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「わっ、なんだもー…入ってるなら入ってるって言ってくださいよね」
湯気が立ち上る一室に断りもなく入り込んできたのは声を発した彼女の方である。
「貴様がノックもせずに入って来たのだろうが…!」
声を荒げるのは先にこの一室を使用していた男の方で。
そのどちらもが服を着ていない。
そう、全裸である。
「プラシド様、髪も真っ白だけど体も白いですねぇえ…。そんなんだと直射日光浴びたら貧血起こすんじゃないですか」
「そんな温い体ではない。おい、早く出ていけ」
「えぇぇ、面倒くさいんで一緒に入っちゃダメですか」
「ダメに決まっている!!!!」
そもそも貴様は俺の手駒であり部下であり何とかかんとか。
あーまた始まった。
面倒くさそうに横を向けば、プラシドの怒気が更に膨らむ。
!」
「もー、分かりましたよ。出直しますってば」
反抗的な態度で溜め息を吐いたは最後にちろりとプラシドを一瞥した。
「…口ばっかの上司と思ってましたけど、結構使い物にはなりそうなんですねぇ。初めて知りましたよ」
「貴様…っ。…不動遊星を消したらすぐにお前も消してやる」
「あれ?話通じてません?」
説教の礼を下品な皮肉で返したつもりだったが、見当違いな言葉がプラシドから返ってきた。
別に不動遊星を仕留め損なったことを責めたわけではなかったのだが。
「何がだ」
「…いえ、もういいです」
流石、神経質で完璧主義なある種潔癖と言える面を持つ男。
閉められたドアに向かっては酷薄に微笑んだ。
「……プラシド様って、ほんと可愛いんですから」
誰にも聞かれないその言葉は、名残も余韻も残すことはない。
聞き手のいない無意味な音となり霧散した。





「そもそも…」
プラシド様って、実際のとこどうなんだろう。
暫くの時間を置き、当然ながら誰もいなくなった風呂場。
体を沈めているお湯は数刻先までプラシドがその身を沈めていたお湯である。
彼はあの後どうしたのだろうか。
目に触れた彼のあの部分は全く反応を示していなかった。
それもそれでちょっと女として悲しいような気持ちになる。
隠しもしなかったのに、そんなに興味がないのであろうか。
「知らない、とか」
好きな女はいたらしいが、彼女とはどうだったのだろう。
戦場は本能をくすぐる場所でもある。
死と隣り合わせの生活が彼の男性としての本能を刺激していても何らおかしくはない。
寧ろ生物としては正常であるだろう。
ちゃぷ、と小さな音を立てては体をもう少しお湯の中に沈めた。
冷えた肩をじわりと温める感覚。
もし今誰かに肩を抱き寄せられたなら、きっと同じように熱を感じるに違いない。
女を抱き寄せるプラシドを想像する。
あの細い指が強く肩を掴んで引き寄せるのだろう。
女の頬がプラシドの胸板に触れるはずだ。
きっとその瞬間でさえ彼は表情を変えないような気がする。
凍えるような視線で射抜かれた女の方が骨抜きになっているに違いない。
そしてゆっくりと女の上に覆い被さり、あの白い手で体を撫で回して……。
「…って、そんなの全然想像出来ない」
抱き寄せるくらいまでなら何とか想像の範疇ではあるが、それ以上となると途端にピントがずれたような気分になってくる。
欲情に溺れる瞬間など彼にあるのだろうか。
快感に恍惚と目を細めたり、顔を顰めてみたり、熱の籠った溜め息を吐いたりなど。
「……全然しそうにない…」
ざばりとはお湯から体を引き上げた。
洗い場の椅子に腰を掛け、体を洗い始める。
几帳面そうな彼は何処から手を付けるのだろう。
「…あの白い体…ちょっと洗ってみたいな……」
撫で回されても、立場的優位にいる彼は『部下が上司を洗うのは当然のことだ』と、涼しい顔をしているかもしれない。
だけど僅かでも恥じらいや興奮のような反応を見せてくれたとしたら…。
「絶対可愛い…」
嗚呼、まずい。
想像するだけで体温が上がってしまう。
温めのシャワーで泡を洗い流しながらはそっと自分の足の間に指先を滑り込ませる。
「…んぅ」
じぃんと爪先が震える。
「…ん、ン…っ。プラシド様って……、オナニーなんかするのかな…」
ベッドの上や、床の上で。
自分のアレを扱く行為なんて。
しかも女を妄想しながら?
