12月25日。
世間で言うところのクリスマス。
遊星と過ごす初めてのクリスマスなので、今日は死ぬ気で休みを勝ち取ってきた。
その為に昨日、24日は犠牲にしたのだ。
街中に溢れるカップルを尻目に帰ってくるのは相当苛つかされたが…。
遅くに帰って遊星の顔を見たときは力が抜けそうになったものである。
クロウとジャックは今夜は帰らないとのことで名実共に遊星と二人きり!なのだ。
「もしかしたら気を遣ってくれたのかもなぁ…」
特にジャックは。
クロウや遊星から可愛い彼女がいるとかいないとか聞いたこともあるけど本人の口から直接聞いたわけではないから、気を遣ってくれたのだとしたら申し訳ないわけで。
それに関してはちょっと気が引けるところもあるので明日ご馳走を作ってお礼をしようかな…と計画している。
嗚呼、それにしても…。
「うー…さっむ…」
真冬にノースリーブは自殺行為だと思う。
馬鹿馬鹿しいと言えば多分その通りで。
こんなことをしている姿を見たクロウやジャックはどう思うだろう…と考えて、深く考えるのは止めた。
いない人間のことを考えてどうする。
「スカート短すぎるのが問題ね…」
ノースリーブのミニワンピースに赤いケープを羽織って鏡の前に立つ。
「…これ遊星の前以外では絶対に着れない…」
っていうか遊星の前ですら恥ずかしいかもしれない。
最後に白いニーハイを履いて…。
「あっ、何だろ。凄い…何だろ、もっと恥ずかしいかも…」
素足も大概だがこの格好もなかなかである。
「…」
そして、薄着すぎる。
今日はガレージも締め切ってキッチン横のリビングスペースで過ごす予定だが、こんな状態で過ごして大丈夫なのだろうか。
即効で風邪を引くのではと心配になる。
いや、こんな格好をしている時点でそこはそれ、それなりに遊星とのいちゃいちゃも期待しているし遊星暖めてもらえば問題は無いのだけれど。
それにその先だってばっちり受け入れるつもりもあるわけだが。
「いきなり狼さんになったりしないよね…」
絶対に無いと言い切れないから哀しい。
しかし鏡と見詰め合っていても仕方が無いわけで。
それこそ折角の二人きりなのだから時間を無駄にしている場合でも無いわけで。
意を決しては廊下へと出る。
「うっわー…寒い…!」
流石に真冬にノースリーブのワンピースはきつい。
薄いケープなんて飾りでしかない。
ぱたぱたと走って階段を駆け下りた。
「…遊星!」
駆け込んだリビングは暖房が効いていて寒さはややマシと言えた。
声を掛けられて振り返った遊星が驚いたような顔をする。
「そ、そんなびっくりした顔しないでよ…!どうかな?可愛い?」
短いスカートの端を摘んで少し広げてみせたりして。
裏地も無い薄い生地が軽やかに広がって、裾のふさふさしたボアの部分が半月を描く。
「ああ、似合っている…すごく」
「そ、そう…?良かった」
照れたように笑うに遊星は上から下までをじっくりと見つめる。
値踏みをされているようで落ち着かないが、折角なので存分に見てもらうことにした。
「あんまり見られると…恥ずかしいな」
「…何故だ。すごく可愛い。…一つやってみて欲しいことがあるんだが」
「なぁに?」
「良く、ドレスを着た子供がやるようにその場でくるっと回ってみてくれないか」
「へ?…こ、こう…?」
奇妙な遊星の要望に首を傾げつつはくるりと遊星の目の前で回ってみせる。
その瞬間、の周りには柔らかな空気の流れが出来てふわりとケープが舞い上がった。
そしてケープが舞い上がると言う事は当然…。
「きゃぁっ!」
短いスカートも緩やかに舞い上がり、は途中でスカートを抑えて足を止めた。
「ゆゆゆ遊星!!!」
確信犯的な要望を寄越した遊星を睨みつけるが本人は涼しい顔をしている。
「何故止まるんだ」
