ぱられる


「あら、そんなもの。あたしが一瞬で解凍してあげる」
遊星から冷凍食品の袋を取り上げたは何かのおまじないをかける子供のように指先を細かく動かした。
だけど最後にちょんと袋をつついた瞬間。
「あつっ!!」
自分で袋を奪っておいて落しそうになる。
それを遊星が慌ててキャッチしたけれど。
「熱…っ」
とんでもなく高温で机の上に放り出してしまった。
取り出すのもさることながら、口に入れるものとんでもなく怖い。
「あは、ちょっと加減間違えちゃった。でもちゃんと解凍は出来てるわよ」
悪びれずにこにこ笑う彼女は、自称魔法使いである。






「レンジでやった方が早ぇえ」
何故に冷ます時間などを取られなければならないのだろうか。
「まあまあ、今度は失敗しないから」
「馬鹿だろお前。次はお前に渡す前にレンジに放り込むに決まってンだろうが」
軽口の応酬を横目に遊星は袋の端を摘んで、箸で中身のピザを引っ張り出していた。
ちょっとお腹空いたね、のの言葉がきっかけで用意されたおやつだった。
「じゃあお詫びにさくっと切ってあげる。任せて!きっっっちり三等分するわ」
「馬鹿止めろ!お前がやると皿まで切るだろ!!!使い捨ての陶器の皿なんて聞いたことねぇぞ!」
「…下手すると机まで切るかもな」
「あ!遊星まで酷い!!」
唇を尖らせて見せるけれど二人に反対されてしまったのでは諦めざるを得なかった。
この家での暗黙のルールに多数決がある。
揉めるとすぐデュエルを持ち出す人間が多いせいでいつの間にかそう決まったらしい。
いちいちデュエルなどやっていられない…と、言うことだったが、が来てから一層その色が強くなった。
自称魔法使いの彼女は自由自在に好きなカードを引ける。
オカルトは嫌いだ馬鹿らしい、と言ったジャックを退けてからは皆その『自称』もあながち自称ではないのかなと思えている。
ジャックを退けた際にが使用したのは遊星とクロウのデッキをきっちり半分ずつ組み合わせてジャックによって念入りにシャッフルされたデッキだったけれど、見事にクロウのカードのみを引いて見せた。
対峙しているジャックは元より、それを見ていた遊星とクロウも空いた口が塞がらない気分になったものである。
「あたしに引けない有効カードはないの。次は遊星の方で勝って見せようか?」
微笑む彼女の顔に浮んでいるのは魔女の冷笑だった。
結局その時ジャックは売り言葉に買い言葉で『ならばやってみろ』と言ったが、デュエルは面倒だからとシャッフルされたカードを上から捲ることにしたのだけれど。
まあ結果は…言わずもがなで。
「じゃあ次は…可愛い可愛いロードランナーに来てもらおうかな」
カード名を読み上げて捲っていくカードは全ての予言したとおり。
もう、正直凄いを通り越して気持ちが悪いほどに。
途中でクロウがもう分かったから止めろと止めなければ彼女は全てのカードを言い当てたに違いない。
それ以来がいるときにデュエルを持ち出すことはあまりなくなったのだった。
さて、クロウにより包丁できっちりと切られたピザの一片を取り上げたはふとカレンダーに目を留めた。
「やっだ、もう年末。ああ…地獄の日が近いなぁ…」
「はァ?何だそれ」
「所謂一つのホーリーナイト?あぁぁやだやだ。神様は魔女ってヤツが大っ嫌いなのよ。その分身の子供が生まれた日なんかあたしにとっては大災厄日なの!」
「それってクリスマスのこと言ってんのか?」
「やだもーはっきり言わないでよね!その日の名前聞くのも嫌!!この季節テレビあんまりつけないようにしてるのに」
そんなにも。
の渋い顔にまさかそんな弱点があるなど思いも寄らないクロウと遊星は顔を見合わせた。
ここまでクリスマスというイベントを嫌う人間(?)も珍しいだろう。
しかしそうなると…。