「ん、は…っ」
浅ましい妄想をするのは自分だけで十分だ、とは思う。
しかし兎角潔癖な雰囲気の彼が自慰をしていると想像するだけで、プラシドの美しい部分を汚しているような興奮が込み上げてくる。
自身の愛は歪んでいるとが自覚する瞬間である。




「ゾーン様は何であんなに不動遊星を排除したがるんでしょうねぇ」
「貴様は本当にくだらんことを気にするな。それよりももっと気になることが俺にはある」
「何ですか?」
「何故貴様が堂々と俺の眠る場所を占領しているのかということだ」
忌々しそうに手を握りしめるプラシドを目の前に、はベッドの上でころんと体を反転させた。
見上げる彼は非常に不機嫌そうである。
まあ、そりゃそうか。
勝手に上がり込んでプラシドを待っていたは、プラシドからすれば侵入者以外の何者でもない。
「一緒に寝ません?」
「ふざけるな。狭くなる。出ていけ」
つれない態度は想像通り。
はすっと目を細めてかぶっていた布団を捲り上げた。
「…何の真似だ」
プラシドの声色は全く変化はない。
顔色さえ通常のままである。
捲り上げた布団の中のは服を着ていないというのに。
「見ての通りですけど」
「この寒い中で服も着ずに積極的な病欠でも狙っているのか」
「それ本気で言ってます?」
女の体を見てさえこの反応か。
風呂場であんな反応だったわけだし、やっぱり何も知らないのだろうか。
「不動遊星って」
「不愉快だな。明確な返答も無しに何故いきなりあいつの話になる」
「不動遊星って童貞だと思います?」
プラシドの言葉を無視して最後まで吐き出されたの台詞に、流石のプラシドもぽかんとした。
呆れ顔だろうがようやく表情に変化が出たことにはこっそりと充足する。
しかしこの質問の内容はプラシドには気に入らなかったようで。
「……今までで最もくだらん低俗な質問だな」
「チームに女が一人いるんですよねぇ。でも体の距離が遠いんです。体の関係がある男と女の距離はもっと近いんじゃないかなーって」
「ならばあいつは童貞で結論にしておけ。そして出ていけ」
犬か猫を追い払おうとするかのようにプラシドは手を振った。
白くて長い指先がの目の前で揺れている。
「…プラシド様」
「なんだ!?」
結局動こうともしないにプラシドは苛立ちを覚え声を荒げた。
「プラシド様は童貞ですか?」
「っ!」
荒げた勢いのままにの言葉をすべて退けようと思っていたのであろう。
しかしその為に吸い込まれた呼吸は、投げかけられた質問に吐き出す場所を一瞬失った。
「どうなんですか?」
「今までで最もくだらん低俗な質問だな!」
「それさっきも聞きましたから。ねぇ、教えてくださいよォ」
今まで動こうともしなかったがゆっくりと体を起こした。
柔らかそうな皮膚の上を布団が滑り落ちていく。
白い電灯を跳ね返す白い体が更にプラシドの目の前で露わになった。
その光景を目の当たりにしたプラシドは、しかし視線を逸らすことはしなかった。
僅かな屈辱感のようなものを滲ませながらも一糸纏わぬを睨みつけている。
「あたしのハダカ、どうですか?ドキドキしません?」
「…不愉快だ」
「あたしは…プラシド様にこんな姿見られて、とってもドキドキしてます…」
僅かに恥じらうように視線を下げただったが、次の瞬間プラシドの手首を掴み上げて自分の胸の上に置いた。
むにゅぅっと弾力のある感触にプラシドの指が埋まり込む。
「っ、き、さま…っ、何を…っ!」
「ドキドキしてるの…分かります?」
掌を伝わる小さな鼓動を示唆されれば、確かに彼女の緊張も伝わって来なくはない。
しかしやはり意図ははかりかねるから。
「…それを確かめさせて何を考えている」
「知りたいですか?なら、じっくり教えてあげます…」
重ねて問うプラシドの体を、はゆったりと引き寄せた。


プラシドを構成しているものが蛋白質でなかろうとも、それは最早些末な問題だった。
