孤独に負けたこの部屋で


グラウンドには放課後のクラブ活動をする生徒の姿が点々としている。
淡い喧騒はある場所では緊張感を伴って生成され、ある場所では朗らかな調子が混ざる。
そんな音を聞くでもなく聞きながら、は空き教室の机に押し付けられていた。
見上げた先には苛々とを睨みつける真月の姿。
いや、真月という名前は嘘のものだという事らしい。
本当の名前は…。
「ベクター…、どうしたの…?」
「どうしたじゃねーよ!!他の男には色目使うなって言っただろーが!!ァア!?」
ああ、しまった。
は内心溜め息をつく。
ベクターに対してではない。
自分の迂闊さにだ。
「見ていたの…。そんなつもりじゃなかったのよ」
「テメェの都合なんか関係ねぇ!」
「…そうね。ごめんなさい」
掃除当番のゴミ出しが重かったからクラスメイトの男の子が代わってくれたのだが、恐らくそれを見られたのだ。
礼を言ったのが気に入らなかったか、それとも僅かに微笑みを返したのがいけなかったか。
「チッ…俺以外のヤローににこにこ愛想振りまきやがってよォ。苛つくぜ…」
ほんの少し微笑み返したのがいけなかったのか。
ベクターとの関係が始まってから、随分と表情は乏しくなったはずなのにまだまだ甘いようだ。
然程明るいタイプでもなく、友人も多くない上に学年まで違うは遊馬たちの一つ上だった)を何故ベクターが見出したのかをは知らない。
しかし知る必要もないと思っている。
「…私にはベクターだけよ。だから帰りましょう」
「……」
「ね?」
「…俺に指図すンじゃねー」
の言葉に不機嫌そうに返事をしてベクターは空間に見えない壁があるかのように手をついた。
瞬間、空間が歪んで真っ黒な口を開く。
それは空間を繋ぐトンネルのようなもの。
向こう側には目的地が広がっていることをは知っている。
「行くぞ」
「ん…」
ベクターに手を引かれ空間を潜り抜けた先には何の変哲もない部屋があった。
机やテレビやベッド等…ワンルームのような部屋である。
しかし、ここにはただ一つ欠けているものがあった。
一見しただけではそれは分からないだろう。
しかし暮らしてみれば一日を待たずにそれが欠けていることに気付くに違いない。
この部屋には一つの扉があり、その奥にはトイレと洗面所とバスルームがある。
扉はそれだけだ。
ベッドの傍の壁にははめ込みの出窓があり、サイドの部分は上げ下げ式になっている。
用は明かり取りと換気用としての機能を持ってはいるものの、人間が通り抜けする幅は無いと言うことだ。
そう、この部屋には出入りするための『扉』が存在しないのである。
一面壁に覆われたこの部屋をベクターがどのように用意したのかまでは分からない。
だけど彼はと自分が生活するためにこの不自然な部屋を用意したのだった。
「ベクター、部屋に連れて来てくれる前にキッチンに寄って欲しかったわ」
下ろした鞄からお弁当箱を取り出してベクターを見た。
「そんなモン後回しだ。帰ったらまず着替えねぇとなァ。制服汚したら困るのお前だろ?」
視線の先のベクターはにやりと唇で笑っているが、目は全く笑っていない。
そんなにも気に入らなかったか。
何度彼だけだと言い聞かせてみてもベクターの強い独占欲と嫉妬心は止まるという言葉を知らなかった。
この扉の無い部屋に招き入れてさえを縛りたくて堪らない。
「……そう、ね」
しかし、はそれを迷惑と受け取らなかった。
寧ろちょっと気持ちイイとすら感じる。
人生の内で(多少変質的な形であったとしても)親兄弟以外の他人にこんなにも思いを寄せられることが何度あるだろう。
思春期の微妙な年齢の真っ只中にあって、は誰かに怖いほどに愛されるということを喜びと捉えていた。
「ベクター、今日はどの服がいいかしら」
クローゼットを開ければずらりと揃った洋服が並んでいる。
ジャンルも様々な洋服たちは、やはりベクターが用意したもの。
何処から用意したものなのか気にならないこともなかったが、そこは怖いから聞いていない。