「じゃあお前ら、25日出掛けたりしねぇの?」
「え?なんでそんな大災厄日に出掛けるの?」
クロウの言葉にきょとんとするを遊星は複雑な気分で見つめた。
や、別に何も予定なんかないんだけど。
それは予定が入るだろう予定で何も入っていないというか、これからどうしようかなくらいは考えていなかったわけではなかったというか。
ご愁傷様…、そんな視線でクロウが遊星を見た。
そう、と遊星は恋人同士なのである。







去年まで、然程この季節を意識したことは無かった。
まあ世の中が浮かれる季節ではあるが他人は他人自分は自分。
遊星はそういうところに関してはかなりドライである。
しかし、今回はその他人と同じステージに上がっていた筈なのだ。
別に浮かれていたわけではなかったけれど、ちょっとぶっ飛んだ可愛い彼女と二人で過ごそうだとか、ささやかな甘い夜を想像したって罰は当たらないだろう。
彼女はいつも積極的だから頼みもしないのにサンタの格好をして、
『んふふっ、プレゼントはこのあたしだよォ。さ、召し上がれ!』
と何とか言ってお決まりのように遊星を当惑…もとい誘惑してくれるんだろうなとか。
はにかみながら遊星のプレゼントを受け取った後に、
『お礼に今夜は寝かせないからね』
とか悪戯っぽくウィンクして、いきなり遊星に抱き付いてきたりだとか。
兎に角、人並みの恋人らしいイベントを想像していたのに。
何だろう、この驚くほど普通の平日。
こんな日だって壊れる家電は壊れるのだなとぼんやり思いながらの仕事の帰路。
修理依頼はエアコンだったが、寧ろこんな日だからこそ凍えたくないというのは非常に理解できる。
は昨日と今日は一歩も外へ出ないからと言っていた。
自分もさることながら、こんな日に独りでは…と思い部屋に行こうかと電話をしたが、電源を切っている徹底ぶり。
彼女に会うことは諦めて遊星は夜道を急ぐ。
冷たい風が頬を打つ。
さっさと風呂に入って今夜は寝よう。
別に今日に拘らずとも明日に会いに行けばいい。
朝から会いに行こう。
正直パートナーがいるのに独りと言うのは思いのほか寂しい。
彼女が塗り替えてしまった世界は、既に無しには半分の色彩しかなくなっていることに気付いて遊星は自嘲気味に笑った。
帰り着いた時、ガレージは当然ながらがらんとしていた。
クロウとジャックのDホイールもない。
どうやら連れ立って孤児院のようである。
気が向いたら来いと書かれたメモも見つかったけれど、明日の朝からに会いに行こうと思っている遊星はありがたく思いつつも風呂に入って寝ることにした。
冷たい風はもう無いが、冷えた体が体温を失って震えすら呼ぶ。
足早に部屋に戻った遊星は着替えを掴むと直ぐに部屋を出ていった。
その直後、遊星の部屋のドアノブが妖しく光り始めたことにも気づかずに…。

30分後。
風呂からあがった遊星は、自分の部屋から明かりが漏れていることに気付く。
電気なんか点けただろうかと訝しく思いながらも部屋へと急いだ。
足音を極力抑えてドアに近づき、注意深くドアを開けると、そこには。
「…な、何でいるんだ…」
フローリングにへたり込むように座っていると目があったのである。
「遊星、居たんだ…良かったァ…」
へらっと笑うの姿。
顔を見たいと思い続けていた彼女が部屋に座り込んでいることに遊星はぽかんとする。
そんな遊星を見ては慌てて説明をするように口を開いた。
「遊星、この前会ったとき元気なかったから…」
そりゃまあ。
この時期に恋人に放って置かれて元気な人間もそうそういないはずである。
如何な遊星であろうとも年頃の男の子に違いはないのだし。
それなりにこのイベントに期待もしていたし。
「どうやって入ったんだ」
「え、えへへ…あたしの家の玄関と、遊星の部屋の空間くっつけちゃった。外からは入れるけど、中からは出られないの。だから遊星がガレージにいるかどうか確認できなくって…」