日焼けを知らない白い体がベッドの上で静かに横たえられている。
陶器のようだなと思ってしまったが、男相手に言う台詞ではないだろうとは感想を口にすることはしなかった。
それでいて、触れてみると不思議と暖かい。
「プラシド様って、結構あったかいんですねぇ」
「外側の温度が一定になるようになっているからな。人間の中に潜り込むために不自然であることが少ないようになされただけだ」
「あー…じゃあいつ童貞失う機会が巡ってきても良かったってことですね」
「断じて違う」
即答のプラシドをものともせず、その白い頬を指先でなぞる。
輪郭をなぞり、そっと薄い唇に触れた。
「…プラシド様…ね、この指咥えてみてくれませんか」
声のトーンを落とし、媚びるように言ってみる。
の求めにプラシドは一瞬眉間に皺を寄せた。
分かりやすい拒絶だった。
「お願いします…。軽く唇で食んで欲しいんですぅ…」
立場が上と信じてやまない彼は下手に出れば御しやすい。
この『お願い』は効果てきめんだった。
プラシドは眉間に皺を寄せたままで、唇に触れているの指先をやんわりと口内に含んで見せた。
薄い唇が指先を覆うその眺めは非日常的だった。
普段ならこんな行為をプラシドが受け入れるなどと想像もしない。出来ない。
そんな考えも及ばないことが今目の前で行われている。
「…プラシドさま…、舐めて、舐めてください…」
自然に呼吸が浅くなる。
高まる興奮に流されるまま、は要求を重ねていた。
一度要求を飲んでしまったら後は同じだと考えたのだろうか。
それとも流されるままになってくれたのかどうかは分からないが、ややの後にの指先を濡れた何かがやんわり触れた。
「あぁ…プラシド様……」
ちゅくちゅくと小さな音がくぐもって聞こえてくる。
ぬめった感触は次第に勢いを増しての指先を包み込むような動きになった。
その動きには神経を集中させる。
彼が自分の体の一部を口内に含んでいる。
普段は立場が上の筈の彼が、お願いと称した下卑た遊びに付き合ってくれている。
「んふ…プラシドさまぁ…、もう、いいですよ…」
薄暗い欲情にぞくりと震えるは、ゆっくりとプラシドの唇から指を引き抜くとそれを自身の口の中へと押し込んだ。
「んン…っ、ぷらひろさまのぉ…味…っ、しっかり、おぼえておきまふ…」
まだ暖かな唾液が濡らす指先を口内でじっくりと味わう。
恍惚と指をしゃぶるを見上げるプラシドの視線の冷たいことといったら。
しかしにとってはそれがまた堪らないのである。
神経質で潔癖な彼はこうでなくてはならない。
「そんな目してぇ…。でもね、プラシド様…本能ってとっても気持ちイイんですよォ…?」
うっとりとプラシドを見つめるの視線が、プラシドのそれと交わる。
孕んだ熱気を掻き消そうとするかのような鋭さに引き寄せられるようには顔を近付けた。
「…理性なんか、忘れちゃってくださいね」
「…、う…っ」
先程陶器のようだと感じたプラシドの頬をやんわりと両手で挟み込んで自分の方を向かせると、そのまま優しく唇を重ねる。
やはり触れあった唇は暖かい。
彼の体のことは些末な問題だと思っていたが、それでも人間と遜色ない感触を感じることでの脳は痺れるような高揚感を得た。
「ん、プラシドさま…、素敵…キスだけでおかしくなりそうですぅ…」
角度を変えながら夢中で唇を押し付けてくる
裸の体まで無遠慮にぎゅうぎゅう押し付けてきて、体重をかけられるプラシドとしては重たくて堪ったものではないと思った。
しかし同時に、だからといってこの重みが離れていくことは好意的では無いとも感じていた。
「んはっ…どうですか?プラシド様。本能のお味は…」
「……別に」
「じゃあ、もっと…しちゃいますから、ね…」
素っ気ないプラシドの返答に萎える様子もなく、はちゅちゅ、と音を立てて唇を啄んだ。
撫でるのとも触れるのとも違う感覚に思わずプラシドはの肩を掴む。
「怖くないですよ…逃げないで…」
「誰に、言っている…!」
