彼女は別腹ですか?


ドラゴンボーンの適合者が現れたのだそうだ。
要の出現に、にわかに騒がしくなる周囲において彼らは悠然とそれを眺めていた。
兄弟の寝返りは周知の事実である。
見た目はネポスの民と遜色ない。
生命維持の方法も全く変わらない。
だけど地球人とネポス人は敵対生物である。
『見限った』は『裏切った』とどれだけの相違があるのだろう。
兄弟が『見限った』と言えど、見るものが見れば『裏切った』と変わらない。
それが彼らを貶める事もあれば、優位に働く事もあった。
それに周囲の評価などどうでもいいのだ。
ずっと兄弟同士で助け合っていたのだし、命が繋がっていることが重要だ。
住む場所がありそれなりの自由もあり…今の生活に殆ど文句はない。


しかし。
見限ったはずの地に唯一の気がかりがこの二人にはあった。






借りの一つを返した後で、帰路につく前にとグレゴリーがヴィクトールに鍵を見せた。
それはなんの変哲もない鍵である。
だけど、それを見たヴィクトールは無言で頷いた。
「飯だけは地球の方が抜群に美味いからなぁ」
滅ぼす前にネポスにも地球の食文化だけ拾ってはどうかと思う。
食道楽も快楽の内だ。
だが、上司の更に上にいるクルードがそれを良しとするとは兄弟には思えなかった。
「…兄さんは先に行ってくれ。用を思い出した」
「あン?何だよ、手伝ってやるぞ」
「いい。…つまらないことだ。すぐ戻る」
口数の少ない弟はそれだけ言うと踵を返した。
影響が出そうなことについては隠し事をしない間柄だから、問題が起これば言ってくるだろう。
そしてわざわざ言うまでもない事を根掘り葉掘りは互いに趣味ではない。
もうあの頃のような子供ではないのだし。
足を止めたグレゴリーは遠ざかるヴィクトールの背中を暫く見送ると、目的地に向かって歩き出した。








あの日確かに兄弟はボーンに適合した。
しかし、当時の東尾が助けたのはこの二人だけではなかったのである。
息を切らせて東尾の部屋に駆け込んできた人物。
それが最後のもう一人。
「ひがっ、東尾、所長…っ」
ドアのところで膝に手をつき名前を呼ぶ女性に東尾は視線を上げずに「残念だったねぇ」と気の抜けた声をかけた。
「もう帰っちゃったよ。彼らは本当にせわしないねぇ」
「ええええっ!連絡受けてダッシュで来たのにぃ……」
ずるずるとしゃがみ込み深い溜め息を吐く。
「まあまあ折角来たんだし、彼らの置き土産の解析手伝わない?」
「所長、あたし今日休みなんだけど」
「知ってるよ。でも彼らの置いていった物に興味あるんじゃないの?」
「……」
ありますとも。
「…代休…」
「諦めてねぇ」
「…だよネー」
は深く溜め息を吐くと後ろ手にドアを閉めた。
誰かに見られることも多少危惧していたし、また、帰る気も失せはじめていたので。


「…はぁあ…結局休み殆ど返上しちゃったなぁ」
それでも定時より少し早く切り上げてきた。
もしかしたら彼らがこっそりメッセージなんかを残してくれはいないかと、入念に調べてみたが東尾の要望のものしかないようだったので。
「ほんっと薄情なんだから」
溜め息交じりに自分の住んでいるアパートを見上げた。
「…あれ。やだ、ちょっと」
自分の部屋のカーテンから薄明りが漏れている。
どうやら出掛ける前に電気を切るのを忘れてしまったらしい。
慌てては駈け出した。
研究員という職に就いてはいるが、収入は人並みである。
こんなところで無駄遣いなんて絶対にごめんだった。
アパート二階の突き当りの部屋、鍵を回した瞬間、違和感に気付く。
「…鍵、開いてる…」
回す方向がいつもと違う。
恐る恐るそうっと玄関ドアを開けてみる。
やはりリビングからは光が漏れているようだが、玄関のところに乱雑に脱がれた靴を見留めるやいなやは息を飲む。