勝手してゴメンネ…と謝るは珍しく申し訳無さそうでちょっとくらりとする。
しおらしい…すごく可愛い。
「あの、多分明日には戻せると思うんだけど、あの、今はちょっと無理で…」
「無理?」
「災厄日だから魔力弱まってて辛うじてくっつけはしたんだけど戻せなくなっちゃって…」
「!」
本当に申し訳無さそうに床にのの字なんかを書きながらしょんぼりとした声音で言う。
ばつが悪そうにフローリングに座り込んでいるに遊星は仄めかされる気分でいっぱいだった。
弱った…めちゃくちゃ可愛い。
「玄関をくっつけちゃったから…遊星の部屋とあたしの家しか出入り出来なくなってるんだけど…」
「!」
本当だ。
だけどクロウやジャックが帰ってきたとして、遊星の部屋に来るかどうかは分からない。
それに、外から入ってこられるなら別段問題もないだろう。
「や、やっぱまずい…カナ…?」
「いや、問題はなさそうだ」
「え…、問題ないの…?そ、そう……」
それがどうしても気がかりだったのだろうか。
は深く息を吐いてようやく緊張を解いた。
遊星もの傍にしゃがみ込む。
改めてよく見るとの服装が気になってきた。
サンタではないが、は今コスプレのような格好をしている。
薄いシースルーの黒い長袖が素材の違うチューブトップのようなところから伸びている。
マントは光沢を放つ見たこともない素材で厚みはありそうだったが、スカートの部分はチュールを重ねた長いものでなかなか通気性が良さそうである。
つばの広いとんがり帽子は如何にも魔女らしいが…。
、寒くないのか?」
「…すっごく寒い。でも…この服がちょっとだけ魔力肩代わりしてくれるから、これ着ないと玄関繋げられなくて…」
彼女の服はファンタジーアイテムでした。
装備品ってヤツか。
言われて意識すると更に寒くなったのか、は腕を手でさする。
弱って寒さで震えるは物凄く庇護欲をそそった。
思わず肩を抱き寄せる。
「…冷たい」
「うわ遊星あったかい!」
「まあ…風呂上がりだから…」
温められた体にじんわりと滲むの冷たさが、何だか余計に可哀想な子猫のようで。
遊星は腕にぎゅうっと力を篭めた。
「あー…、あったかーい」
すりすりと頬を寄せて甘える様はいじらしさまで感じさせてくるタチの悪さ。
そうしている間に帽子がずれて床に落ちた。
この日がそんなにも彼女に不安を与えるのか、普段は凛々しさすら滲ませている瞳にいつもの情熱は薄い。
少しだけ体を離して、しおらしいままには遊星を見上げる。
「でも…遊星が冷えちゃうじゃない」
「平気だ。こうすれば…」
遊星はを抱え上げるとベッドの上に座った。
膝に乗せたままでのマントだけを素早く引き剥がす。
「えっ?」
きょとんとするをベッドの上に転がして自分も素早くその隣で布団を被った。
「こうすれば暖かいだろ?」
「や…う、うん、まああの…確かにね」
普段はどちらかと言えばが遊星に迫る方で遊星は大人しくそれを受け入れることが多い。
今日も実は的にはそういうつもりで、この大災厄日も欲望に泥んでいるうちに分からなくなって過ぎ去っているだろう、そんな目論見でここまで来た。
まさか遊星がこんな積極的な行動をとるとは…。
「遊星…どうしたの?普段の遊星っぽくない…」
「それを言うならだって、いつもよりずっと弱々しいじゃないか」
「そ、そう…?」
「普段ならこうなった時点で俺の服を脱がす癖に」
こんな風に…。
と、遊星はのワンピースの肩口を掴んで引き下ろした。
チューブトップのようなデザインだったので肩口から引き下ろされれば一緒に胸元の部分まで露わになるデザインである。
「!」
しかし予想外にもぷるんと裸の胸が露わになったことに、流石に遊星も驚いたのか息を飲む。
