モニター越しで繋がる歪曲


おはよう、




俺は朝起きたらまずモニターの電源を入れる。
暗いモニターが光を取り戻すと、そこには一人の女の子が映し出された。
彼女の名前をという。
半年前、俺は彼女の依頼を受けて家電の修理に行った。
その時はそれで終わったが、街中で何度か見掛ける内に俺は彼女の姿を探すようになったことに気付いた。
多分、最初にに会った時から既に彼女のことを好きになっていたんだろう。
親切な客だった、という認識はベクトルを大きく逸れてしまい今に至る。
いけないとは思いながらも俺はを追い掛け始めた。
ただ一度きり、それも仕事で会った俺のことなど覚えてはいないだろう。
だから、声を掛けることも出来ずにこうやって彼女を監視している。
モニターの映像は店舗にある防犯カメラの映像を想像してもらえば分かりやすいと思う。
映し出された部屋の中ではテレビを観ているようだ。
俺のモニターにはテレビは映っていないが、の視線の先に置いてあったことを知っている。
と、いうことは今日は仕事は休みなのか。
休みの日に俺よりも先に彼女が起きているのは珍しい。
寝顔を見るのも嫌いじゃないが、活動しているを見る方が好きだった。
とはいえ、今は彼女がじっとテレビを観ているから活動しているという表現は半分くらい当てはまらない気もする。
そのまましばらく観察を続けていると、が態勢を変えた。
「?」
最初、ベッドの上に横になったから寝直すのかと思った。
それなら録画もしているし、後で寝顔を見せてもらおうかと一度モニターを消そうとさえ思った。
たが、リモコンを向けた俺は次のの行動に息を飲む。
「っ!」
もそりとは自身の寝間着の中に手を差し入れた。
スウェットパンツの中に。
更に上にも捲り上げた。
カメラの位置的にどちらかと言うと、は俺に背中を向けている態勢だったからどのように胸元を弄っているのかは分からない。
それでも半分程晒された白い背中を丸めて彼女は自慰をしている!
「…っ」
俺の目の前で行われるそれを見るのは初めてだった。
寧ろから自慰の可能性など考えたこともない。
頭の中で犯す彼女はいつだって何も知らない清楚な顔で俺の下品な要求を困ったように聞き入れて、震えながら俺を受け入れていたのに。
いや、新たなの面を見れたことはとても嬉しい。
モニターの中では、自分の指に感じては時折背中をしならせるの姿が映し出されていた。
思わず食い入るようにモニターを見つめる。
嗚呼、声が聞こえないのが残念でならない。
いやらしい姿だけではなく、浅い息遣いや淡い声を聞きたくて堪らなかった。
「…、キミはこんなことをする子だったのか…」
ぽつりと零した俺の声に反応したかのように、は背中を反らしながら仰向けの態勢になった。
「!」
寝間着を捲り上げたままの白い胸が片方だけ見えた。
自慰を見るのも始めてなら、柔らかく揺れたそれを見るのも始めてで。
「…、…っ」
起きてからしばらく経ち、寝起きの名残もないはずの下半身に熱が流入される。
思わずそれを取り出して握り込んだ。
「っ、はァ……っ」
今まで彼女の代わりにするために別の女が全裸を晒している画像だって見たことはあるし、モニター越しに着替える彼女をオカズにしたことは何度もある。
…っ!」
だが、こんなのは初めてだ。
誘うようにいやらしく揺れる胸を見つめながら、それを掴む瞬間を想像する。
指が埋まりこんで卑猥な状態になるに違いない。
俺にそんなことをされて恥ずかしそうに目を伏せる…。
「っ、は…、あぁ…」
手の中で我慢汁が擦れてにちゅにちゅと粘質な音がする。
モニターの中ではがその身をベッドの上で波打たせていた。
しどけなく開かれた足が生々しい。
、…っ、!」
彼女の痴態にすぐに射精しそうなのを我慢していると、がびくっと背中を跳ねさせた。
一瞬硬直したように動作が止まったがすぐにがくがくと全身を震わせて荒い呼吸を繰り返している。
「イ、った…のか?、キミは今イったのか…!」
嗚呼、だめだ我慢出来ない。
女の快感を得た彼女は本当にいやらしくて可愛かった。
そんなの体内で思い切り射精する想像をしながら俺もイった。
手の中で脈打つ自身が断続的に生温い精液を吐き出す。
射精の快感にぼうっと霞む視線をモニターに向けると、彼女はぐったりとベッドの上に沈んでいた。
「……キミの、声が聞きたい…」
イった後の、冷静さを取り戻してくる頭がじわじわと虚しさを訴え始めて、俺はモニターに向かって思わず呟く。
どんな声でもいいんだ。
性に濡れていなくとも、ただ一言俺の名前を呼んでくれるだけでも。