だけど空間を自由に行き来できるベクターには恐らく物理的に用意できないものなどないのだろうと思っていた。
「…右から3番目と左から5番目のにしろ」
「これね?」
ベクターの言う通りに服を取り出して制服に手を掛ける。
今日はややぴったりとしたカットソーとチェックのミニスカートか。
カットソーの胸元の襟ぐりが大きめだが、全体的には普通の服だった。
機嫌が悪ければベクターは下着のままでいろと命令することもあったし、ベビードールや薄いネグリジェみたいな格好を指定することもあった。
そんな時ベクターは決まって乱暴にを犯すのである。
思ったよりは機嫌が良いのかとはベクターの目の前で制服の前を開けた。
露になるの肌にはぽつぽつと赤い痕が。
ベクターはそれを見止めるとの傍に寄る。
「残ってるぜ、昨日の痕がよ。クク…あのヤローに見せたらどんな目で見られンだろーな?エェ?案外その場で可愛がってくれっかもしれねーぜ!」
「だめ、だめよ…」
「アァ?俺の物だって言えねぇのかよ」
指先を胸の膨らみに埋め込むような仕草で、ベクターは昨夜の証をぐっと指で押した。
「違、…こんな格好…ベクター以外には見せたくないの…」
「…」
「ベクター以外に可愛がられても意味がないの、知っているでしょう」
微笑みを浮かべるのはベクターを宥める為であるが、言っていることは本心である。
をねめあげるように見つめるベクターはやんわりと表情を崩し、目を細めてみせた。
少しは機嫌が直ったかとがほっとしていると。
「…イーィ答えだ…」
にやにやとしながら粘着質な声で呟いて…。
次の瞬間の前髪を掴んで額を付き合わせるように顔を近づける。
「痛…っ、!」
いきなり髪を引っ張られたはその痛みに顔を顰めるがベクターはそんなが面白くて堪らないようで、更に唇の端を上に吊り上げた。
「そんなんで俺様の機嫌取れたと思ってンのか!?アァ!?」
「っ、ご、ごめん、なさい…引っ張らないで…お願い……」
「つまんねぇこと言うとマジでブッ殺すからな!!!」
「…分かってる」
凄んでみせるベクターは、それでも機嫌が収まらない。
従順なの態度が気に食わないのか、それとも思い通りに行き過ぎることに不安を感じているのか。
「殺そうと思えばよォ、いつだって殺せるんだぜ。テメェなんか…」
空いた方のベクターの手がの首をぐっと掴む。
それは恐ろしい程の力が込められていてはひゅっと息を飲んだ。
「…どーだよ?このまま絞め殺してやろーか?」
今度こそ目の前のベクターの顔が満足そうに笑う。
喉を締め上げられて声を出せないがそっと震える指を伸ばした。
「んン?可愛い抵抗だねぇえ、ちゃんよォ!今更死ぬのは嫌だってかァ?でもおあいにくさまですねー!テメェはもう助けも呼べませんからねェェエ!!」
声も出せず、震える指先で力無くベクターの手に触れることを僅かな抵抗と感じたのだろうか。
しかしその手を掴むこともせずただ触れるだけのの手は抵抗していると言うよりは、寧ろそんなベクターを慈しむかのような雰囲気さえ孕んでいて。
「…チッ」
舌打ちをしての細い首から手を離す。
急に自由になった呼吸に肺が一気に酸素を取り込もうとして痛み、は激しく咳き込んだ。
上半身は下着姿のまま、蹲りながら咽るの背中を踏みつけてベクターは吐き捨てる。
「おい、こんな簡単に殺してもらえると思うんじゃねーぞ。お前は俺が死ぬまでオモチャにするんだからよォ」
「はぁっ、はぁっ…、ん…分かって、る…」
咽すぎて涙目で顔を上げるはやはり微笑んでいた。





人間の体でベクターが気に入っていることの一つが食事だった。
正直言って非効率な方法で人間は生きていると思う。
蛋白質で構成された肉体を維持する為、人間は別のところからその原料を取り込まなければいけない。
人間態を取っている時のベクターにもとりあえず食事は必須ではないが可能である。
食事というものは快楽的で非常に好ましい人間の習性だった。