まさか。
ここに。
そう思った瞬間、リビングのドアが勝手に開いた。
いや、勿論そんな訳はない。
顔を上げるの目の前に、顔を出したのは。
「よう」
「―ッッ、グレゴリー!!」
兄の方だった。
靴を脱ぐのももどかしい。
鍵も掛けずに自分の部屋に駆け込んだ。
「もう帰ったかと思ってた!」
「そーかそーか。まあ上がれ」
「何言ってンのここあたしの家だし!!」
久しぶりの軽口もすごく嬉しい。
兄弟がボーンに適合してしまった後、だけは地球に残った。残された。
勿論本意ではない。
本当は二人と一緒に行きたかった。
今でもその気持ちは変わらない。
兄弟も本当は一緒に連れていくつもりだった。
彼らが赴くところは何処でも戦場だが、地球から場所を移すだけだから同じだと思っていた。
しかし東尾からの貸しを、は自らの体で返すことにしたのである。
すなわち、彼を手伝う名目で。
東尾という男は獅子身中の虫を3匹も飼っていると言うわけだ。
この選択は悪いことばかりではなかった。
ある程度のスパイ活動を、東尾の目が許している限りは行うことが出来る。
グレゴリーやヴィクトールに有利な話を、ある程度掴むことが出来るのである。
本当に何を考えているのか良く分からない男だ。
「あっ、ヴィクトール!」
グレゴリーがいるのなら、当然一緒にいることは分かっていたけれど、やはり久しぶりに顔を見るのは嬉しい。
本人はに無言で視線だけを寄越すが普段の粗暴な雰囲気はなりを潜めている。
「やだー、来るなら来るって言ってくれれば買い物して帰ったのに」
「気にすんな。それに、十分美味かったしな」
背後のグレゴリーの声にヴィクトールも頷く。
「え…?美味かった、って…」
何となく嫌な予感がしてはキッチンの食器棚の一番下を開けた。
本来であれば鍋などを入れるのであろうが、一番広いその空間をは収納庫として使用している。
その収納庫には一人暮らしで横着をしたくなった時用の食べ物が入っているはずだった。
つまり、調理の手間を殆ど要しないレトルト品やインスタント製品が入っていたのだが。
「ちょっ…、嘘……」
がらんと空間の広がる収納庫。
辛うじて残っているのはスナック菓子やチョコレートくらいか。
「やァっぱ地球の飯は美味ェな。殆ど食っちまった」
「何してくれてるのよっ…!あたしのお昼ご飯用のも買ってあったのに!」
安い時にまとめ買いをして、それを運ぶのが結構骨なのに。
「ケチケチすんな。菓子類は残してやっただろーが」
「うっうっ…確かにこのチョコレートは新製品で、これ食べつくされてたら追い出してたかもしれないけど…」
それにしたって結構な量があったはず…。
しゃがみ込んで項垂れるをグレゴリーはやんわりと抱き上げた。
それを見たヴィクトールも席を立つ。
「何よぉ…優しい事してご機嫌取ろうとしても無駄なんだからね」
食べ物の恨みは大きいのである。
ふい、と横を向くにグレゴリーは普段から想像も出来ないほどの優しげな視線を向けた。
珍しく柔和な雰囲気に少しだけ心臓が早くなる。
バレるのは恥ずかしいから、必死で隠した。
「俺ら、帰還命令出てンだわ」
「だから?」
「良いトコ明日の昼までしか自由がねぇ」
抱き上げたままリビングを出るグレゴリーと、その後ろに続くヴィクトール。
のこの部屋は、リビングの他にはバスルームと寝室しかない。
迷わず寝室に入っていくグレゴリーを恐る恐る見上げる。
「あの、待って、あたしまだ帰ってきたばっかりで」
「聞いてなかったか?時間がねぇって言ってンだ」
ぽーんとベッドの上に投げ出されの体がベッドに沈んだ。
纏わりつく布団に一瞬自由を奪われている間に、素早くヴィクトールがベッドに上がってくる。
「ちょっ、待って待って!急展開過ぎてあたし何が何だか!」