「やぁん…。もぉ…」
僅かに恥じらいを見せるものの隠すことはせず、寧ろ見せつけるように僅かに背を反らしてみせるあたりがだ。
「俺の部屋に不法侵入した時点でこういうつもりだったんだろう?」
「んふふ、そうだよォ。それにあたしに鍵なんか意味ないんだからね!」
少しずつ、言葉に彼女の力強さが戻ってきた。
これでこそ遊星が愛した彼女と言えるが、主導権を奪われる前に遊星はの胸をやんわりと掬い上げる。
向かい合わせでふにゅふにゅと揉みしだくと、は刺激に反射的に背をしならせた。
それは強請っているようでもあり。
「美味そうだ」
しなやかに仰け反る彼女の体を優しく抱き寄せて、遊星はの乳房の先端を口に含む。
「はうっ…!」
瞬間の刺激にの体はびくっと跳ねるが、腕の中の愛しい反応を遊星は更に掻き抱く。
鼻先までも柔らかな胸に埋めてくちゅくちゅと頬張った部分をしゃぶり立てた。
「ん、はぁ…っ、あっ、遊星…っ」
口内でぷっくりと主張を始めていくの乳首。
口に入れていない方も同じように膨らみ始めている。
「ぷは…、感じているんだな、
ちゅっちゅっと唇で啄みながら、空いている方を指先で転がす。
「くぅうん…っ!そんなえっちく触られたら、感じるに決まってるデショ…!!」
唇を尖らせはするが満更でもなさそうだ。
布団の中での体を反転させて後ろからその肢体を抱いた。
遊星の逞しい腕が絡みついていると思うと妙にドキドキする。
後ろから回した手で弄ぶように乳房を揉みしだきながら、滑らかな背中に遊星は何度もキスを繰り返した。
「あう、…く、くすぐった…ひゃ、ぁあ…っ」
見えない個所に吐息が掛かってしまうとその度に体が跳ねまわる。
ちゅっと遊星が小さな音を立てるたびに背筋がゾクゾクしてくすぐったいのに気持ちイイ。
きゅむきゅむと乳首を抓んだり引っ張ったりしながらも、遊星はのワンピースを脱がせていった。
チュールスカートから完全に足を抜かせると、それをベッドの下へ追い出す。
ついでに自分も部屋着に着ていたカットソーを脱いで放り出した。
「あん、ちょっとォ。大切に扱ってよね。来年困るでしょ」
ややぞんざいに服を扱われたが体を後ろに捩って抗議をすると、遊星はゆっくりと首を横に振った。
「いや。絶対に困らない」
「何で言い切れるの」
「…来年にはWRGPも終わっている。そうしたら絶対に一緒に暮らしているから、そもそも玄関と部屋を繋げる必要もない」
「………へ?」
遊星の言葉を理解しきれなかったかのようにきょとんとするにちゅっと優しくキスをして、遊星は服を脱がせていた手でやんわりとの足の間に触れた。
「きゃっ!」
「なんだ、こっちは穿いているのか」
「さ、流石にそっち穿いてなかったら変態でしょっ!そ、そうじゃなくて…っ!!」
慌てて遊星の手を掴んで制止したは至極真剣な眼差しを体ごと遊星の方に向けた。
「い、一緒に暮らしているって…あたしと遊星が…?」
「他に誰がいるんだ」
「…や、…だ、だって…それって……」
言葉の意味をどのように捉えたのか一目で分かる程に顔を赤くして俯く
レアだ。
レアすぎる。
そしてこんなことで照れて見せるなんて、ちょっとどころではなくかなり嬉しい遊星は。
「そんなに可愛い反応を見せられると困るな」
全然困った風ではなく、何だったらちょっと笑みを堪え切れない様子でを抱き寄せ頬にもキスを繰り返した。
時折耳元にかかる息が浅いのはの気のせいではないだろう。
「『それって』と言ったが、は何を想像したんだ」
「!」
「その先を俺に教えてくれないか」
耳元で吹き込むように、それでいて僅かに媚びるような響きでを促す。
勿論聞かなくても想像通りなのは間違いない筈であるが、それでも尚愛しい彼女の口から聞きたいのが男という生き物である。
「わ、分かってるくせに…っ、や、ん…っ」