だが、それは多分叶わないから。



あの後モニターを確認していたら、は出掛ける準備を始めた。
だから早めに起きていたのか、と納得する。
まさか自慰を見せてくれるとは思わなかったけれど。
手早く支度をして出掛けていく彼女を見て、俺も慌てて家を出た。
一階に降りた時、クロウに朝食はどうすると聞かれたが適当に断った。
それどころじゃない。
急がないと彼女が帰ってきてしまう。
きちんと化粧をしていたから、ちょっとそこまでという風でもなかったが、急ぐに越したことはない。
の部屋の鍵を開けるのも慣れたものだ。
こんなことをしておいて何だが、もうちょっとはこういうところに危機感を持った方が良いと思う。
あんなに可愛くて俺以外の男に何かされたらどうするんだ。
「…多分、ここだな」
彼女の部屋の間取りはさして広くない。
一人暮らしの部屋なのだから当たり前か。
迷わず俺は彼女の部屋の洗面所に入り込む。
モニターで見ていたらは自慰の後、着替えたようで下着の色が全然違うものになっていた。
だから恐らく。
「……あった」
洗面所の端にある洗濯機。
その中のの洋服やタオルの類を引っ張り出した俺が見つけたもの。
それは彼女が自慰の時に身に着けていた下着。
実は俺が彼女の私物に手を出すのは初めてだ。
今までも手を出したい衝動に駆られたことは何度だってあるが(特に洗面台に掛かっているタオルは仄かな甘い彼女の香りがして何度も持ち帰ろうかと思った)抑え込んで来たんだ。
つまらないことで足がついても困るから、が過ごしている空間を共有しているのだという事実で我慢してきたんだが。
「…っ、」
微かに湿った感触がする。
の残滓の猛烈に興奮した俺は、その小さな布に顔を近づけた。
彼女の匂いが更に俺を刺激する。
「はぁっ…、っ」
これが彼女の香りなんだと思うと興奮しすぎて脳内が沸騰しそうだった。
さっき抜いたはずなのに、そんなことなど意に介さないように下半身が膨張する。
…」
堪らなくなって愛液の染みた部分を口の中に押し込んだ。
じわりと広がる味。
を舐めるとこんな味がするのか。
「ふ、…っ」
彼女の下着を咥えたままで、俺はベルトを緩める。
いつ帰ってくるかも分からないこんなところで…と思うと余計に興奮した。
万一彼女にこんな姿を見られたら社会的地位や人間としての信用を全て失うに決まっているのに、下卑た欲望を彼女に見せつけてやれるかもしれない。
露悪の快感を想像する。
彼女は嫌悪に満ちた反応をするだろう。
「はぁっ…はぁっ…」
そうなったら俺はきっとその場に彼女を押し付けて、無理矢理にでも想いを遂げてしまうに違いない。
こんなに愛しているんだと訴えながら。
嗚呼…だけど優しい彼女のことだ…もしかしたら受け入れてくれるかもしれない。
、っ…はぁっ、あぁ…っ」
興奮に妄想が逸脱していくが、俺はそんなこと気にも留めない。
自分の唾液の染みが広がったの下着をじゅるぅっと吸い上げた。
瞬間、の愛液をすすり上げた気分にすり替わる。
はきっといやらしく腰をくねらせながら淡い喘ぎ声をあげるに違いない。
今朝モニター越しで見た、背中をしならせる動作がフラッシュバックした。
ベッドの上でのたうつ彼女にたっぷりと快感を与える…。
「う、っ、…く」
自身を扱く手に力が篭る。
爪先、内股、臍の窪み、滑らかな腹に揺れる胸…全部味わってみたい。
甘い声を上げる柔らかな体を折れるほどに抱き締めてみたい。
そして…。
もう一度俺は彼女の愛液をすすり上げる。
っ、もう…っ」
唾液でぐしょぐしょになった彼女の下着を、俺は先端に押し付けた。
「はぁっ…、出る…出る、イく…っ!」
じゅわりと湿った熱を孕んだ感触。
の下着に2度目とは思えない程の量を射精した。
「――、っ…はぁあ…っ」
射精の快感にぞくぞくする。
特に彼女の所有物を汚す快感は、普段は絶対に味わえないものだった。
ややの後、気怠い感覚が襲ってくるがこんなところでぼんやりしているわけにもいかない。
俺は洗濯物をもう一度漁った。
一つくらいならきっとばれない。
どうしても欲しくなる程に彼女の味は俺の脳裏を焼き焦がした。
俺がマーキングしてしまったものは返しておくことにした。
気付かれることはまずないだろう。
洗濯されてしまうだろうが、これをいつか彼女が身に着ける瞬間をモニター越しに確認するのが楽しみだ。






