瞳の中の真実


※夢主が男装





「…を住まわせるのはいいけど、私心配なのよ」
「何がだ?」
「あの子は女の子よ。いくら貴方達とはいえ男の人の間に女の子一人は危ないわ」
「だが、には身寄りがない。追い出す訳には…」
「何も追い出せって言ってるんじゃないの。対策をしましょうって話」
「対策…?」
アキと遊星の声が飛び交う中、彼女は何やらトランクを取り出す。
どさ、と重そうなそれを机に置いて、アキはジッパーを開ける。
「男装するのよ。女だって隠さなくちゃ」
「…」
対策の傾向はそれで正解なのか分からないが、何もしないよりはいいのか、と遊星は首を縦に振る。
決まりね、とアキは席を立って、が待機している遊星の部屋に入っていった。
どたばた騒がしいが、やがて静かになる。
アキに手を引かれて出てきたはきちんと男性っぽい見た目をしていて、ぱっと見では分からない程だった。
「これでいいわ。バレないでしょう」
「…そうかしら」
「あとはその口調ね。声はどうにもならないけど、男の子っぽい話し方を身に付けないと意味ないわ」
「えええ…」
そこまでしてここで暮らす必要があるのか分からないが、自分を負かした遊星には逆らえない。
彼の(エールを贈っているとは気付かない)視線に穿たれて、渋々と練習のために口を開いた。



それからしばらくして。
口調も所作もは男性らしく振る舞えるようになった。
声も声変わりしていないと言って皆に納得して貰って、会話に不自由はない。
最悪遊星とアキ以外とはモンスターを通して会話をしようかと考えていたからは少し安堵した。
ただ、着替えをする関係で、彼女の寝床は遊星の部屋にある。
「これでよし…だな」
髪を低い位置でくくり、ズボンのベルトを締める。
鏡に映る自身の姿に違和感を覚えなくなっている。
きり、と視線を尖らせて、彼女は部屋の扉を開いた。


「おはよう」
「おー、、おはよう」
丁度彼は椅子から立ち上がり、出ていこうとするところだった。
脇に小包を抱えているから恐らく今から配達に行くのだろう。
食器を流し台に置いて手を振る彼は、行ってくるなと笑いかけた。
「ああ、行ってらっしゃい」
さてと、と踵を返す彼女の前には青い髪の居候。
びっくりしたが後ずさると、彼は思わず手を伸ばして腕を掴んだ。
「わっ…」
「大丈夫?」
「…大丈夫だ」
じい、と見つめられてくすぐったい。
何だ、と問うが、ブルーノは首を横に振るだけである。
「ううん?何も?」
「…なら離してくれないか。私にはやることがある」
「そう?」
ぱ、と離されたは高なる胸を抑えてブルーノから離れる。
正体がバレないようにと警戒する彼女は、朝食の片付けもそこそこに、外に出ていった。
「…うーん…」
思慮にふけるブルーノはの背を視線で追う。
首を傾げたり腕を組んだりする彼を、遊星は不思議そうに見ていた。
「…どうした?」
「…何も?」
「そうか」
って中性的で格好いいよねぇ」
「…そうだな」
ぎくりと強張った遊星に気付いた気配はない。
虚空を見上げたままそれ以上言葉を発しない同居人から目を離して、遊星はに意識を向けた。
今のところ、アキの作戦は功を奏している。
このままうまくいくことを祈って、彼はパソコンを立ち上げた。
「ブルーノ、今日は俺のDホイールの調整を手伝ってくれないか」
「うん、分かったよ」
椅子を引いて遊星の隣に座って、ブルーノは上着を脱ぐ。
工具が収納されたそれは床に落ちる時に盛大な音を立てたが、すでに集中している遊星は何も言わなかった。



「危なかった…」
もう太陽は真上に上がっている。
買い物やデッキ調整用のパックを物色するためはシティの繁華街に来ていた。
ブルーノのあの視線を思い出し、危機感が募る。
もしかしたらばれたかもしれない、と考えるが、ガラスに映った自分は女性には見えない。
大丈夫だと自分に言い聞かせてひたすら歩くと、正面に見覚えのある人物が見えた。
警戒するが、それはの良く見知った女性だった。
「あら、
「アキ、何してるんだ」
「まだ続けてるってことはまだばれてないってことね」
「人の質問に答えろ…」
どうやら今日は学校は休みであるらしい。
普段着でカフェの前にいたアキの隣に立って、は休む。
アキが飲み物を奢ってくれるというので、彼女は素直にそれに甘えることにした。
二人で座って、近況を話しあう。
「少し無理あるかと思ったけど、今までやれてるならいいわね」
「…無理があると思うならやめるという選択肢はなかったのか」
「まあ、皆いい人だしばれても問題ないかなって思ってるから」
「…私で遊んでるととって問題ないな?」
呆れる声を出す元同僚を宥めて、アキは笑う。
「まあまあ…あ、私このあと寄るところがあったんだわ」
「そう」
「ええ、ごめんなさい、また今度」
急いでコーヒーを飲みほして、アキは席を立つ。
ゆっくりしていったら、との彼女の言葉に、は従うことにした。
「たまにはいいでしょう…」
ふと口をつく普段の口調。
気がゆるんだことに気がついて口を手で抑えるが、聞くものは誰もいない。
「…」
気を取り直してアイスティーを胃に収める。
途中何人か女性に声をかけられたが、真意が分からないは同席したいという申し出をただ断って行った。