「止まるわよ!っていうか怒るわよ!?」
「それは困る」
全く困った表情など見せずに、それでもご機嫌を取るようにの頬に軽くキスをした。
ちゅ、と触れるの頬がひやりと冷たい。
「…、その服…寒いんじゃないのか」
「えへへ…分かる?ここは暖房効いてるからマシだけど…やっぱちょっと寒くって…」
遊星が緩やかにの指に自分の指を絡めた。
「わ、遊星あったかい…!」
「というかが冷たすぎるんだ。…少しだけ、待ってくれ」
遊星はをソファに座らせた上で自分のジャケットを押し付けるとキッチンに消えた。
ジャケットを脱いでしまえば彼もノースリーブなのではジャケットを返そうとしたが、遊星は少しの間だけだからと聞かなかった。
仕方なくそれを膝掛け代わりにして待っていると、カップを二つとブランケットを持って戻ってきた。
「あ、ありがとう…!」
渡されるそれを受け取ってほんの少しだけ口を付ける。
「熱いから気をつけてくれ」
「ん、だいじょぶ…」
ふーっと息を吹きかける様を遊星は微笑ましそうに見ていたが、もう一口が中身を口に含んだあたりでカップを取り上げた。
「ん!…何するの!」
「すぐに返す」
机の上にカップを置いて、をふわっと横抱きにして自分の膝の上に乗せた。
そしてブランケットを広げて自分とで半分ずつになるように被る。
「!」
なんとなく長いマフラーをシェアする様を想像するような遊星の行動には少し顔を赤らめた。
そんなに気付かず遊星は改めてにカップを渡す。
「これで寒くないな?」
「う…うん…」
遊星に抱っこされながらコーヒーを飲むなんて贅沢…とこっそりは思った。
力強く自分の腰を抱き寄せる遊星の腕にどきどきする。
ガレージに篭ってばかりいるくせに、憎らしい。
そのタンクトップを脱げば、引き締まっている体が存在することも知っている。
数え切れなくらいその腕に抱き締められてきたから。
思い出すといけない気分になってくる。
密かに心拍数を上げながらはちらりと遊星を見上げる。
「遊星、ジャケット着なよ。はい」
コーヒーの威力は絶大だった。
中から温まる体をブランケットが保温するような形で、温かくなってきたはひざ掛け代わりにしていたジャケットを遊星に返す。
「寒いだろう?そのまま使えばいい」
「ううん。大丈夫。それに遊星こそ寒そうだし」
「こうしていれば寒くない」
遊星がぎゅうっとを腕の中に閉じ込める。
ふわっと遊星の髪の匂いがしてはくらりと眩暈を感じた。
ああ、どっちが狼なんだろう。
部屋では遊星がいきなり狼にならないかどうかを心配していたのに、こうやって体温を分け与えられただけでいけない気分が更に高まってくる。
触れ合う肌が暖かくて、熱い。
ブランケットの中で指先を絡めあいながらどちらからともなくキスを交わした。
「ん、っ…、ゆうせ、…」
何度も角度を変えて奪われる感覚。
静かな部屋に小さな水音が響く。
「は…ぁ、ん…」
交じり合う唾液を飲み込んで離れようとするを追う遊星の唇。
軽く数度啄ばんでから、ちゅっと音を立てて漸く離れた。
繋ぎあった指先は絡めたままで。
「もー、早いよォ…」
「なら、止めておくか」
「…意地悪…。止めないでよ…」
主語がないが、何を指しているのかは勿論分かる。
つまりはそういうこと。
「んふ…」
遊星の膝に乗せられたまま、優しく肩を抱かれて何度も唇を塞がれる。
小さく音を立てながら重ねあった唇から吐息が零れて交じり合った。
「は、…んっ…遊星、ん…っ」
角度を変えながら触れ合っては離れ、また触れる。
しかし追いかけあうようなキスも次第に深くなり始め、柔らかく舌先を絡めながら口内を探り合った。
じんわりと広がる遊星の味を堪能する。
触れ合う唇は温かく、探る舌は官能的だった。
「んは…ぁ」
