やさしくしてください 1


イッセーからアザゼル様の堕天理由聞いたけど、それ本当?
正直言ってあたしには全然信じられない。








「これって、アザゼル様が作詞したのよね」
おっぱいドラゴンの歌を聴きながらあたしは複雑な気分になった。
「おう。マジ何やってんだって感じだよな」
イッセーも無表情であたしに答える。
いや、あたしから言わせて貰えばアンタはアンタで何やってんだって感じなんだけど。
おっぱいつっついて強化される悪魔なんか聞いたことないし。
「頭のドコ使ったら『ずむずむいやーん』なんてフレーズ出てくるのかしら」
「俺が聞きたい」
「…」
っていうかね。
そもそもアザゼル様が『ずむずむいやーん』って。
や、食わせ物のあの人だから別にこの言葉が出てくるのが不自然ってわけじゃないの。
必然とも思いたくないけど…まあそこは置いといて。
「アザゼル様…本当に女性で堕天したの?あたし全然信じられない」
だって、女の人とそういう雰囲気になってるとこ見たことないし。
研究とか神器のこととか、とにかく趣味のことばっかりの人だから。
最近では和議の仕事まで回ってきてそれどころじゃなさそうなのも端から見てて凄く分かるくらいだしで。
「俺にはそんなこと言ってたぞ?前に言ったとおりだ」
「…」
そう…リアス・グレモリーがスイッチ姫なんて呼ばれることになった一番の大元はアザゼル様。
この目の前のおっぱいドラゴンに『乳首を押したら女は「いやーん」と鳴く』と言ったとか言わなかったとか。
…嗚呼、眩暈がするわ。
は何でアザゼル先生の堕天理由にそんなに拘るんだよ」
「…」
拘るわよ!!!!
アザゼル様はあたしが一番好きって言ってくれたの!
誰よりもあたしを!
一番!
愛してるって!!!!
でもなーんにもないんだもん。
忙しいからデートとかは我慢するけど…別々に暮らしてるうえに最近は業務連絡でちょこっと会うだけで何にもないの!
女性が堕天の理由なら…もっとほら、何かあってもいいと思わない?
……なんて、目の前の童貞ドラゴンに愚痴っても仕方ないわよねー…。
「別に拘ってなんかないけど…アザゼル様の周辺あんまり女の人がいないから当てはまらないなーって思っただけ」
「ああ、成る程…もう飽きるほど堪能したんじゃないか?」
「…っ!?」
アンタちょっとなんてこと言うのよ!!!
確かにアザゼル様はずーっと生きてらっしゃるけど!
で、でも…もし仮にそういう理由で女性に執着がないんだとしたら…?
あたしとアザゼル様の関係…もしかしてずーっと……このまま、とか…?
「不安になること言わないでよね!馬鹿イッセー!!!」
「へ?」
あああああもう!
イッセーなんかに声掛けるんじゃなかったぁぁぁ…っ!!
自己嫌悪に陥りながらあたしは教室を飛び出していた。


「俺、変なこと言ったか?」






「ああああアザゼルさまあぁぁっ…!!」
「よう、どーした?
神出鬼没のアザゼル様だけど、教員という名目を抱える手前普段は大抵学校の何処かにいる。
一番最初にあたしが探すのはいつだって部室から。
旧校舎の薄暗い部屋を勢い良く開けた先にはアザゼル様と赤い髪の悪魔の姿があった。
「…?そんなに慌てて何かあったの」
さっきのイッセーの主であるリアス・グレモリーとアザゼル様が暗い部屋で二人きり…!
狡い!あたしなんかまだアザゼル様と明るいうちしかお会いしてないのに…!
…じゃなくて。
「ちょっと、アザゼル様に折り入って聞きたいことがあるのです!」
「おぉ、熱心だな。神器のことか?」
「…や、違いますけど…」
えええええもういきなりそっちの頭なんですかっ!?
ご自身が一番愛してるって告げた女が会いに来てそっちにいっちゃうんですか!?
「じゃあ何だ?」
神器以外のことだと検討すら付かないんですか!?
うぅ…イッセーが言った事、あながち間違ってないかもしれないぃぃ…。
「あ、あのぅ…ここでは、ちょっと…」
だ、だって…あたしの質問って…。