用事を全て済ませて店の外にでると、そこはもう赤く染まっていた。
夕方に近い時間になってしまって、は慌てて帰る。
「ただいまー」
バタンと扉を開けても、そこには誰もいない。
どうやら遊星も出張修理に出掛けてしまったようだった。
「おかえり、
「ん、ブルーノ。ただいま」
誰もいないと思っていたら彼がいた。
少し驚いたがなんとか悟られないように取り繕って、彼女は階段を上がりきった。
食材を冷蔵庫に入れて行くと、背後から彼の声が聞こえる。
「…ねえ
「何だ?」
いつもの口調だが、どこか何か違う。
何だろうとが視線を向けるが、表情もいつものままだった。
「ちょっと一つお願いしてもいいかな?」
「何?」
「服脱いでくれる?」
「は!?」
繰り出される突拍子のないお強請り。
こいつは何を言っているんだと構えるが、ブルーノは引かない。
「ねえ、いいでしょ?」
「よっ…くはない…!」
「えー?なんで?」
なんでも!
ジャケットの下のさらしを見られる訳にはいかない。
身体を庇うだが、彼は容赦はしなかった。
「いいじゃない、"男"同士だもの」
「…!」
逃げ道を断たれたの額に汗が滲む。
どう取り繕うべきか迷っていると、ブルーノはさらに衝撃的な発言をし始める。
「…なんて言ってみたけど、何で男の子の格好してるの?」
「!」
って女の子だよね?」
見抜かれた。
氷結界の力を借りては冷風を吹かせて精一杯威嚇をするが、ブルーノには通じない。
何でもないかのように近付いて、彼女を横抱きにした。
「確かめさせてね」
にっこり笑う彼の顔が近くて思わず赤面する。
それも女性であると回答しているようなもので、は顔を隠した。
必死で取り繕うが、ブルーノは止まらない。
「離、せ…っ!」
「まあまあ」
「まあまあじゃなくって…!」
「女の子だと分かってて脱がすけど、それでも興奮しちゃうな」
「興奮しないで脱がさないでいいから離せってば!あと私は女じゃない!」
「まあまあ、暴れてるけど、そんな弱いのは煽ってるだけだよ」
「…っきゃ…!」
力も、言葉使いも、化けの皮が剥がれていく。
永遠に騙せるとは思っていなかったが、いざバレるとなるとショックは大きい。
上着を脱がしたブルーノの、って着痩せするんだねという声が聞こえてきたが、そんなのはもうどうでも良かった。
「…で、これで満足?」
露になったさらし。
決定的な証拠を見られての瞳に涙が溜まる。
どう出る、と視線をブルーノに向けると、意地悪な表情の中に幾ばくかの罪悪感が見てとれた。
だが、それはほんの一瞬で、少し優しく口角を上げるブルーノの目は相変わらず意地悪い。
「やっぱり女の子だった」
「五月蝿い…!」
もうここにはいられない。
遊星にもアキにも、バレたら出ていけなんて言われてはいないが、それでもタブーに触れられたの頬を涙と冷や汗が伝った。
「泣かないで」
「誰が泣かせたんだ…」
ぐす、と鼻を鳴らすと、すかさず顔が暖かいものに包まれる。
ブルーノの胸だとはすぐに分かったが、素直に甘える気にはならない。
「僕はに素直になって欲しかっただけだよ」
「素直に?」
「うん、もうこんなズボンも口調も止めて、ありのままのが見たいんだ」
「…」
何も言えなくなるを抱いて、ブルーノは彼女の目尻に口付ける。
少ししょっぱい味の後に甘味が広がって、癖になってしまいそうだった。
「…っ、ふ…あ…」
「はぁっ…美味しい…」
「やだ、この変態…!」
ぴくりと肩を震わせて耐えるの頬、首筋、それから肩口を次々に舐めとる。
じわりと暖かく滑った感触は、知らない間にに女性の快感を教え始めた。
「あっ…ん…!」
「その声すごく可愛い…。僕にもっと聞かせて?」
「やぁあっ、あ、ん!」
舌が胸に到達する。
さらしをどかしてピンク色の突起を露出させて、ブルーノはそこにかぶりつく。
唾液を含んでじゅるじゅる吸うと、とうとう押さえきれずに声が出る。
気をよくしたブルーノが更に続けると、の身体がわなわなと震えた。
「うぁっ、あん、あぁっ!」
反対側の胸も大きな掌で包んで突起を摘まむ。
翻弄されるはただ嬌声を上げることしか出来ない。
「ふふ、気持ちイイ?」
「やっ、も…やめろぉ…」
「やめろ、じゃなくて"やめて"でしょ?」
「ひぁぁああ!!」
ショーツをずらして、指でなぞる。
誰にも触られたことのないソコは、すでに愛液を垂らしていた。
敏感になっているためは思わず仰け反る。
「やっだ…!ブルーノ、離して…っああ!」
「ごめんね?こんな状態のを前にお預けは聞けないなあ」
ぐちゅ、と音を鳴らして侵入させる。
いきなりの刺激に耐えられず、ブルーノの服を掴んで耐えようとするの瞳からは、意味が異なる涙が流れた。
「ひあっ、ああ、あんん!」
、気持ちイイの?泣いたって分からないよ?」
ここはこんなに熱いのに、とブルーノは指を増やす。
圧迫感に耐えきれず、首を横に振るが彼はやめなかった。
奥まで侵入して壁を擦って、広げて拡張する。
まるで何かを要求させるように。
「…ねえ
「…なぁに…」
「ここ、どんな感じ?指はどう?」
「聞かないで…!」
「聞かないと分からないよ?意地悪なこと言うとイかせてあげないけど」
どっちが意地悪なんだと言いたくなるのをぐっと我慢しては「気持ちイイ」と答える。
正直「イく」という感覚がどういうものか分からなかったが、彼の口ぶりからするといいことなのだろうと彼女は推測した。
「よくできました…なら、もっと気持ちヨくさせてあげるね」
「えっ、も、いいわ、離して…!」
完全に口調が元に戻ってしまっているが彼女が気にする様子はない。
ブルーノの腕を押して離れようとするを宥めて、彼はズボンにジッパーを下げた。
「…!?」
そこから現れたのは大きな男根。
それをどうするのか分からずに、目を見開くをソファに寝かせて、彼はそっと覆いかぶさった。
、好きだよ」
「ぶるー、の」
「ちょっと我慢してね」
「何、するの……っきゃぁああ!!」
滾りをぶつけられたからは悲鳴ともとれる嬌声が上がる。
ぱくぱくと口を開閉して酸素を取り込もうとして、その衝撃からなんとか逃れようとしていた。
血こそ出ていないものの、かなり身体に負担がかかっていることが分かる。
、力抜いて」
「やっ、無理…!痛い…!」
「ごめんね」
訳が分からずにぼろぼろ泣くを抱いて、ブルーノは懸命に愛撫を施す。
キスをして髪や頬を撫でて、全ての愛情を注ぎこむ。
あらかた馴染んだ頃、萎えていないそれを奥に侵入させて、続きを実行した。
「あっ、ああ!ん、ん…!」
「んっ…の中すごく熱い…」
ソファのスプリングを上手く活用させて、奥の奥まで侵入する。
ごちゅごちゅと卑猥な音がリビングに響いたが、二人には気にする余裕などなかった。
ひたすら快感を求めて、お互いに縋る。
「ひァアああ!だめっ、そこすごい…変…!」
「ここ?」
「あぁあああ!そこ…!だめ、だめぇええ!」
の駄目は駄目じゃないじゃない」
「んああ…もっ、変なの!何かくる、きちゃうぅうう!!」
最奥をごりごりと突いてマーキングを施すとの背が震える。
背に爪を立てて抱きつく彼女を、ブルーノは全力で抱き籠めてやった。
腰を振るスピードも速くして、自身も絶頂へと登りつめようとする。
「あああ!ブルーノ、ぶるーの…!!ああっ、あはぁァアァあああ゛!」
「っくぅ…!」
搾り取るように蠢く膣内が、彼女がイったことを示す。
中で達したブルーノは、抜く暇もなく精を吐きだした。
白く染まるの膣はそれでもなおブルーノを離さなかった。
「…はあ…」
荒い息を吐くが興奮は収まらない。
中の男根が未だに大きいことで、ブルーノも気が済んでいないことが分かった。
「…どうするの、これ」
「このままお仕舞いって訳にはいかないよね」
「「よね」って言われても知らないわよ…」
「もう一回、付き合って?」
「え…あ、っあぁあああ!!」
出てきそうになる白濁を押し込めて、ブルーノは律動を再開させる。
イって敏感になった膣を攻められては死んでしまいそうだったが、夢中になって強い快感に浸った。
「あー!あんんっ、ひああああああ!!」
「ああっ、の中、すごい、僕ももう、イくっ、イっちゃう…!」
「やあッ、中、熱いのきてる、ブルーノの熱いの…!らめっ、らめええ!!」
びゅくびゅくと、脈動は何度も繰り返される。
結局が解放されたのは、ブルーノのモノが萎えた後だった。