押し返す気は無かったがが声をかけなければ反射的に押し返していただろうとプラシドは頭の隅で理解していた。
しかし反論してしまった手前、もうそんなことは出来ない。
彼女の肩を掴んだまま口吻けを受け入れるしか道は無くなっていた。
「はふ…ン、ぷらしど、さまも…味わって…」
ぬるりと滑り込んでくるの舌先。
唾液にぬめるそれに一瞬ぞわりとしたが、それが悪印象ではないことに戸惑いを覚える。
「…っ」
息を詰めて彼女の舌が絡みつくままに受け入れた。
「ん、は……、あぁ」
甘い溜め息を吐きながらプラシドをベッドに押し付けるようには深く侵入してくる。
プラシドはの肩を掴んだ手に力を篭らせた。
それはにとっては縋られているようでもあり。
「っ…、ん、ぷらしどさまぁ…」
口内で混ざり合う唾液を垂下して、それでも飽き足りず彼の舌先を夢中で吸った。
呼吸の苦しくなったプラシドが息継ぎの為に顔を背けても、追いすがった。
興奮に熱くなる体を擦り寄せて、自らの言葉で逃げられないプラシドを貪りつくすかのように。
「はぁ、ん……、ご馳走様です…」
ぺろりと目の前で舌なめずりをするは、ご馳走様と言いながら今から捕食者になるような雰囲気である。
プラシドのその感覚は決して間違ったものではない。
間違いなく彼女はまだ飢えている。
というより、始まったばかりなのだから。
ギラつく視線を外したは、プラシドの首筋にかぶりつくように顔を埋めた。
有機体ではない筈なのに彼の香りがすることを不思議に思いつつもそれを吸い込んで堪能する。
「う、…おい…っ」
くすぐったさを感じるプラシドが身じろぐが、はそんなこと気にも留めない。
寧ろすんすんと鼻を鳴らして彼の匂いを味わった。
「とっても、良い匂い。不思議です…」
堪らなくなって細い首にやんわりと噛みつく。
「…く、っ…貴様、…っ」
「ごめんなさい、痛かったですか…?じゃあ…」
顔を顰めているプラシドを一瞬見上げた後、鎖骨のラインを指でなぞってみる。
桜色の爪が白い皮膚をなぞっていくコントラストがプラシドには見えなくて残念だ、とは思った。
「あぁ…プラシド様……」
うっとりと名前を呼ばれると変な気分になる。
彼女は普段こんな風に陶酔したように自身を呼ぶことなどないから。
もっと不遜で無礼な態度しか見せないくせに。
「うく…っ、おい……!」
「これは痛くないでしょう?」
ちゅ、と小さな音を立ててはプラシドの鎖骨のラインを唇でなぞり始める。
指先が辿った軌跡を丁寧に追うその感覚はプラシドにとっては未知そのもだった。
「…っう、!」
喉元までせり上がってくる喘ぎ声を必死で押し殺しながら下唇を噛む。
部下に啼かされるなどあってはならない。
だけど、それを見せつけられるとしてはそんな態度が可愛くて仕方がない訳で。
「そうやって可愛い態度取ると…あたし止まらなくなっちゃいますよォ……?」
遊んでいた指先が静かにプラシドの胸板を伝ったかと思うと、ちょん、と小さな屹立に触れた。
瞬間、プラシドの体がとうとうびくんと目に見えた反応を示したのである。
「ん…プラシド様可愛い……」
「や、かまし、い…っ!」
「あら、まだ余裕ですか」
食いしばった口元から漏れる声に悪戯心をそそられて、一瞬体を起こしたはにっこりと微笑みかける。
の目に映ったプラシドは目尻を薄らと赤く染めている。
屈辱そうに細められた目を見つめながらは舌なめずりをして、体を屈めた。
「何をされるか、聡明なプラシド様ならお分かりですね?」
質問していてなんだが、には返答を待つ気は全くない。
「ぅあ、…っ」
堪えていた声も我慢できなくなるような衝撃がプラシドを襲い、そこで初めて自身に何が起こったかを知る。
ねろりとぬめった感覚が胸板を這った。
は一呼吸の合間も置かずにプラシドの乳首をざらりと舐めはじめたのである。
それだけに留まらない。
先程触れただけだった指先が、きゅむ、と空いている方の乳首を抓み上げた。