「いいから」
溜め息を吐くように小さく呟いたヴィクトールの唇がの言葉を封じ込める。
を運んできたグレゴリーはそれをニヤニヤと見下ろしていた。



「んン…」
苦しげなの呻き声が零れようと二人は全く意に介さないようだった。
グレゴリーの膝の上に乗せられて、後ろを振り向くような体勢で彼に唇を貪られる。
やや無理な体勢…加えてヴィクトールがのブラウスを左右に開いている最中だった。
「腹がいっぱいになったらやるこたァ一つだろ?」
ヴィクトールに押し倒されるにグレゴリーがかけた言葉である。
その言葉全てを否定する気は無い。
だって二人に会うのは随分と久しぶりだから。
だけど、それならがお腹いっぱいになるのを待ってくれたって…。
と、いうの希望を二人は聞き入れる気はなさそうだった。
「嗚呼、可愛いぜ。食い物以上に女がいねえからなァ。スゲー溜まってンだ」
耳元の興奮した声に不覚にも下腹がずぅんと重くなる。
グレゴリーは普段こういう時でさえ余裕を崩さないから、掠れた声を聞かされるとそれだけで体内がじんわりと熱を持ってしまう気がした。
「あ、…っ」
無遠慮に下着を押し上げるヴィクトールの手。
露になる白い胸に、躊躇いもせずかぶりつく。
「くぅんっ!」
触られる前から期待に膨らんだ乳首を舐める温かな舌。
にゅるにゅると蠢くそれは器用な動きで敏感な性感帯を苛んだ。
「あぁん…、あ、あ、…」
ヴィクトールが舐めていない方は、脇の下から差し込まれたグレゴリーの手が包み込むようにして揉みしだく。
二人の意思によって与えられる愛撫には連動性も規則性も無い。
ちゅうちゅう吸われたと思ったらやんわりと摘み上げられたり、優しく唇で食まれたと思ったら爪の先でやや乱暴に引っ掛かれたり…。
「ああ、あ、っ…あっ、も、それ…っ」
ばらばらに与えられる刺激に翻弄されながらは甘い快感を味わった。
暫くすると更に手が増えた。
の下腹を撫でさする手…この向きであればグレゴリーのものだろうと想像する。
「あぁ、っ、そんなとこ、くすぐった、…」
膝の上で身じろぎする白い肢体。
くすぐったさに跳ねる足首を掴む手があった。
それはヴィクトールの手である。
「…
掴んだ足を肩に掛け、膝の内側に唇を触れさせる。
グレゴリーとは対照的に、感情をなかなか表さないヴィクトールの愛おしげな仕草にどきどきした。
「イイか?んン?」
浅い呼吸と共に吹き込まれる声はグレゴリーのものだが、の視線はヴィクトールを捉えている。
彼の唇が内股をやんわり辿った。
時々その動きが止まり、皮膚の柔らかな場所に痕が残される。
「ン、っ…!く、くすぐったいってば…っ」
体を波打たせて非難するに一瞬だけ視線を向けたヴィクトールは、無言のままに手を伸ばした。
「ッ、ヴィク、トールっ…」
柔らかな花弁を押し開く指先。
既に期待にぬかるんでいる。
指先に纏わりつく愛液が糸を引いているのを見留め、ヴィクトールはの足の間に顔を近付けた。
「やっ!嘘、やだ…っ」
何をされるか瞬時に理解しても、片足を抱えられた状態では満足な抵抗も出来ない。
そのまま、小さな水音が部屋に響いた。
「んんんっ…!」
ぶるっと体を震わせて、は仰け反る体をグレゴリーに預ける。
敏感な反応に後ろのグレゴリーは気を良くしたようだった。
「…俺らいない間どうしてたんだ?んン?」
「どう、って…っ、あ、あぁぁ…ヴィクトール、っ…ナカは…っ」
ちゅるちゅると敏感な突起を舐めながら、つぷりと指先を埋め込まれたは更に体を戦慄かせた。
「俺ら思い出してオナってたか?それとも溜め込んでたのか?ほら、言えよ」
ねっとりと耳の輪郭をなぞる舌先。
言葉で嬲られはいやいやと首を横に振った。
「言えねぇことシて遊んでたか?」