『他の女性といっぱいえっちしたから、あたしのことほっとくんですか!?』

…こんな内容だから、他の人がいる前では聞きにくい。
あたしが言葉を探しているとふわっとアザゼル様の腕があたしの肩をいきなり抱いたの。
えええっ!
あたしまだ心の準備がっ!!
「仕方ねぇなァ。リアス、話はまた後だ」
「ええ。もう暫く学校にいるから構わないわ」
あわわアザゼル様近いっ…!
香水かな、なんか良い香りもするし…っ。
「ほれ、行くぞ」
「ははははいぃっ!!!」
焦りで声が上擦って変な返事しちゃった。
後ろでリアス・グレモリーがくすくす笑ってるうぅ……。
び、美人さんはこんな変なとこ好きな人に見せたりしないよね。
あたしもアザゼル様には可愛いトコだけ見せたいのに…なんでこうなるんだろう。
何となくしゅーんとなったあたしに怪訝そうな視線を投げかけてアザゼル様が旧校舎を出た。

「ここなら誰も来ないぞ。正真正銘俺の空間だからな。…何があった?」
旧校舎を後にしたアザゼル様が何処へ行くのかなって思ってたら、校舎じゃなくてアザゼル様専用の小さな異空間に招待された。
悪魔の皆が修行の為に使ってるような何にもない空間。
ああっ、そ、そんなに改まれると逆に恥ずかしい質問なんですけど…っ。
で、でも最近のことを考えたらこんなチャンス滅多に無いかも…!
「あ、アザゼル様…って、女性で堕天なさったって本当ですか…?」
「は?」
「飽きるほど女性を堪能なさったって本当ですかっ!?」
意を決したあたしの質問にアザゼル様が茫然とした表情をする。
ああ、そんなお顔初めて見たかもしれません!結構レアです。
「……お前…聞きたいことってそれか」
続いてアザゼル様の心底呆れ切った声。
「だ、だってっ!アザゼル様あたしが一番好きだって仰って下さったじゃないですかぁぁあ…なのに、その、何にもないし…。イッセーがもう女の子には飽きたんじゃないかって言うし…」
うえぇぇ、あたしだって構われたいのに。
最後の方の訴えはちょっと涙声になっちゃった。
我慢してた分が溢れちゃいそう。
呆れたようにあたしを見てたアザゼル様が溜め息を一つ。
あ、あぁぁ…もしかして面倒くさいって思いましたか!?
もうこんな小娘イラネって思っちゃったりしましたか!?
思考の泥沼に落ち込みそうになるあたしの肩をがしっと掴むアザゼル様。
「お前ねー…よくもまあ色々と破壊してくれるようなこと言ってくれちゃって」
そして、体を屈めてあたしの顔を覗き込んでくる。
そこにはもう呆れた表情はない。
寧ろ、獲物を見つけた狼さんみたいな…そうやって見つめられると心臓が跳ね上がっちゃう…。
「俺の健気な愛情は無駄だったって事か。ま、お前も堕天使だもんな」
「え…?」
「若い女の子に嫌われねぇようにおじさん頑張って色々我慢してたんだぞ?でもそういう悪いお付き合いが希望ってことだな?ちゃんは」
にやっと意地悪く笑ったアザゼル様が、あたしの肩を掴む腕を引き寄せる。
さっきアザゼル様に肩を抱かれた時に感じた香りがふわぁって舞い上がった。
うそ、あたし今ぎゅうって抱き締められてる。
「あ…アザゼル、さま…」
どきどきしてかああって体温が急上昇していくのが分かった。
頬が、熱い。
「可愛いぜ、。お前が望むことなら何でも叶えてやる」
低い囁きが聞こえたと思ったら、ちゅってリップ音。
あ、アザゼル様があたしのほっぺにちゅーした…っ!
「特に、こんな可愛いお強請りは大歓迎だ」
「ひゃ…っ」
ふ、服の上から…胸っ、胸を掴まれて…っ。
あぁん、恥ずかしいよおぉ…。
「んー、有望だとは思ってたが触ってみるとこれはなかなか」
「やぁんっ、変なこと言わないで下さいぃっ!」
っていうかそんな目であたしを見てたんですかっ!?
は、早く言って下されば……や、じゃなくて…。
顎を掴まれて上を向かされたあたしにアザゼル様は顔を近付けてきた。
うそ、っ…。
「んン…っ」
キスされるって思った瞬間に既に奪われてた。
重なり合う唇は柔らかくて…。
触れ合うだけの優しいキスを何度もしてくれる。
「ん、は…っ」
「…堪ンねーな。今すぐ抱くつもりじゃなかったのによ…」
「え…っ」
「流石にここは嫌だろ?」
ここ…アザゼル様専用の空間。
何もない只の空間。
「さっきも言ったろ。おじさんは若い彼女に捨てられやしねーかビクビクしてんだよ」
苦笑いであたしの頬にちゅって唇を押し当ててもう一度強く抱き締めてくれた。
「そんな、捨てるなんて…」
「イイ男が出てくるかもしれないぞ?イッセーみたいな天然のタラシも近くにいるしな」
「確かに…イッセーは無自覚に格好いい事をしますが…彼に優しくされるより、アザゼル様に優しくされたいです」
「!…お前は天然にそういうことを言うよな…」
はぁっとアザゼル様が深い溜め息をつく。
そういうことってどういうことだろう?
「…じゃあ優しくシてやるよ。今夜な」
「!」
悪戯っぽい笑みを浮かべたアザゼル様の表情であたしの言った言葉が違う意味に変換されたことを知った。
「ち、違います!あたしそんなつもりじゃ…!」
「ほーぉ。そんなつもりじゃない?今この状況でそれ全然説得力ねぇぞ」
「あ…え、えっと…」
確かに…あたしアザゼル様とそういう関係になりたいって言ったんだった…。
うっ…自覚するとはしたなさに恥ずかしくなってきた。
俯いて黙り込むあたしの頭をぽんぽんする。
「仕事でちょっと遅くなるかもしれないが、今夜迎えに行く。大人しく待ってろ」
「…は、はい…」
あっ、その宣言すっごい気恥ずかしい。
思わず視線を逸らすあたしはもうアザゼル様の顔をまともに見られなくなっていた。