溜め息混じりに唇を離す。
つぅ、と銀の糸がお互いの唇を繋ぎやがてぷつりと途切れた。
「遊星…大好き…」
見つめてくる強い視線が照れくさくて、は逃れるように遊星の首に腕を回す。
遊星もそれを受け入れての背中に腕を回した。
しかし悪戯な指先は服の上からすう、との背筋を撫で下ろす。
「やぁん…」
くすぐったくもぞくりとした感覚が背中を伝っていく。
は身じろぎながら縋るように遊星に回した腕に力を篭めた。
その間にも短いスカートの中に手を差し入れて太股を撫で回す遊星。
「くぅ、ん…くすぐったい…」
皮膚の薄い場所を撫でられる感触にぞわぞわとしたものを感じながら、はお返しと言わんばかりに遊星の耳を食んだ。
「っ…!」
思わぬ反撃に遊星が息を詰める。
「ん、遊星感じちゃった?こういうのは、好き…?」
囁きながらぺろりと舌で耳を撫でる。
そして耳朶を唇で甘く噛んだ。
「んぅ……っ」
遊星の切なそうな声には更に首筋に顔を埋める。
ふわりと香る遊星の髪の匂い。
仄めかされるような感覚にくらくらしながら噛み付くように耳の下辺りをきつく吸った。
僅かな痛みに遊星は眉根を寄せる。
「うふ、つけちゃった…。あたしの印」
赤く色づいた皮膚を見ては満足そうに笑う。
「遊星は、あたしのもの…」
くすくす笑いながら悪戯に頬や唇にキスをしてくる。
可愛い行動に欲情を煽られ、膝の上に乗せた彼女を腰をきつく抱き締める。
ぎゅう、とお互いの体か密着した。
その拍子にの太股の辺りに遊星の昂ぶりが押し付けられる。
「あ、遊星ってば…すっごい…」
「…が煽るからだ」
ばつが悪そうに呟く遊星が可愛らしく、はするんと服の裾から手を差し入れた。
「じゃあさ、もう少し煽られてくれる?」
「何を、…っ!」
びくりと遊星の肩が震えた。
服の裾から差し込まれたの指先が、遊星の乳首に触れたのである。
「う、…、あ…っ」
「かっわいい…。ね、気持ちイイ?」
答えを求めてはいないようで、指先で遊星を責めながら体を屈めて遊星の鎖骨のラインを唇で辿る。
小さな赤い舌が体を這う様を見せられて、遊星は密かに体温を上げた。
の指先が円を描くように這ったかと思うときゅう、と乳首を抓みあげる。
「っ…!!」
びくんと遊星の体が跳ねる。
心なしかの太股に押し当てられた遊星自身も大きくなったような気がした。
ちろりと視線を遊星の顔に映す。
苦しげに目を細めて食いしばった歯から吐息を零す遊星。
赤くなったまなじりが色っぽい。
視線を投げられたことに気付いた遊星が、の目から逃げようとするかのように顔を背けた。
可愛らしい行動には思い切り興奮する。
「あぁ…遊星可愛い…、ね、キスしていい…?」
しかしやはり返事は待たない。
背けられた顔を自分の方へと向かせようとして服の裾から手を抜いた。
その瞬間。
「きゃっ…!?」
遊星の頬に触れるよりも早く、遊星がの手を掴み、ソファへと押し付けていた。
いきなり世界が反転し、は一瞬何が起こったのか分からない。
「もう…、十分だ…」
殊更掠れた遊星の声が降って来る。
いやらしい声に体の奥がきゅうんと疼いた。
狭いソファの上で圧し掛かってきた遊星は、そのまま体でを押さえつけてしまう。
もぞ、と服の上から胸を弄られはぴくんと背をしならせた。
「あん…、もっと可愛い姿見せて欲しかったな…」
「交代だ。次は俺に可愛いを見せてくれ」
背中を抱き上げられ、遊星の手がワンピースのファスナーを下ろしていく。
ケープはそのままにワンピースだけを肩から引き下ろされた。
縁のふわふわした部分が素肌をくすぐってこそばゆい。
ついでに下着も取り払われる。
胸をケープだけで覆い隠すようなこの状態…顧みれば普通のコスプレよりも恥ずかしい格好かもしれない。