素直にならないことに罰を与えるように、唇で耳朶を軽く食んだ後その輪郭をなぞる。
同時にやんわりと掌での乳房全体を捏ねるように撫でた。
「あ、は…っ…、あぁ、もぉ…っ…け、……こんし、て…る、のかなって思ったの!」
「もっとはっきり言って欲しいな」
つうう…と舌先で首筋を辿りながら、頬をちゅっと吸う。
キスと言うよりはふざけながら続きを促すように。
「だ、だから…、その、け、結婚してるのかな…て、思った、の…!」
投げやり気味ではあるが理想の答えを引き出した遊星は嬉しそうにを見詰めた。
ぱちっと視線が合うとばつが悪そうには目を逸らす。

「…な、何よ…」
拗ねたような返答も可愛くて。
顎を軽く掴んで視線を引き戻すと、遊星は素早く唇を押し付けた。
小さな音を立てて軽く啄むと、もそれにおずおずと答える。
「ン…」
ちゅ、ちゅ…と何度もそれを繰り返しながら密着した体をもっと押し付け合う。
どちらからともなく腕を互いに絡ませ、しっかりと抱き合った。
「は、……、好きだ。愛している」
「…、あたしも…遊星のこと愛してる」
「どんなに辛い日だって俺がお前を守るから、ずっと一緒にいよう」
「……うん…!」
本当なら恋人たちの日と言っても過言ではないはずの今日。
いや、どんな理由にせよ今日という日をこれからも一緒に過ごせるのであれば結果は同じかもしれない。
「あ…、ゆ…ぅせ…」
抱き寄せた腕の中でたおやかに波打つ体。
重なり合った滑らかな肌の感触を文字通り味わおうと、遊星はの頬を食んだ。
「やん!」
遊星にしては珍しくふざけている風の行動に思わず声を上げてしまう。
合間に細い腰を抱き締めていた手がすりすりと太股を撫で回す。
遊んでいるのかな…と思った時には、ショーツを引っ張られていて。
「…ホント、今日は遊星、積極的過ぎて…濡れちゃう」
「それは…確認しないといけないな」
目の前の遊星がいやらしくにやっとしたかと思うと、遠慮も無くショーツを下ろしていた手がの花弁を掻き分けた。
「っ、んぅ…っ!」
柔らかく蕩ける熱がじっとりと遊星の指先を迎え入れる。
触れられたことで入口は反射的に緊張して、きゅうっと甘い締め付けが遊星を刺激する。
「ちょっと入れただけなのに食いついてくる…」
嬉しそうに掠れた声で囁かれ、流石にも頬が熱くなった。
「だ、って…!体が勝手に…っ!あ、あぁぁ…っ」
ぐぶ、と更に深く押し込まれると反射反応も強くなる。
浅く繰り返される抜き差しにもどかしい感覚がの下腹を重くさせた。
「んっ、あっ…ゆぅせぇ…、それっ…」
体の下でびくびくと体を捩っているに視線を落とした。
じれったそうに下唇を噛んで何かに耐えているかのような雰囲気である。
「…足りない、か?」
彼女のはしたない欲望の匂いを感じ取った遊星は、慎重にもう一本の指を潜り込ませていく。
「あはぁん…っ!」
体内を掻き回す指に淡い痺れを呼び覚まされながらも、切なく戦慄く子宮の奥はそれで充足したりはしなかった。
くちゅくちゅいやらしく涎を垂らしては遊星の手を濡らす。
「はぁっはぁぁっ…、それっ、違うぅ…っ」
「何が違うんだ」
「分かってるクセに…!」
足の間に捩じ込まれた遊星の腰を膝でぎゅうぎゅうと挟み込む。
それだけで何を催促されているかくらい、男なら誰だって分かるだろう。
彼女の体内から指を引き抜いた遊星はねっとりと絡みついた彼女の愛液を目の前で舐め取った後、の足を抱え上げた。
「…そんなに言うなら」
取り出した強張りをやんわりとの足の間に押し付ける。
熱の塊が今から体内を蹂躙するのだろうと期待しては小さく息を飲んだ。
だけど、予想に反して遊星の勃起はの割れ目をにゅるんと擦った。
「やァん!何、するの…っ!!」
抱えた足が緊張するのが遊星に伝わる。