「違…っ、あっ…くぅう…っ、ヴィク、トールぅ…っ」
「すごい…。どろどろだ」
自ら飲み込むかのようにの体内はヴィクトールの指先を易々と飲み込んでいく。
内壁が柔く蠢きながらきゅうきゅうと締め付けた。
此処に自分のものを埋め込んだならどんなに気持ちイイだろうと想像すると堪らない気分になり、ヴィクトールはゆっくりと指先を抜き差しする。
「あっ、あー…っ、ぐちゅぐちゅしないで…あっあっ…」
焦れったいくらいの動きにはぐっと背中をしならせた。
突き出され、強調される乳房をグレゴリーが後ろから鷲掴む。
「あぁっ!んっ、んっ…二人して、そんな…、だめぇ…っ、はぁっ…良いィ…」
腕の中で身悶えするは荒い呼吸で腰をくねらせた。
指先に絡みつく柔らかな内壁の感覚が、ひくひく収縮していることを伝えてくる。
淡い絶頂感を感じていることが如実に伝わる。
それでなくても蕩けたの視線が掠める度に、ヴィクトールはムラムラと込み上げてくる興奮を抑えるのが難しくなっていた。
「…もう、…」
僅かに甘えた声でヴィクトールがの足の間から顔を上げた。
同時に指を引き抜く。
先にヴィクトールの甘えた声音の意図を汲んだのはグレゴリーの方である。
「…ヴィクトールが入れてェってよ。、どうだ?」
グレゴリーの声が遠くに聞こえるようだった。
ぼうっと熱を持つ脳内に反響する声が鈍い。
掻き回された体内はじぃんと熱く熱を帯びている。
指を抜かれた後を埋めて欲しくて堪らない。
「ん、欲しい…。ヴィクトール、来てぇ…。あたしのナカ、いっぱいにして…」
「じゃあ、こっち向け」
体をひっくり返されて、はグレゴリーと向かい合わせにされた。
ヴィクトールにはお尻をむける格好である。
「…はぁ、……」
そのお尻をぎゅっと掴む手があり、続いて熱を帯びた何かがお尻の谷間を行き来している感覚が伝わってきた。
勿論その相手が誰で何をしているかは見なくても分かる。
……」
熱っぽく名前を呼ぶ声に頭の中が熱くなった。
今ヴィクトールがのお尻に一心不乱に勃起した自身を擦りつけているのだと思うと愛液がじゅわりと溢れてくる気分にさえなる。
だけど、こうやって焦らされるのは辛い。
「やァん…っ、ヴィクトール…、焦らさないでぇ…。早く、欲しい…っ、ヴィクトールのっ…!思い切り、犯してぇえ…っ!」
のはしたない懇願にヴィクトールは息を飲み、グレゴリーはにやりと笑った。
「…っ、ああ…。分か、った…!」
ヴィクトールが了承するなり、待ちに待った体内を犯す感覚が背筋を駆け抜けは仰け反る。
「んうぅぅっ、すごいぃ…っ、あっ、あぁぁぁ……」
一気に体内を突き上げる性急さ。
打ち込まれた楔の先端がずぅんと重く突き刺さる快感に、は眉を下げて顔を顰めた。
「お、エロい顔しやがる」
「あぁっ…!」
の下敷きにされているグレゴリーが彼女の胸を柔く掴んだ。
きゅむ、と乳首を軽く刺激する。
「はぁ…っ、感じちゃう、あは、グレゴリー…っ、はァん…っ」
の吐息が荒くなり、グレゴリーの首筋にかかる。
小さな体を戦慄かせて、弟に後ろから犯されている彼女は何て可愛らしいんだと思うが口にはしない。
代わりに抓み上げた乳首をきゅううううっと引っ張った。
「あぁぁんっ!!」
瞬間、ぞくぞくと冷たい快感が背筋を駆け抜けてはまた体を仰け反らせた。
「う…」
普段は無表情なヴィクトールが眉根を寄せる。
の体内は軽い刺激だけでいやらしく蠢くのに、グレゴリーに与えられた刺激によって今にも絶頂しそうな程にびくびく震えている。
ヴィクトールの中で淡い嫉妬心が芽生えて疼いた。
「はぁっああっ…!ヴィクトール…、っ…激し…っ、んあぁっ!」
絡みつく内壁をもっと味わおうときつく腰を掴んで思い切り突き立てる。
もっと深く欲しい。
隅々まで味わいたい。