「―っ、…!っ…!」
思わず声を上げてしまいそうになり、プラシドは口を手で抑える。
それでも漏れ聞こえてくる浅い呼吸音はの体温を上昇させていく。
「感じてますね…。もっと、良くなってください…」
指の中で弾力を捏ねながら、舌先を細かく動かしてぷっくりと膨らんだ乳首を何度も強く弾いた。
「っ!!」
それだけで馬乗りになったプラシドの腰がびくびくと跳ねる。
絡み合った足にも緊張が走り、きっと女のように彼が爪先を震わせているのであろうと想像した。
「はぁ、…プラシド様ったら…そんなに腰を揺らしたらァ…」
ぐりぐりとの太腿に押し当たるプラシドの欲情の証。
彼が反応する度に無意識の主張を繰り返すそれがを堪らなくさせる。
神経質で潔癖そうなプラシドの隠された部分を垣間見ているようでゾクゾクした。
「おっきいのがお強請りしてますよォ。触らせたいんですか?やだァ、エッチぃ」
しかし言葉とは裏腹にの手はプラシドの乳首を離れ、同じく充血しきったものを素早く握り込む。
淡く脈打つ熱の塊をそのままやんわりと上下に擦った。
「…は、っ…止め、…っ」
「ほら、ほら…気持ちイイでしょう?あぁん…、もぉ、すっごいカタい…」
いやらしい熱の感覚に今度はややきつめ、擦ると言うよりは扱く動きではプラシドを攻めた。
乳首に舌を這わせることも忘れてはいけない。
敏感に膨らんだ部分をちゅ、ちゅ、と吸い上げながら手も動かす。
「――っ!!」
性感帯を同時に攻められ、びくびくと止めることが出来ない反応を繰り返すプラシド。
自慰すら経験怪しい彼にとって未知の快感には間違いなく、何度も背中をしならせて声だけはあげるまいと息を飲む。
「……、ほんと、可愛いんですから…」
そんな反応を見せられるともっと快感を与えてみたくなるではないか。
は握り込んでいた屹立から手を離すと、押し付けていた体も浮かせた。
眼下には髪を乱して息を荒げるプラシドが横たわっている。
「…はぁ…、はぁ…、なんだ、…見るな、…っ」
「…まだ、そんなこと言えるんですね」
何処までも自尊心を守ろうとする姿に微笑みを返して、は彼の足の間にゆっくりと蹲った。
急に離れたの意図をはかりかねてプラシドは微動だにしない。
本当に何も知らないのだな。
そんな風に理解したは、まだ多少刺激を与えただけのプラシドの男性器をきゅっと掴んだ。
「!」
「あはぁ…いただきます…」
びく、と体を強張らせるプラシドに構わず、の舌がぺろりと充血した先端を撫でた。
膨張した部分に鈍く触れる感覚は、快感と言うよりはややくすぐったいような気がする。
先程手で擦られていた時の方が快感の度合いは強かった気がする…と考えた瞬間、プラシドの腰に鋭い快感が走った。
「く…っ、何だ…っ」
慌てて体を起こしてを見ると、その小さな口に深々と勃起を飲み込んでいる。
ねろねろと絡んだ唾液をすすりあげる度にいやらしい音が零れた。
「んく…っ、これ、…イイ、れしょ…?」
上目遣いの目を細めたはきゅうっと口内でプラシドを吸い上げる。
そしてゆっくりと頭を上下し始めた。
「っ、何を…、う、っ…う、ぅ…っ」
狭くなった口内はじっとりと熱くぬめっている。
摩擦の抵抗が少ない粘膜に包まれながら上下運動を加えられると腰が蕩けるかと思う程の快感がプラシドの体を駆け抜けた。
「はぁっ…はぁっ…」
「んン…っ、んむぅ…、おっきい…んっんっ…」
人間という生き物の生殖行為を施されていることくらいの自覚はある。
そんなもの自分自身には必要ないことも知っている。
これが低俗で下種な行為かもしれないことだって理解しているのに。
「っ―――、あ、…っ、くぅ……、…っ」
しゃぶりたてられる感覚は震えるほどに気持ちが良く、プラシドは背中をしならせた。
獣のように息を浅い呼吸を繰り返しながら、彼女の与えてくれる快感を追うように目を閉じた。
そして、もっとと求めるように彼女の頭を押さえつけて腰を揺らした。