必須ではなくとも是非毎日致したいことである。
幸いはどちらかというと料理が好きな方で、ベクターの為になれるのならば願ったりだった。
キッチンもやはり出入り口は無く、部屋からキッチンに移動する時もベクターと一緒でなくてはならない。
と言うより、基本的に行き来には全てベクターの力を借りなければならない為、家にいる時はいつでも二人で行動するのだ。
だから。
「今晩は何にしようかな…」
料理の本を見ながら夕飯を悩むの目の前に座ってベクターはそれを眺めていた。
この瞬間は結構好きだ。
自分のことを考えて、自分の為に彼女は頭を使っている…それはとても好ましい。
ふと、ぺらりとページを捲る細くて白い指先が目に入る。
口には出さないが、愛らしくて口に含んでやりたい。
思い立ったら即行動のベクターはの手を掴みあげた。
「何、…?あン…。何するの…」
急に指先を舐められては困ったように眉を下げて笑う。
くすぐったく舌先がぬるんと触れる。
「…それにしろ」
「え?」
「晩メシそれにしろっつったんだよ」
指先を舐められながらは視線を下に落とす。
そのページは少ない手間で美味しいレシピが〜等の記載がある料理のページ。
幾つかレシピが記載されているが、大きく写真に写っているのは挽き肉ときのこのソースが盛られたスパゲティだった。
「これのこと?」
確認するように空いた手で指差すとベクターは無言で頷く。
彼がこれが良いと言うならに是非も無い。
「ああ、もしかしてお腹空いてるのね。じゃあすぐ作るわ」
ベクターの唇を見つめながら、彼の行為に理由付けしようとする様が鈍感で憎らしい。
つまり指をしゃぶることで空腹を訴えているのかとは考えたわけだ。
勿論そんなつもりはないベクター。
の言葉に罰を与えるように、ベクターはか弱い指先に歯を立てた。
「んっ…、もう…乱暴するんだから」
ぴりっと走る刺激に眉根を寄せて、はベクターの唇から指先を引き抜く。
ぬるりとした感触が離れることに淋しさを覚えるあたり大分毒されている。
歯を立てられてさえそう思えるのだから尚更だ。
「簡単なの選んでくれたからすぐに出来るわ。少しだけ、待って頂戴ね」
料理をするにあたり、流しに向かったはざっと手を洗った。
その際に捲くり上げた袖から覗く柔らかそうな腕の膨らみ。
今度は何となくそこに歯を立てたくなった。
こういうのを食べてしまいたいくらい可愛いと言うのかもしれないが、それを口にすることはやはりない。
ベクターはタオルで手を拭うの後姿に音も無く近付くと、無防備な背中を抱き締める。
「きゃっ!」
まさかベクターがこんなところまで近付いて来ていると思いもしないは小さな悲鳴を上げた。
「クック…何ビビってんだ?かーわいぃ声まで上げやがって」
「だ、だって急に抱きつくから…。どうしたの…?」
「気が変わった。先にお前だ。オラ、部屋行くぞ!」
まだ手を洗っっただけで拭いてもいないのに、その状態でずるずると後ろに引きずられる。
勿論ベクターの真後ろには空間を移動するための真っ黒な口が二人を飲み込もうと開いていた。
「ご、ご飯遅くなるよ…!?」
「ンなもん後回しでいいっつーの!黙ってついて来やがれ!」
ずぶずぶとベクターと共に飲み込まれれば、もうそこはベッドの上だった。
ベクターに後ろから抱きしめられる形で沈み込む。
「…っ、もう…いきなりね…」
気紛れなベクターの唐突な一言はいつも通りで、慣れる慣れないと言うよりも受け入れるか否かということが多い。
そしてに拒否権があろうか。
いや、合ってもは行使しないに違いない。
「あ…ベクター、…」
もそりとエプロンと衣服の隙間にベクターの手が潜り込んでくる。
ふっくらとした膨らみをやんわり撫で回しながら先端を探すように乳房を指で挟む。
「んっ…!」
きゅきゅっと何度も軽く揉みしだかれてはベクターの腕の中で身じろぎをした。
散々オモチャにされている体は感じやすく、ベクターは指先に硬く張りつめた感触を覚えてニヤニヤと笑う。