高揚感にそわそわと落ち着かない。
夕陽が沈んでいくのを見て、早く夜が来ればいいのになんて思ってる。
それでも願えば願うほど空の色は変わらなくて。
真っ赤な空を見ながら、あたしはあの人の香りを思い出してた。







地下の温泉で服を脱いでいたらゼノヴィアが入ってきた。
?さっきも地下にいなかったか?」
「ゼノヴィア…っ、ななな、何で知ってるの…?!」
「トレーニング前に君を見かけたからな。も修行か?」
いいえ違いますお風呂に入ってたんです。
け、けどそんなこと言えない。
だってあたしまたお風呂入ろうとしてるし…っ。
「しゅ、修行じゃないけどまあそんなとこ!」
あたしの目の前でゼノヴィアが汗に濡れた服をばさりと脱ぎ捨てた。
ほんっと躊躇ないわね…。
体に自信があるからかもしれないけど。
イッセーに子作りしようって一番最初に言ったのはゼノヴィアらしいし(そのせいか最近では他の愛人達も遠慮がないと思う)羞恥心っていうのが薄いのかも…。
…っ。
子作りって単語に今夜のこと意識しちゃってほっぺたが熱くなってきた…。あたしの馬鹿…。
「ん?、頬が赤いぞ?のぼせたか?」
「や、これは違…って、お風呂入る前にのぼせるわけないでしょ」
「ああ、それもそうか」
ぽん、と手と叩いて合点がいったような仕草をする。
うーん天然。
でも多分彼女はこういうところが可愛いんだと思う。
一緒にひろーい、それはそれはひろーい温泉へ。
うーん毎度毎度リアス・グレモリーの財力を思い知らされます。
あたしも今はアザゼル様に拾ってもらってるけど、所詮一介の堕天使にすぎませんから。
「ほんっと、リアス・グレモリーはスケールが大きいわ」
「実家はもっとすごいぞ。巨大な城だった。それも一つではないらしい」
「庶民には想像の範疇を超えるわね…」
っていうかそのお城見たんだ。
寧ろ入ったんだ。
うああぁぁ…あたしも見てみたいなぁあ…。
ざぶ、とお湯をかぶったゼノヴィアが温泉に身を沈める。
嗚呼…見事なまでに浮かんでおります、おっぱい。
あたしだって負けず劣らず…と言いたいところだけど、流石にちょっと負けるわ…。
アザゼル様は有望って仰ってくれたけど…やっぱり大きければ大きいほどいいのかしら。
おっぱいドラゴンの歌詞も『やっぱりおおきいのがすき』って入ってるくらいだし…この程度じゃダメなのかしら。
「…胸がどうかしたのか」
ぐいっと自分の胸を持ち上げて顔を顰めているあたしを怪訝に思ったのだろう、ゼノヴィアが声を掛けながら近づいてきた。
「男性は大きい胸が好きよね…」
思わず考えてることそのまま言っちゃった。
普段あたしはイッセーの取り合いに参加してるわけでもないし、恋愛沙汰の話を自らしたりしないからゼノヴィアはちょっと驚いたような表情をする。
もそういうことを考えるんだな」
「…ま、まあ…多少は」
「だが、どうして顔を顰めるんだ。も大きい方だと私は思うが…」
「ゼノヴィアのと比べちゃったのよ。貴方の方が大きいわ」
あたしの言葉に更にゼノヴィアがきょとんとする。
「…意外な君を見てばかりだ。向上心の塊のようながそんなことを思っていたとは…」
まあ、普段は前向きがモットーなので。
誰か羨んだりしても仕方ないのは分かってるんだけどね。
「桐生がアーシアに言っていたのを聞いたことがある。胸を大きくしたいなら好きな男に揉んでもらえと。アザゼルに相談してみたらどうだ」
「いやー流石にそれを頼むのは……って、えええっ!!!ななな何でアザゼル様が出てくるのっ!!!」
「だって、はアザゼルが好きなんだろう?いつもアザゼルのことばかり見ているじゃないか」
!!!
うそおぉぉ…っ、あ、あたしそんなあからさまに!?
別に隠してるわけでもないけど公言もしていないこの関係。
ゼノヴィアに見抜かれてるなんて…っ。
「イッセーに構わない女もこの家では目立つしな。基本的にはイッセー関係では干渉してこないじゃないか」
「ま…まあ…あたしはイッセー狙いじゃないからね…」
そしてこの家に住む他の女性は全員イッセー狙いなのでした。
確かに目立つ…かも。
「そうだろう?私でさえすぐに分かった。他の皆もの気持ちに気付いているんじゃないか?」
「ええええっ!!!」
きゃあぁぁ…それは恥ずかしいっ!!
あ、でもそう言われてみれば思い当る節も…。
リアス・グレモリーには「貴方は無害みたいで良かったわ」って微笑まれたことある。
堕天使馬鹿にしてんの!?って思ってたけど、あれイッセー関係のことだったんだ…っ!
「あああああ恥ずかしいよおぉ…」
「何故恥ずかしがる。他人を愛すのは美しきことだ。そこに種族の隔たりは無い」
「ううう、気持ちがばればれだったなんて恥ずかしい以外に何もないでしょっ!!」
教会出身のゼノヴィアは確かに博愛に恥を感じたりはしないのかもしれないけど、博愛っていうかこれは多分肉欲に入ると思うの…。
首をかしげるゼノヴィア…。
うぅん、やっぱ堕天使と教会関係者が分かりあうのは難しいみたい…。