「んっんっ…、んぐ、っ…ん、ン…っ」
イイ。気持ちイイ。
もっと欲しい。
何かが込み上げてくるような感覚に流されるまま、プラシドはが与えてくれる快感を享受した。
じゅぷじゅぷと唾液の絡む音とのくぐもった声、そこにプラシドの小さな喘ぎ声も混じり始めている。
「う、く、…っ、あ、…っ!!」
暫くするとの頭を押さえる手に力が籠り、プラシドの腰がぶるりと震えた。
「っ、で、る……っ」
「!…んう…っ!!」
搾り出すように小さく呟いたプラシドの声を聞いた瞬間、の口内に溢れるプラシドの欲望。
びゅくっびゅるるっ、と脈動しながら迸るそれを舌で受け止めて味わう。
「ん、ふぅ…、んく、んく…っ」
どろりとした粘液を垂下するのは快いものではなかったが、プラシドが出したものと思えば愛しくも思える。
ましてやこういうことは初めてであろうと推察されるプラシドのもの。
吐き出すなんて勿体無いことを出来るはずも無い。
「ぷは…んふぅ…とっても濃い…。たっぷり出した感想は如何です?」
口内に吐き出されたプラシドの精液を綺麗に垂下したが問うが、プラシドはベッドに身を沈めて荒い呼吸を繰り返すのみである。
まあ答えなど聞かなくても気持ち良かったことは明白だ。
嗚呼、彼が口淫でこんな風になるなんて。
男を至らせたことに甘い充足を感じつつ、はプラシドに改めて跨った。
「…ねぇ、プラシドさまァ…あたしもそろそろ我慢の限界なんですよ…」
「…、なに、を…」
腰のあたりに跨ったに声を掛けるプラシドの声には普段の張りはなかった。
射精直後の淡い眩暈に襲われながら、ぼうっとを見上げる視線も同じくである。
覇気も鋭さも失ったその眼差し。
にとってプラシドとは上司と部下だけの関係ではない。
彼は神にも近い存在であることを心の奥底で知っている。
そんなプラシドが今、の与える快感によって力なくその四肢を投げ出している。
高貴な何かを堕落させたにも近い快感が背筋を駆け抜け、は体内の奥に重苦しい疼きを感じた。
「もうナカがきゅんきゅんしちゃって堪んないんです…。一緒に気持ち良くなりましょう、ね…?」
既に一度放ったと言うのに、一向に衰えないプラシドの男性器をぴくぴく震えている入口に押し当てた。
それだけでじゅわりと愛液が滲むくらい興奮している。
飲み込む瞬間の快感を想像しながらは溜め息を吐くように言った。
「さぁ…来てぇ…ぷらしどさまぁ…っ」
じゅぷん!
もう既に慣らす必要もない程に濡れた体内へ一気に飲み込む。
「んはぁっ…!すごい、おっきいぃ…っ」
肌が粟立つ程の快感に仰け反りながら、は腰をぐりぐりと押し付けた。
「く、…っ」
波打つ体内は口内よりも熱く、蠢きが勃起をきゅうきゅうと握り込むような感覚で射精したばかりのプラシドには苦しいくらいの快感が込み上げてくる。
「はぁっ…はぁ…っ」
「あぁ、っ、ぷらしどさまのっ、ナカでびくびくしてるの分かりますよォ…?」
脈動するそれを美味しそうに頬張ったまま、浅く腰を上下させた。
ぴっちりと収まった膣壁がぬるぬると勃起を擦っていく。
「う、あ、っ…、…!」
「あぁっ、ぷらしどさまぁ…、んっ、はぁ…、イイですぅ…っ、感じちゃうぅ…っ」
ぬちゅぬちゅと濡れた音を立てて騎乗位で抜き差しを繰り返す。
体重でより深く飲み込んでしまう度には背中をしならせて甘い声を上げた。
しかし、ひとしきりプラシドの男性器を堪能すると、プラシドの方へとゆっくり体を屈めたのである。
「んふっ…あたしばっかり楽しんでるの、申し訳ないんで…」
腰を動かす動きはそのままに、ちゅっと小さな音を立ててはプラシドの胸板に唇を押し付けた。
先程攻められた瞬間をフラッシュバックさせる行為。
「な…っ、やめ、ろ…っ!」
「んーふふ…気持ちイイくせに…我慢は体に毒ですよォ」
ちゅっちゅっ、と肌に唇を落としてから、ゆっくりとプラシドの乳首を口に含んだ。
「っ!」
瞬間、びくびくしなるプラシドの体。