「下着の上からでも分かるぜェ…?もうビンビンじゃねーか」
「だ、って…触られたら…っ」
服の上を何度も往復するもどかしい感覚はの意識を鋭敏に作り替えていく。
ゆったりとの胸を掬い上げて、ゆるゆると弾力を確かめながらベクターは更にに体を密着させた。
熱い吐息が耳に触れたかと思った瞬間に耳朶をかぷんと甘噛みされた。
「あぅん…っ」
びくっとの体が後ろに跳ねる。
瞬間的に距離が縮まり、それを見逃すはずのないベクターが耳の輪郭を舌先でなぞった。
軟骨が皮膚に覆われたそこは、ベクターに不思議な触感を与えてくる。
「あ…あ、や…ん…っ」
知らず仰け反ったままでベクターの体に背中を預けて小さく息を吐いた。
輪郭をなぞっていた舌が、やがてぬるぅ…と耳の中までも舐めようと舌先が潜り込んでくる。
「ひゃぁっ…!そ、そんな、とこ…っ」
「…んン、意外と味はしねーな」
「なっ、ば、ばか…!」
誰も知らない彼女のことが知りたいと本能が先行してやまない。
ベクターはの顎を掴むと、そのまま顔を固定して頬に優しく唇で触れた。
親愛のキスを彷彿とさせるその行為は、しかしやがて唇で頬を食まれる結果に流れていく。
はむっと甘く食み感触を楽しんだ後はやはり輪郭を舌でなぞり始めた。
ぺろぺろとベクターの舌が頬を往復する。
「んー…っ、く、くすぐったい…」
ぞわぞわと背中が粟立ってしまい、はじたばたとそのくすぐったさに体を捩らせた。
「おいおい、暴れんじゃねーよ。それとも痛ェの希望か?ァア?」
返事をする前にベクターの歯がの頬をかりっと軽く噛んだ。
僅かに走る硬質な刺激にの体は戦慄する。
痛くすると言えばベクターは容赦なく痛みを与えてくることは過去の記憶からも明らかだった。
それは今のの望むところではない。
恐る恐る首を横に数度振り、体を反転させてベクターの方を向いた。
じっと見つめるベクターは僅かに嗜虐の香りを漂わせているが、それはを舐め回して興奮しているからとも言えた。
「痛いのは…嫌……。優しく、して…欲しいの…」
おずおずと乞うがベクターの手を掴み、自らの胸の上に誘導した。
ぐっと指が埋まるように押し付ける。
「ほぉお…優しく、ねェ…」
にやりと意地の悪い笑みを浮かべるベクターだが、このの行動には非常に充足を感じた。
本当に可愛い行動をする…そう思うだけで下腹部が窮屈になる。
ふとベクターは、彼女の行動によって反応してしまったことをに知らしめてやりたくなった。
「じゃーァア、ちゃんが俺様にお手本見せてくれなきゃなァ」
今、がしているようにベクターはの空いている手を掴むと、自分の股間に押し当てる。
柔らかな掌が触れた瞬間にそれは更に興奮で上を向いた。
「あ…っ」
「分かるゥ?なぁ、ほら、お前がカワイーことすっから俺様ギンっギンなんだよなー。優しくされたいならまずは人に優しくするとっからだろ?だよなぁ?」
浅い呼吸を繰り返しているくせに余裕そうな笑みを浮かべるベクターが促せば、はきゅっと口を引き結ぶ。
そして恥ずかしそうに強張ったの手から力がゆっくりと抜け、勃起のカタチを確かめるようにそっとそこを撫でた。
「…そーそー…優しィーく頼むぜ」
下から上に撫で上げるの手つきに猥褻な慣れを見出してしまう。
思春期の女の子には分不相応なその知識が今ベクターに発揮されているのだ。
それはアンバランスで危うくて…そして色めき立ついやらしさを孕んでいる。
「どんどん…大きくなる…」
「そんなエロい手つきで触られりゃなァ…上手くなったじゃねぇの?」
気紛れに褒めてみれば驚いたように目を見開いた後で、頬を染めてはにかんで見せたりして。
嗚呼、畜生。
何でこんなに可愛いんだ。
口にはせずに、少しだけ目を細めての観察を続ける。
褒められた彼女は、更にベクターを喜ばせようとベルトを掴んだ。
流石に片手では不可能なので、ベクターの手を自分の胸に置かせたまま両手でベルトを外し始める。
「ん、っと…」
これもまあまあ手慣れたもので、金属音が僅かに部屋に響いた後で完全に外された。