念入りに念入りにお風呂で洗って(一緒に入ったゼノヴィアが先に出てっても入ってた)…っていうか夕飯食べた後もお風呂に入って。
なんかもうあたし湯船に溶けちゃうんじゃない?なんて温泉の中で思ってたら、急に空間に魔法陣が現れた。
えええ、これアザゼル様の魔法陣っ!!!
慌てて裸の体を庇いながらあたしは湯船に体を沈める。
ってか!こんなとこにまで飛んでこれるの!?お風呂に飛んでこれるってマズいんじゃないの!?
「よう!迎えに来たぞ!…って、ここは風呂場か?」
独特の湿った空気にアザゼル様は一瞬周りを見渡した。
ちょっ、他の子が入ってたらどうするんですか!?見渡さないでください!!
「ああああアザゼルさまっ!?」
「何だよ。先に風呂入っちまったのか。一緒に入ろうと思ってたのにな」
いいい一緒に!?
いちいちセリフが刺激強いですうぅ…っ!!
着流しの浴衣に裸足でぺたぺたと近づいてくるアザゼル様。
ああ、待って…あたし今裸なんです…!
でもそんなことお構いなしにアザゼル様の手がざぶんと湯船に突っ込まれたかと思うと…。
「ひゃぁっ!な、何をなさるのですかっ…!」
ざばぁってあたしの体を掬い上げちゃう。
お湯でびちゃびちゃの体を抱っこなんてしたらアザゼル様の服が濡れちゃう…!
「ぬ、濡れてしまいますよ…!離してください…!!」
「迎えに来たって言ったろ?いいから大人しくしてろ」
浴衣があたしの体の水分を吸ってじわりと染みを広げていく。
畏れ多いよぉ…それにこんないきなりいらっしゃるなんて思ってなかったから心の準備が…。
とは言え大人しくしてろと言われてしまった以上あたしにじたばたする権利などないのです…!
裸のままで…ええ、全裸のままでアザゼル様に抱っこされながら魔法陣の中に入るしかないのです。