欲情が本能を煽り立てるままにヴィクトールはを貪った。
「…、っ…」
余裕のない掠れた声のトーン。
じゅぷじゅぷと音を立ててスピードを上げていくヴィクトールがを追い詰めていく。
「はぁっ…だめ、イっちゃ、うぅ…っ!」
グレゴリーの胸の上での体がぶるりと震えた。
「あぁぁっ、ヴィクトール、ヴィク、トールっ…!イくイく、イくっ…!!!」
きゅんきゅんとの内壁が握り込むように締まる。
蕩けそうだ。ぞくぞくする。
絶頂の瞬間の搾り取られるかのような感覚に、ヴィクトールも顔を顰めた。
「く、う…出、る…っ」
ヴィクトールの体も僅かに仰け反る。
深々と体内を突き上げられては体をがくがくと痙攣させた。
「――っ、…!!…は、あぁぁ…っ」
腰の辺りがじわりと熱く収縮を繰り返す体内が一瞬の緊張の後に弛緩する。
体内で脈打つ感覚だけが妙にはっきりと感ぜられるが、それ以外はなんだか曖昧な気分だった。
「はーっ…はーっ……」
どちらのものか分からない息遣いが部屋に響いていたが、やがてグレゴリーの声がそこに割り込んでくる。
「じゃ、次は俺な」
ぐったりとグレゴリーの胸の上で余韻に痺れている体をヴィクトールが抱き起こした。
今度はヴィクトールの体を下敷きにする形だ。
どろりと溢れてくる粘液をさほど気にもしない様子で、グレゴリーはの腰を掴む。
「あはぁ…っ」
ヴィクトールに蕩かされたばかりの体内にゆるゆると侵入してくるグレゴリーの感覚。
震える手でヴィクトールに縋りながらそれを受け入れた。
「んっんっ…、あぁ…こっちも、すごいよォ…」
じぃんと余韻が膨らむ感じがする。
「イった直後だからびくびくしてンのな。あー堪んねぇえ…」
心底気持ち良さそうなグレゴリーの声にも堪らない気分になる。
下敷きにしたヴィクトールの胸板に自らの胸をぎゅうぎゅう押し付けて腰を揺らした。
「はっ、お前自分から腰振ってんじゃねぇか」
緩慢な動作のグレゴリーが焦れったくて自然の腰が動いてしまう。
の痴態を見せ付けられて、ヴィクトールはの顎を軽く掴むと唇を押し付けた。
「はふ、っ…ン、は…っ、ヴィク、…ん、ン…っ」
「兄さんだけじゃなく、俺も味わえ」
「んっ、んっ…は、っ、あっあっ…!」
ヴィクトールの舌先がの口内を余すところなく舐め回す。
「んふぅ…っ」
くちゅりと唾液が絡み、溢れそうなそれを分け合って垂下した。
息継ぎの合間に糸を引いて離れてはまた角度を変えて深く奪われて。
夢中で舌を絡め合っていたら、不意に体内を強くノックされた。
「ひィ…っ!!」
「知ってんだぞ。スキだろ、これ」
ヴィクトールほど激しくはないのに、突き立てられる瞬間肌が粟立つくらいの快感が走る。
「あ、は…っ、んあぁっ、それっ、だめっ…!!」
ぬかるむ花弁を掻き分けて、グレゴリーの指先が器用にの敏感な部分を探り当てた。
先程ヴィクトールの舌で刺激を与えられていたそこは、感度を増して膨らんでいる。
腰をこれ以上ない程にぐいぐいと押し付けながらきゅっと抓む。
「ふあぁぁっ…!!」
絶頂後の蕩けた体は僅かな刺激だけでも飛び上がる程に気持ち良かった。
跳ねたの体を、ヴィクトールが抱き締める。
「あ、あぁ…っヴィクトール…っ」
そして、抱き締めるだけに飽き足らず、の震える胸にかぶりついた。
喉を鳴らしてまたしても体を跳ねさせる
可愛らしくて堪らないからぷっくりと膨らんで主張する乳首を丹念に舐める。
「くうぅんっ!やらァ…っ、そこっ…感じすぎるう…っ」
「おォ、すげェ締め付け…っ、イイぜ、そのまま、しっかり締めてろ…っ」
息を荒くしたグレゴリーが速度を上げる。
収縮を繰り返す体内を抉りながら打ち付けられると、指で探られた時と同じような淡い絶頂の波がを襲った。
「あっ!やっ!あぁっ!」
