てさぐりでいろごと


放課後の教室。
極彩色の夕陽。
深く影を落す机や椅子。
カーテンに遮断された教室の一部。
ロッカーの上。
夕陽に赤く染まった床。
……暗いロッカーの上。


「感じる?」
背中を壁に預けながら、ロッカーの上に座っている彼の足の間にあたしは体を押し込んでた。
今彼は極制服を脱いでジャージだった。
それも罰のつもりだった。



「勝手にあたしの顔が見えなくなるような事をして、許さないわ」



そう言ったあたしの気が済むようにすれば良いとだけ言った。
言いなりなんて狡い。
それが正しいと信じてやったって言うんでしょう。
本当の事を言うと、あたしも負けっぱなしの貴方は見たくない。
だからって『強くなる為に視力を失う事を勝手に決めた』貴方を認めたくない。
視線が合わないって、どれだけ不安か分からないでしょう。
貴方が今一体誰を見てどんなことを考えているのか…。
そしてあたしが今一体誰を愛してどんな罰を与えようとしているか…。
ねぇ。
「渦君、あたしを感じる?」
ジャージの前を肌蹴させて、あたしは胸板に鼻先を押し付けていた。
端から見ればあたしが抱きついているか縋っているように見えたかもしれない。
だって渦君はまだ手を膝の上に置いているのだから。
「…ああ、…」
上の空みたいな肯定の声が聞こえる。
こんなに近付くのは初めてだから、あたしもすごくドキドキして呼吸が苦しい。
でも罰は苦しいもの。
渦君はあたしより苦しい思いをしなくちゃいけない。
「…渦君」
耳元に唇を近付けて名前を呼んだ。
多分そんなに近付いてるって分かってなかったんだと思う。
一瞬、渦君の体が強張ったの。
そんな彼の耳の輪郭を舌先で辿った。
少しだけ紅潮してるの…あたしにははっきり見えるんだからね。
「う…っ」
唇でやんわりと噛みついたら小さく呻く渦君の声。
…男の子に可愛いって、傷つくかな。
でも、ごめん。
今あたしは渦君を傷つけたくて堪らない。
「…可愛い、渦君。もっと聞かせて」
ジャージの下に着てるTシャツの中に手を差し込む。
汗ばむ肌を指先で撫でたら、渦君の手がぴくんぴくん震えてた。
あたしには、はっきり、見えるんだから。
「渦君、キスしよ」
囁いてから、ゆっくりと唇を近付けた。
「んン…!」
重なった瞬間、待ちかねたように舌先が潜り込んでくるの。
嗚呼、ぞくぞくする。
コレは何回か経験がある。
数えられるほど…じゃないけど、そんなに多くもない。
口の中で舌先が触れ合って、体を支えている部分を溶かしてしまうような感覚を覚えた。
広がる渦君の味に甘い眩暈を感じる。
「はぁっ…素敵、渦君、好きよ」
「…、なあ、もう…」
「まだだめ。手は膝の上よ」
頬を両手で挟み込んで、渦君の鼻先にもちゅってキスをした。
気の済むようにしろと言った手前か渦君はされるがままだ。
「渦君、あたしが今何をしてるか分かる?」
自らの手で制服のスカーフを解く。
小さな衣擦れの音が教室に響いた。
そのまま制服も脱ぎ捨てる。
見えてないんだから、恥ずかしさもあんまりなかった。
「ねぇ、分かってるわよね」
「…服を…」
「そう。脱いだの。でも、もう誰にも見せることはないのね…」
貴方の為に、それなりに努力してきたのに。
どうにもならないところもあるけど、いつかの為に磨いてきたのに。
そんな恨み言を込めて呟いた。
そうしたら渦君の手があたしの体を素早く抱き寄せたの。
「ひゃっ!ちょ、ちょっと…!まだだめ…」
「待てるか!!」
下着を押し上げて手探りであたしの胸を揉みしだく。
や、やだ…体押し付けられると…当たってるのが分かっちゃうよぉ…。
「んっ、や…っ、渦、くぅん…っ」
「はぁっ…見えなくてもなァ…!」
形を確かめるような手つきから、掬い上げるような手つきに変わっていく。
時々手が先端を掠めてあたしの体は震え上がった。
「こうすれば分かる…!」
「あっ、うそ、やだ…っ、あぁん…!」
べろりと渦君の舌があたしの体を這う。
それは胸の輪郭を辿っては皮膚の上を何度も往復するように。
は、滑らかで、良い匂いがする…っ」
「ば、馬鹿…何言ってるの…!」
かぷっと先端にかぶりつかれて、あたしは背中をしならせた。
ねろねろ這いまわる舌が渦君のものとは思えない…。
丁寧に唾液のぬるみが先端を捏ねるのだめぇえ…っ!
「あっあっ…!やぁ、ん…っ、それ、やだぁっ…!」
「見えない分…感触や匂いには敏感なんだぜ…?」
もぞりと渦君の手があたしの制服のスカートの中に入り込んできた。
下着越しにお尻を撫で回される。
「俺を誘う匂いがする…」
かあっとあたしは頬に熱が集中するのを感じた。
好き勝手されて濡らしていることが筒抜けなんて…!
下着を引き下ろしながら渦君はあたしと体勢を入れ替える。
カーテンで仕切られたロッカーの上に乗せられたあたし。
その足の間に渦君の体が入り込んでくる。
伸ばされたあたしの足が、教室の赤い床に濃い影を落とすのが見えた。