魔法陣を抜けるとそこはもうイッセーの家の地下じゃなかった。
行燈に揺らめく光がぼんやりと中を照らしていて、畳の上にはお布団が一組…。
ああああ…なんか、生々しいですっ…アザゼル様!
裸のあたしを抱っこしたままでアザゼル様はお布団の上に腰を下ろした。
無言であたしの方をじっと見つめる…。
「あ…アザゼル様…あの、あんまり見ないでください…」
「んー?俺の為に磨いてくれたんだろう?きちんと拝まなきゃバチがあたるってな」
堕天使にバチも何もないし!
仕方なく体を丸めるようにして出来る限りで庇うけど、アザゼル様の手があたしの二の腕を掴んで開かせちゃう…。
ゼノヴィアに少しだけ勝てないサイズの胸が露わになった。
「おおおっ、俺の目に狂いは無かった!お前はやっぱり有望だぞ!」
あたしの裸の胸を見て声を弾ませる堕天使総督…や、やっぱりアザゼル様の本質はそこにあるんですか?
「たくさんの女性を通ってこられたアザゼル様には見慣れたものかと思いますが…」
「馬鹿だな、本命の女ってのは格が違うんだよ。例えば…俺はお前にキスすることすらビビってんだぞ」
言って困ったように微笑むアザゼル様がそうっと顔を近づけてきた。
昼間されたようにふわっと唇が押し当てられて…。
「んン…っ!」
重なり合った唇を柔らかくてぬめった何かがやんわりこじ開けてくる。
舌先が滑り込んできたことを感触で知った。
口の中に広がっていくアザゼル様の味…。
「ふ…ぅ、ん…っ」
ちゅくちゅくと小さな音を立ててアザゼル様の舌があたしの舌先を絡めとるの…。
息苦しさすら覚える口吻けにあたしは浴衣を皺になるほど握ってしまった。
「ふはっ…あぁ、っン…!」
ほんの少しだけアザゼル様の唇が離れて、解放されたかと思ったら角度を変えてもう一度…。
ぬめった感触に頭の中がぼーっとしてきちゃう。
溢れた唾液を垂下して、アザゼル様が離れる時にはあたし何にも考えられなくなってた。
力が抜けたあたしの体を、捲り上げたお布団の上におろして羽織を脱ぐアザゼル様…。
覆いかぶさってくる影にあたしは身を竦ませる。
「…俺が怖いか?」
「怖くなんか…っ。き、緊張してるだけです…!」
「そうか…」
呟くように言って、あたしの首筋にアザゼル様が顔を埋める。
あぁ…吐息がくすぐったくて…なんだろうお腹の中がきゅうんとするような…。
「あ…、ァん…」
唇が伝う感触に思わず変な声が出ちゃった。
特別気にした様子もなくアザゼル様の唇は、首筋を伝って鎖骨に触れる。
そしてちゅうううっと皮膚を吸い上げた。
「っ、あ!」
僅かに感じる甘い痛み。
何をされているのかも分からないままあたしはアザゼル様の肩に爪を立てた。
「何だ…?お強請りには早いだろ?」
「えっ、ち、違…っ!ひゃぁ!!」
やおら体を起こしたアザゼル様があたしの胸をきゅうっと掬い上げるように両手で掴む。
目の前で堂々と捏ねられると恥ずかしいっ…!
「あっ、やぁん…っアザ、ゼルさま…っ」
かああっと頬が熱くなっていくのが分かった。
だけどアザゼル様が手を止めることはない。
寧ろ、体を屈めて…。
「嗚呼、美味そうだ」