彼女がどうなることを期待していたかを知らない遊星ではない。
なのに、遊星はやんわりとの割れ目をにゅるにゅる擦った。
「……どろどろだから、上手く入らないな」
「うそ、ばっかり…!!あ、やだやだ…っ、変なこと、しないでぇ…!」
いやらしく性器の先端で敏感な突起をつつかれては身を捩った。
だけど足から腰にかけてを遊星に抱えられているから満足に逃げることも敵わない。
愛液を絡ませて往復する遊星の感触に体内が急かすように収縮する。
「もぉっ…遊星のばか…っ!」
下品な愛撫に軽い眩暈を引き起こされながら、それを振り払うように頭を横に振る。
そしてそろりと自らの足の間に手を伸ばした。
その行動に遊星はごくりと獣のように喉を鳴らす。
「ここ、ここに遊星が欲しいのォ…分かってるくせに、焦らさないでよ…」
自らの指先で押し開いた入口は愛液がねっとりと糸を引き、遊星に犯されるのを今か今かと待っている。
時折きゅっと蠢くのがいやらしい。
の痴態に遊星の呼吸は一層浅くなる。
無言でゆっくりと腰を引くと、ちゅぷりと先端を押し広げられた入口に押し付けた。
「んっ…、あ…遊星の、すごく熱い…」
こそ…、う、…」
ずぶずぶ飲み込まれるかのような錯覚を覚えながらも、遊星は腰を進める。
「はぁ、っ…、あ、凄く好い……」
恍惚の色が混じる声色で呟いて遊星は軽く背中をしならせた。
「くぅん…っ、それ、イイ…っ…!」
体内をずぅんと押し上げるような深さに体内が勝手に収縮する。
きゅうきゅうと柔く締め付けられて遊星はぶるりと体を震わせた。
「んぅ、……そんなに、急かさなくても……」
だん、との肩の傍に手をついて、見下ろしてくる遊星は僅かに苦しげな表情をしながらも口元には笑みを浮かべている。
遊星らしからぬ獰猛な微笑みにはぞくりとしながら、彼が言葉を続けるのを待った。
「直ぐに愛してやる…!」
「っあぁぁ…っ!」
引き抜かれた楔がの体を貫くように打ち付けられる。
瞬間、波打つ体がベッドの上で跳ねた。
淡い絶頂感にの爪先は空中を蹴る。
「いきなり、イったのか…?相変わらず、感じやすいな…」
「んむっ…!」
注挿を行いながら遊星はの唇に噛みつくようなキスをした。
の唇をこじ開けて口内の奥に隠れる小さな舌をやんわりと舐める。
「んっんっ…!」
ベッドにの体を押し付けるように体重をかければ彼女はもう逃げられないことを知っている。
その上で何度も角度を変えながら遊星はの唇をたっぷりと味わった。
掻き回された混じり合う唾液を彼女の喉が垂下していく。
「ぷあ…っ、窒息、しちゃう…っ」
息継ぎの合間にが逃げようとするけれど、その顎を掴んで更に重ねた。
今度は唇を軽く食む。
「んっ、は…あ、ゆうせぇ…っ、ふざけてないで…もっと、深いのシて……」
誘うような流し目では遊星の首に腕を回した。
「もっと…?こう、か…?」
求められる喜びを感じるままに遊星は浅く出し入れしていた自身をもっと深く潜り込ませた。
再びずぅんと重く体内を叩く感覚には甘い溜め息を吐く。
「んっ、そう…あぁ、遊星…っ、すごく…イイ…っ」
恍惚の声が遊星の耳をくすぐる。
きゅうっと抱き付いてくるの胸の感触も遊星を煽る一助になる。
…柔らかい…」
「きゃっ…、あ、あぁ…一緒に、触ったら…感じすぎちゃうよォ…!」
少しだけ体を浮かせて出来た隙間に、遊星の手が入り込んできた。
その指先は強めに乳首を抓み上げる。
「あはぁぁ…っ、やぁん…っ、ゆうせ、気持ちいぃぃ…っ」
くにゅくにゅと敏感に張りつめた乳首と体内を同時に攻められては愛液をじゅわりと滲ませた。
「…あぁ、っ、ぬるぬるだ…。こんなに濡らして…」
遊星が腰を振る度にいやらしい水音が漏れた。
とろとろになっているくせに、深い場所を攻めればうねるように締め付けてきて堪らない気分になる。