「はぁっ、敏感で可愛いです…っ。もっとしてあげますね…」
ぺろぺろと尖らせた舌先で何度も弾き、ぷっくりと膨らんだところをちゅっと吸い上げる。
「ぅあ!」
体内に収まったプラシドの勃起もきゅうきゅうとナカで締め付けて膣壁で扱いた。
「んふっ、おっきくなってる…」
圧迫感が増した体内が快感を感じて柔く震える。
堪らない気分を刺激されたは、ベッドを軋ませて腰を振った。
子宮の入り口を叩く凶器に鳥肌が立つ程の興奮を覚えながら繰り返す。
「んっんっ…どうですか?イきそう?出して良いんですよぉ…っ!」
寧ろ促すようにが下腹にきゅううううと力を篭めた。
同時にプラシドの乳首にカリ、と歯を立てる。
「―――っ!!」
プラシドが声にならない声を上げて仰け反った瞬間、の体内には暖かな脈動が広がった。
膣壁に叩きつけられる迸りを感じて、もぶるりと体を震わせる。
「んんっ…射精されて…ちょっと、イっちゃった……」
ゾクゾクしながらは熱い溜め息を吐きプラシドから体を離す。
ぬぽ…との体内から引き抜かれたものは、それでもなお勢いを失わない。
「やぁん…素敵。プラシド様ってば、こんな…」
「…く、っ」
苛立ったようにプラシドは体を起こすと、今度はをその体の下に組み敷いた。
仕返し、ということなのだろうか。
足の間に割って入ってくるプラシドを、はうっとりと見上げる。
「あん、どうしたんですか?」
白々しく問うた言葉に返答は無かった。
しかし。
「んぁっ…プラシドさまぁ、あぁ…っ、そこ、そんなに擦ってぇ…あたしのカラダ、気に入りました?」
収まらないプラシドは、の腰を抱きかかえながら勃起で割れ目を何度も擦った。
愛液にぬめってなかなか入口を捉えきれないもどかしさが、更にプラシドを駆り立てる。
「いいから、黙れ…!」
荒い呼吸で先端を潜り込ませようとするプラシドにぞくぞくしながらは自らで入口を押し広げた。
その裂け目に漸く先端が触れる。
「強引なプラシド様も素敵です…。あぁ、早く可愛がって…、プラシドさまぁ…大好き…」
うっとりと甘い声で乞うの体内に思い切り押し入るプラシド。
無理矢理にも似た乱暴な腰遣いで覚えたばかりの快楽を貪ろうとしている。
「ひあ、っ、あー…っ!!すごいよぉおっ、あっあっ!深いぃぃ…っ」
の足を抱え上げ、夢中で腰を振った。
絡みつく体内から零れ落ちる精液がシーツに染みを作る。
「はぁっ…、、…っ、!」
「あぁっ…ぷらしどさま、激し…っ、すぐイっちゃうよォ…っ」
体の下で乱れたの声を聞きながら、獰猛な興奮を感じてしまう。
自分にとっては無意味で無価値な行為なのに脳の回路がおかしくなるのではと思う程溺れる。
、…っ、う、あ…っ」
感情のままの名前を呼んで抱き締めると、彼女の体は更にプラシドに快感を与えた。
そこを更に深く突き立てる。
腰を突き上げるとやはりの体内は戦慄いてプラシドをきつく締め付けた。
きゅうきゅうと断続的に繰り返されるそれが堪らない。
「く…っ、、…」
覚えてはいけない味がする快感をプラシドは追いかける。
理性などとっくに失っていた。
「あぁっ、あっ、あっ…イきそう…っ、ぷらしど、さまぁ…あたし、もう…っ」
速度を増しながら繰り返していたら、ぎゅっとの膝がプラシドの腰を挟み込んだ。
…っ」
「んんぅ…っ、おく、おく来てぇ…っ、ぷらしどさまぁっ、奥にっ、ぷらしどさまのっ、いっぱい欲しい…っ!」
そのまま絡みついた足がプラシドの腰を捉える。
「あ、イくっ…ぷらしど、さま…っ、…!!」
深々とプラシドを咥えこんだが一瞬体を硬直させたかと思うと、次の瞬間にはがくがく震えながら弛緩する。
「っ!」
先程も感じたこの体内の収縮。
「は、あ、っ、…っ!!」
ぎゅうううときつく締まるの体内が導くままにプラシドは至っていた。
腰をギリギリまで押し付けてその奥深くでたっぷりと放出する。
背筋が震えるような快感が体を駆け抜けていた。