へ、変なところで喋らないで…。
胸に吐息がかかってぞくぞくしちゃう…っ!
だけど直後に与えられたものは吐息どころではなかった。
「っ、あはぁぁぁあ…っ!」
かぷんとアザゼル様があたしの胸にかぶりついたの。
ぬめった感触があたしの胸の一部を覆う感覚は、生まれて初めて与えられる未知の快感だった。
「ん、あっ!あっ!」
肌の上を舌が撫で回しては皮膚の薄い箇所を丁寧になぞる。
刺激されて膨らみ始めた乳首を舌先で弾かれてあたしは思わず背中をしならせた。
「やぁっ!アザゼル様…っ、やだぁっ…!」
爪先から痺れるような感覚がせり上がる。
さっき感じたお腹の中が切なくなる感覚も強くなってきた。
「嫌?本当に嫌か?ん?」
楽しそうなアザゼル様は唇をつけていない方の胸も緩く揉みしだく。
「センセーの前で嘘ついたら為にならないぞォ?」
「んあっ!はぁっあぁぁ…っ」
アザゼル様の指が…抓るように乳首をきゅうって…。
恥ずかしいのに…感じちゃうよおぉ…っ。
更に唾液を含んだ舌が一層きつくあたしの乳首を捏ねていく。
「あ、アザゼル、さまっ…それダメ…っ!!」
撫で回して膨らんだところをぢゅうううって吸っちゃうなんてぇ…っ。
足の間がきゅうんと疼く。
堪らなくなってあたしは足の間に入り込んでいたアザゼル様の腰を膝で挟み込んだ。
無意識化の行動だったけど、その行動にアザゼル様は顔を上げてにやっと笑う。
「やらしいお強請りするじゃねぇの。流石は堕天使ちゃんだな」
「…え、っ…」
何のことを示唆されたのかは分からない。
だけどアザゼル様はあたしの胸から顔を離すと、体を起こしてあたしの足を抱え上げた。
「な、何をなさるんですか…?」
「なぁに、もっと気持ちよくしてやろうと思ってな」
ぐい、とあたしの足を持ち上げて体を折りたたんじゃうアザゼル様。
ままま待ってください!
これってもっと気持ちよくなると共にもっと恥ずかしくなるんじゃ…!!
「きゃぁん…っ!や、やだ、そんなっ…!」
腰を持ち上げられて折りたたまれたあたしの体は、アザゼル様に誰にも見せたことのない部分を晒している状態で。
思わず手で隠そうとするとアザゼル様にその手を掴まれちゃった。
「あぁん…恥ずかしいです…!」
今日何回目の感覚だろう。
また顔が熱くなる。
「すぐにそんなこと気にならなくなるさ」
指先で足の間を押し開いちゃうアザゼル様が顔を近づけて…っ。
――ぬるん。
「ひゃあぁぁん…っ!」
うそ、っ…あああアザゼル様があたしのあんなトコ舐めてるっ…!!
「うそうそ…っ、だめ、やめてぇ…っ」
思わず頭を押し返そうとするけど、粘膜の内側を舌先でくすぐられると力が抜けちゃう。
結果的に強請るみたいに髪に指先を絡めただけ…。
「は、っ…ぬるぬるしてるぞ…。溢れてくる…」
「やぁっ…言わ、ないで…くださいぃ…」
ぬろぬろとした舌先が割れ目の部分を上下したかと思うと、くぷりと埋まり込んだ。
そしてあたしの敏感な処を掠めるように撫でる。
「あぁっ…!あざ、ぜるさま…っ、そこだめぇえ…おかしくなる…っ」
埋まった舌が別の生き物みたいに足の間で蠢いた。