罪悪感が無いのかと問われれば多少の罪悪感はある。
我慢出来なくなって彼女の持ち物を持ち出したのは初めてだが、これは窃盗だと理解もしている。
なのに、もしかしたらがその辺を歩いているのでは…と姿を探している俺は大概神経がおかしいんだろう。
とはいえそんなに簡単に見つかるはずも無い。
当然だ。
俺はのことを何も知らない。
生活風景を知っていたところで彼女の行動範囲が分かるはずもない。
「遊星、お前出かけていたのか」
声が飛んできて俺ははたりと気付いた。
いつの間にか広場まで帰ってきていたようだ。
カフェから声を掛けてきたのはジャックだった。
「…ジャック」
「歩いて何処かへ行くなど珍しいことだな」
「…」
確かにそうだ。
の家が近いことと、Dホイールだと目立つかと思って置いてきたが、これからは何度かに一度はDホイールで出掛けた方が良いかもしれない。
「買い物の割には手ぶらようだが…」
「…いや、欲しいと思ったものが無かったんだ…」
嘘だ。
「そうか」
ジャックはそれだけ言うと俺に興味を失ったようだ。
カップに口をつけるジャックを尻目にガレージに戻ろうと視線を外した時。
「…!」
を見つけた。
一瞬名前を呼びそうになり慌てて飲み込む。
奥の席で本を読んでいた。
まさか、こんな近くでと出会えるなんて思いもしなかった。
「どうした…遊星」
思わず立ち尽くす俺を変に思ったんだろう、ジャックは声を掛けてきた。
黙っていてくれ、と思っても言える筈が無い。
「…なんでもない…」
ああ、俺が一人だったら彼女が帰るまでその姿を観察できたのに。
いや、それでジャックが声を掛けなかったら俺は此処でに会うことは出来なかったか…。
名残惜しく俺がその場を離れようとすると『パン!』と彼女が突然勢い良く本を閉じた。
なかなか大きい音だったから俺もジャックも一瞬そちらを見た。
「…乱暴だな」
「…」
何となくジャックが彼女の挙動を見ている風だったから、それに合わせる形で俺もを見た。
立ち上がった彼女は会計を済ませ俺の方へ歩いてくる。
…何故だ、嘘だろう。
こんな風にが俺の方へ向かってくるなんて。
見惚れるようにぼうっとそれを見ていたらが俺の目の前で足を止めた。
もう心臓の音が彼女に聞こえるのではないかと思うくらいドキドキしている。
どうして俺の目の前で。
それとも俺のことがバレたのか。
いやそんなはずは。
一瞬の内に俺の脳裏を過ぎる様々な考え。
しかし先に彼女はその愛らしい視線を申し訳無さそうに俺に合わせて小さな唇を開いた。
「あの、すみません…。通してもらって良いですか?」
ここでようやく俺は道を塞いでいた事に思い当たる。
「…ああ、済まない」
「いえ…」
控え目に俺に礼をして彼女は通り過ぎる。
嗚呼これは夢じゃないのか。
と仕事ではないところで言葉を交わしてしまった。
その事実だけで俺はもう声も出せないほどに……。