「はーっ…、…」
深い溜め息を吐いて重なり合ったままベッドに沈んだ。
視界の端に映ったも満足そうに目を細めていた。








「二度目はないぞ」
「えぇぇ…プラシド様だって楽しんでたじゃないですかァ」
翌朝、同じベッドで目覚めたにプラシドは冷たくそう告げた。
別に次のことを考えていたわけではないが、きっとまたベッドに呼んでくれる筈だと思っていたのに。
「低俗で下らん遊びだ。俺にはもう必要ない」
「童貞卒業したからですか?不動遊星より生物的観点から優位に立ったと?」
の言葉にプラシドは何も答えず、ただいつもの冷たい視線を向けるのみである。
肯定も否定もしないプラシドには更に続けた。
「あのチームの女と何もないだけで、童貞かどうかの断定は出来てませんよ。調べてきましょうか?」
「全く必要ない」
「でも不動遊星が意外にも結構な床上手だったらどうします?プラシド様全然足元にも及ばないんじゃ…」
「やかましい!いつまでも俺のベッドで寝ていないでさっさと部屋に戻れ!!」
声を荒げるプラシドに追い立てられる格好で、は裸のままベッドを降りた。
先に裸で部屋に上がり込んでいた彼女の衣類はこの部屋にはない。
とはいえ体を見られて困る相手もいない。
プラシドと立場を同じくするホセやルチアーノに見られたとしても何も問題には感じない。
もし彼らが脱げと命令してきたならば、は喜んで服を脱ぐだろう。
そういう関係だ。
彼らが気分を害したら申し訳ないけれど、恐らく気にも留めないであろうと事をは何となく肌で感じていた。
しかし事も無げに裸のままで部屋を出ていこうとするの背中に、プラシドのやや小さな声が投げかけられる。
「…その体を使って不動遊星を調べたりするんじゃないぞ」
「え、それって嫉妬ですか」
機械的に身の回りの世話をさせているだけだと思っていたからこそ、彼女の一挙一動を気にも留めないと思っていた。
それだけに意外なプラシドの言葉に振り返る前に、ひやりとしたものがの首筋に触れる。
研ぎ澄まされた刃が僅かに皮膚を裂く感覚に、彼によって剣を突きつけられていることを悟った。
「不動遊星の前にお前を消すことなど、俺には造作もない」
「あぁん、分かりましたよォ。余計なことはしませんってば」
それよりもその小さな執着にも感ぜられる一言が嬉しくて仕方がない。
嫉妬にも似た感情を見せてくれるなどとは思いもよらず。
「…それなら良い。早く行け」
許しの言葉と共に殺気立った切っ先の感覚は消え失せた。
「じゃあ失礼しまーす」
はプラシドを振り返ることなく、部屋を後にする。
だってこんなニヤけた表情を見せたらまた怒るに決まっているんだから。
面倒な問答はもういらない。
次にすることも決まった。
「…不動遊星の家は何処だったかしら」
この体を不動遊星が好きにしたと知ったら、きっとプラシドの執着心は大きくなるに違いない。
勿論、最終的にはプラシドの望みを叶えてやるのがの希望だった。
彼の望みが達成されるなら何でもやってあげたい。
プラシドの怒りのままに不動遊星と同時に消されることになったとしても本望である。

自身の愛は歪んでいるとが自覚する瞬間である。







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MNE様リクエスト分でした!
童貞のプラシドが夢主に攻められる…といったリクエストでした。
立場が上だと信じてやまないプラシドが攻められるのであれば、夢主の立場は問わない、とのことでしたので一番書きやすい部下的立ち位置を選ばせてもらいました。
全体的に夢主が変態さんで申し訳ないと思いつつ、楽しんで頂ければ嬉しいです。


こちらの作品はMNE様へ捧げるリクエスト小説となります。
ご本人様以外のお持ち帰りなどは厳禁です。
閲覧のみで宜しくお願い致します。


ここまで読んでくださってありがとうございました。