿ではあったが快感はしっかりと伝わった。
「やっべ…コレ、全然保たねぇ…」
ぞくぞくと背中を駆け上がる射精感。
比例するように本能が刺激されて、もっと深くで繋がりたい気持ちが湧いてくる。
同時により快感を得ようと、勢いをつけての体内を突き上げた瞬間。
「はぁんっ!」
「うっく……、今スゲー締まった。…此処、がイイのか…?」
改めて足を抱え、先程よりも腰を引いて打ち込んだ。
瞬間、の背中が柔らかくしなり、体内のクロウをきゅうううと締め付けた。
「やぁ、あっ…!深いよぉっ…!!それ、それだめっ、あっ、おかしく…っなるぅ…!!」
おかしくなりそうなのは自分も一緒だ、と思ったがクロウは声を必死で飲み込み、更に同じことを繰り返す。
重なる動きにベッドがぎしぎしと軋んだ。
「あっ!あっ!」
動きに合わせて上がる嬌声が行為をなぞらえていくようだった。
深く体内を抉る瞬間、は苦しそうな表情を甘く蕩けさせる。
感じ入った恍惚の表情にクロウの欲情は煽られっぱなしだ。
、っ…今のお前…っ、スゲー可愛くて、っ…めちゃくちゃエロい…っ」
「やだぁっ…、変な、こと…っ、言うなぁ…っ!」
手で顔を隠そうとするのを押さえつけ、クロウは強引にに唇を重ねた。
「んっ、ふ…!」
抱き合いながら夢中で舌先を絡め合わせる。
時折上顎をなぞり、唾液を垂下する度にきゅうっと舌先を吸い合って。
「んっんっ…!」
くぐもった喘ぎ声が唇から零れ落ちた。
飲み込み切れなかった唾液が顎を伝う。
「ん、はぁっ…ん、っ…」
角度を変えて何度も繰り返した。
やがて、離れる頃、クロウがの首筋に顔を埋めて荒い呼吸と共に告げる。
「はぁっ…、俺、そろそろ、我慢出来ねぇ…っ」
言って、を攻め続けていたクロウが僅かに腰を反らせた。
ぐっと深く体内を抉られても体をしならせる。
「ぼ、僕も…っ、なんか、さっきの感じが…っ」
官能的なキスと体内を突き上げる感覚は確実にも追い詰めている。
びくびくと震える爪先をぴんと伸ばして、先程の感覚を掴もうとはクロウの与えてくれる快感の奔流に体を投げ出した。
「あっ!あぁぁっ…!クロウ、それ…っ、あっ、クる…っ!さっきの、さっきのが…っ!」
「くっ…締まる…っ、、っ…イ、く…っ、出す…ぞ…っ」
密着した体を抱き締めてクロウが深くの体内を突き上げる。
瞬間、の体がびくっと跳ねて強張る。
「ふあぁぁっ…!!熱い…っ!!」
がくがくと震える体内に迸る熱い脈動。
抱き合ったままでお互いに絶頂に達する。
途切れそうになる意識を繋ぎとめて快感と倦怠を享受していたら、クロウの体がゆっくりと隣に伏した。
「はぁっ…すっげ…、セックスってこんなにイイのか…」
「!…クロウ、…初めて、だったの?」
「…悪ィかよ」
「や…ううん…そうじゃ、なくて…」
余韻に浮かされながらは密かに喜んだ。
実は、いつかクロウに特別な誰かが出来たら…いや、もしかしたらもういるのかも…と思っていた。
でもいなかった。
いや、寧ろこれからは自分が……!
そう思うと頬が勝手に緩んでくる。
「お前、何ニヤニヤしてんだ。俺が童貞だったの馬鹿にしてんのか?」
「違っ…!違うってば…!誤解だよ!!」










「何かさ、嘘みたい」
クロウの隣でこうしていることが。
直後は何となく気まずくなったらどうしようと思っていたけれど、ゆったりと抱き寄せてくれたクロウの腕がそんな心配を掻き消した。
「俺も。何かスゲー可愛くなるし」
「な、なってないってば…」
「…いや、マジでこんな可愛いとは思わなかったぜ…。これソッコーで他の奴らにもバレんじゃね?」
「えええ、そ、そんな…」
流石にまだそこまでの心の準備はしていない。
と、言うか別にクロウにだって心の準備をしてバラしたわけではないし。
「ま、バレたらバレた時だよな。絶対大丈夫だって。だからずっと傍にいろよ!」
言っておいて恥ずかしくなったらしいクロウは、照れ隠しをするようにぎゅうっとを抱き締めた。
「うん…」
その胸に頬を寄せては小さく頷いた。










『Can you stey』

……at that time fallin'LOVE





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ハルキ様リクエスト分でした!
今回は最悪エロ無しで…と思って御託部分を好きなだけ書いたら…。
例のごとく長くなりました^^;スミマセン!
短めですがエロも入れれて、いつかいつかと思っていた男装ヒロインも書けて非常に楽しかったです!
良いリクエストに感謝!!です!


こちらの作品はハルキ様へ捧げるリクエスト小説となります。
ご本人様以外のお持ち帰りなどは厳禁です。
閲覧のみで宜しくお願い致します。


ここまで読んでくださってありがとうございました。