トップボタンを外しファスナーを下げていく。
何となくこの瞬間が一番いやらしいことをしているような気分になってしまうは、こっそりと膝を擦り合わせた。
「…触る…よ?」
「聞くんじゃねーよ。さっさとやれ」
「…ん、…」
柔らかな掌がきゅうっとベクターの先端を握り込む。
ぱんぱんに充血したそこは不思議な弾力があるのに、全体は硬く上を向いていて不思議な器官である。
「熱い…」
つるりと滑らかなカーブを持つ先端を伝った指先はそのまま伝いおりていき、到達した根元をやんわりと握った。
そこからすることは一つしかない。
「…っ」
の手が下から上へと動かされる。
瞬間、ベクターは目を細めて息を詰めた。
「…は、イイぜ…続けろ…」
「うん…」
命令されるままに続けていると、急に胸の上のベクターの手がの胸の輪郭を撫でた。
「あ…ン…っ」
予想外の行動には思わず手を離しそうになる。
しかしそれを何とか堪えて、ベクターを見る。
「優しいのが良いんだろ…なら黙って手ェ動かしやがれ」
「は…い……っ」
ベクターは、のエプロンをずらしてカットソーを捲り上げると零れ落ちる胸を掬い上げた。
そして先端をきゅううううっと抓み上げる。
「はうっ!あ、あぁ…っ、いきなり、っ強いぃ…っ」
「ククク…っ、ばぁか!俺が、優しくしてやると思ったのかよ…っ!」
刺激にびくびくと震えるの胸にかぶりつきながらベクターは喉で笑う。
「あぁっ…!舐め、ちゃ…だめぇ…っ、あっあっ…感じちゃうぅ…っ!」
その非情な笑い声と的確に性感帯を刺激する舌先に触発されながら、は必死でベクターを愛撫した。
先端から零れた粘液がの手を少しずつ濡らし、滑りを良くしていく。
「…っ、あー…スゲェいいぜ…」
ぺろぺろと舌を這わせながらもベクターは満足そうに腰をの掌に押し付けた。
いやらしい熱の感覚が強くなる。
加えてベクターから与えられる愛撫も激しさを増していった。
「はぁ、ん…っ、ベクター…、っ、あっ、そこぉ…っ」
ぬろっと唾液を馴染ませるように何度も何度も舌がの乳首を捏ね回す。
刺激に敏感に膨らんだそこを更に敏感にしていくような動きだ。
ちゅうっと軽く吸い上げられるだけで腰が跳ね上がりそうになる。
「クッ…ククク、おいおい腰振るには早ェんじゃねーか?エェ?」
「んぅ…だ、だって、あっ…べく、た、っ…」
「確認してやろうか。テメェのやらしー口…」
言うなりベクターはするりとのスカートの中に手を差し入れる。
ベクターのものを扱く手は止まってしまっていたが、しかし制止の為に離すわけにもいかずはベクターにされるがままだった。
やんわりと内股を撫でるベクターだが、もう何となくじっとりと湿った感覚を感じる。
スカートの中は期待の熱気に満ちていた。
「あっ!!」
それでも、勿論確認しないはずがない。
ショーツの上から割れ目に指の先端を食い込ませると、ぬかるむ感覚で迎え入れられた。
にやにやしながらそれを上下に動かすと、それに呼応するようにの手がきゅっとベクターを強く握った。
反射的だが、堪らなく刺激的だ。
「…んっ、あ…っ、動かしちゃ…っ」
「はっ…マジで淫乱だな。さっきも俺の握る前から発情してやがるしよォ」
ベクターの指摘にぎくりとは体を強張らせる。
ファスナーを下ろす時に膝を擦り合わせたことにベクターは気付いていたのである。
「ココにブチ込まれるの期待したんだろ?どーなんだ?アァ?言ってみろよ」
ぐじゅぐじゅと足の間を乱暴に探られる。
その度に愛液が溢れ出してショーツに染み込んだ。
「あっあっ!やぁっ…溢れ、ちゃ…!ま、って…!」
「待てるかよ!」
こんな風に扱われて尚も濡らすが愛しくて堪らない。
毟り取るようにショーツを下ろし、ベクターはをベッドの上に組み敷いた。
短いスカートを捲りあげての足の間に体を捩じ込む。
そして今までが握っていたものをそこにやんわりと押し付ける。
「ぬるぬるだなァ。吸いついてくるみてぇじゃねーか」