出し入れの際にはぷちゅぷちゅと押し出されたヴィクトールの精液が溢れての内股を伝い落ちていく。
「ぬるぬるなのに、締まってて…エロいぜ…。はぁ、あー…最高だ…」
「何、言っ…、んう!ひゃあぁっ…!」
かりっとグレゴリーの指先がの突起を引っ掻いた。
乳首も相変わらずヴィクトールが口に含んでいる。
下腹がずぅんと重く、痺れるような感覚が爪先から這い上がってきた。
「またイく!イくよぉっ!!」
絶頂の予感にはヴィクトールの胸板に爪を立てる。
ちくりと与えられる甘い痛みにヴィクトールは目を細めて息を詰めた。
「はうっ、そんな吸っちゃ…っ!きちゃうぅぅっ…!!」
不意の刺激に、の体が一気に駆け上がった。
きゅううううと収縮する感覚にグレゴリーも眉根を寄せ、やや余裕を失った笑みを浮かべる。
「イくか?俺も出すぞ…っ、ほら、しっかり、受け止めろ…っ」
「あはぁぁぁ…っ!!」
びくびくと痙攣するの体がしなり上がる。
一瞬の緊張と直後に襲い来る弛緩の瞬間が言葉に出来ないほど気持ちイイ。
「っ、!」
同時にグレゴリーが息を飲んだ。
「んう!…あふぅ、熱いぃ……」
ぶるっと体を震わせてはうっとりと目を閉じた。
体内のグレゴリーが脈動を繰り返しているのが分かる。
その度にびゅぶ、と溢れた精液が結合部から零れおちた。
二人ともはあはあと獣のような息を繰り返して絶頂の余韻を味わっていたが、ヴィクトールはその中に入ってはいない。
だから、自分の体を下敷きにして放心しているのお尻をやんわりと掴んだ。
…もっと、俺も…」
「えっ、嘘、やぁ…も、おかしく…なるぅ…っ」
ヴィクトールの手がのお尻を左右に開いたかと思うと、騎乗位の体勢で既に勢いを取り戻したヴィクトールの上に腰を落とさせる。
「んっうぅぅぅ…っ!!」
自重でずぶずぶ埋まり込むそれは、一度放った筈なのに、先程よりも質量を増しているような気がした。
「おっきい…っ、はぁっ、良いィィ…ヴィクトールの、すっごいよぉ…」
「嗚呼、俺も…イイ…。……」
僅かに眉根を寄せてヴィクトールが蕩けきったの体内を再度味わう。
うねりながら纏わりつく感覚は癖になる。
「はぁっはぁっ…あぁぁあ、しゅご、いぃぃ…っ、奥まで…くるぅ…っ」
涎を垂らしながらがくがく震える体をグレゴリーが後ろからやんわり抱いた。
そして軽く顎を掴んで振り向かせるとだらしなく半開きになった唇にキスをする。
「んっふ、…は、ン…ぷ、は…ァ」
「じっくり可愛がってもらえ。その後は俺がまた可愛がってやる」
「はぁっ、むり、むり…っ。あはぁん…っ、よすぎて…しんじゃうよぉっ…!」
悲鳴にも似たの声はやがて嬌声に変わる。









小さく声を掛けられは目を覚ました。
部屋の中は薄らと白んでいる。
もう朝か。
「…ヴィクトール、どうしたの」
この後自分は出社して彼らは帰ってしまうのだと思うと寂しい気分がの胸の中に込み上げてくる。
しかしヴィクトールはそんなに気付かないのか黙って手招きをした。
「リビング…?」
「少し待て」
いつも通りの素っ気ない言葉だ。
これがセックスの最中になると素っ気なさの中にも熱が籠る。
グレゴリーよりも情熱を帯びる瞬間にいつでもドキドキする自分を知っている。
「…」
……いけない。朝から何を考えているんだろう。
ちらりと時計を見ると6時を回ったところだった。
普段よりも早い時間だ。
勝手に冷蔵庫を開ける音がして、何をするつもりなのだろうとヴィクトールに目を向ける。
「…あんなに食べておいてまだ何か食べる気?」
当然だが昨夜食べたものなどとっくに消化している時間なのだから、彼が空腹を覚えていても何らおかしな話ではない。
だけど言わずにはいられない。
そんなを振り返ったヴィクトールが、皿を持って戻ってきた。
「何それ」
自分で用意した覚えのない皿だった。