「う、このカッコ…やだ…。ケープ外していい?」
「ダメだ」
「ええええ、ちょっと遊星ってばまにあっく…」
「…軽口を叩く余裕はあるようだな」
の言葉に僅かに苦い表情をした遊星がケープを捲り上げて胸にかぶりついた。
「んあっ…!」
直接的な刺激にの体が跳ね上がる。
唾液を含んだ遊星の舌がぬるぬるとの乳首を嘗め回す。
そして空いた方は、先程が遊星にやったように乳首を捏ねた。
「はぁっ、あ、あはぁん…っ!」
感じさせられ思わず遊星の肩に縋った。
さらりとケープの縁飾りが腕をくすぐって、それにすらぞくりとする。
指先で弄られた乳首はぷっくりと膨らみ、敏感に充血したところを抓みあげられた。
「あう、っ…!やぁ、んっ…、あっ、あっ…」
かぶりついた唇も容赦がない。
ちゅ、ちゅ、と何度も唇で膨らんだ乳首を扱く。
そしてちゅうううと強く吸い上げた後、舌先で弾かれて伝う刺激が堪らなくて。
「ゆうせ、ぇ…っ、はぁ…あぁぁっ、イイよぉ…っ」
背中をしならせて強請るようには遊星の頭を抱え込んだ。
反射的に浮いてしまう腰が遊星に擦りつけられる。
「強請っているのか…?いやらしいな、こんなに腰を振って」
「やっ、…だってぇ…、気持ち、イイんだもん…っ!」
熱のわだかまる体の奥が切なく収縮するのが分かる。
急かすように立てられたの足を、遊星は好色に撫で上げた。
そのままお尻の丸みを確かめるように手を辿らせていく。
「やん…もう、遊星の、エッチ…」
「ふ…、お互い様じゃないか」
咎めるように見上げてくるが、遊星には痛くも痒くもない。
それどころか下着の隙間から遊星の指が滑り込んでくる。
花弁を押し広げて遊星の指がの中に埋まりこんだ。
「きゃぁっ…、あ、あはぁ…っ」
「ほら、こんなにしている。だってエッチなことを期待しているだろう?」
「い、わないでぇ…あっ、やぁっ、指、いれちゃ…っ」
くぷぷ、と遊星の指先がの中に侵入してくる。
いきなり二本咥え込まされたが、先程までの愛撫に蕩けた入り口はすんなりとそれを受け入れた。
「はぁっああっ…!あっ、動かしちゃ、だめ…ぇっ、はぁぁあんっ!」
「…溢れてきているぞ」
「やだぁっ…!」
浅く出し入れされる指先がの快感を感じるポイントを掠める。
くちゅくちゅと愛液を掻き回す音が耳に入り、は顔を赤らめた。
「ん、もう…!意地悪しないでぇ…」
ぴくぴくと震えるの壁がきゅうきゅうと遊星の指を締め付けている。
強請るかのような感触に遊星は薄く笑って指を引き抜いた。
「はぁんっ…、ゆうせぇ、…っ」
今まで与えられていた快感を奪われて切なげに遊星を見上げる。
焦らすように体を離した遊星はベルトを緩めて見せた。
「…早くぅ、…遊星が欲しいの…」
甘いお強請りの声に煽られながら遊星はに改めて覆いかぶさる。
そして先程にキスを請われたことを思い出し、そっと唇を重ねた。
「んっ…!はぁ…あん…」
うっとりとキスを受け入れるの下着を手探りで引き下ろし、その足の間に体を捩じ込んだ。
腰を押し付けられて遊星自身がのぬかるんだ入り口を捉えたのを感じる。
「いくぞ…」
殊更低い遊星の声が耳をくすぐったかと思うと、下腹部に快感と圧迫感を同時に感じた。
「あァっ!ゆうせ、ぇ…っ」
ずぅんと体の奥深くを勢い良く突き上げられ、背中がしなる。
跳ねるの腰を抱えるようにして遊星は膝立ちになり、浅く腰を揺すった。
「あっ!あぁっ、あ…っ!」
見下ろされる形での緩やかな注送には顔を赤らめる。
遊星の好色な視線から逃れようと体を捩るが、浮いた腰を抱えられていては満足に抵抗も出来ない。
「やっ…、この態勢、やだっ…見ないでよぉ…!」
恥ずかしくて腕で顔を隠してみる。
そんなことをしても揺れる胸や繋がった部分は遊星から全て見えていることは分かっていた。