はぁっ…と熱い息を吐いて、ベクターが腰を揺らした。
勃起が割れ目をにゅるにゅるとぬめり、先端は敏感なの突起をつつく。
「あ、んっ…!あ、あ…やぁ、ん…っ」
男性器で施される下品な愛撫。
開かされた足の間を何度も往復する様にいけない興奮を覚える。
「はぁっ…だめぇ…、ちゃんと、お願い…っ」
「そんなんじゃ分からねーなァ。はっきり言えって言っただろーが。ほら、言えよ!」
性器を擦り合わせる快感に表情を険しくさせたベクターに催促される形では自らの足の間に手を伸ばした。
触れれば、いや触れなくともどんな状態なのだか容易に分かる。
じっとりと愛液を零す入口を自らの手で押し広げながらは震える唇を開いた。
「こ、ここ……ここに、ベクターを…頂戴。思い切り深くまで…ベクターに犯してほしい、の…。お願い…」
顔を赤く染め、ご機嫌を伺うような上目遣い。
愛した女の興奮と物欲しさをない交ぜにした表情にベクターは鳥肌が立つほどの興奮を覚えた。
「…なら、自分で入れろ」
苛立ちすら含んだように聞こえる声音にはびくっと身を竦ませる。
しかしにとってベクターからの命令は絶対だ。
恐る恐るベクターのものを掴むと、片手で入口を広げたままそれを自分で宛がった。
そして、ふっと小さく息を吐きゆっくりと体内へ埋め込んでいく。
「は、あ、あー…っ!!」
大きくなったベクターのものを自ら受け入れる瞬間、は目をきゅっと閉じて気持ち良さそうに眉根を寄せた。
自慰にも似たの行為にベクターの下腹部は更に膨らむ。
「は…おっき、ぃ…。すごいぃ…っ」
ぞくぞくと背中をしならせて流し目をベクターに送ってくる。
そんなにもこの行為に夢中なのか。
瞬間、命令したことなどなかったかのようにベクターの脳裏に真っ黒な感情がせり上がる。
もしかして彼女は体だけに溺れているではなかろうか。
今この時の快楽だけを求めているのだとしたら…体だけに夢中になっているのだとしたら。
……それは許せない。
ぎり、と歯噛みしたベクターは突然芽生えた嫉妬心をぶつけるかのようにをベッドに押し付けて、思い切り彼女を貫いた。
「うあっ、あぁっあぁぁぁっ!!」
「くっ…こんなにも、締めつけやがってよォ…っ!食いちぎる気か!アァ?!」
いきなり深々と突き立てられたがびくびくと体を震わせる。
跳ねるの体を押さえるために、背中に腕を回したベクターは更に先端をの体内に擦りつけた。
「ああぁぁぁ…ナカ、っ…!奥に当たるうぅ…っ」
「これくらいがイイんだろ…っ、テメェは…っ!」
「ん、…気持ち、いい…っ、それに、ぎゅってしてほしいな、って…思ってた、の…」
嬉しそうに微笑みながらに告げられ、漸くベクターはを抱き締めていたことに思い至る。
密着する肌のしっとりとした感触。
時折ベクターを苛むように脈動するの体内。
あ…と思う頃にはによって抱きしめ返されていた。
「好き、ベクター…。愛してる…。だから、思い切り…愛して……お願い」
うっとりと体を押し付けたが、ベクターにそっと唇を重ねた。
「!」
柔らかな感触が頭を支配していた黒い感情を緩やかに拭い去る。
触れ合わせるだけのキスで離れようとしたを追いかけて、ベクターは更にキスを重ねた。
「んっ…ふ……」
くちゅりと唇の隙間から滑り込んでくるベクターの舌。
それは明確な意思を持っての舌先に触れる。
そうやって舌先を絡め合ったままで、ベクターは緩やかに律動を始めた。
「んっ!ん…ぅ」
苦しげなくぐもった喘ぎが漏れようともベクターは離れない。
たっぷりとの口内を味わい尽し、至る所を這いまわっている。
そんな状態で粘膜の裏側が擦れる度には息が詰まりそうな程の快感に脳が痺れるのを感じていた。
「はあっ…んっ、は、っ…あっあっ!!」
ようやく解放されてもベクターの動きは止まらない。
いや、寧ろだんだん激しくなっていく。
「ヒッ、ハハハっ!俺様としたことが…、つまんねぇこと考えちまった…!、っ…テメェは俺のオモチャだからな!!」