ただいま、遊星君。

ねぇ、なんで今日あたしが外出してたか知ってる?
キミのためなんだよ!
ごめんね、キミの秘密をあたしは知ってる。
あたしのことずっと見ているでしょう?
修理のお仕事お願いした後だったかな…一度街中ですれ違った後、キミのことよく見かけるようになった。
初めはね、ちょっとだけ怖かったの。
でもキミは一定以上近付いてこないし、何となくねあたしもキミが好きになってきたことに気付いたんだ。
多分、初めて会った時から気になっていたんだね。
遊星君、勝手にあたしの家に入ったでしょ?
実はキミ、一回だけあたしに見られてるんだよ。
物色されたようなあとは全然無かったから何をしたのか最初は良く分からなかったんだけど………。





あたしは部屋に帰ってすぐに洗面所に入った。
そして真っ先に洗濯機を開ける。
洗う予定の服とかを引っ張り出してチェックしてみた。
「…ああ、やっぱり」
パンツが一つ無い。
って言っても予想外に今朝穿いてオナニーしたやつは残ってて、異様に濡れてしまっていた。
これに出して置いていってくれたわけね。
「…楽しんでもらえたみたい」
でも、頻繁になると困っちゃうカナ?
遊星君が今日持って帰ったやつ、結構高かったんだけどなー。
いっぱいオモチャにした後で返しに来てくれたら嬉しいんだけど…そうしてくれるかしら。
まあ、それはそれで様子を見ることにして…。
「今からあたしもお楽しみ、と」
上手く撮れたかしら。
遊星君が部屋に入った理由はあたしを盗撮するためだって気付いたのは彼を一度見かけた少し後だった。
と、いうかその時にカメラを仕掛けられたのかどうかははっきりと分からない。
でもあたしの部屋に来たのは、あたしがいないことを知ってたからだって気付いたの。
あからさまにカメラを探せば遊星君にバレちゃうけど、この部屋そもそも間取りが3部屋しかないから、多分生活スペースだろうなと思ってた。
今朝のオナニーショーも楽しんでくれたと思うんだけど(だからここであたしの下着使って自慰をしたのよね?)、あたしばっかり見せるのはフェアじゃないでしょ?
だから、ここで一人遊びしてる遊星君撮らせてもらっちゃった!
結構広範囲取れるように何度もチェックしたから大丈夫だとは思うんだけど…。
まあ失敗したら失敗したで、またチャンスくれるよね?
だってあたし、今からこの映像オカズにしてまたオナニー見せてあげるつもりなんだもん。
ふふ、キミのおうちの前の喫茶店で待ってたのも理由があるのよ。
遊星君が確実に楽しめるように、そしてキミが帰って来たことが確実に分かるように。
あたしの方をじっと見たのは意外だったわ。
てっきりチラ見くらいで終わると思ってたから。
モニター越しのあたしにもあんな風に熱い視線を送ってくれているのかしら。
だったら嬉しい!
今日は思わず声まで掛けちゃったけど、あれは不可抗力よね?
さあ、この後もたくさん楽しんでね………。







===================

お互い相手がいないので殆ど独白状態という。