それでも、せめてもの抵抗に、と思っていたら。
「っ、きゃ…!?」
急に腰を下ろされて、遊星の手がの腕を掴む。
「可愛い顔を隠されるのは困るな」
ぐい、と腕を解かれてソファに押さえつけられた。
明るくなったの視界。
そこには今にもキスをしようとしているのではと思う程の距離からを覗き込む遊星がいた。
獣の視線がを射抜く。
「やだ、っ…見ないでぇ…」
思わず顔を背けようとするの唇に素早く遊星が口づける。
「んっ!…は、ふぁ…っ!」
そのままを抱き締めるように体を密着させた遊星が律動を再開した。
熱く舌を絡めとられ、蕩けるようなキスの合間に断続的な快感がの体の中に生まれる。
「んっ!…うっ、ん…っん、はぁあっ…!」
「…あぁ…っ、、凄く、イイ…っ」
唇を離した後も遊星の腰の動きは変わらない。
足の間からはぐちゅぐちゅと粘膜を出入りする音や体がぶつかる音がする。
行為の激しさを教えられているようではぞくりとした。
「う、あ…、締まる…」
遊星が小さく呟いた。
快感を感じればそれがすぐに遊星に伝わってしまうのが恥ずかしい。
しかし遊星は激しさを増しながらの感じるところを確実に攻めてくる。
「んあっ、ああっ!ゆう、せ…っ、あっあっ!!」
深く打ち込まれる度に爪先が跳ね上がり腰がしなってしまう。
きゅうんと体の奥が絶頂の予感に疼いた。
それを遊星も感じ取ったのだろう、更に奥へ到達しようと腰をぐっと押し付けてくる。
「あはぁぁ…っ!それ、ダメぇ…っ、あ、あぁ、っ!イっちゃうよぉ…っ」
「ああ、いいぞ…、一緒に…」
遊星の腕がきつくの腰を抱き締めた。
そして深くの中を突き上げる。
「あっあっ、イくっ…!はあっ、あぁぁっ!!」
がくがくとの体が跳ねて遊星に絶頂を教える。
同時に中がきゅうきゅうと遊星を締め上げた。
「っ…!」
ぶる、と遊星が体を震わせる。
深々との中に埋め込んだままに遊星も熱い欲望を解放した。
どくりと脈打ち、吐き出された精液が収まりきらずに溢れての内股を伝い落ちる。
しばらく抱き合ったまま荒い呼吸を繰り返していたが、やがて遊星が体を起こした。
「大丈夫、か…?」
「ん、だいじょぶ…」
頬は上気させたままでは困ったように微笑んだ。
「でも、遊星が離れると寒いから…もう少しぎゅうってしててくれる?」
可愛い要求を断る理由はない。
リクエストに応えながら、遊星はに熱っぽい視線を投げる。
「…愛している、」
「あたしも。遊星、愛してる…」
囁きあう愛の言葉は吐息に混じり、二人は静かな部屋で口吻けを交わした。
「あ、遊星…雪だよ」
「…寒いと思ったら…」
「ね、着替えてくるからちょっとデートしようよ」
情事後の体はブランケットと遊星が温めていたが、流石にそろそろ無謀だと感じていた。
の誘いに遊星も頷く。
「やった!実はねー遊星へのプレゼント超悩んでて、一緒に探せたらなーって思ってたんだ」
「今を貰ったじゃないか」
「もー!こういうときは遠慮しないの。物にもたっぷり愛情込めてあげるから、何か贈らせてよ、ねっ?」
微笑んで見せるはブランケットに包まったままで階段を上がっていった。
際どいラインから伸びる白い足が眩しい。
全く彼女は無防備すぎて困る。
可愛い台詞の後にそんな姿を見せていることに気付かないなんて。
程なくして身なりを整えてきた。
普段よりも少しだけ気合の入った余所行きの彼女はそれだけでくらりと仄めかされるような雰囲気を纏っている。
「おまたせー。ついでに夕飯の材料も買って帰っていい?」
「嗚呼、いや…今晩は外で食べないか。その、実は店を予約していて…」
珍しく照れたように視線を逸らす遊星。
心なしか顔も少し赤いようだ。
「うっそ…遊星ったらそんなことしてくれちゃうの?」
「…今日くらいは…恋人らしいことを、と思って…」