ぎしぎしとベッドを軋ませてベクターも夢中でを抱いた。
繋がったところから蕩けていきそうな程に気持ちがイイ。
「んっ、あ、オモチャ、に…して!ベクターになら…何されてもいいのぉ…っ、あ、そこ…っ、そこ感じる…っ!」
馴染むほどに重ね合ったのポイントなんて全部知り尽くしている。
彼女のイイところを重点的に攻めてやれば、体内が快感に収縮してベクターに絡みついた。
ぞくぞくとベクターの背中がしなる。
「はぁっ、はぁっ…そうだ、っ…もっとしっかり締めやがれ!」
恍惚の色が含まれたベクターの掠れた声に、彼もまた感じているのだと知らされたもやはりぞくりとした快感が走るのを感じた。
爪先が震えてベクターの腰をぎゅうぎゅう挟み込んでしまう。
「おいおい…そんなに、強請ってよォ…っ、中出し希望かァ?この、淫乱が…っ!」
快感の反動には違いないが、今のベクターを煽るには十分すぎる反応でもある。
しかしは敢えてベクターの首にぎゅっと腕を回すと。
「っ、ナカで…出して…っ。ベクターで…いっぱいに、して欲しい…っ」
喘ぎの隙間から途切れ途切れに乞うと、ベクターの腰に足を絡めた。
この訴えは元から無いに等しいベクターの理性を打ち砕くには十分で。
「はっ…なら…っ、望み通り中で出してやらァ!!孕ませてやっから覚悟しろよなァア!!」
「んあっ!あ!あぁっ、激し…っ!あっ!あっ!」
更に質量を増したベクターがの膣内を深く抉った。
じゅぶじゅぶと掻き出され溢れた愛液がシーツに点々を染みを作る。
「べ、くたー…っ、あたし、イっちゃ、いそ…っ!」
もう何度も体内を突き上げられて必死で抑え込んできた絶頂の予感がすぐ傍まで来ている。
体内が収縮する感覚も短くなってきた。
きゅんきゅんと断続的に戦慄く膣壁にねっとりと舐められるベクターもぶるりと体を震わせる。
それでもそのままの奔流に身を任せた。
「あっ、だめぇ…っ!」
乱暴なまでに押さえつけ思い切り打ち込んだ瞬間の体が一際しなる。
同時に体内のベクターをの内壁が思い切り締め上げた。
「ぅ…っ、イく…出す、ぞ…っ!」
「あぁ、あはぁぁぁっ!!」
がくがくとの体が痙攣し、ベクターも天井を仰ぎながら彼女の体内へと遺伝子をまき散らす。
「…はぁ…熱い、の…いっぱい出てる…っ」
収まりきらなかったものがどろりと溢れて滴り落ちた。
それがシーツを更に汚すとわかっていながらも、お互いに荒い呼吸を繰り返すだけでしばらく動けなかったが、やがての隣に体を沈めたベクターがぽつりと呟いた。
「……ハラ減ったな」
「でも、先にシャワーにしましょう。今晩は支度にそんなにかからないと思うから…」
「チッ…仕方ねぇな」
の言うことももっともで、流石にこんな状態ではいられない。
やおら体を起こしたベクターに倣っても体を起こす。
「先行っとけ。このシーツ、洗濯機にブチ込んだら俺も行く」
「…ん、分かった」
促されてはこの部屋に唯一存在する扉の中へと入る。
こうやって一人にされることは本当に珍しい。
例えば二度とベクターが戻ってこなければ、は誰に気付かれることもなくここで独り死んでしまうだろう。
ぞっとするような想像だが、有り得ない話ではない。
この部屋は孤独になれない部屋なのだ。
それを創り上げたベクターは、もしかしたら無意識下で一番孤独を恐れたのかもしれない。
だけどベクターの真意を確かめる術はないだろう。
別にそれで構わない。
答えはたった今真後ろに空いた真っ黒な穴が物語っている。









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こえ様リクエスト分でした!
リクエストありがとうございます!
病んでるといえば監禁・悲観・DVまがいというアレな思考回路ですみません。


こちらの作品はこえ様へ捧げるリクエスト小説となります。
ご本人様以外のお持ち帰りなどは厳禁です。
閲覧のみで宜しくお願い致します。


ここまで読んでくださってありがとうございました。