机の上に静かに置かれたそれを覗き込む。
「桃?」
「そうだ」
ざくざくと不揃いに切り落とされた白い桃が皿の上に適当に並べられている。
「どうしたの、これ」
「買ってきた」
「いつ?」
「昨日」
本当にヴィクトールは単語で会話するなぁ…とは苦笑を浮かべていると、ヴィクトールがおもむろにの体を抱き上げた。
「きゃっ!な、何!?」
の言葉には答えずにヴィクトールはそのまま椅子に座る。
膝の上に乗せられたは意味が分からずヴィクトールを見ていた。
「何…?」
重ねて問うの目の前に、ヴィクトールは皿の上の桃を掴んで突きつける。
「食べろ」
「た、食べろって…」
「さあ」
唇に押し当てられた桃はひんやりと冷たく、僅かな隙間に入り込んでくる甘い果汁と仄かな香りがの胃を刺激する。
そういえば、昨夜はまともに物を食べていなかった。
口の中に唾液が滲んでくる。
空腹の誘うままにはそれを口の中に迎え入れる。
押し込まれる実が僅かに歯に当たり、そこから更に甘い果汁が零れてくる。
零さないようにそれを啜ったら、ヴィクトールの指も食べてしまった。
「…指も食べた」
「だ、だって汁が零れちゃうから…」
の口内から引き抜いた指を、ヴィクトールは目の前で舐め取って見せる。
「甘い」
「ちょ…、あんまり恥ずかしいことしないで」
もごもごと咀嚼しながらは困ったように視線をずらす。
するとそこには思いもよらない姿があった。
「昨日の昼間のつまんねーことってこれか」
「兄さん、起きたのか」
「っ、グレゴリー…!けほ…っ!」
しまった見られた。
の頭に真っ先に浮んだのはそれだった。
ヴィクトールの膝に乗せられ、彼の指から桃を食べる遊び。
子供の頃ならいざ知らず、大人になった今、物凄く恥ずかしい絵面である。
思わず咀嚼していた桃を一気に飲み込んでしまってむせた。
「それ、あの時買ってきたんだろ」
「そうだ」
しれっと答える弟は憎らしくも次の桃を掴んで差し出していた。
だけど、突きつけられてもはそれとグレゴリーを交互に見るだけで口を開かない。
?どうした、まだ一切れしか食べていない。もっと食べられるだろう」
「た、食べられるけど…えっと」
「なら食べろ」
もごもご口篭るの口にヴィクトールは桃を押し込む。
実が潰れて果汁がの顎を伝った。
「んう、…」
じゅわりと甘い果汁が口の中に広がる。
桃と一緒に入って来たヴィクトールの指まで食べながら、は恥ずかしそうにそれを味わった。
「あ、あんまり見ないでよ…」
突き刺さるような視線には居心地悪そうに背中を丸める。
ヴィクトールは膝の上で身を縮めるが可愛らしく、顔には出さないがもう一度部屋へ連れ込んでやりたい衝動に駆られていた。
しかし、それを眺めるだけのグレゴリーは面白いはずもなく。
「俺にもやらせろ」
今度はグレゴリーがの小さい唇に果実を押し込む。
「え、っ…ちょ、ちょっと…!」
抗議の声を桃と一緒に飲み込まされてしまった。
一緒に押し入ってきた指が抜かれる瞬間。
「…おォ…これはなかなか」
嘆息するグレゴリーが呟く感想。
意味はよく分からなかったけれど、的には立て続けに果物を押し込まれるのはなかなか苦しい。
「零している」
「え…?」
ヴィクトールがの顔を自身の方へと向けさせると、顎を伝う果汁を舌で舐めとった。
まさかそんなことをされると思っていなかったのでの体が跳ね上がる。
情事の最中よりも恥ずかしい。
「あ、お前!」とかグレゴリーの声が聞こえてきて、見られた恥ずかしさには俯きながら両手で顔を覆った。
なんでこんな遊びを始めてしまったんだろう…と後悔しても遅い。遅すぎる。
頭の上ではヴィクトールに詰め寄ったグレゴリーが場所を替われと主張している。
無理。
やめて。
お願いだからもうこの遊びは終わりにして。