「はぁっ…はぁっ…、あ、あぁ…っ、奥、おくにあたるのぉ……」
気持ち良さそうに口にするの腰が僅かに浮いた。
もっとということか。
しなる背中を抱き上げて、遊星は自分の腰の上にを乗せる。
「ああっ…この体勢…っ、だめぇ、あぁぁ、っ」
自重で更に遊星を深く咥えこまされてしまう体勢だ。
それなのに遊星は容赦なく腰を掴んで下から突き上げてくる。
「ふあっ!あっ!あっ!これ、だめ、え…っ!あっ、イっちゃうよ…っ!」
遊星に抱き付きながらは天井を仰いだ。
子宮の入り口を叩く衝撃に視界が霞む。
「いいぞ…、一緒に、…っ」
込み上げる射精感を堪えながら遊星は思い切りの体を貫いた。
「ん、…っ、あ、あっ、だめ、イく、イくっ…!!!」
の膝が遊星の腰をぎゅうううううと挟み込んだ。
それに比例するようにの体内もきつく収縮する。
「っ、…出る…、っ」
遊星もぶるりと体を震わせた。
眩暈を感じながらきゅうきゅうと遊星の精を欲しがるの体内にたっぷり注ぎ込む。
「んはぁっ…熱いの、出てる…」
下腹に遊星の証を感じ取ったはうっとりと呟いた。
絶頂後の余韻が気怠く体を支配している。
荒い呼吸を繰り返しながら、二人は抱き合ったまま布団の上に伏した。



「日付、変わったね…」
腕の中のがぼんやりと呟く。
遊星のおかげさまで、大災厄日の後半は殆ど訳も分からないままに過ぎ去っていた。
「過去最大に幸せな大災厄日だったわ…」
「…そうか」
腕の中でうっとりするに男性の本能を充足させながら遊星も微笑む。
「魔女の家はね、大災厄日が終わってからパーティーするのよ。でも今日は遊星と二人きりだから…」
もそりと布団の中でが遊星の胸板を指先でなぞった。
細くて冷やりとした感触が優しく伝っていく。
そのままお臍の窪みにくるりと円を描いて、下腹の辺りでぴたりと止まった。
「…?」
の指先が触れたところが暖かい。
何故だろうと遊星は布団を僅かに持ち上げてみると。
「!…っ!?」
の指先が触れるところにぼんやりと浮かび上がる謎の魔法陣。
一瞬の発光の後に消えてしまったけれど。
「んっふっふ。最近開発した感度を上げる魔法なの。今日まで取っといたんだからね」
妖しく微笑んでは遊星の胸元に噛みついた。
「ッ…!」
歯形がつくほど強く噛まれた為、痛みに遊星が顔を顰める。
しかし。
その歯形の後をねろりと舐めるの舌先が…。
「う…ァ、…、…っ」
痛みに敏感になった皮膚を労わる滑らかな舌の動きに遊星はゾクゾクと背中をしならせた。
「ああ、可愛い遊星…。大災厄日に一緒にいてくれたお礼に、たっぷり啼かせてあげるからね…。今夜は寝かせないよォ」
図らずしも遊星が想像したような台詞を囁いて、は布団の中の遊星にその身を押し付けた。








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ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
クリスマス感うっす!と思われた方もいらっしゃるでしょう。
途中からもう大災厄って何だったのかと思うくらい彼女は無事ですしね。

さて今回の遊星さんは『デッキにカードがある限りっ☆』のほしみゆーき様と企画的に書かせて頂きました。
あたしが『ヒロインが不法侵入をする』、ほしみ様が『遊星が不法侵入する』という内容です。
きっかけはツイッターでして…本当にツイッターってネタの宝庫ですね。
突然お声を掛けさせていただいたにも関わらず、快く了承を頂きまして本当にありがとうございました。
楽しかったと仰って頂きましたが、こっちこそです!
ゆーきちゃん、良かったらまた何かやりましょう!!

こちらの小説はほしみ様のみお持ち帰り可となっております。
他の皆様は閲覧のみで宜しくお願いいたします。