「…で、なんでこんなことをしたのか聞かせて貰うわよ」
「…だって、がずっとそういう格好してるから」
「してるから?」
「……」
仁王立ちで威嚇する彼女は非常に怖い。
あの後すぐに同居人が帰ってきてしまったため、は風呂掃除と称して身体を綺麗に出来たのだが、気は収まらなかった。
夕飯後呼び出して、自身が犯されたソファに今度は彼を座らせる。
大きな体躯を縮込ませて、ブルーノはひたすら言い訳を並べた。
「可愛いなと思って…」
「は?」
「ごめんなさいごめんなさい暴力反対暴力反対……すごく強がってるように見えて…そんなのは嫌だなって」
「強がってないわよ。貴方がやらかしたようなことになるんじゃないかと思って備えた結果だったのに…」
「…女の子として住むのはまずかったってこと?」
「ええ」
現に貴方がそうだった、と責めるの目は怖い。
しかしその言葉を発したブルーノは、頭を傾げた。
「…?でも、クロウもジャックも、多分のこと女の子って知ってるよ?」
「…え?」
「聞いてきてあげる」
ぱ、とその場を離れ、彼らの部屋に赴く。
そこからは、「おー…」だの「…無理があった」だの、言いにくそうにバラすクロウとジャックの声。
作戦が失敗したというより、作戦が成り立っていなかったことを知って愕然とするに、ブルーノは声をかける。
「あー…でね、このタイミングで言うのは本当に最低だと思うんだけど」
「…何よ」
「あんなことしておいてこんなこと言う資格ないと思うけど…」
「早く言いなさい」
覚悟を持って臨むブルーノに促すは、彼から見たら処刑執行人にも見える。
今から自分に絶望という処刑を施すのだから。
「僕と、お付き合いして下さい」
「………馬鹿」
「…ごめんなさい」
完全にフラれた、と思いこむ彼の腹部に鋭いボディーブローが飛んでくる。
モロにくらって膝をつく彼に、は言葉を投げかけた。
「順序が逆でしょう」
「…ごめんなさい」
痛くてそれどころじゃないが、言葉をなんとか絞り出す。
「…責任とってくれるんでしょうね」
その言葉を発したの顔は非常に真っ赤で。
それがOKであることを敏感に読みとったブルーノは、腹の痛みを忘れてを抱き締めた。