微妙な緩急をつけて掠めるように撫でたり、ぞろりと舐め上げたり…。
そうかと思えば愛液を啜りあげる音が聞こえてあたしの頭の中が快感と羞恥心で掻き混ざる。
「ふあぁっ…あっ、あーっあぁぁ…っ、気持ち、いいィ…っ、はぁ、っ…」
足の間がじぃんと熱くて蕩けそう…。
思わず本音が出ちゃった。
「イイか?こんなのはどうだ?」
――にゅぐっ、じゅるるるっ…
「うあぁんっ!ナカ、っ…!入ってくるぅ…っ!!」
すっごいよぉ…っ。
あたし何もかも初めてなのに、すっごい気持ちイイ…。
びくびく震えるあたしの腰を捕まえて一際強く敏感な処を吸い上げた。
「あはぁぁあっ!!何かクるっ…!!」
体の奥そこから快感がせり上がってきて、あたしの爪先が空を蹴った。
一瞬硬直したあたしの体ががくがく震えてる。
「…はは、イっちまったか」
「はぁっ…はぁっ…、あたし、イっ…たんですか…?」
感じたこともない倦怠感と余韻があたしの体にわだかまる。
舌舐めずりするみたいに唇の端を舐めたアザゼル様がやっとあたしの足をおろしてくれた。
だけどまだ終わってないことくらい知ってる。
帯を解いて浴衣を脱ぎ捨てたアザゼル様があたしの足の間に体を捩じ込んだ。
再び足の間を押し開く指先…。
「ん、は…」
「嗚呼、すごいな。どろどろだ…」
溜め息を吐くような声はちょっと掠れていてどきっとする。
「もういいだろ…」
ぼそりと耳元で呟かれた言葉を理解した瞬間、あたしの体に何か熱い塊が押し付けられたのが分かった。
ソレが一体何なのか分からないほど子供じゃない。
熱を帯びたアザゼル様の体の一部をこれから受け入れるのだと思うと心臓が高鳴った。
「いくぞ…」
声を掛けられたと同時にあたしの体の中に強い圧迫感が生まれる。
ぐぶりとアザゼル様が埋まり込むけど、さっき舌で探られた時と全然違う…!
「あっ、!くるし、っ…あざぜるさまァっ…!」
「は…堪ンねぇな…。ほら、息吐いて力抜け…」
逃げそうになるあたしの腰を掴んでゆっくりと腰を進めるけど。
「やぁっ、こわい…っ、アザゼルさま…っ、あぁ…っ」
ゆっくりと広げられる感覚は鈍い痛みと甘い快感が入り混じってる。
熱いよおぉ…。
空中を掻いていたあたしの腕がアザゼル様の背中に縋りつくように回った。
それに応えるようにアザゼル様もあたしの体を抱きしめてくれる。
きつく抱き合ったまま、とうとう体内の奥深くまでアザゼル様が埋まり切った。
「く、っ…キツいな…、あぁ…スゲェいい…」
恍惚の声を聞かされてあたしの体の中がきゅうんと収縮する。
もう埋まり込んだアザゼル様のカタチが分かるんじゃないかって思うくらい…。
きゅうきゅうしちゃうの。
、っ…そんな締めるなって…」
「そ…そんなこと言われても…っ」
体が勝手に…。
「悪ィ…ちょっと我慢しろ…っ」
敷布団の上にあたしの体を押し付けらアザゼル様は、そのまま覆いかぶさるような体勢であたしの片足を抱え上げた。
そして今しがた埋め込んだばかりの楔をずるんと引き抜く。
「く、ァん…っ」
引き抜かれる感覚にあたしの体がしなるけど、それよりも再度打ち込まれる瞬間の方が衝撃だった。
「あぁぁあっ、…!ふあ、あぁぁっ…!」