どうやら自分で言った『恋人らしいこと』という台詞が恥ずかしかったらしく、更に頬を赤くする。
そんな遊星を見せられては堪らない。
ふつふつと湧き上がる気持ちを抑えきれずには遊星に飛びついた。
「うわっ…!」
「きゃあ!」
予想外すぎるの行動に、遊星はを受け止めきれず、二人してフローリングにひっくり返る。
「痛ぅ…。何を…するんだ、…」
傍目に見ればに押し倒されたような格好だが、実際はそんなに良いものではない。
「あ、あはは…ごっめーん…。嬉しくってつい…」
「が怪我をしたらどうするんだ…」
「えへへ。だって、遊星が急に格好いいんだもん!惚れ直しちゃう!!」
押し倒した格好のままでは遊星の頬にキスをした。
「!」
ぺたっとした感触と共に、遊星の頬にの唇の形がプリントされる。
「あ、リップグロスのこと忘れてた。ごめん、結構付いちゃったね」
言いながらティッシュを探してきょろきょろしていたが、何かを思い付いたように遊星に向き直って悪戯っぽく笑う。
「このまま出かけちゃう?」
「…このまま、って」
彼女のキスマークを頬に付けたまま、と言うことか。
それは何と言う羞恥プレイなんだろう。
そうでなくとも首筋には先程彼女につけられた証が残っている。
服でも隠れないから、仕方なく遊星はマフラーでそれを隠していた。
仲間が帰ってきたらどう思われるのだろう。
突っ込んでくる人間はいないだろうが、それでも何かを思われるには違いない。
「堂々とあたしの物です、って言いながら歩くようなもんだね」
「…勘弁してくれ…」
「あっは、あたしも想像したらすっごい恥ずかしい」
けらけら笑いながら漸くは遊星の上から降りて、ティッシュを取りに行く。
彼女の体重や温もりが無くなるのは惜しいが、それはまた夜にでも堪能すればいいだろう。
一連の可愛い行動を見せられて我慢するなど不可能だ。
まずはデートと食事でを満足させてから…。
と言う遊星の企みも知らず、は無防備に近づいてくる。
「はい、拭いてあげるね」
撫でるように頬を擦られながら遊星はくすぐったそうに目を細める。
「どこ行こっか」
「そうだな…」
「あの、ね…実はいっこだけ行きたいところが…」
急にちょっとはにかんだようにがおずおずと言う。
実は遊星にも一つ行きたい場所があった。
「俺も一つ行きたいところがあるんだが」
「!」
は一瞬驚いたように目を見開く。
しかしすぐに笑顔になって。
「遊星も?やっだ、乙女。遊星って結構ろまんちすと」
「…悪かったな…」
「や、同じこと考えてたと思ったら嬉しくて!じゃあ遅くなる前に早く行こ!」
差し出されたの手を遊星は優しく握った。
温かくて小さなそれがぎゅう、と握り返してくる。
ドアを開けたら既に雪が薄っすらと積もり始めていた。
「はぁあ…何か思い出すねー。あの時はもう春だったし」
「雪じゃなくて桜が降っていたな」
「そうそう…!あの日はすっごく天気良くて………」
あの日の思い出を口にする二人を送り出してドアが静かに閉じられた。
終
Happy Merry Chritamas★
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はい、遊星でした。
いつもと同じような内容で恐縮ですが、お楽しみいただけていたら嬉しいです。
このサイトが此処へ引っ越してきたのは確か6月ですが、このサイトが始まったのは丁度春のころでした。
最初は殆ど外へ向けての公開らしい公開もしていなくて(検索とかも登録してなかった)自分の書きたいものを吐き出すだけの場所でした。
それがこんなに色んな方に来ていただけるようになったんだなぁと思うと凄く感慨深いです。
ここまで読んで下さってありがとうございます。