「え、ばれてた!?」
「ああ、ブルーノにもクロウにもジャックにもな」
「あら…そう」
「そうじゃないわよ」
遊星とアキと、それからとの会議は、前提が覆されたことによって議題が大きく変わる。
「…遊星、貴方ちゃんとサポートしてあげた?」
「ああ、だが、俺やのミスでなく、彼らは自分でが女性だと見破った。どうしようもない」
所作だったり、風呂だったり、陰ながら彼女を補助したのは遊星であるが、彼がバラした訳ではない。
それもそうだとアキは肩をすくめて、仕方ないと諦めた。
「…ブルーノと恋人になったなら、そっちの方が男装するより安全かもね」
「…そういうこと言うの」
「だって誰かとくっつくより男装する方が早かったでしょう」
「それはそうだけど」
喧々囂々とアキとの話は続く。
次第にブルーノとの生活はどうだという話になって、話をふられることが少なくなった遊星は、二人の様子を見て肩の力を抜いた。



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「男装夢主。アキと遊星は女の子って知ってた(アキは元々知ってて、そこから遊星に伝わった)けど、皆との同居を前に女ということは伏せておこう的な。
けど普通にブルーノには見抜かれましたよ!?みたいな話。
変態くさいこと言われてやらかされる感じ…」というリクエストでした。
マリアマリー様この度はリクエストありがとうございました!

男装非常に難しかったです…!
いいの?これでいいの?と思いながら書いてました…
意地悪ブルーノちゃんは非常に書きやすかったですけどね!←
腹黒じゃねえか!うまい!とか思ってましたすいません。


喜んでいただけたら幸いですがお気に召さなければ書き直します…!