悲鳴にも似た声を上げてあたしはシーツを掴んで布団の上をのたうつ。
じゅぶっじゅぶっ…と卑猥な水音を立ててアザゼル様が出入りしてるぅ…っ。
「うぁっ、あぁっ…!深いィ…っ、おく、おくぅ…っ」
規則的に打ち込まれるソレはあたしの内壁を擦りながら刺激する。
「あざ、ぜるさま、ァ…っ、おっきいの…っはぁぁん…すごいぃぃ…っ!!」
「はぁ…、嗚呼、随分善さそうだ…。感じるか?んン?」
「んはぁ、っ…感じ、ますぅ…っ!アザゼル、さまぁ…っ!あざぜるさまが…っイイのォ…!」
いやらしくぐりぐり腰を押し付けられて体の奥が蹂躙されてるのが分かる。
シーツを乱しながらあたしは未知の快感をたっぷりと貪った。
そうしたら、不意にさっきアザゼル様によって導かれた瞬間の感覚が襲ってくる。
爪先が痺れて背中がぞくぞくするあの感じ…。
「締まりが良くなってきたな…っ、イきそうか…?」
「あっ、あ…っ…、は、はい…っ、お腹の中が…っきゅうんって…っ!」
やぁんっ!アザゼル様が急に激しく…っ!!
スピードを増して体を何度もぶつけられるの。
あぁ、足元から鋭くて冷たい快感が込み上げてくる…っ!
「はぁっはぁっ…イく、あざぜる、さまっ…あたし、あたしっ…」
「ああ、イけ…っ、見せてくれ…っ」
「あっあっ…!イくイくっ…!あはぁぁっ…――っ!!」
きつくアザゼル様の背中に爪を立ててあたしは背中を仰け反らせた。
肌が粟立つような冷たい快感があたしの体を駆け抜けていく。
「はぁっ…はぁ…っ、あ…」
震えるあたしの体を何度か揺すってアザゼル様も腰を震わせた。
お腹の中に暖かい感触が広がっていく。
「く…は…、嗚呼…」
「…溢れてる…」
収まりきらないアザゼル様の精液が内股を伝うのが分かる。
疲れたようにあたしの体の上に崩れるアザゼル様の体。
汗に濡れた髪が額に張り付いている。
気怠そうに溜め息を吐く様子が色っぽくて終わったばかりなのにどきどきした。
「…大丈夫ですか…?」
「んー?勿論。…ちょっと疲れたけどな」
そうですね、あたしも疲れました。





「そうそう、今日ゼノヴィアと話していたんですけど、リアス・グレモリーの実家は巨大なお城だそうですね」
「おお。それも一つじゃないぞ」
…それもゼノヴィアに聞きました。
「お城かぁ…お姫様はすごいなー」
「何だよ、じゃあ今度連れてってやろうか?」
「…え?お城にですか?」
驚いて見上げた先のアザゼル様は言い知れない笑みを浮かべていらっしゃいました。
…ろくでもない予感…。
「市街からちょっと離れたところに城が建ってるだろ?」
「!」
確かにそんな外観の建物はありますけどねっ!!
そ、それって所謂…ら、らぶほ…。


「アザゼル様っ!サイテーです!!!」


うええぇ…体許した途端にコレなのぉ…!?
でも…そんなアザゼル様も大好きなあたしが一番救えないんだ、きっと。







===============

アザゼル様って真面目が全然持たない人だと思うんです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。